二次創作小説(映像)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ドラゴンクエスト—Original—漆黒の姫騎士
- 日時: 2013/12/06 22:23
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: V4iGFt6a)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=24342
——世界が美しい勇者を求めるならば。
わたしは決して、主人公にはなれないから。
【 お知らせ 】
Chess、もしくは漆千音です。
(旧)二次小説(紙ほか)にて更新しておりました
『 ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士』
…のリメイクver.であります。
やっやこしい設定をばっさり切り捨てて話の展開をもう少しゆっくりに…するつもりです。((←ォィ
もう一つの作品『 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ』と
かぶる名前が多々出てきますが、決して関係はありません。この名前が好きなんだと解釈願います。
…珍しく真面目な文章書いていますが実際の性格はぶっ飛んでおります←
ではでは、新小説共々、よろしくお願いします((*´ω`
【 ヒストリー 】
2013
12/6 スレッド作成、更新開始
Page:1 2
- ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.1 )
- 日時: 2013/12/06 22:30
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: V4iGFt6a)
__目次
【 序 】 >>2-3
【 Ⅰ 】
- ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.2 )
- 日時: 2013/12/06 22:22
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: V4iGFt6a)
“ 砂時計の中で落ちてゆくもの、
それは人の記憶。 ”
【 序 】
風の歌声にハーモニーを加えるのは、幾年も同じ青を惜しみなくさらけ出していた木々や草花。
誰に見られるわけでもなくただ無造作に成長し続けた植物たちの、誰に聴かれるわけでもない合唱は、
今日も風と共に消えてゆく。小鳥のソプラノも、小動物の主旋律も何もない。
風や葉が奏でるのは、ヴォーカルのいない不完全な合奏。
それでも止むことなく続けるのは、まるで誰かを求めているかのようにも見えた。
気付いてほしい。ここにはまだ残されたものがある。誰も知らない、知られていない、
たった一つの国の残骸。
忘れないで。覚えていて。誰もいない滅びた国が訴える声を、風は代弁しているのかもしれない。
——世界の西、世界地図から消すには大きすぎる大陸の、北西部。
少々くすぶった外壁と、雑草の伸びた荒れ庭を持つ、ところどころ朽ちてはいるが、
かつての荘厳さを微小ながらに残す、城。
名を、幻の大国——マレイヴァ。
——あまり見ない蒼色の髪と、同じ蒼色の眸を持つ、十八歳の青年がいた。
空は快晴。海はどこまでも透き通ったエメラルド・グリーン。風は南。
高く飛ぶカモメは、しばらくの良い天候を保証しているかのようだ。
彼を運ぶ決して乗り心地がいいとは言えない舟は、これでも——あるいはやはり——村一番の
ベテランである。幾度となく長い船旅を漁師たちと共にし、幾度となく船員の命を守ってきたという
涙ぐましい歴史を重ねた、年配曰く『この世で間違いなく最も優れた舟』は、
青年たちのような若者にはいまひとつピンとこない代物ではあったが、
青年の目的地へ無事に運んでくれるのであれば最も優れていようが最も古かろうが構わなかった。
村の友達に影響されて少しだけ伸ばした青年の髪が、潮風に泳ぐ。
髪型で人の顔も変わるぞと唆され、成程確かにと思った時期もあったが、今は目や口に侵入し、
邪魔をしてくる。帰ったら切ってしまおう、と考えながらそれを手でかき上げたとき、船乗りの声がした。
