二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第23話 格上 ( No.62 )
- 日時: 2016/11/11 21:24
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
炎を纏ったヒノヤコマが、ヤミカラスへと突撃していく。
「っ、ヤミカラス、守る!」
ヤミカラスの周囲に、守りの結界が張られる。
この結界が相手ではどんな攻撃も通用しないが、
「ヒノヤコマ、急上昇!」
結界に激突する直前、ヒノヤコマはほぼ直角に急上昇し、結界への直撃を避けた。
「エアカッター!」
結界が消えたところに、ヒノヤコマは風の刃を放つ。
「っ、ヤミカラス!」
その身を刃に切り裂かれ、ヤミカラスはドサリとフィールドに落ち、戦闘不能になった。
『決まったぁぁぁ! ハル選手のヒノヤコマ、スピードを生かして攻め込み、ダリ選手のヤミカラスとの空中戦を制しました!』
アナウンサーの高らかな叫び声が会場内に響き渡り、場内に歓声が沸く。
『ヒノヤコマの持ち味を生かしたいい試合だったね! ニトロチャージからの猛攻、私も大好きな戦い方だったよ!』
いかにも炎タイプ使いらしいポプラの言葉を聞きながら、ハルは腕に留まったヒノヤコマの頭を撫でてボールに戻し、フィールドを後にする。
そして二回戦、参加者はそんなに多くないので準決勝。
フィールドに向かおうとするハルは、とても緊張していた。
『さあ、二回戦の二試合目、この試合に勝って決勝に進むのはどちらか? まず一人目はハル選手! 一回戦ではヒノヤコマのスピードを生かして、見事勝利を収めています!』
しかし緊張といっても、フィールドの盛り上がりに、ではない。
対戦相手にだ。
『そして、そのハル選手と対戦するのは、現在バッジ四つ、エストレ選手! 一回戦ではハッサムを使い、速攻で試合を決めてしまいました!』
『エストレちゃん、まだ戦ってないんだよねぇ。大会が終わったら、明日にでもジムに来てくれないかなぁ』
解説ではなくなっているポプラのコメントはさておき。
そう。二回戦の相手は、カザカリ山道でハルを助けてくれたあのエストレなのだ。
ダンタリオンのゾロアーク相手に互角に戦う力の持ち主。バッジも四つ。間違いなく格上だ。
前の試合の様子をターミナルで見ることが出来るのだが、アナウンサーの言った通り、ハッサムを使ってものの一分足らずで試合を終わらせていた。
(まぁ、格上と当たることは覚悟してた。こうなりゃ当たって砕けろだ。やれるところまで、やってやる!)
入場の合図を受け、二人のトレーナーがフィールドに立つ。
「あら、久しぶりね。二回戦に上がって来たのね」
「ええ。あの時はありがとうございました」
カザカリ山道では急いでいてちゃんとしたお礼ができなかったので、ハルはこの場で改めてお礼を言う。
とはいえ、それとバトルは別だ。審判の準備も整い、いよいよバトルが始まる。
『それでは、二回戦の第二試合、バトルスタートです!』
アナウンサーの声と共に、二人は同時にボールを取り出す。
「出てきて、イーブイ!」
「行ってきなさい、コモルー!」
ハルが選んだポケモンはイーブイ。
対するエストレのポケモンは、白い殻に全身を包んだポケモンだ。殻からわずかに四肢が突き出している。
『information
コモルー 忍耐ポケモン
エサも食べずに殻の中でひたすら
進化の時を待ち続ける。全身を覆う
殻は鉄のように硬いが動きは鈍い。』
見た目からはいまいち想像がつかないが、ドラゴンタイプのポケモンだ。
「あら? もしかしてそのイーブイって」
「はい、あの時のイーブイです。傷が治った後、仲間になってくれました」
イーブイもエストレのことを覚えているらしく、笑顔を見せた後、バトルの構えに入る。
「なるほどね。それじゃ行くわよ! コモルー、焼き尽くす!」
コモルーが先手を取り、勢いよく炎を吹き出す。
「イーブイ、潜る!」
それを見てイーブイは素早く床下に潜る。
炎を躱しつつ、コモルーに近づき、足元から飛び出す。
しかし、
「コモルー、噛み砕く!」
突き上げられたコモルーはその場に踏みとどまり、イーブイに噛み付いてその動きを止める。
