二次創作小説(映像)※倉庫ログ

8話 電気進化 ( No.9 )
日時: 2017/01/03 22:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

「行くよ、サンダース!」
 イオンの二番手は、四足歩行の黄色い毛並を持つ獣型ポケモン。首回りだけは白く、パチパチと電気が弾ける音を鳴らしている。

『Information
 サンダース 雷ポケモン
 針のような体毛の隙間には
 マイナスイオンが発生する。
 バチバチと火花が散るのは威嚇の合図。』

 サンダースはイーブイを見ると、一瞬にして鋭い目つきに変わり、全身の体毛も針のように尖らせた。同時にパチパチという音はバチバチと強い音になる。
「サンダースは……イーブイの進化系か」
 ポケモン図鑑でサンダースについて調べると、イーブイの進化系、という表示が目に留まる。
 フィアにはまだ進化というものがよく分からないのだが、いずれイーブイもあのようになるのだろうと解釈した。
 なにはともあれ、今はバトルだ。サンダースはイーブイを威嚇しており、やる気満々だ。
「オレのサンダースは強いよー。本気でかかってこないと一瞬で終わっちゃうから、覚悟してねー?」
 確かにイオンの言う通り、サンダースは見るからに強そうだ。それはフィアにも分かる。
「う、うん。行くよイーブイ。電光石火だ!」
 イーブイは力強く鳴き、地面を蹴ってサンダースへと突っ込むが、
「サンダース、こっちも電光石火!」
 サンダースも同時に動き出し、イーブイよりもずっと速いスピードで突撃。イーブイを吹っ飛ばした。
「ミサイル針だ!」
 続けて針のように鋭く尖った体毛を無数に発射し、イーブイに突き刺す。ダメージはそこまで多くないが、かなり痛そうだ。
「イーブイ、大丈夫?」
 イーブイは起き上がり、体を小刻みに震わせて針を振り落す。そしてサンダースをキッと睨み付けた。まだまだやる気のようだ。
「よし、じゃあ目覚めるパワーだ!」
 イーブイは赤く燃える球体をサンダース目掛けて発射するが、その時、既にサンダースはそこにはいなかった。
「え……?」
「二度蹴り!」
 そして気付いた時には、サンダースはイーブイの正面まで接近し、二連続で蹴りを繰り出す。二度蹴りは格闘タイプの技なので、ノーマルタイプのイーブイには効果抜群だ。
「まだまだ行くよ、サンダース。電気ショック!」
 間髪入れずにサンダースは電撃を発射し、イーブイに追撃をかける。態勢の整っていないイーブイは、電撃の直撃を喰らう。
「あ、う……イーブイ、噛みつくだ!」
「遅い遅い、ミサイル針!」
 イーブイが牙を剥きサンダースに向かって駆けだす直前、サンダースは鋭い体毛を発射して地面に突き刺し、イーブイの動きを止める。
「今だ、二度蹴り!」
 そしてイーブイが動きを止めた一瞬で距離を詰め、二連続の蹴りを放ち、イーブイを上空へと蹴り上げた。
「しまった……イーブイ!」
 空中に放り出され、身動きの取れないイーブイ。このままではいい的だ。
「これでとどめ! サンダース、電気ショック!」
 案の定サンダースは高速で電撃を射出。空中にいるイーブイへと直撃させた。
「イーブイ!」
 ドサッと、地面に落ちたイーブイは目を回し、戦闘不能となっていた。



