二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【艦これ】暁の水平線にーIn closed seaー
- 日時: 2016/05/31 22:50
- 名前: ルーミャ (ID: E1s7fLzP)
「私は未だ【海】を見たことが無い」
この小説は、
・文章が下手である
・投稿の間隔がバラバラ
・暴力表現があり、不快にさせる可能性がある
特に三番目が苦手だと思った場合、引き取る事をお薦めします。
それ以外に、問題がないのであれば、見てくれると嬉しいです。本当にスミマセン。ゴメンね暁ちゃん。
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- Re: 【艦これ】暁の水平線にーIn closed seaー ( No.1 )
- 日時: 2016/05/16 12:39
- 名前: ルーミャ (ID: E1s7fLzP)
「……」
春が過ぎて、暖かいというよりかは、暑いと言える日となった。私は教室の片隅にある一つの席に座っていた。
今は朝のHRであるが、私の先生は嫌に話す時間が長い。あまりに退屈なので、頬を付きながら外を眺める。髪が風に揺らされて、心地よい。
雷「おはようございまーす!」
話の途中に突然教室へと入ってきたのは私の友人、雷だ。茶髪のショートヘアで、前髪にヘアピンを着けている。当たり前のように、ニコニコ笑いながら決められている机に座った。
教師「……雷、お前は廊下に立っていろ」
本当、呆れた奴。私は心の中でクスリと笑った。
帰りの途中。私達はいつも3人で歩いて帰っている。今日もいつも通りであった。
雷「全く、あれは間に合ってたじゃない! そう思わない? 電」
電「どう考えても間に合って無かったのです……」
電と呼ばれる少女は、弱気な声でありながら意外に断定してモノを言う。彼女も雷と同じく茶髪であるが、長い後ろの髪を立たせて大きなピンで留めている。
雷「嘘!? じゃあ暁は? 暁は間に合ってたと思うわよね!?」
暁、それが私の名前だ。
暁「私も、間に合ってたとはとても思えないわ」
雷「ええ!? 何よ、少しは優しく言ってもいいじゃなーい」
どうやら慰めて欲しかったらしい。私は溜め息混じりで雷に忠告する。
暁「全く、そんな事で拗ねてる暇があるなら遅刻を止めてしっかり勉強しなさいよ。来年の3月には受験があるのよ?」
雷「分かってるわよ、羨ましいわね秀才は。確か相当頭の良い高校に推薦されたんだっけ?」
電「す、凄いのです……」
多分彼女達は純粋に羨んでいるのであろうけど、それは同時に嫌味にも聞こえた。
私は無理に胸騒ぎを落ち着かせて、平然としているように喋る。
暁「別に。勉強以外に何もすることが無いし、仕方のない事よ」
雷「はぁ。暁はさ、そんな事してて楽しいの? 何か夢、とかは無いのかしら?」
夢。別にないわけでは無い。しかし今、私の夢は実現が不可能に近いのである。
雷「あ、私達はこっちだから。じゃあね暁、また明日」
電「バイバイです、暁ちゃん」
暁「……じゃあね」
Y字の通路で二人とは別れてしまった。私は短く手を振り、二人が振り向いて歩き出すまで見送る。やがて私も、人気の無い通路を歩き出した。
私は一人で帰り道を歩いている途中、ある建物に足を止めた。
古臭い図書館である。
もう何年立つのかは分からないが、かなりボロく、所々剥げている。そのせいであまり人は寄らないが、此処は私が勉強する時に使うし、よくお世話になっていた。
暁「……」
結局、私は図書館へと足を運ばせてしまった。
