二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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君の知らない物語
日時: 2016/08/02 13:01
名前: まぐろ (ID: UeSekODT)

プロローグ

 いつもどおりのある日のこと。


 君は、突然立ち上がり言った。


 その瞳はとてもまっすぐで、声は重くてまじめで、吸い込まれそうな一種の魅力があった。


 何であの時あんなこと言ったのか、今なら分かるけれど____、当時の私にはまるで見当が付かなくて。


 「今夜、星を見に行こう」


 考えてくれてたんだ。思ってくれてたんだ。今だから、分かる。


 すれ違って、ケンカして、たくさん困らせて、ごめん。


 そして、ありがとう。


 あの夜、私は、ううん、私達は、本当に一生の友達になれたと思うんだ。


 君がいてくれたから、そう思えるんだ。


 _____、これは、私達五人の、最後の夏の物語。


 _____、君の知らない、私だけの物語。

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Re: 君の知らない物語 ( No.1 )
日時: 2016/08/03 11:14
名前: まぐろ (ID: UeSekODT)

 第一話 七月一日

 お昼休みの出来事。
 「……はあ?星ぃ??」
 真っ先にそう言ったのは、高城だった。
 「そう、星」
 当たり前、とでも言わんばかりの頷きに、私達は懐疑の目を向ける。
 お昼を食べる手を止めてまでそう言い放った真城は、立ち上がってずれた椅子に座りなおして、改めて皆に提案した。
 「ここ一週間ぐらい、流星群が来るらしいんだ。だからその、皆で見たいなー、的な」
 数秒皆が押し黙る。
 星空を思い浮かべて、少し考える。
 皆で見る流星群……、なんだか漫画のワンシーンみたいだ。
 私としては、悪くないんじゃないかと思ったけれど___
 「乙女か」
 「なっ」
 「ロマンチストか」
 「ぐっ」
 「て言うかそもそも晴れんの?」
 「うぐッ」
 ___、どうやら、皆は違うみたいだった。
 高城、ゆうちゃん、遙の順でぶつけられた一言一言が、全部真城に刺さっているようで、つい少し笑ってしまう。
 「なっ、笑うなよ夏帆」
 「ごめんごめん、面白くてつい」
 「そういう夏帆はどうなの?」
 「わ、私?」
 「そ、私」
 「私は、その………、悪くはないと思う……」
 搾り出した言葉に、皆が驚く。
 「いいの?!夏帆」
 「星見るだけなんだよ?!」
 「雨降ったらおしまいだよ?!」
 「うん……そのときはそのときって感じで良いかな、と」
 えー……、の形で口をあける三人の隣で、真城が小さくガッツポーズをして見せた。
 「な?行こうよ、天体観測」
 「えー……」
 「ほんとに行くのか……?」
 遙がスマホで天気予報を調べ始める。
 「行くとしても、確か今日雨じゃなかったっけ?」
 「マジで?遙、ホントに雨だったりすんの?」
 画面をスクロールする遙の言葉を、皆が待った。
 「……九時から十二時まで雨」
 「うわ、何だその絶妙な時間帯」
 「ドンマイ真城」
 がっくりと項垂れる真城を横目に、皆が中断していたお昼を食べ始めた。
 「だめかぁ……」
 唇を尖らせながらパンを食べ始めた真城を見ていると、なんだかおやつを買ってもらえなかった子どものような拗ね方で、なんとなく可愛く見えてくる。
 でもさぁ、とゆうちゃんが口を開く。
 「一回ぐらい、皆でどっか行きたいよね」
 「なんだかんだ皆予定合わなかったしな」
 丁度テスト休みだったこともあるけれど、皆出かけたい思いは一緒のようだった。
 「じゃあ今度の土日行こうよ、皆で」
 「うん、行こう」
 「それでいい?真城」
 怪訝そうな目を飾る、うっとりとした長い睫毛が一度伏せて、真城が頷いた。
 「決まりだね」
 どこ行こうかー、と、その日の話題は出かけることでいっぱいだった。