「おぅい、兄ちゃん。ほんとーにこっちで当ってんだな!?」
「ええ」普段から大声を張る仕事をしているだけあって、よく通る声だと思った。「当たっています」
「しっかしなぁ」船乗りは視線を目の前に戻して、もともと厳つい顔を更にしかめた。「何も見えんぞ」
「もうすぐですよ」青年はもう一度返した。
そこへ行ったことがあるわけではない。何の根拠もない発言だというのに、妙に自信だけはあった。
果たしてそれは、自分の中に代々伝わる血の記憶なのか。それともただの野生の勘なのか。
青年の確信に満ちた表情は船乗りを完全に安心させる材料にはならなかった。
「最近の若ぇもんは適当なこと抜かしやがるからなぁ…」本人の前で愚痴を言う彼も
なかなか大した性格だと、『最近の若ぇもん』にしては幾分か誠実な方である青年は苦笑した。
百聞は一見に如かずとはよく言うもので、亀がこの小舟を陸地で一周まわるほどの時間が経過した時
見え始めたものに、船乗りはようやく胡散臭そうに寄せていた眉を本来の位置へ戻した。
左斜め前方には確かに、決して小さくはない陸地が、まるで幻のように淡白くその姿を浮かび上がらせている。
「いやぁ、ここまで遠出したのも初めてだなぁ。こんなとこに島があるとは知らなんだ。
何だ、おめぇこれにでも会いに行くのかい?」
これ、と言って船乗りは得意げな表情で小指を振って見せる。
その意味の伝わらなかった青年はとりあえず、「…両手で運転してください」と冷静に指摘した。
何をどう思ってかそれを照れ隠しだと勘違いした船乗りは、「いいねぇ青春だねぇ」と、
何ともお決まりの台詞を口にしながら、気を利かせたつもりが幾分か速度を上げる。
舟が大きく揺れて、足が床を離れる。強打した腰から鈍い痛みが全身に広がる。
青年の髪の毛がまた口の中に入りこんだ。うん、切ってしまおう。
びりびりとした腰の痛みよりも先に、頬をくすぐる細い髪を払って、青年は考えた。
「ほんとーに帰っちまっていいのか?」
船乗りは一転、心配と怪訝と不信を混ぜこぜにしたようなしわがれた声をあげる。
「まさかここに一日中いていただくわけにもいきませんし」
いかにも、さも当然と言うように答える青年を前に、流石に今回ばかりは『最近の…』とは言えずに、
追って質問をするのはもちろん、大人としての(一応、青年も大人と言えば大人だが)保護心と
責任感が生まれるからである。どうやって帰るのかと言うつもりで訊いたのに、
全く別の回答をされて、ハイそうですかと引き下がれるほど薄情な性格でもない。
「だからってなぁ…お前さん、どー考えたってここぁ無人島だぞ?
どうやって帰んだよ。いやそもそも、何をする気だ?」
妥当な質問攻めにあっても、青年の表情は変わらない。「大丈夫です。ありがとうございました」
「イヤ、ありがとうございましたって」
こちらの求めた情報の答えは全く返ってこない。だが、このやりとりは船乗りが、
その大陸が無人だと気づいた時からずっと続いている。これからどんな言葉を並べたてようと、
このやりとりが平行線続きであることは容易に想像がついた。
——しばらくしたら、戻ってくることにでもするか。
その考えを青年に言うことはなく、船乗りは「あぁ分かった分かった」とようやく折れたふりをした。
青年が頭を下げる。まぁ、この様子から、ここで自殺するとかそういうことはないだろう。
これでも四人の息子と二人の娘を育てた父親でもある男は、それだけには確信をもっていた。
手をひらりと振って舟に戻る。わざと時間を費やしてエンジンをかけ、
青年が心変わりする僅かな期待をかけたが、青年は最後までそれを見送るだけでそこから一歩も動かず、
一言もしゃべらなかった。
- Re: ドラゴンクエスト—Original—漆黒の姫騎士 ( No.3 )
- 日時: 2013/12/06 22:29
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: V4iGFt6a)
風の歌声にハーモニーを加えるのは、幾年も同じ青を惜しみなくさらけ出していた木々や草花。
誰に見られるわけでもなくただ無造作に成長し続けた植物たちの、誰に聴かれるわけでもなかった合唱。
小鳥のソプラノも、小動物の主旋律も何もなかった。
風や葉が奏でるのは、ヴォーカルのいない不完全な合奏だった。
——風は待っていた。誰と言うわけでもなく、ただ、この歌声に気付いてくれる者を。
