二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- → TriGgeR? 【 アイナナ 】
- 日時: 2016/07/02 16:49
- 名前: 和菓子 ◆H/vTb2U81c (ID: a.ADsdli)
この小説には以下の要素が含まれます。
▽オリジナルキャラクター複数登場
▼ゲーム本編にはない恋愛要素
▽捏造
▼突然のパロディ
*—*—*—*
_はじめまして、和菓子(わかし)と申します。アイナナにハマって一ヶ月の新人です。最近二部に突入しました。つなし最推しのTRIGGERファンですがなんかもうみんないとしい()。
作品は基本オムニバス形式です。誰贔屓云々はお話の中で察してください。
マネージャー名は「紡」固定です。
※書き手は芸能界に詳しくないです!妄想ひゃくぱー!
*—*—*—*
()内はゲーム内での時間軸、等。
【 白に交わりて黒くなる 】
芸能界歴数年、いろんな経験をしてきた女の子がアイドルと関わって自分を見つめ直す話。(二部開始〜オリジナル)
side:x.x >>001 >>002
【 → TriGgeR? 】
「 引き金を引いたのは、さあ誰でしょう? 」TRIGGERメインのミステリー(?)サスペンス(?)ホラー(?)な謎パロディ。(オリジナル)
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- 白に交わりて黒くなる ( No.1 )
- 日時: 2016/06/25 20:18
- 名前: 和菓子 ◆H/vTb2U81c (ID: a.ADsdli)
無数のライトを浴びて、白い歯を見せて笑いながら歌う姿。情熱的な声と、蠱惑的な眼差し。目が合った瞬間に、わたしの世界は鮮やかに色づいた。——このひとに、追いつきたい。期待と憧れを胸に飛び込んだ世界は、額縁の外で見るよりもずっと薄汚れて、濁っていた。
〝一世を風靡した子役の現在に迫る〟——馬鹿馬鹿しい見出しの記事に目を通しながら、ソファに腰を下ろす。
びっしりと細かく書かれた文章の中にちらほらと見知った名前を見つけて溜息が零れた。
ドラマで共演したミズキちゃん、バラエティー番組で何度か有ったユウトくん、ドッキリ企画で見事わたしの演技に引っ掛かって泣いちゃったサクラコちゃん。彼女は、彼は、と、プライバシーの侵害もクソもなく、あることないこと適当に書かれた週刊誌を閉じてテーブルへ放った。
芸能界は、厳しい弱肉強食の世界だ。
長年界隈に身を置いているから優遇されることもなければ、天才だなんだと囃されても一年すればパッとその姿を消す者も少なくない。あのゴシップ記事に名前を挙げられていた子達は皆、わたしと同じ時期に芸能界入りして、今は平凡な学生生活を送っている子たちだ。誰が生き残るかを決める振るいに掛けられて、残ったのはわたしを含む、ほんの一握りの子どもだった。
かく言うわたしだって、母親が大物女優だという肩書がなければとっくの昔に消えていたかもしれない。七光りだけでこの世界に身を置けているわけではないが、それが多少影響しているのは否定できない。
映画監督の父と女優の母直々の厳しい演技指導と、それなりにあると自負している社交性のお陰でわたしは今この世界に身を置けている。はじめの頃は楽しかった。礼儀正しくそれなりに演技の上手い子どもを、大人は天才二世だと持てはやした。幼い頃、憧れてやまなかった世界そのものがそこには広がっていたのだ。
現実を知らないでいられたら、わたしも、彼らも、どれだけ楽だったんだろう。
「ご機嫌ななめねえ、シズちゃん」
「……椎原(シノハラ)、あれを読んだ? 本当に、腹が立つ……」
