二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【転生】緑雨の空に、花束を【人間未満の聖杯戦争】 ( No.1 )
- 日時: 2016/12/02 11:30
- 名前: ナル姫 (ID: xJkvVriN)
——地獄のような期間だった。
血反吐を吐くようにして、ようやく辿り着いた終わりであり始まりは、それはそれは輝いていたが、振り返ればやはり、地獄としか言いようがない。
上下格差が厳しい生活というのを、今まであまりしたことがなかったがゆえに最初は当然戸惑ったが、その程度慣れてしまえばどうということもないし、そもそも憧れであった警察官になれたという実感は凄い。
しかも交番勤めの巡査ではない。警察署、生活安全課少年係の刑事だ。やっとだ。ずっと憧れていた刑事になれたんだ——自然と、彼の顔に笑みが溢れてきた。
*
一日の勤務を終え、彼女はキリスト像を前に十字架を切った——もっとも、信仰心は正直なところそんなにない。
この生活にも慣れた。自分は何かと昔から、この修道服で過ごすことも何度かあったため、仕事としてこの服を着るのにもすぐに慣れた。
信者の前で大人しくしていれば一日はすぎる。一日の教会での勤務が終わればあとは自宅、修道服を脱げば気兼ねなく過ごせる。先に上がって良しとの言葉を兄から聞き、彼女は教会と繋がっている家の方へ上がった。
「終わったー」
「おっ、早かったな時雨。風呂湧いてるぜ」
「やった、一番風呂!」
「何ぃ!? 待て時雨! 一番風呂は我のものだ!」
「はぁぁ!? ギル兄昨日も一番風呂だったじゃん!」
洗濯物をしていた青髪の青年の言葉を聞き喜ぶ彼女だったが、突如リビングへ現れた次兄がそうはさせんとばかりに怒鳴る。ぎゃーぎゃーと言い争いをしていると、暫く聞いていなかった声が玄関の方から聞こえてきた。
「全く……順番くらいさっさと決めろ、風呂といい洗面所といい」
「……!!」
全員がハッとしてリビングと玄関をつなぐ廊下へ顔を向ける。呆れながらリビングに現れた青年は、久しぶり、と言うように三人に笑顔で手を振った。
「ディアルお帰りーー!!」
「おおお! 初総終了か! これで晴れて本物の警察であるな!」
「ただいま! あぁ、しかも交番勤務は免れたぞ」
「っはー、お前はやっぱ優秀だなぁ……すげぇぞ、ディアル!」
「騒がしいと思ったら……帰ってきたのか、ディアル。寮ぐらしお疲れだな」
「ただいまです、綺礼さん。晴れて冬木署勤務になりました」
「おめでとう。今日は衛宮切嗣の屋敷に邪魔する必要がありそうだ」
「その通りよな! 今すぐ贋作者に連絡せよ狗ぅ!!」
「狗言うな! わーったよ、文句言われると思うけどな……」
「そこはこう、強く押しで! ディアルが警察になったって言えば多分了承するから!」
「俺をダシに衛宮家に迷惑をかけようとするな!」
言いながら笑う彼らは、この日々を楽しんでいるようだ。
教会に住む騒がしい人々の、日常の物語。
今ここに、始まり始まり——。