二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第2話 勝負 ( No.7 )
日時: 2016/10/26 17:09
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: TZSGctBI)
参照: 初めてのポケモンバトル。勝つのはどちらか——

ミツイの提案で始まった、初めて同士のポケモンバトル。使用ポケモンは当然一体。一対一のバトルだ。
「リオル、頑張るよ」
ハルの声に応えてリオルが進み出る。
「それじゃあ私のポケモン! 頑張って、アチャモ!」
サヤナが繰り出したのはオレンジ色のひよこのようなポケモン。頭には三本の羽毛が跳ねており、非常に愛くるしい姿をしている。

『information
 アチャモ ひよこポケモン
 お腹に炎袋を持っているので
 抱きしめるととても暖かい。周り
 が見えなくなるため暗闇は苦手。』

「炎タイプのアチャモか……タイプ相性に有利不利はないね」
お互いのポケモンがバトルフィールドに立つ。準備は整った。
「それじゃ行くよ! アチャモ、火の粉!」
アチャモが嘴を開き、口から無数の火の粉を放つ。
「リオル、躱して!」
リオルは素早く横に移動し、まずはアチャモの火の粉を躱す。
「こっちも攻撃だ! リオル、発勁!」
リオルが右手の青いオーラを強め、アチャモへと向かっていく。
「アチャモ、つつく攻撃!」
リオルが突き出す右手に、アチャモは嘴で応戦する。
硬い嘴を叩きつけて、逆にリオルを押し返した。
「今だよ、火の粉!」
体勢が崩れたリオルに、アチャモの放つ無数の火の粉が襲いかかる。
回避が間に合わずに、リオルは火の粉を受けてしまう。
「発勁は格闘タイプの技だよね。つつくは飛行タイプの技だから、相性が悪いんだよ!」
そう言ってサヤナは得意げな笑みを浮かべる
「なるほど……リオル、大丈夫?」
火の粉を受けてよろめいたリオルだが、体勢を整えて構え直す。
「アチャモ、もう一度火の粉!」
「リオル、電光石火!」
再びアチャモが無数の火の粉を吹き出そうとするが、リオルの動きがそれよりも早かった。
目にも止まらぬスピードで突っ込み、アチャモにぶつかって突き飛ばした。
「電光石火は先制技なんだ。相手よりも早く技を出せるんだよ」
今度はハルが優位に立つ番。自慢げにそう言って、
「リオル、発勁だ!」
突き飛ばされて転んだアチャモを追って、波導を強めた右手を突き出す。
「わわっ、アチャモ、立って! つつく!」
何とかアチャモは起き上がり、嘴を突き出して迎え撃つ。
アチャモの技の勢いが先程より弱かったため、今度は相打ちだ。
「火の粉!」
しかしその次の動きはアチャモの方が早かった。
アチャモが息を吸い込んで無数の火の粉を吹き出し、リオルを押し戻す。
「くっ……リオル、電光石火!」
「そうはいかないよ! アチャモ、つつく!」
火の粉を耐え切って、リオルが飛び出す。
目にも留まらぬスピードで、一気にアチャモとの距離を詰める。
しかし火の粉を受けてからのタイムラグによって、アチャモの迎撃が間に合ってしまう。
突撃するリオルだが、逆にアチャモの嘴を叩きつけられて、吹き飛ばされてしまった。
「リオル!」
吹き飛ばされたリオルは、そのまま目を回して倒れてしまった。



「やったー! 初めてのバトル、大勝利!」
サヤナがアチャモと共に辺りを駆け回っている一方、
「……負けちゃった」
ハルは倒れてしまったリオルを抱き寄せると、そう呟き、へたりと座り込む。
「ごめんねリオル。もっと上手く君の力を引き出すことが出来てたら……」
ハルがリオルの頭を撫でると、目を覚ましたリオルは、気にするな、とでも言うかのように首を横に振る。
「ほら、サヤナ、落ち着きなさい。ハル君も元気を出して。二人とも、新人トレーナーにしてはなかなかいいバトルだったぞ」
ミツイが手を叩き、二人を注目させる。
「勝ち負けも勿論大事だが、バトルで一番大事なことは勝敗じゃない。そのバトルから何を学ぶか、そして、次にそれをどう生かすかだ。そういう意味では、負けから得るものの方が多い。だからハル君、負けたからって気を落としすぎないように。そしてサヤナ、勝って調子に乗りすぎないように。勝って兜の緒を締めよ、だ」
優しい笑みを浮かべながら、ミツイは二人に向けてそう言った。
「さて、それじゃあ一旦研究所に戻ろう。二人のポケモンを元気にしてあげないとね」



リオルとアチャモを回復させ、ミツイは二匹をそれぞれの持ち主へ渡す。
「さて、これで二人は晴れてポケモントレーナー。これからは自分のやりたいことをやるといいよ。マデル地方を巡ってポケモンと一緒に思い出作りをするもよし、ポケモンとの絆を深め合うもよし、自分が思う道を進んでいくといい……と言われても、ピンとこないかもしれないね」
ハルとサヤナが思っていたことを、ミツイは正確に突いてくる。
「だから私からアドバイスだ。二人ともポケモンジムは知っているね? ジムを回るといい」
ポケモンジムとは、トレーナーが目指すポケモントレーナーの最高峰、ポケモンリーグに至るまでの通過点。全ての町では無いが、各町に一つジムがあり、そのジムを取り仕切るジムリーダーという存在がいる。そのジムリーダーに勝利することでジムバッジが貰え、これを八個集めることでポケモンリーグに出場することができる。
「一口にトレーナーと言ってもいろいろな人がいる。だからまずは、スタンダードにバトルの腕を磨いていくといい。そのうちいずれ、自分のやりたいことが見えてくる」
「はい、分かりました」
「分かったよ! パパ、ありがとう!」
ハルはまだマデル地方のことすら何も知らないし、サヤナもポケモントレーナーについてはよく理解していない。だから、旅の中でそれを学ぶところから始める必要がある。そのために、やはりポケモンと共に戦い、腕を磨いていくことが大事なのだろう。
「とりあえず、ここから一番近い街はシュンインシティだね。歩いていくとそれなりに掛かるけど、そこで新しいポケモンを捕まえたり、ポケモンを鍛えていくといいよ」
それじゃあ、とミツイは改めて二人を交互に見て、

「二人とも、頑張れよ」

最後の一言を告げ、新人トレーナーの二人を送り出す。
「よし! それじゃハル! 早速シュンインシティに行くよ!」
「えっ!? うわっ、サヤナ、ちょっと待ってよ!」
サヤナがハルの手を引いて走り出し、慌ててハルも後に続く。


ハルとサヤナ、二人の新人トレーナーが、今、新たに旅立った。