二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第40話 『V』 ( No.85 )
- 日時: 2016/12/11 19:37
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- 参照: ディントスが信仰する謎『V』の正体は——?
「さて、まずは一匹。残るはジムリーダー一人だけ、私の勝利も時間の問題! シャンデラ、シャドーボール!」
ギルガルドが後退し、代わりにシャンデラが進み出て、漆黒の影の弾を撃ち出す。
「ジムリーダーを甘く見てもらっちゃ困るわよ! ライボルト、躱して火炎放射!」
素早い動きでライボルトは影の弾を躱すと、ギルガルドに向けて灼熱の業火を吹き出す。
「ギルガルド、キングシールド!」
しかし、やはり単調な攻撃ではギルガルドには届かない。
ギルガルドが盾を構えて神々しい純白の結界を張り、炎を消滅させてしまう。
「っ、やっぱりきつい……」
そもそも、二対一という状況がアリスにとって根本的に苦しい。
ギルガルドとシャンデラはどちらも高い火力を売りとするポケモン。流石のメガライボルトでも、両者の攻撃を同時に打ち破ることは出来ない。
かといって片方を狙うと、もう片方の狙いの的となってしまう。さらにギルガルドはキングシールドを持つため、そもそも攻撃を当てるのが難しい。
「もう流石になす術もないだろう。二対一になった時点で、勝負は決まったようなもの。そろそろ決めてしまおうか」
ディントスの口元が吊り上がり、ギルガルドが剣を抜く。
「ギルガルド、聖なる剣! シャンデラ、火炎放射!」
ギルガルドが刀身を黄金に輝かせ、切っ先を向けてライボルトへ飛び出す。
同時に、シャンデラの頭部から灼熱の紫炎が撃ち出される。
だが。
(……?)
そこでディントスは違和感を感じた。
向かいに立つアリスとハルの表情に変化がない。焦りのようなものが全く見えない。
さらに、吹き飛ばしたはずのワルビルの姿が、どこにもない。
そして。
ディントスがそれに気付いた時には、既に遅い。
「ワルビル! 穴を掘る!」
今度こそ。
ギルガルドの真下からワルビルが勢いよく飛び出し、思い切り拳を叩きつけ、ギルガルドを殴り飛ばした。
「な……にぃ……!?」
驚愕を露わにするディントス。
この穴を掘るは、前もってアリスと共に考えていた作戦だ。
大きく吹き飛ばされてディントスがワルビルへの意識を逸らした時に、密かに地面に潜って地中から強襲を仕掛ける。まさに作戦通りだ。
「貴方はさっき自分で言っていた。 盾を構えていない——つまり今のギルガルドは、耐久力が低いって! だったらワルビル、噛み砕く!」
大顎を開き、ワルビルはギルガルドの刀身へと牙を突き立て、食い込ませる。
そのまま大きく首を振ってギルガルドを投げ飛ばし、硬い床へと思い切り叩きつけた。
「なっ……! ギルガルド!」
防御力の極めて低い今のギルガルドが、効果抜群の二連撃を耐えられるはずもない。
目を回し、盾は手から離れてぐったりと倒れ、戦闘不能になっていた。
「……我がギルガルドが、こうもあっさり……! 貴様……!」
先ほどまで余裕を浮かべていたディントスの表情に、怒りが浮かぶ。
ハルの元へと戻ってきたワルビルだが、流石にダメージも大きいようで、少しふらつく。
「ハル君、大手柄よ。だけどワルビルも疲れてるし、ボールに戻してあげて。こうなっちゃえば後は私一人で充分だし、万が一ハル君に二匹倒されると私の出る幕がなくなっちゃうしね。私にもいいとこ持たせてよ」
「分かりました。それじゃ、後はお願いします! ワルビル、よくやった! 休んでて!」
ワルビルを労ってボールに戻し、ハルは二人の戦いを見守る。
「随分と甘く見られたものだ! ギルガルドの火力を上回る我がシャンデラを甘く見てもらっては困るのだよ!」
「あんたこそ、今の状況分かってるのかしら」
激昂するディントスに対し、薄ら笑いを浮かべるアリス。立場は完全に逆転した。
