二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第16話 絶対睡眠 ( No.23 )
- 日時: 2017/01/06 23:42
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
「これが最後だよぅ。ネッコアラ、でてきてねぇ」
出て来たのは、コアラのようなポケモン。丸太を抱きかかえており、目は閉じている。
『Information
ネッコアラ 夢現ポケモン
生まれてから死ぬまで寝て過ごす。
見ている夢の寝相で体を動かすが、
どんな夢を見ているのかはわからない。』
「……寝てる?」
「うん、そうだよぅ。ネッコアラはずーっと寝てるんだぁ。絶対眠りの特性だからねぇ」
「絶対眠り、特性……?」
なんのことだ、と疑問符が浮かび上がる。
しかし、今はジム戦。それに時間もない。フィアは急いでミズゴロウに指示を出す。
「眠っているなら、むしろ好都合だよ。ミズゴロウ、水鉄砲!」
ミズゴロウは口から水流を噴射。水流はネッコアラにまっすぐ飛んでいくが、
「防御だよぅ」
ネッコアラは抱えている丸太を盾のようにして、水鉄砲を防いでしまう。
「な……っ!?」
「叩きつけるだよぅ」
「あ、えっと、躱してっ!」
さらに、今度は丸太を片手で掴み、大きく跳躍して丸太を叩きつける。
ギリギリ回避できたが、床が大きくへこんでいた。丸太には傷一つついていない。
「思ったより硬い……力もあるんだ……」
「まぁねぇ。ネッコアラ自慢の枕木だからねぇ……もう一度、叩きつける」
「躱して!」
再びネッコアラが丸太を振り回し、床に叩きつける。ミズゴロウは決して俊敏ではないが、ネッコアラの動きも早くない。よく動きを見れば、躱せない攻撃ではない
「岩砕き!」
そして、ネッコアラが丸太を叩きつけた瞬間を狙って、ミズゴロウは突撃するが、
「丸くなるだよぅ」
ネッコアラは丸太を引き抜かず、むしろ自分から丸太に飛びついて、丸まってしまう。
ミズゴロウの攻撃は直撃し、吹っ飛んだが、達磨のようにすぐに起き上がる。効果抜群にしてはダメージが小さい。
「そのまま転がる攻撃だねぇ」
「っ、躱して!」
ネッコアラは丸太に抱き着いたまま、ゴロゴロと床を転がる。ミズゴロウはジャンプで躱そうとするが、タイミングが合わず、吹っ飛ばされる。
「ミズゴロウ、大丈夫?」
足元はおぼつかないが、なんとか立ち上がる。ミズゴロウは、まだ戦う意志を見せていた。
「よし、もう一度岩砕きだ!」
転がってくるネッコアラに対して、ミズゴロウは力を込めた突撃で迎え撃つ。
どちらのパワーもかなりのもので、しばらく競り合ったものの、やがてミズゴロウが吹っ飛ばされた。
「っ、パワー負けした……!」
「転がるは丸くなった後に使うと威力が上がるし、転がれば転がるほど威力が増すからねぇ……はやく止めないと、このまま閉演しちゃうかもよぅ」
いまだにゴロゴロと転がり続けるネッコアラ。確かに、よく見れば転がるスピードも勢いも、増しているように見える。
このままだと、イチジクの言う通り、転がり続けるだけで負けてしまいかねない。
(でも、どうやって止めれば……)
先ほどの岩砕きの結果から、真正面から力ずくで止めることはできない。
(回転を止める方法……もしくは、ネッコアラの動きだけでも止められれば……)
なにか手はないかと辺りを見回すと、ふと“それ”が視界に入る。
「……上手くいくかはわからないけど、やってみよう。ミズゴロウ、水鉄砲だ!」