 私たち五人は、高校二年になった今年の四月から数えて、もう三ヶ月間一緒にいる。
 五人それぞればらばらな性格だけど、気が合うし、皆ノリもいいし、なんだかんだ一緒に過ごす時間が多くて、三ヶ月で皆のことも段々分かってきた。
 ゆうちゃんは学級委員を任されるしっかり者で、横で結んだ長い髪と白い肌が印象的な、美人さん。
 誰とでも仲良しで、いつもクラスの中心にいる。
 高城はバスケ部のエースで、長身でがっしりした体つきと、ゆうちゃんと同じ学級委員ということも相まって男女どちらからもモテモテなイケメン君。
 優しいし、面倒見もいいし、たまに一緒に帰れなくなったときは大抵が告白されてるとき。
 遙は中学のときからの友達で、腰まである長い黒髪とつり目気味な綺麗な目がかっこいいクールビューティ。
 ちょっと物言いが尖がっててもそれこそ遙って感じで、善悪をきっぱり区別するクラス自慢の風紀委員。
 真城は、サッカー部で活躍してるストライカーで、さらっとした黒髪と整った目鼻立ちが若干女の子っぽい、これまたイケメン君。
 無邪気で、純粋で、少年気質がまぶしい。
 私こんな人たちと一緒にいていいのかな、ってそう思うくらいにすごい人たちばっかりで、皆かっこいい。

 ……でも、きっともう一緒にいられる時間はそう長くない。
 昨日のケンカの叫び声が脳裏に焼きついて離れないまま、今日を迎えて、きっと明日もこの気持ちのままでいるんだ。
 嫌なこと全部忘れられる今この四人と一緒にいる時間と、離れたくない。
 ……でも、きっともう無理なんだ。
 お父さんとお母さんがケンカしている夜は、もう一ヶ月くらい続いている。
 もちろん、全部が全部怒鳴るほどのケンカじゃないけれど、険悪な雰囲気は、相手を嫌う心の内は見え透いていて、このまま家族が分かれちゃうのかな、なんて子供心も気づいてもらえないくらいに二人は二人のことに夢中だった。
 不意に、フラッシュバックが起きる。
 「お母さん、もうやめて!」
 「夏帆は黙ってなさい、これは大人の事情なの」
 「でも!!」
 「黙ってなさいって言ってるでしょ!!」
 振り払われた手、テーブルにぶつけた足の痣が疼くようで、私はそっと手を撫でる。


 「夏帆」
 「……」
 「かーほ!」
 「……うわっ、あ、ごめん!何だっけ?!」
 ゆうちゃんの声で、私は我に帰った。
 どこかむすっとした表情のゆうちゃんの隣には遙、というか皆がいた。
 「まだ何も言ってないよ、大丈夫?五時間目中ずーっとボーっとしてたけど」
 「あ……うん、大丈夫」
 手を隠して俯いた私に、遙が告げる。
 「なんか悩んでんなら言いなよ?そのためにうちらがいるんだからさ」
 「うん……ごめん、大丈夫だから」
 笑いかける私を見て、高城が口を開いた。
 「……じゃ、帰るか!出かける話でもしながら」
 「おー!」
 ゆうちゃんの威勢の良い掛け声につられて、私は席を立った。


 「でさ、どうする?」
 「んー、皆で出かけるって言ったらやっぱよみうり?」
 「あー……、でも高2でよみうりって」
 「いいじゃん、よみうり。俺全然平気」
 「そりゃ真城はねー」
 「ガキだから」
 「うるさい」
 「いいんじゃね?真城一対保護者四、ってことで」
 「高城もうるさい」
 帰り道、私たち五人は、駅に向かって歩いていた。
 真城と私は学校から家が近いから電車には乗らないけれど、真城は自転車を押しながら、私はみんなの隣を歩いて一緒に帰っていた。
 「第一、俺そんなにガキじゃないし」
 「星って言い出すのは小学生の自由研究ぐらいだ」
 「いやでも夏帆はノってくれたし」
 「それは夏帆が優しいからでしょ」
 「いや、そんなことないって」
 あわてて否定した私に、ゆうちゃんがいたずらな笑顔で言った。
 「あるの。自分だから気づかないだけ」
 ゆうちゃんの言葉に、皆が私のほうを見る。
 「でも、確かに夏帆ってお母さんみたいだよね」
 「それは分かる」
 「お弁当メッチャおいしいし」
 「え、なにそれ食ったの」
 「うん。もらった」
 「ちょ、夏帆、今度俺にも頂戴」
 「ついでに俺も」
 なんだか本気な高城と相変わらず無邪気な真城に顔を覗き込まれて、ついおどおどしてしまった私はうろたえながら答えた。
 「い、いーよ、もちろん」
 「おっしゃ」
 「ごちそうさまです」
 小さくガッツポーズの高城が、駅前の景色を見て「あ」と小さく声を出した。
 「なに、どしたの高城」
 「決まんないまま駅着いた」
 「「「「あ」」」」
 高城以外の四人が同じタイミングで声を漏らして、堪えきれなくなった小さな笑い声を吐き出した。
 お弁当、皆で、テスト休み、星……、あ、そうだ。
 「じゃあさ」
 思い切った私の声に皆が驚いて、歩んでいた足を止める。
 「七夕の日に、星見に行こうよ」
 「七夕で、星?」
 意外そうな高城の目を見ながら、私は続けた。
 「うん、星見ながら皆でバーベキューとか、良いかなって思って」
 「なるほど……バーベキューか」
 「良いんじゃない?真城の要望も入ってるし、皆文句ないし、ついでに七夕だし。……遙、天気」
 「今調べてる………六時から十二時まで、全部晴れ」
 「じゃあ、決まりでいっか!」
 ぱああっ、と輝き始めた真城の笑顔に、皆がくすくす笑い始める。
 「星、見れる!」
 「よかったね、真城。夏帆が頭よくて」
 「うん、ほんとによかった」
 「じゃ、決まったことだし、帰りますか!」
 高城の一言で、皆がそれぞれの帰路に着き始めた。