私の言う通り、人数は数える程しか存在せず、汚れも酷いモノであった。汚れたところは嫌いなのだが、此処だけは別である。私は速足で例の本棚へと向かった。
私が向かった本棚にあった本は、【海】についての本である。
小さい頃から、この本をよく読んだものだ。しかし、どの本も写真が剥げてよく見えなかったり、落書きをされている。これが印刷された日も、かなり古い年月であった。
私の夢は、この本に書いてある海を見るということ。そうであった。しかし、それは今不可能とされている。
これは数十年も前の話であるが、深海生物という海に生きている生物が突然変異を起こし、突如暴れ始めたらしい。そのせいで各国は航空機の廃止を定め、沖を閉鎖。大分前にあったと言われている飛行機は無くなり、一般人は外国へ行くことは愚か、海にさえ近付けない大変な状況である。それは今でも続いているというのだ。
それでも私は海を見たかった。
どんな光景か、どんな匂いか。どんな感覚か。この本には、私が知りたいことが載ってある。好奇心をくすぐられる。結局は果たせない夢を、諦めきれないのだ。
そうして、何も変わらない日は次々と過ぎていく。
- Re: 【艦これ】暁の水平線にーIn closed seaー ( No.2 )
- 日時: 2016/05/31 21:36
- 名前: ルーミャ (ID: E1s7fLzP)
暁「只今帰りました。御母様、御父様」
暁の母「……上がりなさい」
堅苦しい挨拶を交え、靴を脱ぐ。それをきっちり揃えると、すぐ近くにある和室へと入る。
暁「失礼します」
此処の部屋は私と親が共通して使う、いわばリビングルームみたいなところだ。部屋の真ん中にはでかでかとちゃぶ台が置かれ、床の間まである。私はちゃぶ台にいる母とは、反対側の床に正座をした。
母は艶のある黒髪を持ち背が高く、30を越えていても美貌は全く落ちていない。私とはまさに背と腹のような存在である。
暁の母「御父様はまだ帰ってきていないわ。それと今日から、お祖父様が来るから、失礼の無いように」
暁「……わかりました」
私の家は、普通とは違う。
父は大型会社の社長を務め、母は今はもう就職こそしていないが、昔は生け花をしており、その芸術性は世界から買われるほど。簡潔して言えば、二人はかなり高い地位に立っているのだ。
そのせいか、常に完璧至上主義を貫き、私に毎日英才教育を受けさせる。それは数え挙げたらキリが無いが、そのおかげで学校の授業は耳から流しても特に問題は無い。私にとって学校は、体も心も休める憩いの場である。
思わず話が脱線してしまったが、私はこの縛られた家内が好きじゃない。生まれてから私は一度も友達の家に遊びに行くことも、自分の家に誘う事も出来なかった。前に一度、親友の雷と電の中学校が離れるのが嫌だと思い、受けさせられた私立の受験をわざと落ちた時は、それはもう痣が沢山出来るまで殴られたものだ。それが私の、たった一度だけの反抗期であった。
今夜。私は風呂を上がり、部屋で適当に待機する。もう既にやることは終わっているのだが、どうしても待たなければいけなかったのだ。しばらくして、ノックの音がトントンと聞こえてきた。
祖父「暁よ、入るぞ」
開かれた障子の先には、私の祖父が立っていた。
暁「いいよ、おじいちゃん」
私はたった一人、祖父にだけは甘えられた。
私の祖父は若い頃、海上自衛隊であって私に海の事を色々と話してくれる。その度に私は前のめりになって話を聞いていた。今日も、土産話に耳を傾ける。
祖父「……『ひゅうが』から飛んでいったヘリコプターという、空を飛ぶ機械があるんだが、それから見る下の海の景色は、そら絶景じゃ。夕焼けに海は照らされ、視界が朱色に染まって、ただ漣が繰り返される。波の音が聞こえないのは残念ではあるが、何とも幻想的な光景なんじゃ」
