二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第18話 策略 ( No.23 )
日時: 2017/09/08 09:26
名前: kuzan (ID: qcKQTBPa)

マスター権を失った女、ミヤ・アリベータは焦っていた。
彼女は知っている。歴戦を超えてきたサーヴァント達相手に1人じゃ何も出来ないということを。聖杯を回収できないということを。
そして何より___
初めて敗退したのは自分であり、そのまま時計塔に帰れば、どういう扱いをされるか、ということを。
それだけは避けなければならない。ならどうするか。どうすればこの聖杯戦争に復帰できるか。考えた挙句、ほかのマスターから令呪を奪うしかない、と考え、戦闘終了から約2時間後、街中に使い魔を飛ばした。
だが、ほぼ意味はなかった。ある使い魔は炎に焼かれ、ある使い魔は魔術の弾丸で落とされ、ある使い魔は聖槍に貫かれていた。
そして次の日の昼、それは失敗に終わると思い、次の手をうとうと思った時、使い魔の映像を映し出していた水晶が光出した。
そう、サーヴァントを見つけたのだ。
更に、そのサーヴァントのマスターが本拠地として活動しているのはアルト教会だった。
今まで見たことがないサーヴァントとすればアサシンだろう。ならばアサシンは今、魔術協会からの派遣者である自身を殺しにくる、と彼女は考える。

「…参ったわね…アサシンはマスター殺しのサーヴァント…。
このまま私1人でなんとかなると思えないわ…。」

そう、今、この状況はどうしようと無いほど絶望的だった。今は人が多い地帯にいるため、アサシンの方も迂闊に手は出せない。人の少ないところに向かえば間違いなく攻撃を仕掛けてくるだろうと考え、カフェの中でコーヒーを飲んでいる。

「…厄介なのに目をつけられたわね…。
マスターを見つけたのは言いけれど、そこからどうしろって言うのよ。
てか、まさか教会内にマスターがいるとはね…。あの神父、サーヴァントを仲間に入れることで私とヒャッチ・ディグソンを軽く討伐しようって言う戦略…?それとも…他に別の目的があるのかしら…」

と、ズレた考察をしている時、とんとん、と肩を叩かれ

「Lady,You dropped your wallet.(レディ、あなたの財布を落としましたよ。)」

と声がかかる。
紫色の腰まで伸ばした髪を持ち、黒のパーカーにジーパンを着用した女だ。顔立ちからして日本人だろう、と彼女は考察する。

「…Thank you.
…ん…?ちょっと待ちなさい、アンタもしかして…」

財布を受け取り、暫く相手に笑みを見せていたが、それは突然失われた。
そう、自分は相手の顔を見たことがある、と考えたのだ。

「…バーサーカー!?
何、私を殺しに来たの…?」

当然というように目の前に女、バーサーカーが座る。
バーサーカーはいつもの笑みを浮かべながら首を振る。

「…いいえ、それならば目のつかないところでやります。
ですが…ふふ…。私の主は聖堂教会所属、あなたは魔術協会所属。つまり私の主とあなたは所属は違えど同じ目的のはずです。
だから私はあなたに仕えることにします。ええ、これは我が主の指示ではありません。私の意思でございます。
そろそろ、私の宝具の使い所が迫ってきています故、こうして相手を見つけておかなければ後が困りますからねぇ。
…如何がなさいます?悪い話ではないと思うのですが。」

バーサーカーは笑をより深くする。その笑みには悪意が見てわかるほどに溢れており、不気味に感じるだろう。
だが、ミヤは戦わなければならなかった。どれだけ目の前の相手が信じられないような相手でも、勝算があればそれにかけたいと思ったからだ。

「…分かったわ。あんたのその策略に乗ってやろうじゃないの。バーサーカー。」

渋々というように彼女は頷き、乗ったということを示した。

「…ええ、ありがとうございます。
では、私の真名を教えておきましょう。」

にこり、と笑みを作り直せば用意していた紙とペンに自分の真名を英語で書き、相手に見せる。

「…この、名前…
なるほど…それがあなたをバーサーカーの枠として留める理由ね…そして今から行おうとすることは…」

「ええ、あなたの考えているとおりですよ仮のマスター。そのために私は仮を作っておかなければなりません。
…よろしくお願いしますね、ええと…」

「ミヤ・アリベータ。
ミヤでいいわ。」

「…ええ、ではよろしくお願いしますね、ミヤ様?」

ニコリと、また笑う。
その笑みは黒く、不気味に見えるだろう。
ミヤは悪感を背筋に感じるのだった。