転がってくるネッコアラに対し、ミズゴロウは水流を発射する。
しかし、ネッコアラの転がる勢いは、緩まる様子がまるでない。
「もっと強く!」
フィアの指示で、さらにミズゴロウの水流が強くなるが、それでも止まらない。少しばかり勢いは弱まったかもしれないが、転がるを中断するには至らない。
やがてネッコアラがミズゴロウへと接近し、撥ね飛ばさんと転がってくる。
「右に跳んで!」
「追いかけてねぇ」
ミズゴロウは寸でのところで右に跳躍するが、ネッコアラもそれを逃がしはしない。ゴロゴロと大きくカーブを描いて、ミズゴロウを追いかける。
「そうだ、こっちだよ……」
転がりながら追いかけてくるネッコアラ。ミズゴロウは少しずつ後退して、タイミングを計る。
再び、ネッコアラがミズゴロウに接近した、その時。
「今だ! ジャンプ!」
ミズゴロウは真上に跳んだ。
それでネッコアラの転がる攻撃を躱したことになるが、それだけではない。
「おぉ?」
ネッコアラがミズゴロウの真下を通過した直後、ネッコアラの動きが止まった。しかし、回転は続けている。ただ、前に進まないのだ。
見てみると、そこは床板が破壊され、地面が抉れた床。ネッコアラが、叩きつけるで破壊した個所だった。
自分で抉った穴に、嵌ってしまったのだ。
「あぁ、はまっちゃったぁ」
やがて、ネッコアラの回転が止まる。転がるが中断されたのだ。
その隙に、ミズゴロウはネッコアラに近づき、
「今だよミズゴロウ! 岩砕き!」
岩をも砕く勢いで、無防備なネッコアラに突撃する。格闘タイプの技なので、効果は抜群だ。
だが、しかし、
「んぅぅ、しっぺ返し」
次の瞬間。
ネッコアラの丸太が、ミズゴロウを打ち据えていた。
「ミズゴロウ!」
ノコッチとのバトルでも蓄積されていたダメージが、ここで一気に臨界点まで達する。
ここまで耐えていたミズゴロウも、この一撃には耐え切れず、目を回して戦闘不能となってしまった。
「ありがとう、ミズゴロウ……よく頑張ったね」
倒れたミズゴロウをボールに戻す。
かなり奮闘してくれたが、やはりノコッチとのバトルで受けたダメージが大きかったのだろう。
「凄い威力だったな、今の技……」
「しっぺ返しはねぇ、後から攻撃すると威力が上がる技なんだよねぇ」
つまり、反撃に向いた技ということか。
ネッコアラは積極的に攻撃を仕掛け、攻撃を受ける際にも、丸太で防御するか、丸くなるかだったので、反撃はあまり想定していなかった。
なんにせよ、これでフィアの手持ちは残り一体だ。ネッコアラ攻略の糸口はまだつかめていないが、倒せるのだろうか。
「……イーブイ、出て来て!」
フィアの最後のポケモンはイーブイ。ミズゴロウのように格闘タイプの技を覚えているわけではないので、特別な有利不利はない。
ただ単純な力の差だ。それゆえに、不安が募る。
(タイプ相性が大事って、こういうことなのかな……)
強力な攻撃技と、防御にも転用できる枕木。ネッコアラの単体スペックは非常に高い。
それゆえに、タイプの上で有利を取れなければ、非常に厳しいバトルとなる。
「イーブイかぁ。色んな進化の可能性を秘めた、いいポケモンだねぇ」
「……? 色んな……?」
フィアが見たイーブイの進化系は、イオンのサンダースだ。進化するとしたらそうなるのだろうと思っており、彼の言葉がいまいちよくわからなかった。
しかし今はジム戦。あまり余計なことを考えている余裕はなかった。
「よし、やるぞ……イーブイ、電光石火!」
「防御だよぅ」
イオンにならって、先手必勝で攻め込むが、イーブイの突撃は丸太できっちり防御されてしまった。
