二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【ポケモン】闇の神と異界のトレーナー ( No.2 )
- 日時: 2016/10/29 17:31
- 名前: シエル ◆UaO7kZlnMA (ID: kKmRLwWa)
- 参照: 序章「始まりの風は彼方より」
【ポケモン】
正式名称はポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界に生きる不思議な生き物たちのこと。陸に、空に、海に住み。姿形も様々である。
そして彼らポケモンは人間と力を合わせ、暮らしている。ポケモンを扱う人間をポケモントレーナーと呼ぶ。
——例えば、ウサギを追いかけ穴に落ちたら。タンスを抜けたら。トンネルを抜けたら。目が覚めたら。そこに異世界がある、と言うのはよくある話。だから、目が覚めたら全く知らない世界にいることは普通だ。
自室で寝ていたはずなのに、目の前に広がるのは見渡す限りの緑色。そして青い空に白い雲、よく晴れている。時折吹く風が草を揺らし、ざわざわと音を立てて通り過ぎる。
だだっ広い草原の中、パジャマ姿の少女は一人で佇んでいた。
「ここ、どこ?」
そんな疑問が少女の口から出る。
少女の名は北条 ことは。13歳の中学二年生である。
背中まである明るい茶色の髪はボサボサで、翡翠色の瞳は寝ぼけ眼だった。服装は青地に白い水玉模様が散るパジャマ。そして裸足。まるでこの草原で寝ていたかのような姿だった。
自室で寝ていたはずなのに知らない場所にいる。そのことにことはは、大いに驚き戸惑う。が、パニックになってはいけないと思いまずは辺りの様子を伺う。すると草原の至るところに、見たことがない生物がいた。黒い犬に似た生き物は走っているし、全身がギザギザしている白い生き物はジグザグに歩いている。そして何気なく空を見上げると、ようやくことはが知る生物がいた。茶色の身体に、白い眉毛が特徴の鳥。——ことはが幼い頃に遊んだゲーム『ポケットモンスター』で、見た生き物がいた。
「あ、あれはポニスズメだっけ? なんで」
ゲームで見た生物が空を我が物顔で飛び回る光景に、ことはは呆然としながらそういえばあのポケモンの名前は何だったかな、と半ば現実逃避のように考える。
あの鳥に見覚えはあるが、名前は出てこない。それもそのはず、ことはが『ポケットモンスター』で最後に遊んだのはかれこれ七年近く前だ。ポケモンの名前などほとんど忘れたし、最近のポケモンの名前は知らない。自信を持って言えるのは、アニメにおける主人公の相棒『ピカチュウ』くらいなものだ。
だが、ゲーム『ポケットモンスター』にでてくるはずの生き物がこうして目の前にいるのは紛れもない事実な訳で。夢かと思い、頬をつねったら痛かった。よく分からないが、ポケモンの世界に来てしまったらしい。それだけは間違いないなかった。
「ど、どうしよう……」
知らない場所でひとりぼっち。頼れる人間はいない。途端に不安に襲われることは。不安に押しつぶされ精神がどうにかなりそうだが、深呼吸して己を落ち着かせる。避難訓練の時、「冷静さを失った人から死ぬわよ」と笑う担任の声が不意に蘇ったからだ。パニックになってはならない、深呼吸を何回もしてようやくことはは冷静さを取り戻す。と言っても、次に何をするべきか思いつくはずもなく。虚しく時間だけが過ぎていく。名前も知らないポケモンたちが遠くから、空からことはを不思議そうに見て、去っていく。
そんな風景が何度か繰り返された時、突然人の叫び声が聞こえた。
「だ、誰かー!」
「え、な、何?」
ことはが声がした方に視線を向けると、壮年の男が一匹のポケモン——ジグザグした体毛が特徴的に追い回されていた。男は色々な方向に走り回るが、そのポケモンは唸り声を上げながらしつこく後を追っていた。ポケモンが怒りから男に襲いかかっているのが分かる。
どうしたものか、と追われる男をことはがのんきに眺めていると、男がことはの存在に気がついた。必死な形相で走りながら、懇願してくる。
「そこのキミ、助けてくれ! キミの近くに私の鞄があるだろう、そこにモンスターボールがあるから、ポケモンを出して戦うんだ! 頼む!」
「モンスターボール?」
男の言葉に従い、ことはは周囲に視線を巡らす。すると少し離れたところに茶色の革製の鞄が落ちていた。
足裏に草の感触を感じながら進み、ことはは鞄を開けた。幸いモンスターボールがどのような物か知っていたので、すぐに見つけることができた。掌に収まる程の球体。上半分は赤、下半分は白に塗り分けられている。中央には白いボタンがあり、アニメではこれで入れたポケモンを出していた記憶がうっすらとあった。鞄の中にはモンスターボールが一つ。ことははそれを手にした。
「えっと……」
ポケモンは、どういう理論かは知らないがこのモンスターボールに出し入れすることができる。巨大なものから小さなものまで。
中にいるポケモンがことはの存在を感じ取ったのか、手にしたモンスターボールがひとりでに揺れる。微かな記憶を頼りにことははモンスターボールの白いボタンを押した。すると、中から光が溢れ一匹のポケモンが現れた。
