二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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【艦これ】静かな海に溶けて~意思ある艦の物語~
日時: 2016/04/12 00:24
名前: ルーミャ (ID: E1s7fLzP)

もしこの海を見たら、艦娘は何を思うのだろうか。



今回のお話は、シリアスです。また、以下の事に注意して読む事をお薦めします。

・ガバガバ設定。

・原作とは違う世界観。

・沈没ネタがある。

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Re: 【艦これ】静かな海に溶けて~意思ある艦の物語~ ( No.1 )
日時: 2016/04/12 17:34
名前: ルーミャ (ID: E1s7fLzP)


時は遡り1927年の、寒さが僅かに染みる秋頃であった。

「……ぁ……」

工厰で、一人の少女が目を醒ました。起きたばかりで視界が点滅しているのか、瞬きを繰り返し、馴染ませようとする。しばらくして視界が広がると、その目先にいたのは二人の工作員であった。二人とも目を見開き、互いを見合わせる。

「……完成した。遂に完成したぞ! 我が大日本帝国が誇る、特型駆逐艦が!」

呆けて周りを眺める少女を他所に一人の工作員は、喚き散らして工厰を飛び出してしまった。

「……?」

「うん。良い出来だ……おはよう。君は艦娘と言って、これから艦隊として天皇様に力を尽くすんだ」

もう一人の若い工作員が、1つ結びされている短い髪に手を触れる。

「私が……艦隊?」

「ああ。敵の艦隊を潰して、我が国に勝利をもたらすんだ。僕達はいつもその事ばかり考えて来た」



「この戦争を終わらせる為にも、我々日本が勝たなければいけないからね」



これが特型駆逐艦一番艦、吹雪の誕生の瞬間であった。



現在、1941年、11月24日。

吹雪「あぁ〜お腹空いた〜」

吹雪は、個室で夕食を待っていた。当然今は艤装を外している。

ここは艦娘の寮。東京に長く存在し、艦娘以外は基本出入り出来ない。

常に全ての艦娘がここにいる訳では無く、各鎮守府へ艦娘が交代制で配備しに行かなければならない。横須賀鎮守府はすぐ近くにあるので時間はそこまで掛からないものの、その他の呉、佐世保、舞鶴鎮守府は遠いので、この寮に帰ってくるまでの時間が長かった。

吹雪「我慢出来ない、早いけど食堂に行こうか」

扉を乱暴に開けると、そそくさと廊下を走り込んだ。

吹雪が目指す食堂に到着。周りを気にせず、間宮さんがいる調理場へ勢い良く駆ける。

駆け込んだ先には、間宮さんが笑顔で迎えてくれた。

間宮「あら、吹雪ちゃん早いわね。もうご飯出来てるわよ」

吹雪「え、本当ですか!?」

問いに頷きで返すと、白飯を茶碗に盛り、味噌汁をお椀に注ぐ。最後はお盆に茶碗とお椀、そして漬物を添えると、ニコニコしながら吹雪の前に置く。

間宮「どうぞ、美味しく召し上がって下さいね」

吹雪「あ、ありがとうございます!」

元気に一礼すると、両手で大切そうにお盆を持ち、ゆっくりと歩く。その時であるが、吹雪は先客がいたのにようやく気付いた。

吹雪「あれ……結構いる。本当はまだ早いはずなのに。何で?」

大食堂にいたのは、正規空母の赤城・加賀・飛龍・蒼龍・翔鶴・瑞鶴、戦艦の比叡・霧島、重巡の利根・筑摩、軽巡の阿武隈、駆逐艦の谷風・浦風・浜風・磯風・不知火・霞・霰・陽炎・秋雲という、大人数が各々の机に座って夕食を食べていた。

