二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第36話 強奪 ( No.81 )
日時: 2016/12/07 13:14
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: ハルに与えられし、メガシンカの力——

「メガシンカを……継承……?」
突如アリスから告げられた、継承という言葉。
「そうよ。私の先祖は古くからメガシンカの使い手の家系なの。メガシンカの伝わる街には、継承者って言われる人たちがいてね。その継承者たちは、大元を辿れば皆私のご先祖様の子孫なのよ。例えば、カロス地方ってところにもジムリーダーをやってる継承者がいるわ」
さらにアリスは言葉を続け、
「継承者の使命は、優秀なトレーナー——それもポケモンと強い絆で結ばれたトレーナーを見極め、メガシンカの力を継承すること。今のバトルで確信したわ。君とルカリオには、その資格がある」
「……僕が、ですか……?」
「そうよ。さっきも言ったけど、あのルカリオの力は君との絆があってこその力。メガシンカにはね、強い絆の力が必要なの。だから普通のトレーナーには扱えない。だけど、君くらいの力があれば、きっとメガシンカを使えるはず」
「……」
ハルにはまだアリスの言うことが信じられない。正確には、自分がそんなトレーナーであるということが。
「とにかく、私と一緒に、街の外れの塔——エボルヴタワーに来て。そこで私の父さんが待ってるわ」
「……はい」
アリスに連れられ、とりあえずハルは塔へと向かう。



街外れの塔——エボルヴタワー。
外観は物寂しい寂れた塔だが、その中は石造の構成をそのままにきちんと整備されていた。
「父さん! メガシンカの継承者となるトレーナーを、連れてきたよ」
「お、お邪魔します……」
アリスとハルが塔の中に入ると、白衣を着た大柄の男性がゆっくりと振り返る。
「よく来たね。名前はアリスから聞いているよ、ハル君だったね。僕の名前はリデル、アリスの父親で、この塔の管理者だ。メガシンカについての研究も行っているよ」
リデルと名乗った男性は、にこやかに笑って自己紹介する。
「さて。アリスの話によると、君とルカリオが絆の力を扱えると聞いた。アリスは人を見る目は一流だから間違いはないと思うが、僕も興味がある。君ほどの若いトレーナーに継承するのは、私の知る限り初めてだからね。一度、君のルカリオを見せてくれたまえ」
「はい。ルカリオ、出ておいで」
リデルに促され、ハルはルカリオを出す。
「……ほう。まだまだ伸びしろのあるポケモンだね。そして、君のことをよく信頼している。そんな目をしているよ。そうだろう、ルカリオ?」
リデルがそう尋ねると、ルカリオはゆっくりと頷く。
「よろしい。この子たちなら、メガシンカの力を扱えるだろう。アリス、キーストーンを」
「はいよ。ちょっと待ってね……」
アリスは部屋の隅から小さな箱を持ち出し、その箱を開ける。
その中には、アリスの腕のブレスレットに填められたものと同じ宝玉が入っていた。
「これが……メガシンカの力を使う石」
「そう、キーストーンよ。そして」
アリスがリデルの方を振り向き、リデルはもう一つの箱を取り出し、開ける。
「これはメガストーン、ルカリオナイト。ルカリオのメガシンカに必要なものだ。僕はメガストーンマニアでね、使いもしないメガストーンをいくつも集めている。一つくらい譲っても何ということもない、寧ろそのために集めているくらいだしね」
「さあ、受け取って。そして、ここでメガシンカを試してみて。ちゃんとメガシンカ出来れば、その時はハル君、君にメガシンカを正式に継承するよ」
「……はい」
覚悟を決め、ゆっくりとハルはキーストーンに手を伸ばす。
だが、その時。

ズドォォォォン!! と。
轟音が響き、塔の外壁に大穴が開けられた。

「っ……!」
「何者だ!」
ハルとアリスが振動によろめく中、リデルはメガストーンの箱を閉じて素早く身構える。
対して、
「これはこれは継承者親子。お久しぶりです」
穴の空いた塔の淵に立つのは、教皇が着るような黄金の祭服に身を包み、十字架のような杖を持った老人の男性。
「あんたは……!」
「ディントス教の教皇が、ここに何の用かな」
アリスとリデルが、素早くボールを取り出す。
「教皇……ってことは、まさか」
「察しがいい少年だ。我が名はディントス。世界に救いをもたらすために、メガシンカの力を、メガストーンを戴きに参った」
その男はディントスと名乗り、指を鳴らす。
するとその左右に見覚えのある男女が姿を現す。ディントス教司教、ミョルとグングだ。
「父さん、ハル君を守って! こいつらは私が追い出す! ライボルト、出てきなさい!」
メガストーンの箱を持ったまま、アリスが一歩踏み出し、ライボルトを繰り出す。
「やはりただでは得られぬか。ならばこちらも! 神道を示せ、ギルガルド!」
対してディントスが繰り出すのは、盾を構えた剣そのものの姿をしたポケモン。

『information
 ギルガルド 王剣ポケモン
 王の素質を持つ人間を見抜く力を
 持つ。強大な霊力で人やポケモンの
 心を操り思いのままに従わせる。』

「一撃で仕留める! ライボルト、メガシンカよ!」
アリスのブレスレットのキーストーンの光に、ライボルトのメガストーンが反応する。
光が一つに繋がり、ライボルトの姿を変えていく。
「覚悟しなさい! ライボルト、火炎放射!」
メガシンカしたライボルトが、灼熱の業火を吹き出す。
対して、
「ギルガルド、キングシールド!」
ギルガルドが神々しい光を放つ純白の結界を張る。
灼熱の炎は、結界に触れた瞬間に消滅してしまう。
「聖なる剣!」
刹那、ギルガルドが構えた盾を手に取り、刀身の体を現す。
一瞬でライボルトとの距離を詰め、体を一振りし、ライボルトを叩き斬る。
「っ! ライボルト、サンダーブラスト!」
「甘いな。ギルガルド、キングシールド!」
ライボルトが纏った電撃を衝撃波と共に解き放つが、再びギルガルドは盾を構え、純白の結界を張る。
ライボルト最大の大技、電撃の衝撃波でさえも、結界に触れた瞬間に消滅してしまう。
「隙あり! ライボルト、火炎——」
結界が消えた瞬間を狙い、次なる攻撃を指示しようとするアリス。
しかし。

「ランプラー、サイコキネシス!」

ディントスの影に隠れていた司教、グングがいつの間にかランプラーを出していた。
ランプラーが念力を発生させる。その狙いはライボルトではなく、アリスの持つ小さな箱。
つまり、キーストーン。
「しまっ……! ライボルト、箱を!」
咄嗟にライボルトが大きく跳躍し、箱を取り戻そうと口を開くが、
「させません! ニダンギル、イビルスラッシュ!」
ミョルのニダンギルが飛び出し、瞬時に連続の斬撃を放ち、ライボルトを叩き落とす。
ランプラーが箱を引き寄せ、グングがキーストーンを手中に収めた。
「キーストーンは戴いた。それでは、さらばだ」
そう言うが早いか、ディントスはギルガルドに飛び乗り、そのまま塔から飛び去っていった。