二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 戦闘中 〜ボクらの絆〜 ※オリキャラ ( No.2 )
日時: 2018/06/17 14:42
名前: フウ (ID: fDoLpxww)

「……は? 『イエローが茶を撃破。白が緑を撃破。橙が黒を撃破。赤チーム、残り7人。青チーム、残り5人』?」


 橋の前に群生するうっそうとした林の中で、イエローは画面に表示された文章を読み上げる。今しがた倒した敵プレイヤーの名前に、さっきまで一緒にいた味方の名前も並んでいるのを見てうろたえた。
 ……木々によって密に覆われた、薄暗い区域。光る液晶に気を取られているイエローは格好の的といってよかった。

「うおっ!?」

 短い発砲音によって意識を現実に引き戻され、イエローは寸でのところで身を反らす。数秒前まで足があった場所を、バトルボールより二回りは小さい黒球が跳ねている。
 ————射程距離15メートル。忍をも一瞬で撃ち抜くチートアイテム、バトルランチャーの弾だった。

「なっ……」

 イエローは直上を見上げた。呆れるほど高い木の上で梢が揺れ、黒々とした影が隣の木へ飛び移る。そこまでは見えたが、イエローが目で追っていると判断するや、影は更に速度を上げて周囲の高木を飛び回り始めた。
 考えるまでもなく、そんな動きが出来る存在はひとつしかいない。

「おっしゃあ行ける! 忍、そのままかく乱しながらタイミング見て次を撃て!」
「囲え囲え囲え!! 茶さんの犠牲を無駄にすんな!!」
「!!」

 暗がりに紛れて、少なくないプレイヤーの叫び声がする。この場を離れようと踏み出せば、威嚇射撃のようにバトルボールが飛んでくる。それを拾おうとして伸ばした手の先をもバトルボールが狙い、結局2球とも林の闇の中に消えた。
 窮地に陥りながらも、イエローは声を数えていた。嗄れ声、早口、オネエ語、方言、女、そして。

 ————マジかよ。

 ひゅう、と口笛を吹く。汗がこぼれ、耳元で血がどくどくと脈打つ。頬が裂けるような笑みが浮き出るが、興奮故か緊張故か、自分でもわからなかった。

「……高く買われたもんだな」

 プレイヤー6人に、忍1体。
 木陰に隠れながら、プレイヤーたちがイエローを遠巻きにして円状に回っている。彼らとの間隔は己の投げるボールの飛距離よりわずかに外、一か八か投げたとしても、その隙を別方向から突かれてアウトだろう。敵に囲まれたことは腐るほどある。しかしまさか、全方位に敵がいるなどという状況に追い込まれるとは。
 完全に自分のミスだ。心中で緑と黒に詫びる。敵味方関係なく、相手の存在を失念していた。とにかく戦いたい、その一念のみで動いた結果がこのざまだ。
 

『来てる来てる!! イエローさん来てる!!』
『なあ、イエローが来てるってウワサが流れて来たんだけど』
『うわあぁあああ!! 何でイエローがいるんだよ!!』
『逃げろ————!! イエローが出たぞ————!!』


 ここ1年、山から下りてきた熊や浜に打ち上げられたサメのような扱いだった。
初戦が最終決戦、なんてことも増えた。
 実のところ、闘技場へ行った理由にしても、あそこへ行けば確実に一回は戦闘が出来ると考えてのことで、どの忍が当たるかは興味の埒外だったのだ。



『! !』
『あはは、逐一折らなくても枝くらいよけれるっての! そこの石にも穴にも気づいてるから! 心配しいだなー、お前は』



 そんな理由で選ばれたというのに、弾むように自分に付き従う大盾がまぶしかった。



『〜〜! !!』
『へ、平気平気、ちょい脛打っただけだ。おめーの盾めちゃくちゃ硬いのな……』
『……』
『す、すまん。俺からぶつかってったのに言い方が悪かったな。まーでもあれだ、敵も倒せたことだし結果オーライってこった。ははは……』



 だんだん己がマスターの邪魔になっていることを感じ取り、表情が陰っていくように見えるのがいたたまれなかった。
 だから、大盾をふさわしい場所においてやろうと考えた。備えられた“守る力”を存分に生かせるところに。しかし思えば、それは自分が見たくないものを遠ざけただけだったのかもしれない。