暁「はぁー……ロマンチックなのね。ねぇねぇおじいちゃん。おばあちゃんにはどんな風に告白したの? やっぱり綺麗な海を見せて?」
祖父「あぁ。横須賀の夕焼けの港で、いきなり告白をしたんじゃよ。『結婚してくれ』って膝ついて、指輪を婆さんに見せながらな。そしたら婆さんは驚きでいっぱいで。『この告白は忘れない』って、泣きながら言ってくれたんじゃ。儂も、今もあの事は鮮明に覚えとるよ」
今まで溜めに溜めた鬱憤を晴らすように、話に食いつく。いつもの私とはとても思えないと、自分でも感じている。
祖父「……そうじゃ、最後に少しだけ、儂の父の話をしようか……これは本当に昔の事、暁も知っているだろうが、第二次世界大戦という時くらいにな。艦の操縦手がいたんじゃ、それは儂の父でな、父が操縦した艦は、第三次ソロモン海戦で沈んだんじゃ。奇跡的に父は生きていたが……父はその艦を沈むまで愛していた。いや、違うな……沈んでいても尚、愛し続けた。父は戦争が終わった後も、海に潜って見つけようとした。海の何処にあるのかも分からないのにどう探すんだ、儂は話を聞いた時にそう思ったよ。すると父はこう言った。『私があの時見た水平線が、沈んだ艦の居場所だ』と。今じゃあただの笑い話だが、儂は心底驚いたよ。海を見ただけで父は場所が分かるのだからな……さて、まだ話したい事が山々あるが、もう寝る時間じゃな。また明日話してあげるから、ゆっくり休みな」
暁「ありがとう、おじいちゃん……お休みなさい」
私は、明日のお話に期待をしながらも、睡眠に至るのだった。
次の日。夏休みが始まる前日の事。私達3人は学校からいつも通りに帰っていた。
雷「はぁー、あっついわねー。言葉もどんどん溶けていくわー」
電「なのです……」
蜃気楼がうっすらと遠くの道路に浮かび、蝉はミーンミーンと煩く鳴る。私も会話をする気力を失いつつある。
電「夏休みはどうするのです? プールにでも行くのですか?」
雷「悪くない! けど……あそこ塩素強いし臭いし……どっちかというと嫌なのよねぇ……アイスくわえて毎日過ごすのも嫌だけれど」
何処の話をしているのか、皆目見当もつかないが、私には一切関係無い。暑さを振りきろうと熱中症予防の帽子を深く被った。
雷「そうだ、探検しましょう! 実はちょっと前に、ある小さな穴を見つけてね、大きな壁によ! あれは未開の地に違いないわ!」
電「また適当な……雷ちゃんいつもそんな事言って、いざ探検して着いたところは全部町中だったのです!」
雷「今度は本当の本命よ! だって聞いた事の無い音が聴こえたんですもの! ざざーってなって、今度はさーって聴こえるのよ!? 凄い綺麗な音色だったわ! ……て、暁?」
雷が言い終えるなり、私は彼女の肩を掴んでいた。手がどういう事か震えている。
暁「……それで? その奥まで行ったのかしら?」
雷「えっ……あ、いいや。行けなかったわ。どっちにしろ先は草むらに阻まれていたし、もう日が暮れていたし何より迷子になっちゃいそうだったし……ごめんね、曖昧で」
見つけた、その短文に過ぎた。恐らく雷の言う未開の地とは、海で間違い無いであろう。体が疼く、目頭が熱くなる……しかし、私には行けない理由があった。
暁「い、いえ。何でも、ないわ……御免なさい、いきなり」
雷「いや、いいわよ。それよりさ、暁も一緒にどう? どうせ退屈してるでしょ? 絶対良いことあるから!」
電「嘘ですよ暁ちゃん。何もなかったのです」
二人は笑顔で私に促してくれた。どちらにせよ勉強があるから、私には無理な話だ。