吹雪「早いですね、何かあったんですか?」

赤城の隣に座り、箸を持つ。その箸は白米をつまみ、吹雪の口に運ばれる。

赤城「あら、吹雪ちゃんは知らない? このご飯食べたら、私達は択捉島に行かなければならないの」

吹雪「へ?」

加賀「……真珠湾の強襲よ」

吹雪の疑問を払拭したのが、もう一方の赤城の隣に座って食事を取る加賀であった。

加賀「休日の12月8日の真珠湾を狙いに、航空機を発艦し攻撃を仕掛ける……と、司令官が伝えてくれたわ」

吹雪「それってつまり……」

赤城「本格的に始まるのよ、第二次世界大戦が」

これほどにない真剣な目付きではあるが、口の周りに付いている米粒で台無しである。

加賀「……この作戦が成功すれば相手の戦力を下げると同時に、こちらの優勢を得る事が出来るでしょう」

瑞鶴「まぁ、最新鋭の私と翔鶴姉に掛かれば楽勝ね!」

加賀「新人の五航戦が何を言うのですか。その言葉はまともに発艦出来るようになった時に言って下さい」

横から割って入ってきた瑞鶴に対し、加賀は涼しい顔で辛辣に言葉を返す。

瑞鶴「くぅ……玄人だからって偉そうに……絶対この戦いで戦果を挙げてやるわ!」

翔鶴「もぅ! やめなさい瑞鶴……」

無視されている瑞鶴の威嚇を、翔鶴が呼び止める。少し遠い距離から様子を見ていた利根が大笑いする。

利根「ワッハッハ! 吾輩らは、こんな感じのこやつらのおもりをするよーなもんじゃ! なぁ、筑摩?」

筑摩「利根姉さん……赤城さんや加賀さん、飛龍さんや蒼龍さんはそのような程度ではないですよ?」

利根「なにを! そこまで変わらんであろう!?」

瑞鶴「一航戦に次いであなた達まで私達を馬鹿にするって訳!?」

翔鶴「落ち着いて瑞鶴!」

興奮し、席を立った瑞鶴を必死に抑える。吹雪も瑞鶴を宥めに入る。

瑞鶴「痛った!? 分かった分かった! ごめんなさい、翔鶴姉! ごめんって! いたたたた〜」

翔鶴にこめかみを拳でぐりぐりされ、我に返った瑞鶴はひたすら謝り、解放されようばかりにじたばたする。

吹雪「……そういえば、これで全員なんですか?」

秋雲「ほぼ、て言った所だねぇ。後は潜水艦なんだけど、先に向かうって言ってたね……最初は私はお呼ばれにならなかったんだけどさぁ。急に参加するよう言われたんだよ。何でも航続距離が長いからねぇ、私は。本当はもっと早く言ってくれりゃあ、紙を買い出しに行こうと思ったけど、運が悪いわぁ。今度こそ瑞鶴翔鶴を書き残そうと思ったけど、いかんせん紙切れでねぇ」

長い台詞をぶつぶつ喋る秋雲の話をきっちり聞く。その後、夕食を全て食べきり、「ごちそうさま」と呟くと赤城達のいる食堂を後にした。



吹雪「成功するよね、絶対……」

一人残された風呂場で呟くも、虚しく反響するだけであった。

金剛「ヘイブッキー! どうしたのそんなに悩ンデ!」

ガラリと開かれた戸の先には、一糸纏わぬ、堂々とした姿の金剛が乗り込んできた。

吹雪「金剛さん?」

金剛「比叡から聞いたヨ? ブッキー何か良くない顔してたっテ」

目が見開き、キョトンとする。まるで見られていたのか、と言いたいような顔であった。

金剛「心配するのは分かるケド、私達艦娘は普通の艦に比べて数倍強いから、全然ノープロブレムネ!」

吹雪「……そう、ですよね」

ブクブクと湯船に頭まで沈む。息を懸命に堪えるが、やがて我慢出来なくなったのか、頭を水面から離す。

金剛「そうそウ! さぁ、今日はゆっくりしテ。私がブッキーの背中を洗ってあげル!」

吹雪「いえ、私はもう洗い終わったので……」

金剛「リアリー? それじゃあブッキー、私の背中を洗っテ!」

こうして、吹雪は頭を曇らせながらも、無事を祈り、時が過ぎて行った。



1941年 12月8日。真珠湾攻撃 開始。

Re: 【艦これ】静かな海に溶けて~意思ある艦の物語~ ( No.2 )
日時: 2016/04/17 15:10
名前: ルーミャ (ID: E1s7fLzP)

