二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第41話 Vine ( No.86 )
- 日時: 2016/12/12 09:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: qPVFeoJe)
- 参照: 謎の信仰対象『V』の正体は、新たなる魔神卿——
「魔神卿……だって?」
真っ先に反応したのは、ハルだった。
つまり、
「ディントス教は、ゴエティアの下部組織だったってことなの……!?」
流石に驚きを隠せないアリスたち。
そしてそんなことは気にも留めず、ヴィネーは宙に浮いたまま、ディントスを見下ろす。
「さて、ディントス。どうやらキーストーンを奪還されてしまったようですね。貴方には期待していたのですが、残念です」
「申し訳ありません、ヴィネー様! しかし、キーストーンはまだこやつらが握っております! 貴方様が手を下せば、まだ取り戻せるはず!」
「悲しいことですが、これだけの四人を相手取って勝つだけの力は今の私にはない。今の私には守護は出来ても、攻撃はできないのです」
感情の読めない瞳で、ヴィネーは淡々とそう告げる。
「さて、どういたしましょう。キーストーンの回収に来たのですが、生憎キーストーンは取り返されてしまいました。貴方たちを連れて帰ろうにも、私は今回単身でここに来ている。全員を引き連れて帰るだけの力はない。私のシンボラーも、私を含めて三人を持ち上げるのが限界です。つまり、今私が助けられるのは二人」
うぅむ、とヴィネーは少し黙り込むが、やがて小さく笑みを浮かべる。
「シンボラー、サイコキネシスです」
救う人間を決めたのか、ヴィネーの背後に浮かぶ異形のポケモン、シンボラーが強い念力を発し、ヴィネーが選んだ二者に念力を掛ける。
「行きますよ、ミョル、グング。最早この場所に用はありません」
司教の二人、ミョルとグングが、念力を受け、宙に浮かび上がった。
「えっ……?」
驚くアリスやハルたちだが、一番驚いていたのは紛れもなく、ディントスだった。
「……!? 『V』——ヴィネー様! 私は!? この私はどうなるというのですか!?」
「ああディントス。貴方はここまでよくやってくれました。貴方が私へ差し出してくれたポケモンたちは、ゴエティアで有効活用させていただいています」
ですが、とヴィネーは続け、
「貴方には教祖という地位を与え、元々私の部下であるミョルとグングという優秀な配下を貸し、ギルガルドとシャンデラまでも与えた。ですが貴方はその力の上に胡座をかいて好き勝手に振る舞い、挙句に私の一番の目的であるキーストーンの確保に失敗した」
「確かに今回はしくじりましたが、しかし! もう一度チャンスをいただければ、今度こそキーストーンを見つけて参ります! 私はヴィネー様の一番の信仰者!」
「残念ですが」
そんなディントスに対し、ヴィネーは冷淡に結論だけを突き付ける。
「これは交渉や相談ではない。決定事項です。貴方も何度も口にしていたではありませんか。私は資格のある者にしか救いを与えない。貴方には資格がなかった。それだけのことです」
見下すように、冷酷に、ヴィネーはそう告げて不気味に笑う。
「しかし……それでは! 私はこの後、どうすれば!?」
「さあ? 貴方はもう私の配下ではありませんし、私に歯向かおうと何をしようとも自由です。お好きなようにしてはいかがでしょうか」
そう言われても、ギルガルドとシャンデラは既に戦う力は残っていない。
ようやく現実を受け入れたのか、ディントスは小さくため息をつき、その場に座り込んだ。
「貴方がまだ適切な判断が出来る人間でよかったです。もし私に攻撃しようとしていたら、今頃貴方の首が飛んでいるところでしたよ。私のキリキザンによってね」
薄ら笑いを浮かべるヴィネーの手には、モンスターボールが隠し持たれていた。
「……待ちなさい! ゴエティアの魔神卿だっていうなら、なおさら逃がさないわよ!」
飛び去ろうとするヴィネーたち三人へ、アリスが叫ぶ。
「おやおやジムリーダーさん。残念ですが、今回私たちは貴女達と戦うことはできないのですよ。貴女はともかく、後ろの子供たちを傷つけるとパイモンちゃんに怒られてしまいますからね。ですので、今回はここで退場させていただきます。シンボラー、サイドチェンジ」
ヴィネーがシンボラーに指示を出した次の瞬間。
ヴィネーとシンボラー、ミョル、グングの姿が消え、気配も消え去った。
その後、ディントスや残された信者たちは、一人残らず警察に身柄を拘束された。
気力を抜かれてしまったようで、ディントスは抵抗一つせずに大人しく連行されていった。
「全てを分かってしまうと、ディントスも可哀想な男ね。好き勝手に利用されて、最後は見捨てられるなんて」
ハルたちを引き連れてジムに戻ったアリスが、どこかやるせなさそうに呟く。
「警察はディントスから話を聞き出して、ゴエティアの捜査に利用するみたい。話によると憑き物が落ちたみたいに大人しく取り調べに応じてるみたいよ。まるで人が変わったみたいだったって」
おそらく、今のその姿こそがディントスの本当の姿なのだろう。
その身に余る力をヴィネーから与えられ、力に溺れておかしくなっていたのかもしれない。
「ヴィネーに操られてたみたいなものだし、すぐに釈放されるかもね。父さんとも仲直りして、今度こそ真面目に世のために活動してほしいな」
さて、とアリスは顔を上げ、
「とにかく、キーストーンも無事取り返した。今度こそ、ハル君にメガシンカを継承するわよ!」
すぐに笑顔を取り戻し、ハルの方を向く。
が、
「……えっ!? ハル? 継承って、どういうこと!?」
ハルが返事を返すより先にサヤナに横槍を入れられてしまう。
「え? あ、えっと……」
「ハル君とルカリオの絆の力をより高めるために、ハル君にメガシンカの力を継承するのよ。サヤナちゃんにスグリ君も、よかったら見に来る?」
「行く! ハル、すごいじゃん! メガシンカを使えるようになるなんて!」
「オレも見に行きますよ。にしても、ハル君がメガシンカを? 知らない間に追い抜かれちゃったかな?」
「いやいや、そんなことないよ。スグリ君にはまだまだ勝てないし……」
そんな会話をしながら、アリスに連れられ、ハルたちは再びリデルの待つメガシンカの塔、エボルヴタワーへと向かう。