しかし、決まりきっている選択肢の筈なのに、どうしても言い出せなかった。何せもうひとつの選択肢は、私が一生を掛けても、叶えられるチャンスはもう無いと思っていた転機なのだ。それを別にやりたくもない勉強の為に潰されてたまるかと、暑い陽射しのせいで余計に頭を狂わせられる。
暁「……はぁ……はぁ……」
どちらにするべきかが決まらない。いや、そんな結果は見たくない。自分でも今、狂気と強欲を抑え込もうと理性が働いているのが分かる。
そしてとうとう、私は膝を折ってしまった。
- Re: 【艦これ】暁の水平線にーIn closed seaー ( No.3 )
- 日時: 2016/06/24 14:34
- 名前: ルーミャ (ID: E1s7fLzP)
雷「ちょっと……暁!? 大丈夫!?」
膝を折った私を揺さぶり、正気を戻そうとする。電は状況が飲み込めず、おどおどしている。
暁「……あ、いや……だ、大丈夫なのよ。大丈夫だから……私は、いいの」
雷「え?」
数秒間、何処か違う世界に行ったような感覚に襲われた。やっとこちらへ意識が戻ってくると、無意識に呟いていた。何の事かキョトンとしている。
二人を構わずに身体を起こすと、急ぎ足で別れ道に走り込む。
暁「わ、私こっちだから……さよなら」
電「あ……さ、さよならなのです」
煩い蝉が鳴く中で、微かに電の声が耳に届いた。私は二人を見送らずに、気が遠くなるような道をせっせと走り抜ける。
電「行っちゃったのです……雷ちゃん?」
雷は、普段電と通らない道を辿ろうとした。その目付きは何かを感じたように、何処かで確信していた。
雷「行くよ、電」
暁「……ハァ、ハァ」
走ってどのくらい経ったのだろうか。息は乱れてコヒュー、コヒューと霞んだ呼吸音が反復されて聴こえる。頭は汗で蒸れていて、帽子まで染みているのが分かる。ハッと後ろを振り返れば、遠くから図書館が見える。知らない間に図書館を越していたらしい。
暁「……行きたかったな」
未練がましく、私は呟いた。良く考えれば、いつかは見られるかもしれない。しかし、欲を持った故に勝手に悩んで、一人先走って、何て大人気が無いのだろう。後悔と恥ずかしさが私を覆った。
鳴き声が囲うなか、静寂がしばらく続くのであった。
その後のこと、祖父の話なんて全く耳に入らなかった。未練と疑問、不安が何度も私の耳に響くのだ。結局、この事を吐き出せず、一日が終わった。
次の日、私はベッドに転がっていた。そろそろ、いつもの事が始まるのだが、気が気でならない。しかし、怒られるのも嫌なので、渋々と身体を起こして準備をしようとした時、ちょうど呼び出された。
暁の母「暁、降りてきなさい」
どういう事か。急いで私服に着替えて降りてみれば、そこにいたのは雷と電であった。
暁の母「どういう事か説明しなさい」
暁「いや……私、知らない……」
暁の母「私語は慎みなさい!」
暁「……はい、すみません。しかし、私はこの事を知りません……」
このやり取りを見て横から棒に、雷が噛みついてきた。
雷「酷いじゃない! 自分の娘をそんな風に扱うなんて!」
暁の母「他人が口を出すんじゃない! 暁、貴方は遊んでいる時間なんて無いのよ! 今すぐ引き取りさせなさい!」
電「暁ちゃんも遊びたい時があるのです!」
暁の母「そんなものは無いのよ! 彼女は次期にお父様の座を引き継ぐのよ!?」
珍しく母が取り乱していた。よほどこの事が許せなかったのだろう。
暁の母「暁、まさかあの事を忘れたわけではないでしょうね!? あれで言うことが効けないなら、次はもっと酷い目に合わせるわよ!!」
完璧至上主義者は、どうしても物事を確実に進めようとする。その為なら他がどうなろうと知った事では無いのだ。例えそれが実の娘だとしても。狂気と怒りに溢れたその様を見て、私は心で嘲笑った。その醜い心と、そんな狂ったモノの中で生まれて、檻の中で育て上げられた私を。
