二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第27話 Mega Evolution ( No.71 )
日時: 2016/11/17 10:03
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「貴方たちのような普通のトレーナーでは我々に勝てないのは当然なのです。なぜなら」
「我々にはご加護があるからです。教皇様が、『V』様が、我々を守ってくださっている」
修道服の二人組、ミョルとグングに、少しずつハルとサヤナが追い詰められていく。
だが、その時。

「あら。それじゃあ、普通のトレーナーじゃなければいいのね?」

突如響いた、女性の声。
次の瞬間、落雷と共にニダンギルとランプラーが吹き飛ばされた。
「っ。この落雷は……」
「ええ。あの者が来てしまいましたね」
ミョルとグングが忌々しそうに呟き、少し後ずさりする。
「久し振りね、ハル君!」
ハルとサヤナの前に立つ、一人と一匹。
その正体は、
「アリスさん!」
カザカリ山道で出会った、ライボルトを使うトレーナー。アリスだ。山道では作業着のようなズボンだったが、今は白いスカートだ。
そして従えているポケモンは、勿論ライボルト。先程の落雷を放ったのもこのライボルトだろう。
「他の信者は私に脅かされるとすぐに逃げていくのに、貴方たち二人だけは懲りないわね。ディントス教はいつから通りかかったトレーナーを襲う邪教になったのかしら?」
「邪教……!? なんですって!」
「何たる侮辱! 我らがディントス様を邪なる者と申すのか!」
「そうよ。文句があるなら、私を倒してからにしてちょうだい」
明確に憤怒の表情へと変わっていくミョルとグング。
対して、アリスは相変わらず余裕を浮かべたままだ。
「いくらジムリーダーの貴女といえど、今回ばかりは許せません! ニダンギル、起きなさい!」
「ディントス様への侮辱、万死に値する! ランプラー、行け!」
怒りの雄叫びをあげる司教二人組。しかし、
「えっ……ジムリーダー!?」
ハルは別のところに気を取られていた。
「そうだよ。もしかしてハル、知らなかったの?」
サヤナは知っていたらしい。しかも、
「驚くのはまだ早いよ。アリスさんの凄いところは、ここからなんだから!」
アリスにはまだ何かあるらしい。とにかく、ハルとサヤナはアリスと司教二人の戦いを見守る。
「仕方ないわね。だったら私たちも、ちょっとだけ本気を出しちゃおうかしら」
アリスが不敵な笑みを浮かべ、ブレスレットを付けた右腕を天に掲げる。
刹那。
ブレスレットに填め込まれた宝石が、眩い光を放つ。

「絆の煌めき、電光の如く! ライボルト、メガシンカ!」

ライボルトの全身の体毛が逆立ち、首元に隠れていた宝石——メガストーンが露わになる。
アリスのブレスレットの宝石とライボルトの首元の宝石が呼応し、光が一つに繋がる。
七色に輝く光が、ライボルトの姿を変化させていく。
体毛が、鬣が、稲妻のように鋭く逆立つ。
同時に、その体には先程までと比べ物にならないほどの膨大な電気を纏っている。
「メガシンカ——メガライボルト!」
アリスが叫び、ライボルトが雷の如く天を貫く咆哮を放つ。
進化を超えた超進化、メガシンカだ。
ハルも聞いたことはあったが、まさか、それをこの目で見られる日が来ようとは。
「……何の! ランプラー、火炎放射!」
「恐れることはない! ニダンギル、イビルスラッシュ!」
ランプラーが膨大な灼熱の炎を吹き出し、ニダンギルが剣を構えて突撃していく。
だが、
「ライボルト、サンダーブラスト!」
ライボルトが咆哮と同時に強烈な電撃の衝撃波を周り全体へと撃ち出す。
ニダンギルの斬撃を打ち破り、ランプラーの炎を貫き、二匹のゴーストポケモンを吹き飛ばした。
「な……つ、強い……」
「これが、メガシンカの力……」
「仕方ありませんね……グング」
「分かっています、ミョル。一時退却しましょう」
ミョルとグングは急いでそれぞれのポケモンを戻し、逃げるようにその場を去っていった。
「……ったく、逃げ足の速いこと。あの二人、そろそろ本気で手を打たないといけないわね」
はぁ、とアリスがそう呟くと、ライボルトが再び光に包まれ、元の姿に戻る。
「ライボルト、お疲れ様。戻っていいわよ」ライボルトをボールに戻し、アリスはハルとサヤナの方に振り返る。
「……さてっと、ハル君久し振りね。改めて自己紹介するわ。私はサオヒメシティジムリーダー、アリス。まぁ別に隠してたわけじゃないんだけどね……ジムリーダーって名乗ると、警戒してバトルしてくれないんじゃないかと思ってね」
「あぁ……そういうことですか」
「そして、サヤナちゃんはハル君のお友達だったのね。特訓は進んでるかしら?」
「うーん……特訓中だけど、まだアリスさんには及ばないかなぁ……」
珍しくサヤナが自信のない発言をする。
「そんなことないわよ。実際私に勝つまであと一歩だったじゃない。順調に特訓を重ねていけばもっと強くなれるわよ」
うふふ、とアリスは柔和な笑みを浮かべる。
「あの、アリスさん」
ふとそこでハルが口を開く。
「結局、さっきの二人組は何だったんですか? ディントス教って名乗ってましたけど……」
「ああ、あいつらね……」
途端に、アリスの表情が険しくなる。
「教祖は教皇ディントス、その名前をそのまま取ってディントス教。最近創始された宗教よ。元々この街には使われていない教会があってね、そこをディントスが買い取ったの。初めの方は大人しかったんだけどね……」
苦い顔のままアリスは言葉を続け、
「最近『V』とか呼ばれる信仰対象ができたみたいで、この街を拠点に積極的に布教活動を始めたのよ。何でも信仰の証にポケモンをその『V』なる者に捧げて救いを受けるんですって。ぶっちゃけ胡散臭さしかないんだけど、何故か少しずつ信者が増えてる。迷惑だって報告も多数受けてるから私が圧力をかけて布教を抑えてるんだけど、さっきの司教だけは懲りずに活動を続けてる。私には遠く及ばないけど妙に強いしね」
はぁ、とアリスは息を吐き、
「さて、それじゃあハル君、ジムで待ってるわね。特訓を積んでからでも、今すぐでも、いつでも相手をするわ」
じゃあね、とアリスは手を振り、街中に去っていってしまう。
「……何かアリスさん、大変そうだね」
「これだけ大きな街だと、問題も多いのかなぁ」
とりあえず、再会したハルとサヤナはポケモンセンターへと向かう。



ポケモンを回復させたあと、ハルとサヤナは地下の訓練所に来ていた。
「ハル。久々に会ったんだし、特訓がてらバトルしない?」
「うん、いいよ。僕もジム戦に向けて調整をしたかったところだし」
サヤナのバトルの申し出を、ハルは快く承諾する。
「よし、決まり! じゃあ三対三のバトルね! 私でもアリスさんには勝てなかったから、私に勝てないと、サオヒメジムは攻略できないよ!」
「望むところだよ。ハツヒタウンでの最初のバトルのリベンジもしたいしね」
バトルフィールドに立ち、二人はボールを取り出す。