 「ただいまー……って、お父さん、帰ってたんだ」
 「ああ、夏帆か。お帰り」
 玄関のドアを開けて、リビングに入ると、珍しくお父さんが帰ってきていた。
 なにやら神妙な面持ちで、前を横切る私を目で追う。
 「……何、お父さん」
 不思議に思ってお父さんのほうに向き直ると、お父さんは不自然に俯いた。
 そして、暗い声色で言う。
 「あのな……夏帆」


 「父さんと母さん、離れることになった」


 「……え……?」
 さあっ、と顔から血の気が引いていくのが分かる。
 「ごめん」、と俯いたまま謝るお父さんは更に続けた。
 「それでな、夏帆の事は父さんが引き受けることになったから」
 予想は、していた。
 いつか家族が離れてしまうんじゃないかって。
 壊れてしまうんじゃないかって。
 でも、でも今なの?
 今じゃなきゃだめなの?
 せっかく出かけることも決まったのに……
 きっと、お父さんは私を連れて実家に帰るのだろう。
 この神奈川から、福岡へと身を移すのだろう。
 でもそれってきっと_____


 「ごめんな夏帆。_____、引越しすることになった」


 持っていたスクールバッグが、どさりと音を立てて床に落ちた。






Re: 君の知らない物語 ( No.2 )
日時: 2016/08/03 11:21
名前: まぐろ (ID: UeSekODT)

ようやく一話完成!!
長い文章になってしまいましたが、というか長い物語になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします!
感想、こんなシチュエーションやってほしい!などなどコメントお待ちしておりますので、是非是非リクエストお願いします!(基本は曲の歌詞に沿って進行するので取り入れられない意見もあるかと思いますがご了承下さい)
今後ともよろしくお願いします!
                          byまぐろ

Re: 君の知らない物語 ( No.3 )
日時: 2016/08/08 15:33
名前: まぐろ (ID: UeSekODT)

 第二話 七月二日


 どさっ、ともたれ掛かった人の体重に、私は我に帰った。
 「おっはよー、夏帆」
 「うわっ?!……なんだ、ゆうちゃんかぁ……脅かさないでよ」
 「びっくりした?」
 へへー、と笑いながら隣を歩き始めるゆうちゃんの綻んだ顔を見て、私はほっとため息をついた。
 「ゆうちゃん、すごい勢いだったよ」
 「ごめんごめん、なんか後姿がしょげてたっぽかったからつい」
 「え……そんなにしょげてた、私」
 「うん、いつもの夏帆じゃないみたいだった」
 「そっか……ごめんね、ゆうちゃん」
 「いやいや、そんな日もあるってことよ。……なんかあったら遠慮なく言いなよ」
 「うん、ありがと」
 校庭に差し込む日差しがじわじわと体力を奪っていく。
 責められるような強い明かりに差されながら、私は昨日のことを考えていた。


 バッグを落とした音が響いた直後、お父さんは席を立ち上がった。
 「夏休みには少し早いが、七月の八日に引っ越すことになったから、辛いだろうがお友達にも言っておいてくれ」
 私に背を向けてそう告げたお父さんは、「それと」と続ける。
 「机の上に先生宛の手紙があるから、明日先生に渡してくれ」
 机の上を見やると、確かに手紙が置いてあった。
 ずっと視野には入っていたはずなのだけれど、事があまりに衝撃的過ぎて気づかなかったようだった。
 バッグを拾い、手紙をしまいこむ。
 部屋に帰ってベッドに倒れこむと、じわっと目の下が熱くなり始めた。
 七月八日、いまからおよそ一週間後。
 七日のバーベキューには行けるはずだけど、問題は_____、
 「皆に、いつ言おう………」
 零れ出した声は小さくて、震え交じりで、自分で自分の声に泣きそうになる。
 というか、気づいたらもう頬は濡れていた。
 カーディガンの袖で拭うと、視界に白いもやが掛かったようになって、部屋の内装が霞んで見えた。
 机の上のカレンダーを見ると、夏休みと書き込んだ二十二日まで、大きく間があいているのが分かった。
 いつ、どうやって、皆に伝えるか。
 最大の懸念は言えないまま終わってしまうこと。
 いやだ。そんなの絶対いやだ。
 早いうちに言ってしまおう……
 そう考えて、昨日はもう眠ってしまった。