雷「ちょっと、暁に何をしてるの!?」
暁の母「そちらは知らなくていいわ! プライバシーの侵害で訴えるわよ!!」
電「駄目なのです! もし暁ちゃんに何かあったら……!」
三人の論争を、終始眺めていた。何て割って入れば分からないし、原因である私が口出し出来るような事ではない。永遠に終わらないのではないかと思った時、玄関の戸がガラリと開かれた。
暁の父「……暁に何かあると聞いて、急いで戻ってきた」
私の父だ。母に来るよう言われたのだろう。目を逸らしてしまう。今にも心臓が破裂しそうだ。父は雷と電を見るなり、低い声で私に言い付ける。
暁の父「……今すぐ、その二人と絶交しなさい」
暁「……」
暁の父「ほぅ、だんまりか。今になって口を開かないとは、良い度胸だな」
暁「ひっ……」
父が腕を上げる。身体が強く跳ね上がり、小さい悲鳴が漏れてしまった。
暁の父「いいかい、あれ以上酷くされたくなかったら、もうこんなふざけた事はするんじゃない。お前は本当は、言うことが聞けるよい子だろう?」
暁「……!!」
私は、押し黙ってしまった。さっきから混乱して話に追い付けない。どちらの言うことを聞けば良いのか、さっぱり分からない。
雷「酷い……! まさか暁に暴力を振るってるの!? 許さないわよ!」
電「脅しなのです!」
暁の父「暴力? 脅し? 言い方が悪いね、これは躾だ! 躾とはね、君達みたいな生意気なガキに言うことを聞かせる為にする事なのだよ! それの何がいけない? むしろ良い事だろう!」
その言葉に二人は絶句した。きっと彼女達も二人の本性に驚いているのだろう。
暁の父「想像してごらん暁。君の骨が一本、二本と折られるのを。痛いだろ? 辛いだろ? でも、そのくらいなんて事はない。脳さえ死ななければ、アイデアはいくらでも考えられる。寧ろ、余計な事が出来ないよう隅々まで動かないようにしておこうか? ん? 何か言ってごらん。君は私達の地位を更に上げる為に生まれたんだ。断る余地は無いよ」
暁「……」
私は仕方なく、覚悟した。二人を裏切りたくはない、でも……。
雷「自分の欲望の為に娘を痛めつけてたの!? ふざけないで!! 暁は道具なんかじゃない! 人間もまともに出来ない様な人が地位がどうとか言う資格なんてないわ!」
……嗚呼、彼女は本当に、勇敢である。だからこそ、知られたくなかった。
暁の父「……何ぃ? 人間じゃないだと? 貴様ら低脳の方がよほど人間では無いだろうが!!」
どうやら彼にとって、その発言はタブーであった。顔を赤色に燃やし、鋭く目を尖らせる。雷に向かって拳を降り下ろそうとした時、彼の首に一本の太刀が添えられた。
祖父「双方、黙らんか」
暁の父「……! くそ……!」
あと少しで太刀が首を抉るであろう。父は小声で毒付くも、ゆっくりと拳を下ろして、正座をした。しかし、恐ろしい形相は今も留めていたのだった。
祖父「……成程、儂の居ない間に散々な事をやったらしいな。嬢さんの言う通りだ」
祖父「な……ですが父さん、このままでは暁が……!!」
祖父「儂は、貴様にその様な事をやったか? 人を縛り付けたか? 家畜のように扱ったか? ヘソ曲がりも大概にしろ」
蛇に睨まれた蛙のように父は黙ってしまった。
祖父「……暁。それに嬢さん達、お前さん達に良い場所を教えてやろう。着いておいで」
暁「え……?」
暁の母「暁は私達の娘です! 勝手に連れていかないで下さい!」
祖父「こざかしい、そんな時だけ母親面をしてるんじゃないわい」
祖父は二人を軽蔑した目で見ると、私達を外へと向かわせた。
祖父「……どれほどの罪を抱いているか、よく考える事だな」