『エストレ選手のコモルー、攻撃してきたイーブイを逆に捕らえました!』
『コモルーの殻は硬いからねぇ。真正面からぶつかっていっても、イーブイじゃ打ち負けちゃうよ!』
「っ、イーブイ!」
「コモルー、投げ飛ばして龍の息吹!」
牙を食い込ませてダメージを与え、上空に投げ飛ばし、龍の力を込めた風の塊のような息を放ってさらに追撃を仕掛ける。
「くっ、イーブイ、スピードスター!」
咄嗟にイーブイは無数の星型弾を放つ。
体勢が整っていないため相殺はできず、龍の息吹を受けてしまうが、息吹の威力は弱めた。
「イーブイ、大丈夫?」
着地したイーブイはぶるぶると体を震わせて体勢を整え、ハルの言葉に頷いて構え直す。
「よし! イーブイ、電光石火!」
イーブイが地を蹴って飛び出す。
目にも留まらぬ速さで一気に距離を詰め、コモルーへ突撃する。
「コモルー、もう一度噛み砕く!」
「イーブイ、躱してスピードスター!」
横から突っ込んでいったイーブイに対し、コモルーはそれに動じず口を開く。
しかしそれを予測していたイーブイは素早く離れ、無数の星型弾をコモルーへと放つ。
コモルーの牙は空気を噛み付くだけに終わり、直後、コモルーの額へと星型弾が命中した。
「コモルー、焼き尽くす!」
首を振って体勢を立て直し、コモルーは炎を噴射する。
「イーブイ、躱して足に噛み付く!」
イーブイはすばしっこく動き回って炎を躱すと、コモルーの足元に近づき、口を開く。
しかし。
「コモルー、鉄壁!」
コモルーが足を殻の中へ引っ込め、硬い殻をさらに硬化させる。
イーブイが歯を突き立てるが、あまりに硬い殻には食い込むどころか傷一つ付けられず、逆に弾き返されてしまう。
「なっ!?」
「今よコモルー、龍の息吹!」
イーブイの動きが止まったところに、コモルーは龍の力を込めた息吹を放ち、イーブイを吹き飛ばした。
「イーブイ!」
吹き飛ばされたイーブイがフィールドに落ちる。まだ戦闘不能にはされていないが、それでも直撃を受けている。ダメージはかなり大きい。
『エストレ選手のコモルー、またもイーブイの攻撃を弾いた!』
『あのコモルー、攻撃力は並程度だけど、防御力がかなり高いよ。しかもそれだけじゃなくて、エストレちゃんは技の使い所がよく分かってる。イーブイの攻撃に合わせてイーブイを捕まえたり、逆に鉄壁で弾いたり、相手の動きを見た上でコモルーの長所を生かして最善手を的確に選んでる。それと比べるとハル君はさっきのスピードスターはよかったけど、単調な攻め方が目立ってるかな。トレーナとしてのレベルはやっぱりエストレちゃんの方が上に見えるなぁ。物理攻撃が主体のイーブイは鉄壁を持ってるコモルーとの相性も悪いし、ハル君にとっては厳しいバトルだね』
トレーナーとしてのレベルはやはりエストレの方が上。それはハルも自覚していることだ。
二回戦に来て、やはり苦戦を強いられるハル。
「さあ、休ませないわよ。コモルー、龍の息吹!」
「っ、イーブイ、躱してスピードスター!」
コモルーが龍の力を込めた息吹を放ち、イーブイは跳躍してそれを躱し、無数の星型弾を放つ。
しかし、
「無闇に飛ぶのは危ないわよ。コモルー、焼き尽くす!」
宙に飛ぶイーブイを狙って、コモルーは星型弾に重ならない角度で炎を吹き出した。
コモルーならスピードスターを耐えると踏んで、確実に仕留めるための手段だろう。
「しまった……! イーブイ、もう一度スピードスター!」
だが間に合わない。
コモルーにスピードスターが命中するのとほぼ同じタイミングで、イーブイへと炎が迫る。
空中にいるイーブイには、炎を躱す術はない。
「イーブイ!」
灼熱の炎が、イーブイを飲み込む。
その直前。
イーブイの体が、青白い光を放つ。
眼前まで迫っていた炎が、薙ぎ払われた。
『おおっと!? この光は!?』
『進化の光だねえ! さあ、進化先は何かな!?』
アナウンサーと解説のポプラの声に合わせ、観客席にもどよめきが走る。
「イーブイ……!」
「ここで、進化ですって……?」
イーブイといえば、実に八種類の進化先を持つポケモン。会場がどよめくのも当然だ。
そうこうしているうちにも、光に包まれたイーブイの姿は変化していく。
ようやく光が収まった時、そこに立っていたのは——