二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 新たな始まり。(ポケモンサンムーン、二年半後の物語) ( No.3 )
日時: 2017/01/01 01:12
名前: だらく ◆nI0A1IA1oU (ID: 5obRN13V)

「うわー、凄い嵐だねー......ねー、じいちゃん 島の皆は無事かなあ」

 ゴーゴー...ッと窓を叩きつけるような、今にも硝子が割れそうな音が締め切った居間に響き渡る中、まいっちゃうなーと云うように苦笑ぎみで後頭部の後ろで両手を組んで、わりと近くにいるじいちゃんに話し掛けるようにちらりと見る10代前半の少年は黒人よりの肌に深緑の髪を上に縛って身軽そうな格好にじいちゃんが着ている羽織りよりは淡いが同じような黄色の羽織りを着ている

「..........」

 しかし、孫である少年が話し掛けても天井を見上げて険しい表情をしたまま、考えるように仁王立ちした状態で、腕を組むさまは威厳があり、小さな子供が泣いてしまうほどに怖い。普段は優しく尊敬しているじいちゃんなのだが、今日は少年から見てもちょっと怖いと思ってしまう

 そんな風に思わせる沈黙とじいちゃんの様子に一瞬口を閉じるが、そんなこと思っていたらじいちゃんの後を継げないと今度は近付いてじいちゃんにもう一度話し掛ける

「じいちゃん......この嵐って異常なんだよね......?」

 さっきよりも悠長な話し方じゃなく、真面目に聞いているのか苦笑や笑みはなく珍しく真剣さを帯びた表情でじいちゃんを見据える

 じいちゃんの返答次第で、すぐにでも島の様子を守り神であるポケモンと共に、俺の相棒なら嵐でも立ち向かえると自分の相棒が入っているモンスターボールを握りしめようとするも、じいちゃんに止められる

「ハウよ、まだワシがキングじゃ......次期キングは待機しておれ、ワシが見てくる なーに、心配ないワシはまだまだ現役、何せ四天王でもあるからなあ......ハウは家を頼む」

 孫を見て首を左右に振ると宥めるような口調で言いながら手を放して、笑うじいちゃんの姿に先程の険しい表情はないが暗にこの嵐が本当に異常なものだと知った

 島キングであるじいちゃんが様子を見に行くのだ。この嵐が......自然現象じゃないことも分かったが、じいちゃんは行かせたくはないのも分かってしまった少年はハウと云うらしい

 ハウは、自分の行動を制するように止めたじいちゃんの大きな手から流れるようにじいちゃんの顔を見つめた後に口を開いて

「......、......うん、分かったよ けど、じいちゃん......じいちゃんの帰りが遅くなったら俺、飛び出すかもしれないから...早く帰ってきてね、じいちゃん」

 本音を言うならば、じいちゃんと一緒に島の皆の無事やポケモンが大丈夫なのかを実際に確かめて、助けたいと、じいちゃんの手伝いが出来ればと思っていたが、自分は自分の弱さを認められていない、親友であるアローラ地方のチャンピオンのーーに何度も挑んだけれど勝てない

 仮に勝てたとしても、それはーーーだから、自分の弱さを認めるまでは......

 そこまで思考が回りかけるハウだったが突然雷が鳴り響き、荒れ狂う風に加え激しく打ち続ける雷雨になり、外はますます危険を伴った嵐になったことと、ふわりと頭に何かが乗ったことで意識をじいちゃんに戻す

 頭に乗ったのはじいちゃんの手だった。じいちゃんはハウの言葉に強く頷き、ハウの頭を優しくも豪快な手つきで撫でると

「大丈夫 ワシらには守り神のカプ・コケコがおる ハウも自分の強さも弱さも分かるようになる時がくるぞ では行ってくる、ハウが飛び出すことがないように早めに帰ってくるからな」

 そちらの方が一大事じゃからなと付け足して家から出て行った。じいちゃんの逞しくも大きな背中を見送りながらも、ハウは自分の髪を掻くように触り、じいちゃんの背中が見えなくなるまで見て玄関を閉める 

「俺もそう思ってるけど、ちょっと難しいなー......にしても、嵐かあ リリーエが来た時やあの事件とちょっとだけ似てる気がするんだよなー、この嵐」

 それでも、嫌な予感はしないのは何故だろうなーと先程とは違って危険を伴った嵐のはずが何故か人に危害がないようにも見えてハウは首を横に傾げる 

 嫌な予感はしないけれど、妙な胸騒ぎはしてざわざわする気持ちを落ち着かせるように握りそこなったモンスターボールを握りしめていた

Re: 新たな始まり。(ポケモンサンムーン、二年半後の物語) ( No.4 )
日時: 2017/01/08 03:03
名前: だらく ◆nI0A1IA1oU (ID: e.VqsKX6)