静かに、錆び付いて古くなっている戸は閉められた。
- Re: 【艦これ】暁の水平線にーIn closed seaー ( No.4 )
- 日時: 2016/06/24 22:34
- 名前: ルーミャ (ID: E1s7fLzP)
雷「あの……ありがとうございます、助けてくれて」
祖父「……こちらこそ、息子が失礼をしたようだな。すまなかった」
しばらく、私達は祖父に誘導されたまま歩き続けた。あの後のことのせいか、空気が重く、会話が続かない。
電「暁ちゃん、大丈夫なのですか?」
暁「大丈夫よ、私もあれが当たり前だと思っていたし」
雷「しっかし、何なのあれ! 狂っているわ!」
祖父「……もしや」
祖父が何かを呟いていたが、よく聞き取れなかった。知らぬ間に、聴き覚えの無い音が聴こえてきた。
サーーーー。
ザザーーーー。
雷「あ! この音、前に聴いた音よ!」
祖父「ほぅ、この音を聴いたことがあるのか」
祖父は感心するかのように頷く。私はこの先にあるものを何気なく察する事が出来た。音が近付く毎にトクン、トクンと鼓動が加速する。恐怖とは、また違う感覚である。
そこで、祖父は足を止めた。続いて私達も足を止めて前を向くと、大きな壁が私達を阻んでいたのだ。
電「行き止まりなのです……」
祖父「よく前を見てみ。扉があるじゃろう?」
雷「あ、本当だわ……」
祖父の言う通り、壁の中央には無骨な扉が堂々とあった。
壁の前まで辿ると、祖父は一つの鍵を取り出した。それを鍵穴に差し込むと、グルリと手首を捻る。
扉はガチャリと音を立てると、今度は錆び付いた音を鳴らしながら開かれた。
祖父「さぁ、着いたぞ」
私は強い期待を抱いて扉の先を潜る。
暁「ーーーー! わぁ……」
その先に広がった光景は、蒼のグラデーションを表したかのような水面の世界。空との境界は曖昧であり、潮の香りと波の囁きが一面を尽くした。本に書いてあった通りだ。これが、私が求めた世界。
祖父「儂は、少し関係者と話をつけてくる」
一言残すと、祖父は一つの建物へと体を赴かせた。
雷「すごい……これが、大きな壁の向こう側……? でも、なんで暁のお祖父さんが?」
暁「……私のおじいちゃん、昔は海上自衛隊をしてたから……だからかも」
しばらく、私は蒼い世界に見とれていた。感動が胸から込み上げてくる。
電「……綺麗、なのです。こんな景色もあったのですね」
雷「……電」
電「……そうですね。暁ちゃん、私達は少し散歩をしてくるのです」
電は雷の耳打ちを聞くと、二人して私の傍から離れるように何処かへ行ってしまった。
暁「……」
大体、理由は分かっていた。これから私はどうなるのだろうか。海は波音を響かせるだけで、答えを導いてはくれない。
不安をずっと馳せていても仕方ないと、耳をそばたてていると、声が聞こえてきた。
「……君は、何をしているんだい?」
一瞬、海が喋ったのかと思ったがそんな訳は無く、横を見やると、私と同じくらいの年だろうか、見知らない少女が一人だけいた。
暁「えっと……私は暁。おじいちゃんにここを案内されたの。貴方は誰?」
透き通るような銀髪が、潮風に吹かれてなびく。なんとも画になるような姿であった。そんな彼女に、私は驚愕した。
響「私は響。この横須賀鎮守府で深海棲艦の討伐を務めているよ」
暁の父「はぁ……はぁ……あのクソジジイ!!」
古風の室内では、男の怒号は鳴り止まなかった。
暁の父「殺す……殺してやる!!」
顔を手で覆い、私怨を吐き続けた。しかしそれは、誰にも届かない。知らない間に、男の目は純血して真っ赤になり、血管が露骨に浮き出ている。次には黒い液体を吐き出した。
暁の父「ガアッ! アガァ! ……薬を……」
