二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第43話 ハダレタウン ( No.92 )
- 日時: 2016/12/16 12:22
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: cYeSCNTQ)
次のジムがある街、カタカゲシティへ向かう前に、ハルはその途中にある街、ハダレタウンを訪れていた。
ハダレタウンはタウンの名を冠する街ではあるが、シティと呼んでも差し支えないほどに非常にその規模が大きな街。
街の周辺には古代の遺跡やその跡が残る、古代と現代が調和したような街だ。
そしてその街の中央には、古風な外見を模った巨大なバトルスタジアムが造設されている。
ちなみに、サオヒメシティで偶然出会った、サヤナとスグリも一緒にいる。
「ねえハル、次の大会って、かなりおっきな規模の大会なんでしょ?」
「アリスさんの話によると、そうらしいね」
サヤナに返事をしながら、ハルはターミナルで情報を検索する。
どうやら、ジムバッジを持っている数によって参加できるレギュレーションが違うようだ。
「レギュレーションは三つか。バッジの数が一個から三個、四個から六個、そして七個から八個。私たちは真ん中の部門だから、相手はみんな同レベル、もしくは格上だね」
現在、ハルとサヤナはバッジ四つ、スグリはバッジ五つだ。
「それに今回は予選があるよ。その後にトーナメントがあるから、優勝するためには……予選を勝ち抜いた後、四連勝しないといけないのか」
単純計算だとそうなる。三戦目が準決勝、四戦目が決勝だ。
「関係ないね。オレはバッジ五つ、並大抵の相手に負ける気はしないし、ハル君はメガシンカが使える。サヤナちゃんだって、魔神卿の直接の部下とほぼ対等に渡り合える力は持ってるじゃん。いい下克上のチャンスっしょ」
モンスターボールを手の中で弄びながら、スグリが笑う。
「そうだね。びびってても仕方ないし、今の僕らの力がどこまで通用するか試すいい機会だ」
「よし、私も燃えてきたよ! 大会は明日からだから、今日中に登録を済ませておかないとね!」
気持ちを高めながら、ハルたち三人は出場登録のため、大会の会場へと向かう。
登録後、一旦そこで三人は別れ、ハルはポケモンセンターの地下にある交流所へと足を踏み入れた。
ポケモンの調整も兼ねて、誰かと一試合くらいしておこうと考えたのだ。
そして。
ハルと同じような考えを持つ人間は、他にもいた。
「ねえ。よかったらバトルしない?」
背後から聞いたことのない声を掛けられ、ハルは振り向く。
声の主は少年だった。決して背は高くないハルだが、少年はそんなハルよりもさらに背が低い。歳は同じくらいだろうか。
髪は黄緑色でぼさぼさ、白いTシャツに黒いハーフパンツだが、どうにもサイズが合っていないように見える。
「君は?」
「僕の名前はミオ。君と同じポケモントレーナーだよぅ」
その少年は抑揚のない口調で自分の名を名乗る。
「明日、大会があるでしょお? そのために一バトルくらいしておきたいんだぁ。君も大会に出るんでしょお?」
「え? うん、まあね。ミオ……だっけ、君も大会に?」
「そうだよぅ。だから、一対一のバトルってことでいいかなぁ?」
突然の申し出だったが、ハルとしても断る理由はない。
「いいよ。僕も大会に出るから、ちょうどいいかな」
「決まりだねぇ。それじゃ早速、始めるよぅ」
「そういえば、まだ名乗ってなかったね。僕の名前はハル、よろしく」
「ハル君だね、覚えたよぅ。じゃあ、僕のポケモンは……」
ハルの名前を復唱し、ミオはボールを取り出す。
それと同時に、ハルもボールを選んだ。
「出番だよぅ、カビゴン」
「頼んだよ、エーフィ!」
ハルのポケモンはエーフィ、そしてミオのポケモンは大きく太った怪獣のようなノーマルタイプのポケモン。
『information
カビゴン 居眠りポケモン
腐ったものやカビが生えたものでも
消化できる。空腹を知らせる腹の音は
ドラゴンポケモンの咆哮に匹敵する。』
ミオのポケモン、カビゴンがフィールドに立つと、その重量にフィールドが揺れる。