「ゴシップにいちいち振り回されないの。最初に教わったでしょう? ……ああ、でも、うーん、コレは少しひどいわねえ」
ノックもなしに楽屋に入り込んできたのはマネージャーの椎原だった。
親しき仲にも礼儀あり、という言葉を知らないのか何なのか、ノックもなしにわたしの部屋に入り込むのは当たり前、スケジュール調整も独断でやる勝手な人だ。とはいえ、彼女が調整してくれるお陰で体を壊すことなく、わたしの希望もうまく取り入れつつ、無理のない範囲でやっていけているのだから文句はない。
椎原はわたしがテーブルに放った週刊誌をぱらぱらと捲り、わずかに眉を寄せた。芸能界入りした当初からずっと一緒にいる椎原は、その記事に名前が挙がっている彼女たちのこともよく知っている。人気な芸能人のゴシップは腐る程あるものだが、既に芸能界から足を洗って一般人として生活する彼女らのプライバシーを侵害するのは流石にやり過ぎだと椎原も思ったのだろう。
捨てておくわ、と椎原がゴミ箱に週刊誌を落とした時、不意にノック音が響いた。表情を取り繕い、どうぞ、と声を掛ける。
「し、失礼します! 本日共演させていただくIDORiSH7のマネージャーの小鳥遊紡といいます」
「IDORiSH7のリーダー、二階堂大和です。本日はよろしくお願いします」
「はじめまして。こちらから挨拶に出向かず申し訳ありません。小波 和(サザナミ シズカ)と言います」
立っていたのは自分とそう年齢が変わらないであろう子と、緑髪の男性。IDOLiSH7——その名はもちろん、聞いたことがある。去年のブラックオアホワイトミュージックファンタジアで、前年度優勝者のTRIGGERに挑み、見事勝利を収めた今話題のアイドルグループ。今日収録のバラエティー番組には冠番組の番宣ということで来ているのだろう。丁寧にお辞儀をする彼女たちに、自分と椎原も頭を下げる。
挨拶もそこそこに、二人は自分たちの楽屋へ戻っていった。おそらく、プライベートでは大人数で遊ぶことを好まない、というネットに出回っているらしいわたしの情報を見て七人全員で挨拶には来なかったのだろう。その情報は正しい。ただでさえゴシップ記事に気が立っている今、ストレスになり得る要因を増やしたくはない。
収録開始までもう少し。楽屋を出る前に鏡で念入りに身だしなみをチェックしている後ろで、椎原がつぶやく。
「うーん、若いっていいわねえ……今話題のIDORiSH7、どんな子たちかしら」
「さあ。少なくともわたしよりは素直で可愛げがあるんじゃない」
「そう思うわ。苦労をしているのは知っているけれど、彼らが歩んできたのは、きっとあなたが歩んできた道よりはずっときれいに整備された道だもの。……うふふ、ほら、口角を上げて、かわいい顔を見せて。うん、そう……自信を持つのよ、シズちゃん」
彼らは努力家であり、天才だ。わたしのような凡人が努力しても、足元にも及ばぬほどの才能に満ち溢れた、芸能界を背負っていくスターになれる逸材だ。——わたしにはないものを、彼らは持っている。
口角を上げて、笑って。椎原がオーケーサインを出した表情を貼り付けて楽屋を出る。コツコツとヒールを鳴らして、すれ違う関係者に挨拶をしながら、スタジオへ向かう。
わたしは、女優だ。
色んなものを踏み台にここまでのし上がり、本当の自分を見せられないまま台本通りを演じる、女優だ。
- 白に交わりて黒くなる ( No.2 )
- 日時: 2016/06/28 20:41
- 名前: 和菓子 ◆H/vTb2U81c (ID: a.ADsdli)
「お疲れさま! IDOLiSH7、良い感じだったねー」
「あ、ありがとうございます!」
「お疲れさまです!」
「おっ、お疲れ和ちゃん! 今日も良い感じだったよ」