「勝った勝った。お疲れ、サンダース。よく頑張った」
 イオンがそう言って労うと、サンダースは彼に飛びついて、嬉しそうに頬ずりし、顔を舐めている。褒められてはしゃいでいるのだろうか。
「ははは、俺も嬉しいけど、体毛がバチバチしてすっげー痛いんだけどなー……」
 バチバチどころか、鋭い体毛がグサグサ刺さっているようにも見える。確かに痛そうだ。
「凄い甘えっぷり……」
「まーねー。小さい時からずっと一緒のポケモンだし? 俺ら、もう一心同体みたいな?」
 口調こそ軽いが、バトルでは獰猛だったサンダースが、彼にここまで甘えているということは、それだけ心を開いている証拠だ。イオンも、サンダースが純粋に甘えているとわかっているからこそ、いくら体毛が弾けたり刺さったりしても、その痛みも受け入れている。
 この世界に来て間もなく、ポケモンという存在も理解しきっていないフィアでも、この二人には確かな信頼関係がある。それだけはわかった。
「ほらサンダース、離れて離れて。ご褒美のシュカの実、あげるからさー」
 イオンはポケットから、手のひらサイズの黄色い木の実を取り出すと、ひょいっと放り投げる。サンダースは放られたそれを、犬のようにジャンプして食らいつき、そのままもしゃもしゃと咀嚼した。
「今のは……?」
「シュカの実。ポケモン用の木の実だよ」
「ポケモン用……?」
「あー、そこも知らないんだ」
 この世界に来たばかりだから、とはとても言えなかったが、イオンはフィアの無知も気にする様子なく、説明してくれる。
「木の実はね、俺ら人間が食べるものもあるけど、ものによってはポケモンに色んな効果をもたらすものがあるんだよ。たとえば、さっきあげたシュカの実は、電気タイプの弱点である、地面タイプの技の威力を下げてくれるんだ」
「へぇ、そうなんだ」
「他にも、体力を回復したり、状態異常を直したり、種類はたくさんあるよ。オレンの実とかモモンの実とか、聞いたことくらいはあるでしょ?」
 ありません、とは言えなかった。
「ポケモンに持たせておけば、必要な時にすぐ食べて使ってくれるから、覚えておいた方がいいよー」
「そうなんだ……ありがとう」
「でも、イオくん、ごほうびって言ってたよ?」
 今まで黙っていたフロルが口を開く。若干舌足らずで、イオンの名前をちゃんと発音できていない。
 しかしそれも気にせず、イオンは続けた。
「ポケモンにとっては、木の実は普通に食料だからねー。それに、ポケモンにも味の好みってのがあって、好きな食べ物、好きな味があるんだよ。俺のサンダースは、大の甘党でね。甘い木の実が好きなんだ」
 さっきのシュカの実というのは、甘い木の実なのか。とてもそうは見えなかったが。
「木の実は加工してお菓子にしたりもするよ。元はシンオウ地方の発祥だけど、この地方にもポフィンっていうポケモン専用のお菓子が流通してるし、ちゃんと調理すれば人間でも食べられる。うまいよー、モモンの実のケーキ。すっげー甘いの。オレの好物なんだよねー」
「そ、そうなんだ……それにしても、イオン君って詳しいね」
「まあねー。旅に出る前に、すっげー勉強させられたし」
 させられた、という言葉の響きに少し引っかかるものを覚えたが、そこを指摘することもできず、イオンはボールを取り出して、開閉スイッチを押していた。
「んじゃサンダース、ごくろーさま。もう戻ってねー」
 そしてサンダースをボールに戻す。
 そういえば、さっきまでバトルをしていた、ということを今になって思い出した。バトルをした感覚が、今更体に巡ってくる。
「にしても、なかなかいいバトルだったなー。いい経験値になったよ」
「そうかな、全然敵わなかったけど……強いんだね、イオン君」
「いや、それほどでもあるかなー。ま、オレ天才だし?」
 かなり自信家というか、自信過剰ともとれる発言だったが、実際イオンは強かった。フィアが初心者であることを差し引いても、ポケモンが技を繰り出す前後にほとんど隙がなく、動きも機敏。指示も素早く的確だったので、才能を感じるものはあった。
「でも、フィア君もけっこー強かったよ? キモリにミズゴロウを出してきたときは、正直、キモリ一体で勝てると思ったし?」
「あはは……そうかな」
 褒められるのは純粋に嬉しかったが、キモリだけで終わらせるという発言には、流石にフィアも若干へこむ。そこまで甘く見られていたのだろうか。
 イオンはチラッと壁に掛けられた時計を一瞥する。
「うーん、今日はもう寝ようかなー。オレもポケモンも疲れたし……あ、フィア君って、明日ジムに行ったりする?」
「う、うん。そのつもりだよ」
「だったら一緒に行かない? ジム戦攻略の仲間ってことで」
「ジム戦攻略……?」
「あと、そっちの子も。いくら初心者でも、三人いればジム戦でも戦えるっしょ」
「え? ジムって、三人いないとダメなの?」
 初耳だった。旅するトレーナーの指標となることから、一人旅のトレーナーが目指すものと考え、勝手に一人でも挑戦できると思い込んでいた。実は違ったのか。
 などというフィアの不安は、すぐに解消された。
「いやいや、そんなことはないよー? 一人でもジムは挑戦できる……つーか、そのへんはジムによっていろいろだねー。条件とかルールとかは、ジムによって違う。この街のジムは一人でも挑戦できるけど、複数人でも挑戦できるんだってさ」
「複数で挑むと、なにかあるの?」
「単純に仲間が多い方が、ジム戦でも戦いやすいってことじゃない? まあ、人数が多ければ多いほど、レベルもそれ相応に上がるらしいけど?」
 レベル。それは、ポケモンそのもののことだろうか。
 それともイオンの言う、攻略するうえでの難易度だろうか。
 ないしは、どちらも、か。
「で、どう? 一緒に挑戦しない?」
「そうだなぁ……」
 正直、この申し出はありがたい。
 この世界に来て右も左もわからないフィアにとって、ジム戦というものがどういうものなのか、まったくわからない。なので、先導してくれる者がいるのは助かる。
 イオンは実際にバトルして、実力者であることは感じ取れた。そしてここまで披露してくれた知識の数々。彼が博識であることも窺え、一緒にジム戦をしてくれるというのなら、非常に心強い。
 フィアはフロルの方をちらりと見る。フロルはコクコクと頷いていた。
 彼女も、異論はないらしい。
「じゃあ、お願いしてもいいかな……?」
「オッケー、これで決まり! んじゃ、明日の朝十時、ポケセンのロビーで集合ねー」
 きっちりと集合時間と場所も指定してから、イオンはボールを仕舞い、鞄を背負う。
「そんじゃ、とっとと部屋に戻って休むとするかなー。今のバトルで、大体の調整は終わりってことにしとこ。フィア君らも、今日は早く寝た方がいいと思うよ」
「うん、そうする。今日はありがとう」
「いやいや、こちらこそー。そんじゃー、また明日ー」
 イオンは手をひらひらと振ると、ひゅぅっと消えていった。
 フィアたちもその後に続くように、地下から出て、自室に戻る。
 これで、フィアの一日は終了した。
 そして明日は、フィアにとって初めてのジム戦だ。



今回はちょっと長め。リメイク前と比べて、バトル後の描写を増やしました。サンダース可愛いですよね。作者が好きなのはリーフィアやブラッキー、唯一王ですけど、サンダースも結構好きです。それでは次回、シュンセイジム戦です。文字数が収まるか不安ですが、お楽しみに。