二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第12話 山の翁 ( No.16 )
日時: 2017/07/12 10:38
名前: kuzan (ID: P/XU6MHR)

聖杯戦争開戦から三日目の朝、アルト教会では朝の礼拝が捧げられていた。
その中には一般人もおり、新杯教会のメンバーも混ざっている。
中には1人、頬杖をつき、つまらそうにしている男がいた。
少し白の混ざった金髪で黒のジャケットと黒のボトムスを着こなしている男だ。

「んでイスラム教を信仰するオレにキリスト教の礼拝を見せるかねぇ。
クッソくだらねェ。」

そう、アサシンである。
後ろの方で明らかに場違い感を出している。

礼拝が終わった後、一人の女がアサシンに近づいてくる。
新杯教会所属の1人でありながらアサシンのマスターである女、フィマ・グランディスだ。
彼女は新杯教会1の魔術師であり、氷塊使いと言われている。

「…済まないわね、アサシン。
異教徒であるあなたに礼拝に付き合わせるなんて、自分でもどうかと思うわ。」

「…はっ、自覚はあんのかよグランディス。」

今までの屈辱と言わんばかりに悪態を吐く。
それほど耐えられない時間だったのだろう。

「ええ、自覚はあるわ。
それに、グランディスって言うのは辞めてちょうだい。ちゃんと名前で呼んでって言っているでしょうアサシン。」

明らかに怒りを込められた声で呟く。
アサシンははいはい、と流した後

「二日目の共有事項だ。
まずセイバー陣営とバーサーカー陣営の同盟が結ばれた。
自己証明強制による同盟だ。決裂はないだろう。
んで2個目。ライダーとランサーの衝突が起こった。
ランサーは昨日報告したように、真名は聖ロンギヌスであり、真名解放をして宝具を発動。
ライダーの真名も分かった。モンゴル帝国の創造者であり、侵略王とも言うべきか…」

「チンギス=ハンね。」

「ご名答。勉強できてンじゃねぇか。
チンギス=ハンはあの征服王イスカンダルよりも侵略したと言う。
やつの宝具もすべて把握した。重臣、四駿、四狗を召喚する宝具、ランサーにより四駿のうちの一人が消滅した。
そしてやつ最大の宝具が固有結界。詳しい効果はわからねェ。遠目で見てたからな。入り込んじゃおしまいだ。」

やれやれ、と言わんばかりに手を顔の横に持ってきて、首を二、三回降る。
フィマは考えこんだ様子を見せ、
「ベイリン、シモ・ヘイへ、聖ロンギヌス、チンギス=ハン…そして真名不明のキャスター、バーサーカー。この聖杯戦争、なかなかに厄介ね。シス神父が私を送り込んだ理由がわかった気がするわ…。
アサシン、やれる?」

「ああもちろん、山の翁の名にかけてこのハサン・サッバーハ、使命に応えよう。」

ニッ、と笑みを作って見せる。
それを見たフィマは

「なら安心ね。
今のところは魔術協会、聖堂教会所属のマスターを見つけたら殺す。
分かってるわね、でも誰が派遣者かは分からない。
慎重に動くようにお願いね。」

「わーってるっつーの。
マスターの1人や2人、さくっとやって来るっつーの。」

「…ありがとう、アサシン。
あなたこそ真のハサン・サッバーハね。」

と微笑んでみせる。

「やめろ、照れくせぇ。
とりあえず、オレはまた情報収集に戻る。オマエも当分マスターと感づかれないように動けよ。」

そう言えば霊体化し、アサシンは街に向かっていった。
それと同時に祭壇の方から足音が聞こえる。
シス神父だ。

「なかなか良いサーヴァントだ。
やはりアサシンを選んだのは正解だったな、フィマ。」

「ええ、そうね。
けど、あれはあなたが狙ったハサンでは無いわ。」

「…と、言うと?」

「彼は確かにハサン・サッバーハになり得た一人だわ。
でも、なり得ただけのただの暗殺者。
つまり彼はハサン・サッバーハに憧れたハサン・サッバーハの名を借りたハサン・サッバーハの偽物なのよ。」

シス神父は少し驚いた表情を作ればすぐに笑みを浮かべ

「何だそんなことか。
構わんさ。ハサン・サッバーハに近い存在だろう?なら彼はハサン・サッバーハの1人、紫電のハサンじゃないか。」

「紫電のハサン…
ええ、そうね。私は彼にかけるわ。彼ならきっと、指名を果たしてくれるもの。」

そう言って彼女は笑みを浮かべた。