プロデューサーににこやかに一礼、IDOLiSH7のセンターの赤髪の子にも目礼をしてから楽屋に戻る。楽屋に入るまでは女優としてのスイッチをオンにしていなければならない。口角を上げたにこやかな表情のまま楽屋に入って、ようやく力が抜けた。
収録は普段通り、何事もなく進められた。
毎週水曜日に放送されるこのバラエティー番組の司会を務める大物芸人コンビのお二人もIDOLiSH7のことは気に入ったようだった。あの二人は流石お笑い芸人ということか、礼儀正しく、さらに番組を盛り上げるような子でないとお気に入りとは見なさない。特にアイドルといった華々しいのはあまり好きじゃないともっぱらの噂だから気にしていたが、いい意味で裏切られたということか。終始にこやかだった。わたしがお二人に認められるよりもずっと短い時間で、彼らは認められた。——世間にも、業界人にも、同じように。
手早く着替えを済ませ、椎原にスケジュールを確認する。この後すぐにスタジオを移動して、息吐く暇もなく音楽番組の収録。わたしと男性アーティストの方とで、次週放送開始のドラマの番宣だ。次は、TRIGGERと同じスタジオだったはずだ。TRIGGERの八乙女楽とは来週クランクインの映画で共演の予定がある。その映画とは、教師と生徒が恋愛するという王道ストーリーの少女漫画を実写化したものだ。原作ファンが多く、期待の声と反対の声とが同じだけ多く挙がっていたが、キャストが発表された途端に全ての声が期待だけになった。そりゃあ、抱かれたい男No.1が相手の教師役だ。ヒロイン役として選んでいただいた身としては何であいつがという妬みの声が多くてげんなりしてしまうのだけれど。
すれ違う関係者に挨拶をしつつスタジオを後にし、椎原の運転する車に乗り込む。ゆったりしたクラシックの流れる車内で、窓に寄りかかって目を閉じた。
着いたわよ、という声と、ピピピ、という電子音に目を覚ます。ここ数日は多忙なので、移動時間は睡眠時間に充てるようにしている。欠伸を噛み殺して返事をすると、椎原がクスッと笑った。
「今日は忙しいわね、シズちゃん」
「……椎原が調整したんでしょう。さすがに朝から食べてないのはつらいからゼリー用意しといて」
「分かってるわ」
車を降りて、用意された楽屋へ向かう。収録までのんびりしている暇はない。寝覚めは良い方なので、後に引く眠気はないし、多少の睡眠時間のお陰で頭がすっきりしたような気さえする。
楽屋に着いたらまずは共演者の先輩へ挨拶をしに向かう。普段は椎原を連れているが、忙しいときにはわたし一人で向かうようにしている。まずは番組の司会の方からだ。音楽界の大物男性アーティスト二人組。他の番組で共演させていただく機会はあったが、この番組にお呼ばれしたのは初めてのことだ。今回呼んでくださったのは、ドラマで共演する方がお二人のお知り合いだからだろう。
ほとんどが顔見知りということもあって、特に問題なく挨拶回りを済ませる。TRIGGERとは廊下ですれ違ったこともあり、挨拶は簡潔に済ませられた。特に八乙女楽とは来週から顔を合わせることになるのだから、印象は良くしておきたい。
芸能界入りして十年ほど経過する身なので、年功序列が基本の芸能人としては仕方ないのだが、年上に敬語を使われるのはどうしても慣れない。ちゃんと敬語を使ってくれるのは彼らがしっかりしている証拠ということで良いのだろうが、使われる身としては気まずさの方が勝つ。
そう思いながら楽屋へ戻ると、コンビニの袋を持った椎原が居た。椎原はわたしを見つけると駆け寄ってきて、どれが良いと訊ねてくる。リンゴ、モモ、ブドウ、パイン、ミカン——果物風味のゼリーが七個ほど入っている。モモ味のと透明なプラスチック製のスプーンを取って、蓋を開けて一口。のんびりする時間は無いので、飲むように食べ終えてごみを机の上に放置しておく。小腹を満たしたところで衣装の確認を終えたら、本日二度目のメイクが始まる。