やはり、攻防共に使用できるあの丸太が、非常に厄介だ。
「噛みつく!」
「次も防御してねぇ」
横に跳んでから、反復横跳びのように動いて、ネッコアラのサイドに移動するイーブイ。そしてそのまま歯牙を向いて飛び掛かるも、今度も攻撃は丸太によってきっちり防がれてしまった。
そして、
「叩きつけるだよぅ」
そのまま丸太に噛り付いたイーブイを床に叩きつけた。床板が砕け散り、剥き出しの地面にイーブイは転がっていく。
「イーブイ!」
「もう一度、叩きつける」
再び丸太を振りかざして打ち据えるネッコアラ。しかしイーブイは、フィアの指示を待たずしてゴロゴロと転がり、間一髪でその攻撃を躱す。
「あ、危なかった……」
「でもぉ、気を緩めちゃぁダメだよねぇ。転がるだよぅ」
「躱して目覚めるパワー!」
丸まって転がってくるネッコアラを避けつつ、イーブイは球状のエネルギー弾を放つ。
弾はネッコアラに着弾すると、そのまま燃え上がるが、ネッコアラは気にせず転がり続けている。
「効いてない……!?」
「効いてるよぅ。ぼくのネッコアラは、ちょっとにぶちんさんなだけ……叩きつける」
転がっているうちに炎も鎮火してしまった。鎮火したタイミングで転がるを中止すると、ネッコアラは丸太を振り下ろして攻撃してくる。
「躱して電光石火!」
「しっぺ返しだよぅ」
叩きつけるの威力は凄まじい。あの攻撃だけは、受けてはいけない。
そう思って必死で回避し、その隙に電光石火で急接近しつつ攻撃するが、反撃のしっぺ返しでカウンターされてしまう。
「頑張ってイーブイ! 噛みつく!」
「丸くなる、だよぅ」
今度は歯牙を剥き出して突き立てるも、丸くなるで防御を上げたネッコアラには、大きなダメージを与えられない。
目覚めるパワー、電光石火、噛みつく……どの攻撃も、ネッコアラには通用しない。あの手この手で防がれてしまう。
「ふわぁ……眠くなってきちゃった。そろそろ、終わりにしよっかぁ」
イチジクは大きく欠伸をすると、ネッコアラに指示を飛ばす。
「ネッコアラ、転がる」
丸くなった状態で、回転を始めるネッコアラ。
噛みついていたイーブイはすぐに離れることができず、転がるネッコアラに撥ね飛ばされてしまった。
「イーブイ!」
吹っ飛ばされて床に落下。イーブイはミズゴロウのように打たれ強くない。体力も、そろそろ限界だろう。
とにかく攻撃を避けて、隙を見て攻撃を……とフィアが考えているその時、イーブイに影が差した。
顔を上げると、そこには丸太を振り上げたネッコアラの姿。
「叩きつける、だよぅ」
ぐしゃり、と。
容赦なく、ネッコアラは丸太を振り下ろし、イーブイに叩きつけた。
「イ、イーブイ……!」
丸太を退けると、そこには倒れたイーブイの姿がある。
完全に目を回しており、誤審の余地が生じるまでもなく、戦闘不能だ。
つまり、それは——
——イーブイ戦闘不能! チャレンジャーの手持ち二体がすべて戦闘不能になったため、ジムリーダー、イチジクの勝利です!——
——フィアの敗北を、意味していた。
あとがき。フィアvsイチジク、終了です。のっけからフィアがやられていますが、まあ、当然っちゃ当然なのかもしれません。トレーナーになって数日。経験も浅いフィアが、簡単にジムリーダーを倒せるはずもない、というのが当然の論理、結果かなと。あと、これはあまり関係ないですけど、ネッコアラってA115もあるんですね。意外とパワフルでビックリ。まあ、コアラは力が強いっていいますし、これもまた当然なのかな。というわけで次回。フィアが負けてしまいましたが、シュンセイジム戦はどうなるのか、ですね。お楽しみに。