「あんたは最大の盾を失った。ギルガルドと違って火力しかないシャンデラなら、私のライボルトで楽に突破できるのよ。生憎、私のライボルトも火力には自信があってね」
刹那。
両者が同時に技を繰り出す。
「シャンデラ、火炎放射!」
「ライボルト、サンダーブラスト!」
シャンデラが頭部から灼熱の紫炎を吹き出し、ライボルトは電撃を乗せた衝撃波を解き放つ。
だが先ほどはギルガルドやワルビルにも向かっていた衝撃波が、今度は全てシャンデラへと収束して放たれる。
どちらが上かなど競うまでもない。電撃の衝撃波が炎を打ち破り、そのままシャンデラをも捉える。
「もう一度!」
電撃を受けたシャンデラに、再び電撃の衝撃波が迫り来る。
躱すことも迎え撃つことも出来ず、シャンデラは再び電撃の衝撃波の直撃を受けた。
「シャンデラ……!」
ドサリ、とシャンデラが地面に落ちる。
目を回しているその姿は、完全に戦闘不能だった。
そして。
スグリと司教ミョルのバトルは、完全に一方的だった。
フローゼルに圧倒され、ミョルのニダンギルは瞬く間に戦闘不能まで追いやられてしまっていた。
「そもそもあんたら、マルチバトル専門だよね。そんな人間がシングルバトル得意のオレと戦ったら、そりゃあ負けるっての」
フローゼルの頭を撫で、スグリは余裕の表情を浮かべながら、敗北したミョルとグングにそう言い放った。
いずれにせよ、トップの三人が敗北した時点で、ディントス教の敗北はほぼ決定的だった。
「さあ、キーストーンを返しなさい。あんたはもう逃げられないわよ。この状況を見れば、それくらい分かるでしょう」
アリスが一歩踏み出し、ディントスへと詰め寄る。
「……そうはいかん。間も無く我らが主、『V』様が御出でになる。我らは敗北したが、ディントス教はまだ敗北してはいない! いくら貴様らが強くとも、『V』様には勝つことなどできぬわ! キーストーンを返して欲しければ、それまでに力尽くで奪い取ってみるんだな!」
ここまで来て、なおも抵抗するディントス。しかし、
「へえ。それじゃ、遠慮なく」
スグリがモンスターボールからポケモンを繰り出すと同時に、黒い影が飛び出し、ディントスを突き倒す。
ディントスの懐から何かを抜き取り、スグリの元へと戻って来た。
「ナイス、ニューラ。アリスさん、これがキーストーン?」
『information
ニューラ 鉤爪ポケモン
小柄だがずる賢く獰猛な性格。
鳥ポケモンの巣を狙って強襲し
親を追い払って卵を食べてしまう。』
すらりとした黒い猫のようなポケモン、ニューラの爪の先には、光るキーストーンがあった。
「なっ……貴様……!」
「オレのニューラは出癖が悪くてね。つってもあんたが力尽くで取ってみろって言ったんだし、文句ないよね? はいアリスさん、キーストーンは無事に取り返しましたよ」
「ありがとう、スグリ君。さてディントス、今度こそこれで終わりね。今の私にはあんたを許すほど広い心は持ってない。ここで縄に——」
アリスの言葉は、それ以上聞こえなかった。
ガラスの砕ける音と共に大聖堂のステンドグラスの窓が砕け散り、人間が姿を現したからだ。
「……!」
「『V』様!」
アリスたちが臨戦の体勢に入り、ディントスはすがるような声を上げる。
現れたのは純白の修道服を纏った女性だった。ディントスと比べて派手さが無い分、その姿は寧ろディントスより神々しい。
その身体にはサイコパワーを纏っているようで、宙に浮き、さらにその背後には鳥のシルエットのような姿の、説明のつかない異形のポケモンを連れていた。
『information
シンボラー 鳥もどきポケモン
古代都市の守り神だったポケモン。
都市が朽ち果てた今もその記憶を
残し常に同じルートを飛んでいる。』
「何者! 名を名乗りなさい!」
ライボルトを繰り出し、アリスが鋭い言葉をぶつける。
対して、
「私こそが『V』。ディントスにディントス教を創始させ、活動をさせていた者。そしてもちろん、私の本名は『V』などという名前では無い」
ゆっくりと、そして滑らかな声で、その女は口を開く。
「私の名はヴィネー、ゴエティア七魔卿の一人。魔神卿・ヴィネーです」