二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 12話 第一之鍵 ( No.18 )
- 日時: 2017/01/06 00:14
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
「制限時間もあるし、とっとと決めるよ。サンダース!」
「出て来い、ホルビー!」
イオンが繰り出したのはサンダース。対するバンガキは、特徴的な耳をした、灰色のウサギのようなポケモンを繰り出す。
『Information
ホルビー 穴掘りポケモン
大きな耳で地面を掘り巣を作る。
耳の力はとても強いが、耳が発達
しすぎたため手の力が弱くなっている。』
「先制攻撃だ! サンダース、電光石火!」
イオンは互いにポケモンが出揃うや否や、先んじて攻撃を仕掛ける。
超高速でホルビーへと突っ込むサンダース。直撃を喰らったホルビーは、たまらず吹っ飛んだ。
「っ!? 速い……!」
「次々行くよー! 二度蹴り!」
「喰らうかってんだ! こっちも二度蹴りだ!」
サンダースは追撃をかけるが、ホルビーの二度蹴りに合わされてしまい、威力を相殺される。
「往復ビンタ!」
「躱して電気ショック!」
互いが着地した瞬間。ホルビーは大きな耳を振るって攻撃するも、サンダースの俊敏なバックステップで躱され、反撃の電撃を浴びてしまう。
さらにサンダースは、攻撃の手を緩めないが、
「ミサイル針!」
「当たらねぇよ! 穴を掘る!」
サンダースが体毛を鋭い針のように尖らせ、射出した瞬間。
ホルビーは舞台の床板を破壊し、そのまま潜ってしまう。どうやらこの舞台はフィールドの上に板を乗せているだけで、板のすぐ下は土になっているようだ。
「! どこに……?」
地中に身を隠したホルビーの姿は、当然ながら見えない。きょろきょろと辺りを見回し、出て来た瞬間を狙って動きたいが、
「そこだ! ホルビー!」
ちょうどサンダースの真下の床板が弾け飛び、ホルビーが飛び出す。サンダースは床板と一緒に吹き飛ばされた。
「あ、サンダース!」
「続けていくぜ! 往復ビンタ!」
ホルビーも追撃を仕掛ける。宙に舞ったサンダースを追って跳び、大きな耳でその身を打ち据えて、舞台へと叩き落した。
「う……やっべー。穴を掘るは地面技、効果抜群じゃん……シュカの実はおやつじゃなくて、持たせるべきだったなー……」
「おいおい、そんなんで大丈夫か? その程度じゃ、この鍵は渡せないぜ?」
くるくると手の内で鍵を見せつけるように弄ぶバンガキ。
ふらふらとサンダースは立ち上がるが、。効果抜群の穴を掘るが致命傷だ。あの一撃で、サンダースの体力は大きく削られてしまった。
しかし、サンダースの闘争心は消えてはおらず、体毛を逆立て、バチバチと電気を弾けさせて威嚇する。
「よし、その意気だサンダース! まだまだこれから! 電気ショック!」
「穴を掘る!」
サンダースの放つ電撃を、ホルビーは穴を掘って回避する。
次にあの攻撃を喰らえば、サンダースはほぼ確実に戦闘不能だ。なんとしてでも、躱さなくてはならない。
「…………」
しかしイオンもサンダースも、動かない。棒立ちでジッとしているだけ。どころかイオンに至っては、目を瞑っている。
完全にホルビーを見ていない。いや、そもそもホルビーの姿は見えないのだが。
(見えないものを見ようとしても無意味……目を開ける必要はない。必要なのは、感覚——)
すると、スッとイオンが開眼した。
「——ん、こんくらいっ! サンダース、跳べ!」
イオンの指示を受け、サンダースは大きく跳躍した。
その直後、サンダースの真下から、ホルビーが飛び出したが、そこにはもうサンダースはいない。
穴を掘るのタイミングを完全に合わされ、バンガキは目を見開いている。
「こいつ、ホルビーの穴を掘る時間を読みやがったのか……!? あの一回で!?」
「ま、大体ねー。電気ショック!」
「ちぃ! 撃ち落とすだ!」
空中から電撃を放つサンダース。ホルビーは岩塊を飛ばして打消す。
「電光石火!」
「往復ビンタ!」
シュタッと着地すると、サンダースは駆け出す。ホルビーも同じく突貫していくが、同じ土俵ではサンダースのスピードには追いつけない。横からの突撃を喰らい、体勢を崩してしまう。
「打ち上げて! 二度蹴りだ!」
体勢が崩れたところを狙われ、蹴り上げられるホルビー。