「そういえば明日は一日オフなのよ」
「へえ」
「どこか出掛けたりしないの? 車、出してもいいわよ」
「別に、興味ないよ。出掛けるなら自分の足で行く。椎原こそ休んでよ」
「あら優しい」
着替えとメイクを終えて、収録までもう間もない。どうでもいい話をしながら楽屋を出ると、TRIGGERと鉢合わせた。会釈をすると、会釈が返される。
「そう言えば、」
「……なんですか?」
「来週から、うちの楽と共演の映画がクランクインなんでしょう。迷惑をかけるかもしれませんけど、よろしくお願いします」
「迷惑ってなんだよ。……まあ、宜しくお願いします」
「いえ、こちらこそ。TRIGGERの八乙女さんの相手なんて大役、務まるかどうか不安ですけど。色々言われそうですしね」
センタのーの九条天が思い出したように切り出した話題に内心苦笑しながら笑顔を貼り付けたままに応える。すっと細められた瞳が怖い。プロ意識の高い彼と話すのは苦手だ。去年も、同じことを思った気がする。
流れのまま、TRIGGERとなんとなく会話をしながらスタジオへ向かう。後ろに着いてきているマネージャー二人は去年初めて会ったときから意気投合して以来、会えばずーっと喋りっぱなしだ。たしかに喋り方は似ているかもしれない。
- → TriGgeR? ( No.3 )
- 日時: 2016/07/02 17:40
- 名前: 和菓子 ◆H/vTb2U81c (ID: a.ADsdli)
「ひとりぼっちに、なっちゃった」
ぽつん、と落とされた独り言が、シンとした部屋に響き渡る。——窓ひとつない、静寂と暗闇が支配する空間で、少女の金色の瞳だけがゆらゆらと揺れている。やせっぽちの彼女が、少し力を込めて掴んだだけでもぱきんと折れてしまいそうなほどに細く頼りない腕で抱き寄せたのは、ひとりぼっちの自分にいつも優しくしてくれる、物言わぬおともだち。なかよくしてあげるんだよ、と微笑んだ兄がくれた、身の丈の半分ほどもある大きさのテディベア。
ふわふわの毛並みに鼻先をうずめて、ぎゅっと抱きしめる。この暗闇に閉じ込められて、どれだけの時間が経過したんだろう。いいこで待っているんだよと微笑んだ兄が出ていってから、たくさん泣いて、泣き疲れて眠って、また起きて、泣いて——兄は帰ってこないのだと理解するまでに、何日、経過したんだろう。幼い少女にはわからなかった。太陽が輝く昼も月の照らす夜も知らぬ少女には、わからなかった。
テディベアに縋るように抱き着きながら、押し寄せるまどろみに身をゆだねようとする。手探りで探し当てたビスケット数枚とお茶のペットボトル一本、それ以外にはなんにも口にしていない彼女はもう限界だった。長い間起きられるだけの体力もない。兄を待つ気力も、生きようと足掻く力も、もうなくなってしまった。
「——ボクがいるよ。君の傍にいてあげる」
「……だれかいるの?」
瞼が完全に降りようとしたとき、不意に声が聞こえた。兄の誕生日に食べたケーキみたいに甘い甘い声。少女は沈みかけた意識を引き上げて、かさかさにかすれた声で問い掛ける。
「ここだよ。ボクはここ」
「……くまさん」
「そう! いつも仲良くしてくれてありがとう。君がさみしいっていうから、神さまにお願いしてお話できるようにしてもらったんだ」
抱き着いていたテディベアが、短い手足をもぞもぞと動かしていた。暗闇のなかでその表情はうかがい知れないが、弾んだ声は歓喜を隠しきれていない。ふわふわの毛が少女の頬を撫でる。痩せこけて、きっと青白くなっているであろう、肉のついていない頬。
