二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第5話 旅立開始 ( No.6 )
日時: 2017/01/03 17:25
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 フィアは博士の自宅兼研究所に一泊させてもらい、翌日、フロルと共に博士の前に立っていた。
「さて、お前たち二人には今から旅立ってもらうわけだが、ある程度は指針がないと、旅立つにしても難しいだろう。元の世界に帰るための手掛かりなんて、どう探せっつー話だ。なぁ、フィア?」
「えっ? えっと、はい。そうですね……」
 確かにその通りだ。ここはフィアからすればまったく別の世界で、手掛かりなんてどう探せばいいのか分からない。
「フロルもトレーナーとして修行するにしても、どうすればいいのか分からねぇよな。だからとりあえずお前ら、各地のジムを巡れ。そんで、ジムリーダーをぶっ飛ばしてこい」
「ジムリーダー?」
 またしても聞き慣れぬ言葉に、フィアは首を傾げる。
「ジムリーダーってのは、ポケモンジムを管理する者だ。ポケモンジムは多くの街にあり、一つの街に一つある。ジムリーダーも突き詰めればポケモントレーナーの一種なんだが、そんじょそこらのトレーナーとはわけが違う。そうだな、トレーナーを試すトレーナーとでも言うのか。大雑把に言っちまえば、強ぇトレーナーだ。で、そのジムリーダーに勝つとジムバッジなるものが貰え、これを八つ集めるとポケモンリーグに挑戦できる」
「ポケモンリーグ?」
 またまた聞かない言葉に、再び首を傾げるフィア。それに対して博士は説明を続ける。
「ポケモンリーグっつーのは、ポケモントレーナーの最高峰、多くのポケモントレーナーが目指す頂点だ。四天王とチャンピオントレーナーの五人で構成され、こいつらを全員倒すと、その地方で最強のポケモントレーナーだということが証明されるんだ」
 まあ今はあんまり気にしなくてもいいがな、と博士は言う。確かに、フロルはともかく、フィアはトレーナーとして強くなることが目的ではない。
 しかし、強くなくてはならないと、思うことはある。
「とりあえずお前らには、これをやろう」
 言って博士が手渡して来たのは、二つの機械だった。一つは赤く、縦に長い薄型の長方形の機械。もう一つモノクロカラーで、こちらは横に長い薄型の長方形をした機械だった。
「赤いのはポケモン図鑑。それにポケモンの情報を登録していけば、ポケモンの詳細な情報が分かる優れもんだ」
「図鑑……? これが?」
「おうよ。いやはや、正式な博士じゃないってんで、取り寄せるのが大変だったんだぜ? 本当はフロルが旅立つ時のために一個、予備でもう一個手配してたんだが、どうせ予備は予備だ。お前にもくれてやるよ」
「あ、ありがとうございます」
「イーくん、こっちは?」
 胸を張る博士をスルーして、フロルはもう一つの機械を掲げた。
「……そっちはP・ターミナル。最近ホッポウを拠点に活動し始めたアシッド機関が開発したもんで、ホッポウ地方の全トレーナーに無料配布してんだよ。メールやテレビ電話みてぇな通信が主な使い方だが、それ以外にもいろいろ機能がある。インストールして機能を追加することもできるぜ」
 若干ふて腐れたような態度で説明する博士。急にどうしたのだろうか。
「さて、そんじゃあ次はこの中から一匹、ポケモンを選べ。俺からの餞別だ」
 そう言って博士が取り出した箱の中には、モンスターボールが三つ入っていた。
「イーくん——博士、わたしたちにポケモンくれるの?」
「おうよ。だが中身は見せねぇぞ。見せたら面白くねぇからな」
 ぐいぐいとボールの入った箱を押し付けてくる博士。妙に急かしてくる。
 どっちから先にとっても良かったのだが、フィアはフロルに先を譲った。
「じゃあわたしこっち。フィアはどれにするの?」
「うーん……じゃあ、これで……」
 中身がなんなのかまるでわからないので、選ぶにしても基準がない。適当に残っているボールを取った。
「博士、ポケモン見てもいい?」
「ああ、構わねぇ。念のためにポケモン図鑑も異常がねぇかチェックしとけ。ついでだ」
 博士の言葉を半分ほど聞き流し、フロルは爛々とした目つきでボールの中央ボタンを押す。すると、中から光りと共に一匹のポケモンが現れた。
 オレンジ色の体色に小さな体。頭からは三本の毛が跳ねており、小さな嘴があるところを見ると鳥型のポケモンなのだろう。非常に愛くるしい容姿をしている。