そして、これで終わりだった。
「とどめっ! 電気ショック!」
最後に電撃を浴びて、ホルビーは舞台へと落下する。完全に目を回しており、戦闘不能だった。
サンダースをボールに戻し、イオンがフィアの下へと戻ってくる。
バンガキとのバトルの一部始終を見ていたフィアは、明るい表情で彼を出迎えた。
「イオン君! 勝ったんだね」
「まーねー。流石ジム戦、ジムリーダーじゃなくてもけっこー強かったけど、この通り」
そう言って、イオンは手の中の鍵を掲げる。
「これで棺桶の扉が開くねー」
「でも、たぶんそれだけじゃダメだよ。トウガキさんは、王子は呪いで目覚めない、って言ってた」
「寝てるってこと? 起こせばいいんじゃない?」
「いや、呪いって言ってるから、普通に起こしたんじゃたぶん起きない……これはお話。だから、なにか鍵があると思うんだ」
「鍵ならここにあるよ?」
「その鍵じゃなくて……」
王子を目覚めさせるための、キーアイテムだ。
それがなければ、棺桶を開けることが出来ても、王子は目覚めず、救ったことにはならない。
どうしようと唸っていると、すぐそこにバンガキがいたので、ダメ元で聞いてみた。
「……バンガキさんは、なにか知ってませんか?」
「オレサマが答えるわけねーだろ。王子の呪いはトウガキ兄ちゃんがかけたんだ。知ってるのは兄ちゃんだぜ」
やはり、この劇における乗り越えなければならない障害は、それぞれトウガキとバンガキが担っているようだ。
バンガキは棺桶の蓋を開けるための鍵。
そしてトウガキが、王子にかけた呪い。
棺桶を開けても、王子が目覚めなければ意味はない。第二の障害が待っているが、それを突破するには、トウガキを倒すほかない。
「トウガキさんってことは、フロルか……」
今、トウガキとバトルしているのはフロルだ。
対戦の様子を見てみると、あまり戦況は芳しくない。
「時間はあと十五分……フロル、大丈夫かな?」
「ま、仮にフロルちゃんが負けても、オレがサクッと倒すよー」
「どうだか。兄ちゃんは強いぜ。オレサマよりもな」
バトルを見る限り、イオンのサンダースが戦闘不能ギリギリまで追い込んだバンガキも、決して弱くはなかった。
トウガキがそれ以上の強さとなると、フロルが勝てるかどうか、非常に心配だ。
そしてフロルとトウガキのバトルは終わるまで、フィアとイオンは見ているだけ。ただ見ることしかできないというのは、やはりむず痒い。
「……こっそりヒントをやるよ」
そんなフィアの心中を察してか、バンガキがそっと耳打ちしてくる。
「この劇は俺たちが筋書きを用意しているが、筋書き通りに話が進むとは限らない。物語ってのは独り歩きするんだ」
一人称が少し違う。劇の役ではなく、あくまでジムトレーナーの一人として、アドバイスということだろう。
「中には分岐ルートとして設定していることもあるが、それすらも無視して、筋書き通りにならない展開もあり得る。それは大きな意味で変化があったり、また、些細かつ微妙な違いでしかないこともある」
「分岐ルート……?」
「用意された筋書きに律儀に従う必要はねぇ。自分の進みたい道、考えられる無数のルートからどれを選び取るか……そこに秘められた可能性を、よく考えてみな」
そこでバンガキは、言葉を切る。アドバイスは以上ということらしかった。
「筋書きに従う必要はない……無数のルートに秘められた可能性……」
バンガキの言葉を反芻するフィア。
彼の言葉はなにを意味するのか。
フロルのバトルを見守りながら、彼はそのことについて、考え続けている。
あとがきです。やっとまともにジムでバトルができました。最初はイオンとバンガキのバトル。バンガキのポケモンはホルビーです。アニポケでも、ホルビー好きなんですよね。わりと個性がぶつかり合いがちなXYのポケモンの中で、仲裁に入ったりするなど、緩衝材的な役割を果たしているところとか、真面目で面倒見がいいところとか。シトロン戦も燃えましたしね。ホルードは……まあ、対戦だとそれなりに強いと思いますよ。曲がりなりにも力持ちで、先制技やタイプ一致技、サブウェポンに積み技にも恵まれてますし。そういえば、シュンセイジムがノーマルタイプの使い手って、どこかで描写したっけ……なんかしてない気がします。すっかり忘れてた。ホルビーの時点で察してくれると信じましょう。次回はフロルとトウガキのバトルですね。お楽しみに。