 授業明け、お昼休み。
 言うなら、今だ。
 机を寄せ合って集まる皆の元に行くと、何故か皆がこちらを見ているのが分かる。
 透かし見るような視線、居心地が悪くて、思わず皆を責めるような目で言った。
 「……な、何」
 「夏帆、この前の約束、覚えてるか」
 口を開いたのは、高城だった。
 声、というより目線___、なんだか私が悪者になったような、正義を楯に攻撃するような、そんな目線。
 「約束…って、七日の……?」
 「違う、そっちじゃない」
 今度は真城が言った。
 首を振って、私をねめつけるような視線で続ける。
 「七日の件はあれで良い……、だが夏帆、お前は一つ重要な約束を忘れている」
 うんうん、とゆうちゃんと遙も頷くのを見て、私の焦りが加速していく。
 「夏帆、お前____」
 ガタリと立ち上がった真城の剣幕に私はたじろいで____、

 「なんで今日弁当じゃないんだよ!!」

 「……へ?」
 「おかずくれるって言ったじゃんか!」
 「俺も言われたー」
 呆然としている私に、ゆうちゃんが続ける。
 「真城と高城、めっちゃ楽しみにしてたんだよ、夏帆のお弁当」

 ___「お弁当メッチャおいしいし」
 ___「え、なにそれ食ったの」
 ___「うん。もらった」
 ___「ちょ、夏帆、今度俺にも頂戴」
 ___「ついでに俺も」

 「あ……ああ、ごめんごめん、今日ちょっと時間なくて、おにぎりにしてきちゃった」
 フラッシュバックした昨日の光景と二人の顔に、私はつい笑いながら謝った。
 「明日、絶対だかんな」
 「絶対だかんな」
 「はーい」
 楽しい、純粋に私はそう思いながら、席に着いた。


 帰り道、皆の委員会と真城の部活、私の日直の仕事の時間が被って、偶然私達は一緒に帰れることになった。
 「……にしてもホント偶然」
 「ほんとそれ」
 「一緒に帰れる人いないかなーとか思って終わる時間聞いただけなのに、まさか全員揃うとは」
 昨日と同じ並び、真城だけが自転車を押して歩いていた。
 学校の近くの道は、暗い。
 田舎だから、駅のほうの明るさと学校のほうの明るさが全然違う。
 「……ねえ、真城」
 ゆうちゃんが真城に話しかけた。
 「何」
 「あたし昨日からずっと気になってたんだけど、何でそんなに星が見たいの?」
 高城と遙も顔を見合わせる。
 「そういやそうだな」
 「何で?」
 私も隣の真城の顔を見上げた。
 「……言わなきゃだめ?」
 「だーめ」とゆうちゃんが追い討ちをかけると、真城は少し俯きながら答えた。
 「星って、なんかかしらいわれがあるだろ」
 「……いわれ?」
 「金星は一番星、とかさ」
 「あ、それか」
 「今来てる流星群のいわれが、『永遠』なんだよ。……だからその、俺たち五人が永遠の仲でいられますように……みたいな」
 五人全員が、揃って口を閉じる。
 真城がどこか恥ずかしそうに目線だけでこっちを見た。
 「真城、あんた……」
 遙が長い髪をさらりと風に泳がせながら言った。
 「たまには良いこと言うんだね」
 「………」
 真顔で言った遙に皆が注目する。
 三秒くらい黙って、皆で顔を見合わせた。
 「……ぷっ」
 「…くは、あはははは!」
 「……っ、ふふふふ」
 「………ふふ」
 「あはははは」、と大きな笑い声が暗闇に響いた。
 「ほんっとたまにはね」なんて皆して笑った。
 「なっ、笑うな!俺の恥ずかしさ返せ!!」
 顔を真っ赤にして怒る真城を見て、更に皆が馬鹿にする。
 その日は、明かりもない道を、馬鹿みたいにはしゃいで歩いた。
 ………私だけが、抱え込んだ孤独や不安に押しつぶされないように笑っていた。


 「ただいまー」
 部屋に上がって、いつものように荷物を置く。
 ベッドに腰掛けて、私は少し俯いて___、どさり、と昨日と同じようにベッドに倒れ伏した。
 額に腕を置いて、考える。
 ………言えなかった……。

 引っ越すこと、言えなかった………!!



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