少女の表情が、ほんのすこし、華やいだ。テディベアには見えない変化だったけれど、自分を抱きしめる腕にほんのすこし力が加わったことに気付いたのだろう、テディベアもまた嬉しそうに少女に頬をすり寄せる。ひとりぼっちの少女の、たったひとりの、おともだち。絶望を絶望とさえ感じることができないほど深く絶望していた少女のこころに、ほんの少しの希望が戻る。
ふと、テディベアは耳元に口のあたりを寄せて、何事かをささやいた。内緒話をするようにこっそりと。
「————」
その言葉を聞いた途端、暗闇にきらめていた少女の瞳から、急速にひかりが消えうせた。
ジリリリリ、とうるさい目覚まし時計の音に、葵(あおい)は目を覚ました。時刻は六時。家を出るまで一時間半、時間はたっぷりある。
「おはよ、葵」
「おはよう、お兄ちゃん」
目覚まし時計を止めて、階段を駆け下りる。リビングのドアを開けると、ふわり、と良い香りが鼻腔をくすぐった。今日の朝ごはんはフレンチトーストだ。テンションが上がる。
頬をゆるませながら、キッチンに立つ青年と朝の挨拶をかわす。葵の家の料理担当は十歳も年の離れた兄、楽だ。葵は手先が不器用過ぎて、料理を始めて一日でキッチンを立ち入り禁止にされてしまった。野菜を切るより自分の指を切ってしまうのだから仕方がない。
眠気を振り払うために顔を洗って、きりりと表情を引き締める。ぴょんとハネた寝癖は後で直すとして、まずは朝ごはんだ。
楽の作る料理はおいしい。葵は兄の手料理をいつも褒める。食べ慣れているはずなのに、食べる度においしいおいしいと褒めて、心底おいしそうに幸せそうに食べるのだから、楽もますますその腕を磨かなければいけないという気持ちになる。
フレンチトーストを頬張る葵にくすくす笑って、楽はテレビの電源をオンにした。朝のニュース番組。しかし、さわやかな朝には似つかわしくない不穏な単語が画面に浮かび上がっていた。
「連続殺人、六人目の被害者、か……葵、お前も気を付けろよ」
「ん、んぐ……大丈夫だよ。行きはお兄ちゃんが送ってくれるし、帰りは九条が最寄り駅まで送ってくれるもん」
「そうだけどさ。念には念を入れ、ってな。俺も毎日早く帰って来れるわけじゃないんだから」
心配そうな色の滲んだ眼差しに、葵は深刻に受け止めていない様子で笑うだけだ。彼女の言うように朝は兄が、帰りは幼馴染的存在の同級生が送ってくれる。一人になる時間は最寄駅から家に帰るまでと、家に帰ってから兄が帰宅するまでのごくわずかな時間だけだ。
「お兄ちゃんは心配し過ぎだよ、もう。私、お兄ちゃんの知らないうちにつよーくたくましく育ってるんだから」
「……はは、そっか。でも心配なのは心配。……そうだ、ヨーグルト、食べる? ストロベリーとブルーベリー、どっちが良い?」
「たべる! ブルーベリーのやつ!」
やれやれ、と言いたげに笑った葵に、楽も表情を緩ませる。フレンチトーストをぺろりと完食した彼女の様子を見て立ち上がり、キッチンへ向かう。食欲旺盛な彼女の元気な声を聞きながら、希望通り、コーンフレークの上に掛けたプレーンヨーグルトにブルーベリーソースを垂らす。スプーンと共に彼女の前へ置いてやると、嬉しそうに礼を言って食べ始めた。料理上手な楽ではあるが、ヨーグルトはさすがにお手製ではない。作れないことはないのだが、消費量の早いそれをいちいち作る時間がないからだ。
テレビの画面へ視線を向けると、すでにニュースは切り替わっていた。パンダの赤ちゃんが産まれたとかなんとかでにぎわっている動物園の様子が映し出されている。興味津々に画面を見つめる妹にそっと笑って、楽は自分の席に戻る。今度の休日は、動物園に連れて行ってやるべきだろうか、と考えながら。
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