二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第10話 同盟 ( No.13 )
日時: 2017/07/07 09:17
名前: kuzan (ID: B4StDirx)

喫茶店を出た後、バーサーカーは町外れにある大きな館に蓮達を連れて出た。
そこはヒャッチ・ディグソンの拠点となる場所であり、本拠地だ。

「…主様、同盟相手をお連れしました。」

門の前に行くと門の前で呟く。
すると門はゆっくりと開く。バーサーカーは蓮とセイバーを中に入れ、また前を歩く。

「…ああ、そうそう。
私の主様は聖堂教会からの派遣者なのです。」

バーサーカーは思い出したように呟く。

「聖堂教会?
確か神父は言ってたよな…。
『魔術協会や聖堂教会に嗅ぎつけられたらおしまいだ』と。
この時点で嗅ぎつけられていたのか…。」

蓮は考え込むようにつぶやく。
バーサーカーはいつもと変わらぬ笑みを浮かべているであろう。その表情で

「ええ、そうでしょうね。そしてそれを神父様は逆探知されているかと。
だって、これは聖堂教会からの情報ですが、魔術協会からの派遣者も参加しているそうなので。」

「魔術協会からもか…!?
まあ、時計塔の魔術師ならやりそうだが…」

「…話を戻しましょうか。
ヒャッチ様の目的は聖杯の破壊、もしくは回収でございます。
全く、私達サーヴァントはあれを欲しているというのに、容赦なく使わせない、と言っているようなものですからね…。」

思わずため息をつくバーサーカー。
それはそうだろう。サーヴァントが召喚されるのは聖杯を欲するからである。

「…この話は私達だけの秘密で。
ヒャッチ様には話すなと言われているので。」

大きな扉の前に立つとバーサーカーはこちらに向き、笑みを浮かべながら人差し指を口元に当てる。

「…バーサーカー、何故それを話した。」

セイバーがムッとしたような表情でバーサーカーを見る。だが、それは扉が開かれることで返答は得られなかった。

「…エスコートご苦労バーサーカー。
さて、まずはそこに座るといい、近山 蓮。」

部屋に入ると黒いスーツの大男が立っている。
バーサーカーのマスター、ヒャッチ・ディグソンだ。
ヒャッチはソファを指さすとコップを目の前に持っていき、それに紅茶を注ぐ。

「一応客人だ。
礼儀は尽くさなくてはな。何、何もしくんでいない。安心して飲め。」

ヒャッチは紅茶を注いだ後、遠くのテーブルに紅茶を置く。
そして蓮達の座ったソファの反対側の肘掛けソファに座る。

「さて、本題に入ろうか。
お前のサーヴァントはセイバーで間違いないな。」

蓮とセイバーを見る。

「ああ、俺のサーヴァントはセイバーだ。」

「…ふむ、分かった。真名については伏せておいて構わない。
後々それが仇となれば厄介だからな。」

「もとより私は真名など答えるつもりは無かったさ、バーサーカーのマスター。
そこは私も弁えている。」

セイバーはじっとヒャッチの方を見る。
ヒャッチは感心したように頷き

「このサーヴァントは優秀だな。
見てわかる。俺のサーヴァント、バーサーカーは一流ではあるが優秀とは言えない。」

「あらあら、ふふ、辛口な評判ですこと。
あのライダーを私は追い払ったのですよ?そこは褒めていただきたい。」

バーサーカーはニタリと笑う。その笑みはどこか狂気を感じる笑みだった。
だが、ヒャッチはそれを何ともせずに

「馬鹿言え、仕留められなくて何が優秀だ。
せいぜい良好だ。」

「あら、相手の性質を一度知るのは必要ではなくて?
あの戦いで私はいくつかライダーの真名に心当たりがいくつができましたよ?」

「言い訳はいい。
とにかくだ、このバーサーカーもセイバーも剣術を得意としている。」

「剣術?
バーサーカーがか?騎士かなにかなのか?」

セイバーが少し興味深そうに聞く。
ヒャッチは何も答えなかったが、バーサーカーが口を開いた。

「いいえ、私は騎士ではありません。
私は日本の英霊であり、武士、侍なのです。」

「ちょっと待て、侍だって!?
侍って…男がなるものじゃないのか?」

蓮が驚いてそう言う。
バーサーカーは予想通りと言わんばかりに笑みを作り

「ええ、本来ならそうでございます。
ですが、女が男を偽ってそのまま歴史に残ることも少なくはありません。
例えば___」

「バーサーカー、話しすぎだ。」

ここで終われと言わんばかりに眉に皺を寄せ、そう呟く。

「おっと失礼、もう少しで真名のヒントになる所でした。」

なんとも思っていないように笑みを浮かべ、主に頭を下げる。

「…まあいい。
使い魔を飛ばし合おう。何かあればこれで連絡し合う。
それでいいだろう?」

「…ああ、構わない。
よろしく頼む。ヒャッチ。」

と言いながら連は手を差し伸べる。
ヒャッチはそれに答えず、帰れと言わんばかりに背中を向けた。

「…硬いなぁ、さ、蓮、帰るぞ。」

同じようにサイバーは後ろを向き、その部屋から出て言った。
蓮も後に続く。

___

「…ヒャッチ様、本当にこれでよろしいのですね。」

クスクスと笑いながらバーサーカーは問いかける。
ヒャッチは顔色一つ変えず

「ああ。いいカモが連れたものだ。
お陰で作戦が決行できる。だが、まだ早い。」

冷静にそう言う表情は窓から入り込む月の明かりに照らされ、不気味に見えた。
バーサーカーはそれを見ればまたより一層笑みを深くした。