二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第26話 共同戦線 ( No.32 )
日時: 2017/11/16 12:15
名前: kuzan (ID: EP9rvI.Z)

山を進む蓮達は教会までの道中一切話をすることは無かった。
それは警戒のためであり、バーサーカーもそれを理解してか、時々後ろを向き、ただただいつもの不気味な笑みを浮かべるだけだった。
それに対し二人は顔を顰め、どうすることも出来ない。
しかし、そんな中、セイバーか突如立ち止まる。

「…セイバー?」

蓮は不振に思い、少し先からセイバーに声をかける。
もちろんバーサーカーもその場で立ち止まり「…どうされました?」と首を傾げる。
そして次の瞬間、セイバーは蓮の首根っこをつかみ、自分の後ろに下げ、剣を抜き、防御するように構える。
するとその場にはアサシンがおり、手に短刀を持って蓮のいた場所に突き刺そうとしていた。

「…アサシン…!!」

蓮は後ろに下げられた反動で地面に尻餅をつき、見上げるようにアサシンの姿を確認した。
そしてバーサーカーもしばらく呆然としていたが、剣を手に現界させ、構えた。

「…チィ、行けると思ったンだけどなァ。
セイバーテメェ、直感でも持ってやがるな?」

アサシンは一度後ろに下がり、忌々しそうに舌打ちをした。
そしてセイバーはもう一つの剣も構え

「そうだ、お前のその攻撃、スキルによって読ませて貰った!
私のマスターに手を出したということは、覚悟ができているということだな…!」

片方の剣をアサシンの方に向け、宣戦布告と言わんばかりに言う。
アサシンは苛立ちを隠せないようで更に顔が険しくなる。

「…覚悟ォ?
出来てるわけねェだろ…ココでテメェらは俺に殺されるんだからなァ!」

バチバチ、と青白い電撃がアサシンの周りに走る。
法具、『妄想電身ザバーニーヤ』を発動したのだ。

【『妄想電身ザバーニーヤ
ランク: C種別: 対人宝具
レンジ: 3〜9最大捕捉:1人

電撃の塊と言える肉体そのものが彼の宝具。爪・肌・体液にすら電撃が含まれている。
その電撃は強靭な幻想種ですら殺しうる程。人間の魔術師であればどれほどの護符や魔術があろうと彼に触れるだけで死亡する。
しかも、犠牲者の体にまで残留し、遺体に触れた者にも被害を及ぼす凶悪なもの。
なお、この全身の電撃は彼の意志で制御することが不可能で、触れた者に無差別に作用してしまう。
実は、生前はこれほど強力ではなく、電撃も低出力で、彼が英霊となったことで昇華された結果である。生前の使い方は、ただ相手を麻痺させ、触れ手戦闘不能にさせ、短刀で突き刺すという手間が必要だった。】

「我が身の真名はとっくの昔に捨てた、名もねェ暗殺者。
我が魂の真名、紫電のハサン…!
先に逝く前に我が存在、テメェらの霊基たましいに叩き込みやがれ…!」

バチ、バチと音を立てながらその電撃はより強力に、大きくなる。
そんな様子を見てセイバーは確信した。

(…先ほどコイツは覚悟はできてないと言っていたな…
だが、これほどの宝具の出力…これは…最後の覚悟だな…ならば、私も全力を出さねばならない…!)

「アサシン、貴公の覚悟はよく分かった。敬意を払って私も名乗ろう。
私こそ呪いの剣の担ぎ手にして最優の騎士…双剣の騎士、ベイリンである…!」

と呪いの剣を相手の方に向け、その後もう一つの剣を鞘に収め、両手で剣を構える。

「…マスター、悪いが宝具を開帳する。
バーサーカー、少し援護しろ。」

「…仕方がありません。恐らく宝具発動に時間がかかり、その間無防備になるのでしょう。助けたいのは山々でございます。しかし私一人のみでこの雷撃を捌ききれるとは思いませんねぇ。」