足をもつれさせながら、鞄から注射器を取り出す。その注射器の中の液体は、さっき男が吐いた液体に酷似していた。
針を腕に刺し、筒を強く押し出す。
暁の父「ハァ……ハァ……」
さっきまでの身体が嘘みたいに元に戻る。注射器を捨てると、しばらく壁際で身体を安静にする。
暁の父「暁……何故だ、何故だ何故だ何故何故ナゼナゼナ……」
終始、男は同じような言動を繰り返した。
- Re: 【艦これ】暁の水平線にーIn closed seaー ( No.5 )
- 日時: 2016/09/07 05:57
- 名前: ルーミャ (ID: E1s7fLzP)
暁「深海……棲艦? 討伐……?」
響「知っているだろう? 30年前に一般人は海へ近付く事を禁止されたのを。突然、各地の海で異変が起きて数十人の命が奪われた。あの後海自は緊急集会して今回の件について会議をしたんだ」
響はそこで区切ると、私の表情を確認する。しかし、まるで何事も無いように再び語り続けた。
響「最終的には調査を行い、警備態勢を強くして様子見という事となったんだ。しかし、後日にはボートで返ってきた数人の乗員だけだった。彼たちの話を聞くと、巨大なモンスターが現れて、あっという間に護衛艦を撃沈させてしまったらしい。私はよく分からないが、護衛艦は十分に兵力が備わっていたにも関わらず、だ。自衛艦も十数隻しかないうえ、莫大な費用まで掛かっているのに簡単に破壊されてはたまったものではないと悩んだ。そして、苦肉の策として出したのは、人間自身が戦闘をすることだけだった」
暁「え……?」
何を言っているのか。そのような言い方だと、彼女は生身で化け物と戦っていると言っているようなものだ。
響「ふふ、信じられないだろう? そもそも、自衛艦が勝てない相手で、人間が倒せるなんて可笑しいにも程がある。私も最初はそう思っていたさ。けど、そんな事を可能とさせた人がいたんだよ」
正直、信じられない。さっきから話に現実味を帯びていないのだ。きっと私をからかっているのだろうと、頭の片隅で囁いている。
暁「信じ難い話ね。大体、自身の身を守る保証なんてないじゃない。国から訴えられるに決まっているわ」
響「確かに。でもーーーー」
暁の祖父「暁や」
彼女の口が止まった。声の元に顔を向けると、祖父が私を手招きしていたのだ。
響「呼んでいるよ」
暁「……うん」
彼女を残して、私は祖父の案内する場所に付いて行った。
赤レンガで積み立てられた大きな建物を潜り、ある一室の扉の前まで来た。壁に掛けられた札を見ると、『司令長官室』と書かれていた。
暁の祖父「この中でお前を待っている。早く中に入るのだ」
待っている? どういう事だろうか。とりあえず待たせてしまっては悪い。ドアノブに手をかけて静かに扉を開ける。
暁「失礼します……」
顔を低くして数歩進む。そこには黒服を着込んだ人が、私に背を向けて、窓を覗いていた。あの人が司令長官であろう。
司令官「……君があの方の孫、か?」
暁「え……あ、はい」
司令官「……そうか」
顔が見れないせいか、やけに話しづらい。この間の沈黙も実に痛々しかった。
司令官「……ふむ、そうか。ところで君、名前は?」
暁「暁です」
司令官「暁……ほう、暁と」
私の名前に興味を示したのか、僅かに顔を此方に向ける。しかし、眩しい光のせいで、顔の細部を確認出来ない。
司令官「ああ、すまないな。暁、今日は君に1つだけ伝えたいことがあってな」
帽子を頭から取って私と初めて対峙する。深々なる黒の髪は腰まで伸びていた。
司令官「今日から君をここの生徒と認める。だが、相応に働いてもらうぞ」
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