『Information
 アチャモ ひよこポケモン
 体内の炎袋で炎を燃やしているため、
 抱きしめると暖かい。最初に見た
 トレーナーの後を付いて行く習性がある。』

 図鑑を開くと、そんな説明文が載っていた。
「とりあえず図鑑の調子は大丈夫か。フィア、お前もポケモン出せよ」
「あ、はい。えっと、こうだっけ……」
 図鑑を仕舞い、フィアも博士から貰ったボールの中央ボタンをプッシュする。すると中から、光と共にポケモンが出て来た。
 水色の丸っこい体躯。頭には直立したヒレがあり、頬にはオレンジ色のエラが付いたポケモン。

『Information
 ミズゴロウ 沼魚ポケモン
 頭のヒレは周りの様子を察知する
 敏感なレーダー。餌を求めて川底
 の岩も粉々にするほどのパワーがある。』

 どうやらこのポケモンはミズゴロウというらしい。図鑑を見る限りパワーのあるポケモンのようなので、頼りになる。
 フロルはアチャモを抱きしめ、フィアはミズゴロウのヒレやエラを弄り、しばらくポケモンとじゃれていると、見かねたのか博士がパンパンと手を叩いた。注目、ということなのだろう。
「ほら、こっち向け。今から近くの街を教えてやっから。ポケモンとじゃれ合うのはいつでもできるだろ」
「あぅ、ごめん……」
「すいません……」
 博士に咎められ、二人は平謝り。
「とりあえずこっから一番近いのはシュンセイシティだな。あそこにはジムもあるし、まずはそこを目指せ。ちぃっとばかし癖のあるジムリーダーが、面倒見がいいし、悪い奴じゃない。問題はないだろう。それに、なにか分からないことがあれば、いつでも俺に連絡を寄越せばいい」
「は、はいっ」
「うん、わかったよ」
 そしてフィアとフロルの二人は研究所を後にし、シュンセイシティへと向かう——
「あ、そうだ。フィア、ちょっと待て」
 ——直前に、呼び止められた。
「こいつを持ってけ」
 振り返ったフィアに向けて博士は二つの物体を投げつけ、フィアは辛うじてそれらをキャッチした。それは、一つのモンスターボールと、熱を帯びた暖色の石だった。
「これは……?」
「モンスターボールの中にはダイケンキが入ってる。ジム戦やトレーナー戦での使用は禁止するが、マジでやべぇ時には出してもいいぞ」
 真剣な眼差しで、博士は言う。もはや睨み付けるような目になっているのでフィアは怯んでしまう。
 だが怯んだのはそれだけではない。
「僕に、ダイケンキを持たせるんですか? でもこのダイケンキは——」
 ダイケンキはあの青年のポケモンだ。フィアを救ってくれた青年の。恩人の大事なポケモンを、自分のような者が持っていていいのだろうか。そんな疑念がフィアの中にはあった。しかし博士は、それを否定する。
「分かってる。このダイケンキはお前のポケモンじゃねぇ。だがな、お前を助けたトレーナーだって、お前にとっては手掛かりだろ。だったらそいつのポケモンを持ってた方がいいに決まってるし、なにより助けられたんなら、自分でその恩を返せ。お前がこいつを、持ち主に届けるんだ」
「……はい。分かりました」
「それと、そっちの石は炎の石っつーアイテムだ。そっちも、やべぇ時にイーブイに触れさせてみろ。まぁやばくない時でもいいが、使うかどうかはお前次第だ」
 分かったらもう言っていいぞ、と博士は追い払うように手を振る。引き留めておきながらそれはないんじゃないかと思うが、こうして旅立つための助力をしてもらっているので、邪険にはできない。
「よし……それじゃあ、行こうか。シュンセイシティに」
「うん!」
 かくして、フィアとフロルの旅は始まった。最初の目的地は、シコタン島唯一のジムがある街、シュンセイシティだ。



あとがきの時間です。やっとこさ旅立ちですね。シンオウ地方を引き合いに出しておきながら、御三家はホウエンです。まあ、好きなんですよね、ホウエン御三家。ホウエン縛りとかでパーティー組んでたりもしましたし。それに、ORASでメガシンカ貰ったり、ちょっと前まではホットな話題でしたし。この作品を最初に書いたのは、だいぶと前ですけども。第六世代より前ですね。今回はリメイク前とあまり変えていませんので、特に言うこともなく。というか、ここまででリメイク前と変わったところなんて、ポケモンくらいです。次は最初の街、シュンセイシティです。お楽しみに。