「イワンコ、嵐に加え雷雨になっちまったからな 今日だけはお留守番してくれよ」

 此処は一番道路の外れ、海沿いに位置する場所で見た目がログハウスに近い建物の中に上半身裸の上に白衣、ラフなズボンという大胆なスタイルの青年

 青年の真っ正面に座り何かを企んでいるように青年を見つめているたて耳を折り畳んでいる部分は焦げ茶の犬っぽい耳に首輪のように巻かれているごつごつと角が尖っている骨のような色合いをした堅く丈夫な岩、くるんと巻いた愛くるしくふさふさの白い尻尾、全身がほぼクリーム色っぽい茶色の体毛、瞳は水色。見た目が仔犬に近い生き物はイワンコという

 イワンコは今の今まで忠犬のように青年の話を黙って聞いていたが、お留守番という言葉が気に入らなかったのか、何かを企んでいるような眼差しが更に鋭くなり青年が玄関を開けようとイワンコに背を向けた瞬間

 高らかに鳴くと同時に助走をつけて全身で飛びかかった

 青年はイワンコの奇襲に勢いよく押し倒され......なかった。青年は高らかにイワンコが鳴くと共に振り返りイワンコを抱くように受け止める

 半ば奇襲にあったようなものだが、青年は何故かキラキラと子供のように目を輝かせてイワンコを見れば

「イワンコ、タイミングは良かったぜ!だが、もっと全力出して大丈夫だ、思いっきりぶつかってこ......って行かせてくれ 後でじっくり技の組み合わせを試してみような、イワンコ!」

 ははっとイワンコに負けず劣らず高らかに笑えば、今の奇襲を褒めるという行動に出た青年

 本来なら主人に対して噛みついたりすれば注意または叱ると思うがこの青年は別らしく寧ろ奇襲してくれてありがとうまではいかないものの、そんな事も言えそうな勢いで言葉を紡ごうと更なる指示を出し掛けるが技と称した奇襲いや攻撃よりも外で起きている現象が気になる青年はイワンコに申し訳なさそうに言う

 普通ならば自然じゃない嵐も技と称した攻撃の方が優先なのだが、どうも無視できないこの感覚は前にも覚えがある。前と云うほど経ってはいないがと不機嫌そうなイワンコを宥めながらも心の中で思い

「......イワンコも感じるだろ? 本当はお前も連れていきたいが連れていくとお前が居なくなるような気がしてな 僕の勘と言うよりは博士の勘が言っているんだ、お前やポケモンは連れていくなってよ......変だよな、そんな勘がするってよ......この現象はポケモンが関わってるってのにな」

 抱き上げるようにイワンコの両脇腹を両手で持ちながらもイワンコを見つめながら真面目で何処と無く戸惑いを含んでいるような声音で言いつつもイワンコをゆっくり床へ降ろしていく

 自分の事を博士と云う青年の名はククイ。この世界では自分の名前か名字しか名乗らないのが主流で博士と名乗る人は大方名字で名乗るが大体の人が名前で名乗る

 警察や特殊職業についている人の中にはコードネームで名乗る。基本的に有名じゃない限りは顔が思いっきり似ていても名字名前を教えなくても良いことになっている

 因みにククイ博士がポケモンの攻撃をわざと称したのはポケモンの能力の事を指しており、そのポケモンが天敵や自分の縄張りに入ったものに対し繰り出す攻撃や行動に名称を付けたのが技と呼ばれるようになった由縁であるとされている

 そのためか、ポケモンの全てが技を持ち、その技を用いて縄張りから追い出すことや獲物を狩ること等に使用している

 勿論、技は先程奇襲された物理的な攻撃のほかに精神や自分の能力を高める技、火や水等の自然の力を持っているポケモンが殆んどで特徴や特性、行動パターン或いは見た目、環境による変化で部類され、それらはタイプと呼ばれている。今現在はノーマル、水、氷、炎、草、でんき、むし、どく、地面、岩、あく、ドラゴン、フェアリー、ゴースト、エスパー、かくとう、ひこう、はがねが発見され、二つまでのタイプの組み合わせが確認されていた

 床に降ろされたイワンコは、しゅんと落ち込んだように頭を下げるが窓を叩きつけるようにガタガタと鳴らす音に加え、かなり近くに落ちたのか稲光がフラッシュのようにはためくのをちらりと見て今度は主人を心配するように無言で足元にすり寄り、ククイ博士を見上げる

「大丈夫だぜ、イワンコ! 柔じゃないからな、僕は!心配すんなって、丈夫なことはお前が一番よく知っているだろ」

 心配そうに見上げるイワンコの眼差しを受けて、大丈夫だと云うようにイワンコの頭を豪快に撫でながら安心させるような声音で明るく言うククイ博士を見て

 イワンコはまるで分かったと云うように、高らかにけれどさっきとは違って明るい表情をして鳴き、尻尾を振りながらちょこんとその場に座り、出ていくククイ博士を見送るようにククイ博士を見つめる

 ククイ博士は、そんなイワンコの眼差しを受けて大きく頷き、"行ってくるぜ"とイワンコにそう言って手を振ればこの建物いや、研究所から出て行った