二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【イナズマ】 四つの小品 【イレブン】
- 日時: 2016/08/12 20:35
- 名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: a.ADsdli)
数年振りに戻って参りましたイナイレやらBSRやら雑食に書いていたゆうと申す者です……!一作目からもう三年以上が経過しまして現在じぇーけーやってます。イナイレキャラの年齢超えちゃったよ!どうしよう!
見知った方々はみなさん居られないような気がしたりなんだりしちゃっていますが、まあぼっちでもいいやーって気分でのんびり書いていきますね。ほんとにおそいよ。
「四つの小品」とありますが、某ピアノ曲との関連は薄めです。作中に名前くらいは登場するかもしれませんが、特に意味が有って付けたわけではなく、〝四人のオリジナルキャラクターを中心に物語が展開する〟のでそう名付けた感じです。まあ以上は蛇足ですね!
四つの小品と言いながら本編は三章に分かれています。一章から三章まで、それぞれイナイレの無印の第一期から第三期まで、と言う風になっています。
拙い文章しか書けない初心者物書きですが、よろしくお願いします^^
*、四つの小品
【Ⅰ】Please listen to my dream. Please don't laugh at my dream.
序章:>>001
始動:>>002 >>
(オレの夢を聞いてくれ。どうか笑わないで聞いてくれ。)
【Ⅱ】
【Ⅲ】
(16'08.08 start.)
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- 【Ⅰ】序章 ( No.1 )
- 日時: 2016/08/08 13:47
- 名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: a.ADsdli)
「お気の毒ですが、もう野球をすることは難しいでしょう」
お気の毒、と言いながら努めて平坦な声で医師は言い放った。もう何人にもその宣告をしてきたに違いない、そう思えるだけの妙に慣れた感じがあった。
そうして、白球だけを追い掛けていれば幸せだった日々は、呆気なく崩れ去った。
期待のエース。そんな肩書きを付けられていると知って、オレは努力した。その努力は努力を超えて、オーバーワークになった。仮にオレに才能ってものがあったのだとして、オレは自らそれを潰した。そうなったのは決してオレだけのせいではない、オレ頼りにやってきた自分たちが悪いのだと、監督やチームメイト、両親は口を揃えた。
別に誰かを恨むとか、そういう話じゃないことはオレだって理解している。誰かに八つ当たりしたところでオレの肩が治るわけでもない。マウンドに立って投げることが出来ないなら、もう野球選手にはなれないのだ。もう硬球を握ることも、二度とないのだ。
そうして、リーグ時代からずっと続けた硬式野球を辞めた。リトルシニアから抜けた。中学に上がって買ってもらった、まだ半年も使っていない新品と呼べるグラブと愛用の金属バットと白球は段ボールに詰めて、家の倉庫の奥深くにしまい込んだ。ついうっかり見つけてしまうことのないように、ずっとずっと奥深くに。
でも、どうしてもそれらを捨てられなかったのは、まだ夢を諦めたくないって叫ぶオレの心の表れだった。
それからオレはサッカー部に入部した。野球の為と鍛え抜いた身体をどうにか生かしたかった。もしかしたら、もう一度、マウンドに立つ日が来るかもしれないとどこかで信じていたから。
サッカー部を選んだ理由は、単に困っていたからだ。大会に出られないほど、人数が足りない。初心者でも良いから力を貸してくれと頭を下げた円堂に協力してやりたいと思った。こんなオレでも、何かができるなら、と。
クラスの窓際の一番後ろの席の、オレの席。放課後そこで頬杖をついて、窓から見えるグラウンドを眺めながら、二度と立つことのないマウンドに誰かが立っているのを羨む日々が、ようやく終わりを迎えようとしている。それが純粋に嬉しかった。ようやく前を向ける気がした。
オレは本当に、サッカー部でやっていけるのだろうか。
本屋で購入したルールブックを読みながら帰宅する途中、ふと、そんな疑念が湧いた。幼い頃から続けていた野球と違って、サッカーに関しては全くの初心者だ。走って、ボールを蹴って、シュートが決まれば得点が入る。それくらいのことは知っていても、詳しいルールは全く知らないし、上手いドリブルの方法も分からない。授業でもサッカーは殆どやったことがない。
自分が野球において重要な役割を果たしていて、それなりの実力があったことを、自分は自覚していた。だからと言って何もしない日はなかったけれど、努力に努力を重ねた結果がこの故障だった。
それがサッカーにおいてはまるで初心者で、野球とはまた別の意味で自分が努力しなければならないことは理解している。ただサッカーで言う努力はきっと、好きだから、上手くなりたいから、と自発的にするのではなく、やらなければいけないから、普通に戦えるくらいにならなければ迷惑が掛かるから、と、強制されているものに近い。
——やる気が出ない自分が居ても良いのか。
見たところやる気があるのは一部だけで、後の部員はただの数合わせみたいなものだ。オレだってその内の一人だろう。やる気があるかないかと問われれば、ある、とは言えない。
「よおーしっ、もう一回!」