1928年の限りなく夏に近いであろう日の事である。

第38号と呼ばれる、一人の少女は造船所で仁王立ちをしていた。その隣に、今日竣工される艦娘が座っていた。

「……じゃあ、あの、私、もう行くから……」

第38号「おう、行ってら〜……しかし、本当に早いなぁ。私もこの海を早く渡りたいぜ」

二人の会話の間には、波が控えめに押しては引いて、そしてまた新しい波が同じように繰り返すだけであった。

第38号「なぁ……こーんな綺麗な海なのに、わざわざそれを汚す必要なんてあるのかね」

第38号はチラリと海を眺める。障害物は何もないのにも関わらず、全ての海を見ることは出来ない。

「仕方ないよ……この国、そして天皇様の為に……」

第38号「はぁ、天皇天皇。どいつもこいつも口を揃えてそう言うんだ」

うんざりしているように、溜め息を吐き出す。もしこの事を他に聞かれているのなら、死刑は免れないだろう。

第38号「私はな、この海を守りたい。そんな矛盾した幻想を抱いてるんだ」

その言葉には、悲しみが濁っていた。僅かに口が震えている。



第38号「戦争が終わって、私達の役目が終わった時もう一度、この眩しく晴れた、水平線がくっきり見える青い海を見ることは出来るかなぁって」



第38号駆逐艦。彼女は後として、吹雪型駆逐艦4番艦、深雪という名を授かる事になった。



これはまだ真珠湾攻撃が開始される数日前。その時艦娘達の動きは活発になり、それぞれ与えられた任務をこなすよう言われていた。

吹雪も例外では無く、南方作戦に、南遣艦隊として出撃を命じられている。

吹雪「……行ってくるね、深雪ちゃん」

吹雪は、自室の机に置かれている、一つの額縁の前に立っていた。

その額縁には写真が飾られており、吹雪、白雪、初雪、深雪の四人組が写っていた。

涙ぐむも懸命に堪えていると、ドアをノックする音が堅いリズムで奏でられる。

磯波「あの……吹雪ちゃん、そろそろ時間だよ」

吹雪「待ってて」

ガチャりとドアを開けると、目の前には、一枚の写真を持っている磯波がいた。

その写真は、磯波と深雪が写っているツーショットであった。

吹雪「磯波ちゃん、それ……」

磯波「うん、お守りに」

大切そうに写真をキュッと握る。吹雪は何か思い出したように口を動かす。

吹雪「そっか、深雪ちゃんと同じ所で造られたんだもんね……深雪ちゃんも、きっと応援してるよ。深雪ちゃんの分も、天皇様の為に頑張ろう!」

天皇という単語に反応したのか、磯波は顔を曇らせる。言うか言わまいかと迷っていたが、覚悟を決めたかのように言葉にする。

磯波「……深雪ちゃんは、天皇様の為に頑張ったんじゃないと思うよ」

吹雪「え……?」

吹雪は疑うような顔で磯波を見る。艦娘達も人間同様、天皇を神と例え、どんな時も天皇が正しいと思い込み、支持してきた。天皇には絶対忠実のはずだった。

吹雪「何を言ってるの? 私達は司令官に仕えて、天皇様に命を捧げている身なんだよ? 天皇様の言う通りにすればきっと世界も日本を敵対しなくなる。あんまり適当な事を言っちゃ駄目だよ?」

吹雪に圧されて磯波は黙り込む。何かを言葉にしようとしたが、喉が震えて言えなかった。

磯波「……ごめん、ね」

うつむいて放たれた小声は、誰に向けられたものなのか。



時間が戻り、真珠湾攻撃開始の数分前。日本では12月8日、ハワイでは12月7日であった。

二十人に至る艦娘達は、ハワイ付近に輪形陣で待機していた。

赤城「……水偵着任。攻撃目標決定。そちらはどうですか?」

利根「……うむ、分かった。このままラハイナ泊地へ向かい、報告を頼む……付近に敵影無し、じゃ。航空部隊は思いきり暴れられるよう、準備をしておれ」

六人の空母は頷くと、発艦する準備をする。それぞれは弓を構え、矢を添える。そしてゆっくりと弦と矢を引く。

マルロクマルマル(午前6時00分)。遂にこの時を迎えた。

赤城「第一次攻撃隊発艦、開始します!」

弦を手から離す。放たれた矢は形を変え、やがて航空機へと姿を変える。そのまま航空機は真珠湾へと向かって行った。

加賀「……艦攻、用意」

続いて魚雷を搭載する艦攻が発艦。海に近い平行線を走って行く。

合計航空機、183機。

しかしまだ終わらない。マルナナマルゴウ(午前7時5分)、第2波の攻撃隊を発艦。その数は167機。

マルナナサンゴウ(午前7時35分)。利根と筑摩の偵察機から報告が入った。

筑摩「……在泊艦は戦艦10、甲巡1、乙巡10です」

赤城「わかりました……本命である空母を狙えないのは痛いですね」

利根「こちらにも連絡が入っておる。ラハイナ泊地に敵艦隊無し。向かう必要はないぞ」

蒼龍「ご報告ありがとうございます。すぐに航空機に連絡します」

赤城「……うぅ……」

この発艦している間の数分さえ無駄には出来ない。赤城にプレッシャーが募っていく。息がだんだん荒くなる。

加賀「……赤城さん、落ち着いて下さい。私達がついています」

成功するかの焦りを持つなか、加賀が赤城の緊張をほぐす。

赤城「すみません、加賀さん」

加賀に一声謝ると、一旦深呼吸をして、航空機に大声で命令を下す。その声は空のように澄んでいた。

赤城「第一次攻撃隊、攻撃開始!」





この作戦は約10時まで続き、こちらの被害も少々あった。しかし大日本帝国側の戦果は、
戦艦5・巡洋艦3艦の撃沈、戦艦3・巡洋艦3・駆逐艦他2艦の撃破、航空機の被害500機近く
という大戦果を上げたのだった。

