二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 戦闘中 〜ボクらの絆〜 ※オリキャラ ( No.11 )
日時: 2018/06/22 20:16
名前: フウ (ID: fDoLpxww)

 操作画面が切り替わり、液晶に各プレイヤーのバストアップ写真と所持金額が映し出される。ミッション発動からまだ2分も経たないのに3人が撃破されていた。
 それぞれの所持金はイエローを除いて刻一刻と削られ続けていたが、たった今、あるプレイヤーの所持金がかすかに増額した。同時に、所持金残額が4万を切っていた女性プレイヤーの写真がふっと消失する。



「え」



 死角から聞こえた短い悲鳴と、仰々しい撃破音。
 顔を引きつらせ首をねじると、納屋の陰から半分ポリゴン化している桃色ベストの女が転がり出てきた。ブルーの姿を見とめ、ごてごてしたネイルを施した人差し指を向ける。

「!」
「ああ〜もう、クソッたれ!! ブルー、てめえいつの間にそ、」

 乱雑な言葉尻は桃の姿と共に掻き消えた。恨み節をぶつけられたことよりも、数秒前まで狙われていたという事実に、ブルーの肌は粟立った。

(……そうか、そうだよな……! この状況だと、おれもイエローさんと同じくらい狙われる……!!)

 もうすぐイエローと逆転するだろうが、実は今最も所持金が多いのはブルーなのだ。ブルー、イエローの次の高額保持者となると一気に20万を切ってくるほど、プレイヤーの所持金額は二極化している。百戦錬磨のイエローと直接対決をするよりも、無名のブルーを倒してその場をしのごうとするプレイヤーは多いだろう。もしかすると、ほとんどがそうかもしれない。
 あの子がこのミッションを切り抜けられるかわからないし、力になってあげたいが、自分が傍に行ったところで彼女が巻き添えを食うだけかもしれない。そしてやはり、不特定多数から狙われているという事実はどうしようもなくブルーを及び腰にした。
 内心でごめん、とレッドに謝ってから、

「このミッションが終わるまで、どこかに隠れるぞ! 見つかりにくい場所探すの手伝」



 右。



 殴りつけるようなイエローの投球を、すんでのところで間に滑り込んだ月光がキャッチした。飛び込みざま、体全てで包むようにしてバトルボールを受け、地面を転がる勢いを逆利用して立ち上がる。ブルーは反応すらできない。そんな彼の脚を狙ったイエローの二球目は旋転してマスターを抱え跳んだ月光に阻まれ、ボールは嘘のような球速で彼方へとすっ飛んでいった。
 後ろ手に抱え込んだマスターを地へ下ろすと、月光は足を開き身をかがめ、威嚇の如き面差しで敵を凝視する。対するイエローはへえ、と感心した面持ち、両者の間に割って入り、盾を構えているのは彼の忍である大盾忍だ。互いの間合いのわずか外で、出方を計り合うような数秒が過ぎる。

「ほお〜、あれを避けるなんてなあ。いい動きすんのな、お前の忍!」
「……イエローさん、なんでおれを? あんたのことだ、たまたま通りかかったわけでも金目的でってわけでもないんだろ?」

 ちょっと意外そうに眉を持ち上げるイエロー。その表情は、たちまちのうちに不敵な薄笑いに取って代わる。相手は丸腰だというのに、その笑みだけでブルーは気圧されそうになる。

「大当たり。こんな搦め手使ったところで、残ったプレイヤーのほとんどは俺と戦いたがらない。俺以外の敵との潰し合いが激化するのが関の山だろうな」

 倒せば強制失格を免れる、高額賞金保持者がいる限りは。

「だから奴らの選択肢を、俺と戦うか失格になるかの二択に絞らせる。そのためにはどうしても、俺はおまえを倒さなきゃなんねえんだよ、ブルー」
(そういうことか……!)

 雀の涙程度の所持金しか持たない敵プレイヤーを倒したところで、差し引かれる15万円分を稼げなければゲームから排除される。撃破数を重ねられればよかろうが、この広いエリアに散らばっている敵に、5分で何回会敵できるというのか。誰を倒しても強制失格から逃れられないとなれば、だめ元でもプレイヤーは位置情報がわかるイエローと戦わざるを得ない。その状況を作り出すために、イエローはブルーと向かい合っているのだ。

「くっ、……」
「おおっと! 逃げ道はないぜえっ!」

 後ずさり、納屋に視線を向けた瞬間にイエローは動いた。助走をつけて地を蹴り、なんと大盾忍の盾の縁に落下、再び跳躍する。呼吸を忘れるブルー、対して月光は動ずることなく、太陽を背に負う敵へと素晴らしい速球を投げ打った。
 ガツン、と鈍い音。

「「!?」」

 ブルーも、月光さえも瞠目した。牙を剥いてイエローは笑う。あろうことか、イエローは月光の速球を真っ向喰らいついて受け止めたのだ。着地点はブルーの背後、何とか身をよじったブルーの瞳に、目をらんらんと輝かせてボールを振りかぶるイエローの姿がいっぱいに映った。
 時間が粘り気を帯び、目に見えるイエローの挙動がひどく緩慢になる。


 ここか。
 ここまで来ておいて、おれはこんなところで終わるのか。