馬鹿らしくなってルールブックを閉じた矢先に、聞き覚えのある声が聞こえて足を止める。声の方向を向くと、河川敷で小学生くらいの子たちと練習している円堂の姿が目に入った。
円堂のポジションはゴールキーパー。ゴールを守る役割。小学生とはいえど威力のあるボールを止めたり、弾いたり、時折シュートを決められることがあるけれども、悔しそうに、けれど楽しそうに笑っている。その姿に、野球の練習に向かうチームメイトの姿が重なった。好きなものをやるとき、ひとは一番輝いている。
不意に円堂がオレの方を向いた。ぱあっ、と効果音が付きそうなくらい表情を輝かせて、オレに手を振る。
手を振り返すと、円堂はニカッと笑って、また練習に集中し始めた。
オレのやる気が無いことにくらい、円堂だって気付いているはずなのに。あいつはいつもサッカーやろうぜとオレたちを誘うばかりで、それ以上のことは言わない。
「……頑張ろうかな」
許されている、とは思わない。この状況に甘えている自分を、自分は許したくはない。
円堂がまっすぐボールに向き合って笑っている姿を見て、分かった。
オレはまだ前を向けてはいない。野球がしたいし、それ以外のスポーツに正面から向き合えると、はっきり言い切るだけの度胸もない。
それでも、少しでも、オレは円堂に協力したいと思った。オレなりに、何かできることをやりたいと思った。野球をするオレたちと同じような顔でサッカーをする円堂のために。何もできないオレで良いのなら。
「サッカーやろうぜ、佐倉!」
今度こそ、前を向ける気がしたから。
【Ⅰ】序章
- 【Ⅰ】始動 ( No.2 )
- 日時: 2016/08/12 20:34
- 名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: a.ADsdli)
「ああーっ!」
担任のつまらない話にうとうとと微睡んでいた思考が一気に現実へ引き戻された。聞き覚えの有り過ぎる馬鹿でかい叫び声の持ち主の方へ視線を向けると、椅子から立ち上がり、たった今紹介されていたらしい転校生を指差しているのが見えた。
豪炎寺修也。凛とした顔立ちの転校生の隣に、そう書かれている。またすごい名前だな、と心の中で独りごちた。
あれだけ反応しておきながら知り合いではないと言う円堂に、クラスメイト達が訝しげな視線を送る。友人がそんな視線にさらされているというのがなんとなく恥ずかしくてオレは視線を逸らし、窓の外を見た。
窓際の列の、一番後ろ。日当たりが良くてグラウンドが見渡せるこの席を、オレはとても気に入っている。
転校生の豪炎寺は、空いた席——オレの目の前の席に座った。数日前に席替えをした際、転校生が来る分もと担任がクジを一枚大目に作っておいたのだ。委員長が引いた転校生の分のクジが示していたのはこの位置。今まで誰もいなかった席に人が居る違和感を感じながらも、オレは豪炎寺の肩を軽く叩いた。
「よろしく。豪炎寺、だったよな?」
「ああ」
「オレは佐倉麻紀。名字も名前も女子っぽいけど、男子だからな?」
「それくらい見た目で分かるさ」
オレの言葉にフッと小さく笑った豪炎寺に、オレは内心口角を上げる。掴みは上々、見たところお喋りなわけでもないこのクールな転校生とは上手くやっていけそうな気がする。
給食前の小休憩、オレがトイレに行っている間に円堂が豪炎寺に話し掛けに来ていた。その後ろにはマネージャーの木野の姿。
たしかに、紹介のときにあれだけ反応しておいて、知っていない筈はないよな。
自分の席に座ると、円堂が「佐倉!」と声を上げた。そちらのほうに顔を向ける。
「そうだ、こいつもサッカー部なんだ! なあ、お前もサッカー部に入らないか?」
昨日、この豪炎寺と何かがあったらしい円堂は、豪炎寺のサッカーが上手いと称賛しつつ、なんとか勧誘しようとしている。対する豪炎寺は無表情のまま、迷惑そうに顔を背けた。おっと、雲行きが怪しい。
動向を見守っていると、豪炎寺は静かな声で言った。どこか遠くを見つめる眼差し。オレはそれをよく知っている。
「サッカーは、もう辞めたんだ」
——ああ、この目は。
好きな筈のものを、諦めざるを得なかった者の目だ。以前のオレがしていた、その目だ。
豪炎寺、とオレが声を掛けるより早く、教室に半田が駆けこんできた。円堂が校長室に、何か重要な用件で呼ばれたらしい。教室を飛び出していった円堂の背を見送ってから、先ほどできなかったように豪炎寺に声を掛けようと口を開く。
だが、まるでそれを分かっていたかのように豪炎寺は立ち上がり、配膳を始めた給食当番の方へ歩いていく。小さく溜息を吐く。この話題に触れるにはまだオレたちの距離が遠すぎる。
オレもゆっくり立ち上がり、円堂の分も取ってやろうと思いながら列に並ぶ。
「豪炎寺」
「……なんだ?」
「あー……昨日、円堂と何があった?」
自分の分と円堂の分を運び終えて着席し、豪炎寺の背中に声を掛けると、豪炎寺は振り返った。
オレの問い掛けに対し、不良に絡まれていたのを助けた、と短く返す豪炎寺。その流れのどこにサッカーの要素があるのかは分からないが、円堂が深く感銘を受けるような何かがあったのには間違いない。
いちおうオレたちのキャプテンだし、お世話になったのだから礼くらいは言っておこうと思って言うと、豪炎寺は不思議そうな顔をした。
「……佐倉に感謝される覚えは特に無いな」
まあ、確かに。でも、オレの恩人の恩人ってことなら、つまり、そういうことじゃん。
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