明確な記憶の一ページに、この存在を書き記せる者を。
青年の足音が、新たな旋律を生み出してゆく。
踏みしめられた土の音。緊張した下手くそな息遣い。決して美しい音色じゃない。
けれど、新しいパートを歓迎した風は、導くようにその国の方向へと走り出した。
青年はその誘いを拒むことはない。初めから目的は、その国だった。
握りしめた感覚を確かめる。大丈夫、ここにある。何かを確信するということは、
その規模がどうであれ、自信をもたらしてくれるものである。先ほどの船乗りではないが、
青年は少しだけ歩みの速度を上げる。伸びきり、その生命力を失って茶色がかった草花が、
道であったものを覆い尽くして行く手を阻んでいる。小刀を持ってきたのは正解だった。
家族は承知の上のため許してくれるだろうが、先程の船乗りにばれていたら
取り上げられていただろうなぁ、と、最後に見た心配そうな貌を思い出す。
枯れた草花の根を切り、さらに進む。再三繰り返したのち、青年はようやく
その黒ずみがかった城壁を目にした。役目を終えたとばかりに、風が消えてゆくのが分かった。
辺りは静かだった。遠くの風の音、波の音さえ、耳に運ばれてくる。
先ほどとは打って変わり、何の気配も、何の生気も感じられなかった。
自分の鼓動が聞こえてくる。速い。そんなに酸素を求めているのか、自分は。
一般とは少々ずれた考えを抱いてから、青年は両手を胸の前で組み、
人さし指と中指だけ立てて交差させた。それはかつてのこの国の、“祈り”の印である。
おもむろに歩を進め、城下町の中を進んだ。
風が消えたというのに、青年は再び導かれるように一つの像の前で足を止めた。
荒れ果てたこの地からは想像できないほど美しく、不思議な石像は、
この瓦礫と枯草しか見当たらないこの地の中で、どこも朽ちることなく、
壊れることなく今でも輝き続けていた。
——綺麗だな。青年は思った。この年頃の男が美を語るのは冷やかしの対象になるようなものだったが、
村の野郎ども全員に見せたとして、間違いなく全員が同じように思うだろう。
それほど石像は優美で、一種の神々しささえ兼ね備えていた。
——さぁ、ここからだ。青年は左足を引き、片膝を立てて頭を垂れた。
印はそのまま。静かに目を閉じる。再び、遠くで風の声が聞こえた。
「——古に存在せし真の勇者よ。数多の苦難を乗り越え、幾度となく邪を退けた正義の魂よ…
我は遺志を継ぐもの、唯一無二、子の血を受け継ぐ者。我、儀式に基づき、全てを後に語り継ぐことを誓う」
青年は目を伏せたまま、口をほとんど動かさずに言い切った。上手く言えるだろうかと言う心配は
口を開いたときに既に消え去り、気付けばすべてを言い切っていた。
しばらくの静寂が再び町を支配し、時が止まる。長いようで短い時が流れた。
卯の花を連想させる淡い光が、少しずつ石像の輝きを包み始めた。
——汝の儀式、受け入れた。
無人のはずのそこから、重苦しい声が響いた。性別、年齢不明。
現実、考えれば恐怖の対象に当たる怪奇現象ではあるが、青年は驚く様子もなく、唇は弧を描いてすらいた。
『汝の求めるものは』声は訊く。
「古の世の真実」青年は答える。
見えない誰かが、満足げに笑った気がした。
いらっしゃい、と歓迎までされたように感じたのは、この像の温かな輝きの所為だろうか。
光は次第にその色を強めてゆく。金色の粒子が、青年もろとも包み込んでゆく。
青年がその存在を確認していたもの—— 一つの首飾りが、僅かながらに共鳴するように輝きだす。
あぁ、ようやくこの日が来た。
——私たちの先祖はね。この世界を残した人間なんだ。
昔、冗談めかしたように、それでいてどこか誇らしげに話してくれた父親の顔が一瞬、思いついた。
聞いて飽きなかったおとぎ話は、全てを知るには足りることのない物語。
——いま、全てを知ることができる。
『古の真の経緯』
『幾年を経ても忘らるる事なき光の申し子、神の使者、世界樹人の子孫』
『汝の子孫に——再び、真実を与えよ』
夢のように紡がれてゆく声は、次第に一人分の声に聞こえてくる。
女性——だろうか。凛と張りつめているようで、
けれどどこか穏やかな——幾多にも捕らえられる不思議な声色は、
青年の意識を手放させるには充分な効果を持っていた。
——どれくらい、経っただろう。
青年は薄れ行く自分の意思に、目を開けてみろ、と小さく言った——…。