Re: 【艦これ】静かな海に溶けて~意思ある艦の物語~ ( No.3 )
日時: 2016/04/29 12:13
名前: ルーミャ (ID: E1s7fLzP)

待って、姉さん。

置いていかないで下さい。

私一人を、残さないで。

あの時に処分されてしまえば……。

一人にならなかった。

待って。

置いていかないで。

お い て い か な い で



これはまだ語られていなかった、正規空母の悲しい過去。



マルナナゴウサン(午前7時53分)。

『トラ・トラ・トラ』

赤城が発艦した航空機から、電文が発信された。

赤城「……!! 只今、航空機から電文を受け取りました! 結果は、奇襲成功! 続いて攻撃を続けるとの事です!!」



赤城の言葉を受け、周囲全体は歓喜に包まれた。



日本で主力部隊を率いる戦艦、長門と、その艦隊は、赤城の電文を受けると同時に、機動部隊の安全の確保、更に退却支援をする為に瀬戸内海を走り抜けた。

大和「あら、長門じゃない」

偶然であるが、呉へと向かう戦艦、大和と出会う。

長門「む、大和か。調子はどうだ?」

大和「問題は無し、ていう感じかしらね。これなら戦闘に支障は無さそうよ」

長門「貴様の戦闘は私自身も期待している。頼むぞ」

大和「……ビッグ7に期待されるとは、頑張らなくてはね」





その頃、南比攻略部隊の一人である重巡、妙高はこの戦争の始まりに心苦しさを覚えていた。

龍驤「ん? どうしたん妙高。何か浮かない顔をしとるで」

妙高「……いえ、特に何も。気にしないで下さい」

龍驤「せやろか」

龍驤が妙高から離れると、今度は羽黒が駆け寄る。

羽黒「あ、あの……大丈夫ですか?」

妙高「……大丈夫ですよ。心配ありがとうございます」

那智「隠さない方が良いと思うぞ」

彼女達『第五戦隊』は、空襲作戦の支援の為に沖を哨戒していた。

妙高「……非常に失礼を申し上げますが、この戦争に、一体何の意味があるのでしょうか?」

予想外の質問に、二人は言葉を詰まらせる。更に話を続ける。

妙高「そもそも、無謀です……相手と私達では戦力が違います。結果など分かっている……それなのに、何故私達は戦うのでしょう」

羽黒「えっと……」

那智「それは……」

この時、緊急の電信が艦娘に伝わった。

那智「……!! これは、奇襲成功の電文……やってくれたか」

現在、辺りは真珠湾の奇襲成功に安堵と、活気の声が聞こえてくる。曇っていた羽黒も次第に明るくなる。

羽黒「やりましたね! 那智姉様、妙高姉様!」

しかし、それでも妙高の顔は険しく、それでいて針のように鋭かった。

妙高「確かにやりました……しかし、それは空母のお陰です。空母の戦果です。航空機で全て上手く行くのならば、何故私達は……存在するのでしょう」

那智「……何を言っているのだ。さっきから様子がおかしいぞ妙高。何かあるのなら私達を頼っても……」

妙高「それに、こんな卑劣な方法を用いてまで、私達が勝とうとしているのが分かりません。それは、私達の勝ち目が薄いから行った事ではないのですか?」

羽黒「妙高姉様……どうしたのですか?」

妙高「……すみません。私は、私は恐れていました。沈むのが、不要となって棄てられるのが、怖いのです」

さっきの剣呑な様子とは一変、恐怖と悲哀が妙高の今の様子を映し出していた。

那智「……そうか、それなら問題無い。妙高の分まで、私達が戦おう。そうだろう? 羽黒」

羽黒「は、はい! 私、皆様を守れるように、頑張ります!」

妙高「那智……羽黒……いえ、大丈夫です。あなた達のお陰で、少し肩が軽くなった気がします。私は、私でこの戦争と勝負をします……だから」



妙高「あなた達は、こんな私の手助けをしてくれると、嬉しいです」



その後攻撃機の活躍により、マレー沖の戦艦二艦を撃滅させた。
妙高の言う通り、この戦争は、空母が主体として戦われる、残酷な話であった。





吹雪「……ふぅ、無事資源を確保! 只今持ち帰ります!」

表とは裏に、戦争開始と同時に吹雪達は南方の資源を確保していた。

白雪「これなら、皆元気に戦えそうだね」

初雪「……持って帰るの、めんどうくさい」

これにより、日本の資源は安泰となったが、それも今だけであった。



1941年 12月10日 ウェーク島沖海戦


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