二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: キャラクター達は世界を救うために駆けるようです ( No.2 )
日時: 2017/01/14 00:43
名前: カネゴン (ID: ugLLkdYi)





「.........」

少年は廃墟の中の、薄暗い一室でうずくまっていた
息は絶え絶えで、もう足には十分に地面を蹴るほどの力は残っていない

「......どうして、こんな目に...」

カゲがこちらに来ているような様子はない
うまく撒けたのかも知れないし、もしかしたら外で待ち伏せをしているのかも知れない

「....ハァ、ハァ....くっ...」

...いずれにせよ、ここでずっとうずくまっていても何も解決はしない
少年は最早力の込もっていない足に目一杯の力を込めて立ち上がろうとした


その時だった


ガゴン、と嫌な音がした
少年がうずくまっていた部屋の扉が力任せにこじ開けられた


ズッ、と
カゲが少年の前に現れた



カゲはニヤリと笑った
そしてカゲは少年へ迫っていた



(クソッ、どうすればいい...)

カゲは迫り来る、少年に焦りを覚えさせるように

(いやだ、僕は...)

カゲは迫り来る、少年に恐怖と絶望を与えんがために

(僕は何も分からないまま...)

カゲは迫り来る、少年から思考する時間すら奪わんと

(......死にたくない!)


カゲは、自身の身体から、およそ『手』と呼べるモノを作り出した
そしてそれは大きな『カマ』へと変貌した












少年にカゲの『オノ』が振り下ろされた
少年の命を奪わんと振るわれたそれは、いとも容易く少年の身体を引き裂いた












はずだった

重く鈍い、鉄の音がした












「.........!」
少年は思わず目を瞑っていた
振り下ろされた『カマ』は少年の身体を引き裂くはずだった
しかし少年はある違和感を覚えた。痛みを感じないのだ
あまりの激痛に神経がダメージを脳に伝達することを放棄したのか?と考えたがそれにしては何も感じなさすぎる

少年は恐る恐る目を開いた






カゲの作り出した『カマ』が宙を舞い、少年のすぐ横の床に突き刺さった
同時に、カゲは黒い光の粒となって宙に溶けていった

「え...?」



少年は驚愕で目を開いた
そして身体から恐怖が抜け、視界がハッキリしてくると、自身の前に誰かが立ちふさがっているのに気がついた




黒い身体の.....やけに小さい、と言うか、一頭身の剣士




「........」

剣士は少年に振り向いた
その顔...身体?には仮面を装着していた
その仮面のせいで彼がどんな顔をしているのか判別できなかったが、そんなことは少年にとってはさしたる問題ではない

この剣士があのカゲから自分を助けてくれたのだろうか
少年がそんなことを考えている間に、目の前にいる一頭身の剣士はその場を後にしようとしていた

「あっ、あのっ....、待って...!」

剣士は立ち止まった。しかし少年に振り向くことはなかった

「貴方は...?」



少年の問いに対し、剣士は答えた

「...今は、それを知るべき時ではない」

「待ってください!せめて名前だけでも...!」

「...進むがいい」

少年の言葉を遮って剣士は言った

「...お前には自分で答えを探す義務がある。自分でこの状況を打開する力を探す必要がある」

「え...」

「世界を駆け、仲間を集うがいい。そうすれば自ずと答えは見えてくるはずだ」

「それってどういう...」

「...時間がない」



刹那、辺りが光に覆われた
光は少年を包み込もうとその輝きを増していく

「うわぁっ!?なんだこれ...!?」



「進め、少年。世界を救うために、世界を駆けろ————!」



光は少年を完全に包み込み、激しい閃光を放った



......そこに少年の姿はなかった
炎と埃、焼けた鉄の臭いと、不気味な静寂が何事もなかったかのように戻ってきていた

一頭身の剣士は、誰もいなくなった廃墟の一室で独り、呟いた

「私の役目はここまでだ......。再び会う時があるならば、その時は恐らく、敵として会うことになろうだろう...」


一頭身の剣士の身体が闇に溶け、消えていく













そして、死の街には完全なる静寂が訪れた——————————