- Re: ドラゴンクエスト—Original—漆黒の姫騎士 ( No.4 )
- 日時: 2013/12/12 22:12
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: fOamwJT9)
“ 『同じ』を求めて『価値』を見失う、
己の盲目に気付けぬ者はまるで。 ”
【 Ⅰ 】
「アクアマリンだ」
太陽は既に南。本格的な照り付けを見せ始めた日の光に目を細めながら、リーシアは言った。
「街の名産らしい。他のところじゃあなかなかに高く売れる。一つ二つ持っておいて、損はないだろ」
「…まさかそのためだけに寄るわけじゃないよね?」
「まぁ、ついでとも言えるかな」
「情報集めが?」
「アクアマリンが」
ならいいや、という安堵の混じった声色での溜め息を最後に、マイレナは口を閉じた。
比較的穏やかな気候は、ここ最近の連戦の日々を記憶の彼方へ追い払い、眠気と油断を誘う。
柔らかい日差しは少ない露出部分をやんわりと包み、静かに肌を焼いてゆく。
マイレナには健康的な肌の色を創り上げてゆくのに対して、リーシアはマイレナより
露出部分が多いにもかかわらず、一般よりも白いままだ。日焼けしない体質らしい。
特に羨ましいと思ったことはなく、また彼女自身焼けようが焼けまいが
そんなことは興味の対象には入っていない。
俗に言う女子力、というものはこの二人には圧倒的に欠けていた。
十七歳。大人と子供の、最も曖昧な境目。
一人で生活するには早すぎ、誰かに頼るには遅い、独立の予行演習を求められるような年齢。
マイレナは旅人だ。そしてまた、リーシアもそうである。
同い年、互いに十七である二人は、だが、その存在の仕方が異なっている。
マイレナは未だ頼る者。見方を変えれば同い年である娘の助けを頼りに生きる者だ。
一方でリーシアは精神年齢が同世代のそれらより遥かに高いと言える。
互いに複雑な経緯を超えて、共にいる。リーシアはマイレナの『複雑な経緯』に携わっていた。
だが、マイレナは、リーシアの身に何があったのか、詳しいことは知らない。
それに対する不満や興味心はない。誰だって秘密にしたいことがある—というのは表の考えだ—。
「どれくらい滞在する?」
「広さにもよるが…三日、と言ったところか」
「了解」
特に反論もしない。軽い調子で返事し、マイレナはおもむろに背を伸ばす。
たっぷり時間を使って、そうして脱力する。滅多にない快晴だ。
「…うん。いい天気だねぇ、リーシャ」
「あぁ、そうだな。…だから、リーシアだ、って言ってんだ」
「いいじゃんそっちの方が言いやすいし」
「…改める気、ないだろ」
「んー、ないかも。ちゃんと言おうとしてもさ、どうしても噛んじゃうんだよね。
それにリーシャでも可愛いじゃん?」
「…置いていくぞ」
「ごめんごめん冗談!」
比較的穏やかな気候は、比較的和やかな雰囲気も作る。充分、和やかな会話である。
どこか歪な関係の二人は、どこかでその事実に気付いていながら気付かぬふりをして、
今日も変わらぬ様子を振る舞い続ける姿はどこか滑稽で。
このままじゃだめなのかなぁ、なんて思った夜もある。
マイレナの身に起こった『複雑な経緯』——簡潔に言うとすれば、突然マイレナ以外の村人全員が消えた、だ。
この時点で信用され得ない話をしているが、マイレナにとっては一片も疑いようのない事実であり、
過去である。一人になったマイレナを見つけたのが、当時若干十四歳、
どう考えても一人きりで旅する歳ではない少女のリーシアだった。
おそらくマイレナの一生分の偶然はここで使われたのだろう、というほどの奇跡の出会い。
多少の武術を身に着けていたとはいえ、一村娘でしかなかったマイレナは、
一瞬で死と隣り合わせの旅人へと変わった。隣の彼女へ頼らずどう生きて行けよう。
分かっている。一人になれば、マイレナは生きられない。生活的な意味でも、精神的な意味でも。
けれど、変わらなきゃいけないと思っても、結局はどうしようもならなくて。
そんな不安に気付かないふりをして、ただここにいる。そんな自分はずるいと思っているが、
そんな感情でさえ気づかないふりをしてしまうのだ。この関係を壊したくない。
一人になることの恐怖を、あの日いやというほど思い知らされたから。
Page:1 2
この掲示板は過去ログ化されています。