二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 戦闘中 〜ボクらの絆〜 ※オリキャラ ( No.5 )
- 日時: 2018/06/18 23:09
- 名前: フウ (ID: fDoLpxww)
○battle fou you 誓約中
【通達】
敗者復活戦に使用した恐竜を解き放った。計3体。極度の興奮状態にあり、動くものを見境なく襲う。回避する方法はない。
【ミッション】恐竜を撃退せよ
武器屋に「エネルギーパック」を追加した。これを所定の場所まで運び、「戦車」を起動せよ。
◇
そう遠くないところで、誰かの悲鳴が聞こえた。
長く尾を引く絶叫と地鳴りにも似た咆哮に、レッドは思わず足を止める。前方を警戒しながら先行していた赤い腕輪の忍がマスターの怯えを察し、すぐに引き返してきた。
案ずるなと諭すように、一度だけ深く頷く。射通す視線に励まされ、レッドは何とか小さな笑みを浮かべた。胸に抱えたエネルギーパックをぎゅっと握りしめる。
「うん。わかってる」
息を整え萎えかけた足に鞭打ち、レッドは再び城下町の街道を走り始めた。拝殿が破壊された神社を右に曲がり、踏みつぶされた幾百の番傘を飛び越え、一心不乱に足を動かす。早くこれを届けないと、そう遠くないうちに犠牲者が出る。
「レッドちゃん!? あんたまさか、あの馬鹿げたミッション参加するつもりなの!?」
通り過ぎかけた茶屋の中から、紫のベストを着た女性が飛び出してきた。腕を強く掴まれる。
「やめなさい、隠れていなさい! 危険すぎるわ!!」
「でも、このままだとみんなが……!」
「死んだら元も子もないじゃないのよ! あんたみたいな若い子が命晒す必要ない!」
言い合うふたりの右後方、軒を連ねていた長屋が爆散した。砕けた柱や壁が木の葉みたいに舞い飛んでいく。
振り仰いだままの態勢で、レッドと紫は硬直した。古式住宅を木っ端にぶち抜いて、身の丈8メートルの肉食恐竜が踊り出てきた。
恐竜はレッドの腕ほどもある牙で屋根を噛み砕き、舞い散る木片の感触をうっとおしがるように首を振る。濁った双眸が、不意にふたりの姿を捉えた。
「うわあぁあああぁあ!」
鋼鉄の腕が腰に回るのを感じた。突撃してきた恐竜を避けるため、忍はレッドを小脇に抱えて横ざまに跳んだ。
エネルギーパックが腕の中から滑り落ちる。とっさに手を伸ばしたが届かず、せめてとレッドは落ちた先を目で追おうとしたが、パックは立ち込める粉塵の中に消えてしまった。
着地と同時に忍は行燈の陰まで飛びすさり、レッドを押し倒してその上に覆いかぶさった。ここまでの至近距離にいれば、どう動いても必ず見つかる。現状況下で最も危機回避率が高い行動を瞬時に算出した、アンドロイドらしい行動だった。
無論そんなことが動転しているレッドにわかる訳もなく、押さえつける忍の腕から懸命に顔を出した。
「さ、さっきの人は!?」
応えたのはヒステリックな金切り声だった。
レッドの視線の先、腰を抜かしへたり込む紫が、たかが外れたみたいにわめいている。わめきながらバトルボールを恐竜に投げつけている。その中の一投が点々と地面を跳ね、10数メートル先にいた恐竜の足指に当たった。人間の頭ほどもある眼球がごろりと動く。
「ダメッ!! お願い忍、どいてッ!!」
がむしゃらに身をよじるが、忍が巌の如くのしかかっていて抜け出せない。地響きと共に、恐竜が紫との距離を詰める。紫が死に物狂いで後ずさる。
恐竜が頭を低く構え、轟音を上げて地面を踏み抜いた。空間を揺るがす吠え声、その只中を裂いて、レッドの“命令”が忍を貫いた。
「忍ッ!! どきなさい!!」
「ッ!」
わずかに浮いた体の下から這いずり出て、レッドは紫に駆け寄った。腕を引き恐竜の進行方向から逃れようとするが、彼女に脱力した成人女性の体重は重すぎた。
やられる……! 恐怖からまぶたを閉じた矢先、レッドは息の詰まるような衝撃を受け、紫共々真横へ突き転がされた。目を見開き、地を掻いて上体を起こす。
土煙舞う中、己の忍とそれにぶつかる恐竜の鼻面が、何にも増してはっきり見えた。
「忍————!!」
ものすごい音がした。