「随分と大きなポケモンだな……」
少なくとも、ハルが今まで見た中では一番大柄なポケモンだ。
ルカリオを出すのが正解だったかと思ったが、大会出場者相手にエースは隠しておきたかったため、ハルはエーフィを選出。
「始めるよぅ。カビゴン、のしかかり」
バトルが始まるやいなや、カビゴンはその巨体からは想像もつかないほどの機敏な動きで大きく跳躍し、エーフィの上空から飛び掛かる。
「まずっ……! エーフィ、躱して!」
咄嗟にエーフィは大きく飛び退き、何とかカビゴンの襲撃を躱す。
少しでも遅れたら、押し潰されてそのままやられていただろう。
「危ない危ない……エーフィ、反撃だ! サイコショット!」
エーフィの額の珠にサイコパワーが溜まっていき、念力の弾が放出される。
立ち上がった直後のカビゴンのその顔面に、念力の弾が直撃した。
「よし、エーフィ、スピードスター!」
さらにエーフィは二股の尻尾を振り、無数の星形弾を飛ばす。
しかし、
「カビゴン、毒々」
立て続けに攻撃を受けてもカビゴンは怯まず、すぐさま猛毒の液体を放つ。
「カビゴンは特防が高いんだぁ。タイプ相性を突かないと、特殊技じゃ倒すのは難しいよぅ」
得意げな笑みを浮かべるミオ。攻撃にも構わず、カビゴンはエーフィに毒液を浴びせる。
だが、
「エーフィに、変化技は効かないよ」
エーフィに触れた毒の液は、瞬時に跳ね返され、カビゴンに降り掛かる。
「僕のエーフィの特性はマジックミラー。エーフィに向けられた変化技は、全て使用者に跳ね返るんだ」
一枚上手に立つハル、しかし、
「なるほどねえ。だけど」
毒を食らったカビゴンだが、顔色一つ変えていない。
「僕のカビゴンの特性は免疫なんだぁ。特性によって、毒状態にならないんだよぅ」
ミオはそのさらに一枚上手をいく。
ただ、今のやり取りでどちらかが不利になったということはない。
「カビゴン、もう一度のしかかりだよ」
再び大きく跳躍したカビゴンが、上空からエーフィを狙って飛び掛かり、巨体で押し潰そうと迫る。
「エーフィ、もう一度躱してサイコショット!」
インパクトはかなりのものだが、一度見てしまえば怖くはない。エーフィは素早く距離を取ってカビゴンの襲撃を躱すと、額の珠にサイコパワーを溜め込む。
カビゴンが起き上がった瞬間に、跳躍してカビゴンの額を狙い、念力の弾を放つ。
だが。
「カビゴン、地割れだぁ!」
頭部に直撃する念弾を耐え、エーフィの着地点を見極め、カビゴンは拳を思い切り地面に叩きつける。
カビゴンが床に放った拳の一撃により、床が割れ、エーフィはそのまま割れ目の中へ落ちてしまう。
その直後、叩き割られた地面の底から爆発が起き、大量の土砂と共にエーフィが吹き飛ばされる。
「エーフィ!?」
宙を舞うエーフィは重力に従って床へと落ちる。
そのまま、たった一撃で戦闘不能にされてしまった。
「なっ……」
「もしかして知らなかったぁ? 地割れは当たれば相手を一撃で戦闘不能にする、一撃必殺技なんだよぉ。その分技範囲はかなり狭いから、今みたいに絶対に当てられるタイミングで狙わないと成功しないんだけどねぇ」
のんびりとしたままの様子のミオだが、その口調はどこか誇らしげだ。
「……一撃必殺技。そんな技があるなんてね。エーフィ、お疲れ様」
ハルはエーフィを労い、ボールへと戻す。
「ミオ、強いね。バッジはいくつ持ってるの?」
「うーんと、今は五つかなぁ」
五つ。つまり、
「じゃあ、大会で当たるかもしれないのか。僕はまだ四つだから」
ハルが出る大会のランクは、バッジ四個〜六個のトレーナーが出場するランクだ。
つまり、ミオとはまた戦う可能性があるということ。
「そうなのかぁ。それじゃあ、明日当たっても負けないよぅ」
「僕も次は負けないよ。大会でまた会おう」
「うん。スタジアムで戦うのを楽しみにしてるよぅ」
二人は握手を交わし、ミオは先に交流所を後にした。
(それにしてもあのカビゴン、強かったな。攻撃力はともかく、耐久力も高かった。当たった時のために、ちゃんと対策を考えておかないと)
新たなライバル出現を受けて気を引き締めるハル。
ハダレ大会は、いよいよ明日開催される。