と、アサシンの雷撃を切り伏せ、クスクスと笑いながら答える。

「そんな…!」

蓮がそうつぶやく。
これでは無防備となったセイバーに攻撃が届き、セイバーがやられてしまう可能性がある、と考えたからだ。

「せめてあと一人サーヴァントがこの場にいれば防げると思ったのですがねぇ。」

バーサーカーが無理にすべての攻撃を防ぎながら呟く。その証拠に彼女の頬にアサシンの投げた短剣が掠った。状況としてはとても不利な状況だった。しかし

「話は聞かせていただきました。
ではその役割、私達も受け持ちましょう。」

という声とともにランサー、ライダーが現れた。

「ランサーに負わされた傷が痛むところだが、こればかりは仕方あるまい。
この儂の力、存分に震わせてもらうぞ!」

「ランサーと…ライダーか!
助かる、済まない!」

蓮はサーヴァント2騎に軽く頭を下げ、感謝を表す。
ランサーは蓮の方を向き

「貴方は優しいお方ですね。
しかし今回限りの助太刀です。終われば敵同士ということを理解しておいてください、セイバーのマスター。」

とほほ笑みを浮かべながら呟く。そしてそのままアサシンの攻撃を防ぐべく動く。
サーヴァント4騎の一時的な共同戦線はとても強力なものであり、セイバーの方に攻撃が流れることは無かった。
その影響からか、アサシンの雷撃も少し弱まっていた。
そして呪いの剣の刃に黒いオーラのような物がまとわりついていた。

「…放出準備完了!
この剣は最優の騎士のみに抜くことを許される剣。
この剣は愛する者を殺す呪いの剣。
呪いの力、今、汝に示そう…!
『最優の騎士こそ扱えし呪いの剣』(ソード・オブ…カァァァァァス)!!」

【『最優の騎士こそ扱えし呪いのソード・オブ・カース
ランク: B+ 種別: 対軍宝具
レンジ:1〜50 最大補足:500

この世で最も優れた騎士にしか抜けない剣と言われる剣をベイリン卿は、見事に剣を抜くことに成功した。「自分の最も愛するものを殺害する」という呪いがかかっている。
また、湖の乙女を殺した剣でもある。
この逸話からこの剣は妖精・精霊属性には不治の傷を与える特攻効果を、生前騎士として生きてきた者には対峙した際に筋力、耐久、敏捷がワンランクアップする特攻効果を得る。
そしてこの宝具は「魔力放出」スキルの応用編であり、真名解放時に呪いの剣のみを構えた時に発動することが出来る。この剣の呪いを魔力という形で剣に叩きこみ、増幅させて打ち放っている。
呪いが刃に集まるまで少し時間がかかり、そのあいだ彼女は無防備となるデメリットも持つ。】

セイバーは構えていた剣を一度右下に振りかぶり、勢いよくアサシンの方に振り上げる。
すると剣から黒の光線のようなものがアサシンに放出される。
攻撃を足止めしていた4騎はその瞬間四方八方に散り、攻撃に巻き込まれないように防御態勢をとった。

「クソッタレがァァァァァ!!」

アサシンはそう叫びながら最大出力の電撃を光線に向け、抵抗しようとした。
しかし、すぐに押し込まれてしまい、アサシンの方に光線は向かっていく。

「…そうか、そうだよな。俺見たいなやつが山の翁になれる訳がなかったんだ。
面目ねぇ、歴代の山の翁に合わせる顔がねぇよ…。
そして、悪いな、フィマ。俺はここまでらしい。」

と光線に巻き込まれる間際にそう呟き、どこかに微笑みをみせた。

光線が消えると、そこにアサシンの姿はなく、青白い光がその場から立ち上がっていた。近くの木の枝を見れば黒い帽子がゆらゆらと風に揺れていた。
そしてその帽子がアサシンの立っていたところに落ちた。

「…貴公は立派な暗殺者だった。
敬意を払うよ。」

と帽子を見下ろしながらセイバーは呟く。
そして先に進んだ。