二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 428 タイムトゥライド
- 日時: 2016/08/13 22:29
- 名前: バタフライ ◆T0qJfISYm6 (ID: Xi0rnEhO)
嘘のような本当の話をしよう。
今日の夜8時。渋谷は壊滅する。
はい。皆さんこんにちはこんばんは初めましての方は初めまして。バタフライといいます。
この小説はサウンドノベルシリーズ、
「街」「428 封鎖された渋谷で」をモチーフにした小説です。
注意点がいくつか。
1、本家と同じレベルのグロシーンあり
2、群像劇という都合上、一部のキャラが中々でない可能性あり
3、街、428のネタバレが容赦ないほどあるため、未プレイの場合はご注意を
4、428の続編「タイムトラベラーズ」は時系列が異なるためネタを入れられません
以上の4点が大丈夫という方は、ごゆっくりお楽しみください。
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- Re: 428 タイムトゥライド ( No.1 )
- 日時: 2016/08/13 22:32
- 名前: バタフライ ◆T0qJfISYm6 (ID: Xi0rnEhO)
主要人物紹介
女子大生編(三人称:茜)
一ノ瀬 茜(いちのせ あかね)21歳 性別:女
女子大生編の主人公。
かつて伝説と呼ばれたスクールアイドル、「ツインフランメ」の一人。
プロデビューも決まっていたが、とある理由で高校卒業を機に解散してしまい、今は普通の大学生。
伝説のチームの初代ヘッドに憧れており、その影響で空手を嗜んでいる。
妹である夏海のライブの手伝いをするため、ハチ公前広場に向かったが……
五十嵐 零児(いがらし れいじ)17歳 性別:男
謎の少年。
ハチ公像前で倒れているところを茜に助けられ、行動を共にする。
世界のパワーバランスを変えるほどの力を持つらしいが……
赤仮面(あかかめん 本名不明)
執拗に零児を殺害しようと追い回す、謎の仮面の男。
茜に対しても殺意を持っているようだが……?
一ノ瀬 真希(いちのせ まき)51歳 性別:女
仕立て屋「服の一ノ瀬」を切り盛りする、茜と夏海の母。
夫と別れてから、女手一つで二人を育ててきた。
服に対するセンスはピカイチで、洋服から和服、アイドルの衣装まで幅広く手がける。
刑事編(三人称:俺)
二宮 渉(にのみや わたる)27歳 性別:男
刑事編の主人公。
渋谷署に通うごく普通の刑事。
自他ともに認めるアニオタで、署の人間からは「二代目オタク刑事」と呼ばれることも。
考えることよりも先に体が動き、よく先輩などからどやされる。
謎の男からの犯行予告により、ハチ公前を見張ることになった。
北川 幸秀(きたがわ ゆきひで)32歳 性別:男
二宮の先輩にあたる渋谷署の刑事。
二宮と同じく、ハチ公前を見張ることに。
「彼女」にぞっこんであり、頻繁にその話をしては、二宮に煙たがられている。
高木 進次郎(たかぎ しんじろう)55歳 性別:男
警視庁の管理官。
彼が担当する事件は全て解決することから「未来を知る男」と呼ばれている。
血が大嫌いであり、かさぶたをめくった時に出る程度の血を見ると失神してしまう。
ザイン・ウッドフィールド 36歳 性別:男
渋谷署に捜査協力することになるFBIの捜査官。
射撃の腕は一流で、頭も切れる。
過去にあるトラウマから、今回の渋谷を揺るがす事件にも捜査協力をする。
スクールアイドル編(三人称:私)
三枝 春香(さえぐさ はるか)17歳 性別:女
スクールアイドル編の主人公。
緑川学園高校でスクールアイドルグループ「SEASONS」のリーダーを務める。
歌うことと踊ることが大好きで、とある人物に強い憧れを持っている。
本人はいたって前向きで、極めてポジティブ思考だが、それ故傷つきやすい。
SEASONSの解散を避けるため、渋谷の街を奔走する羽目になる。
一ノ瀬 夏海(いちのせ なつみ)17歳 性別:女
SEASONSのメンバーの一人。茜は姉、真希は母にあたる。
小動物のような極度の人見知りで、アイドルになったのも自分を鍛えるため。
心配症でもあり、特に茜のことは彼女の頭痛のタネにもなっている。
日比野 千秋(ひびの ちあき)17歳 性別:女
SEASONSのメンバーの一人。
わかりやすいギャルであるが、才能は飛び抜けており、作詞作曲等は彼女が担当している。
「○○系」が口癖。
足立 千冬(あだち ちふゆ)17歳 性別:女
SEASONSのメンバーの一人。
典型的なお嬢様であり、その暮らし方は豪華そのもの。
男性を異常に毛嫌いしており、そのことが原因でほかの生徒としばしば激突する。
カメラマン編(三人称:四元)
四元 薫(よつもと かおる)38歳 性別:男
カメラマン編の主人公。
千葉のローカルテレビ局「テレビサウザンリーフ」のカメラマン。
どんな相手に対しても尊大な態度を取り、取材相手を怒らせることがしばしば。
だが自分が本当に報道する価値があるものには命を賭してでもスクープを収めようとする執念も。
ニュース番組に重大なヤラセが見つかってしまい、代わりの映像を撮るため渋谷へ。
比嘉 希望(ひが のぞみ)25歳 性別:女
ローカルテレビ局「テレビサウザンリーフ」のアナウンサー。
真実を伝えることを信条としており、入社2年目にしてメイン司会を勝ち取るなど、信頼が厚い。
四元と共に渋谷へやってくるが、尊大な態度を取り続ける彼に振り回される。
脱獄囚編(三人称:五十嵐)
五十嵐 国治(いがらし くにはる)48歳 性別:男
脱獄囚編の主人公。
細菌学の権威であり、致死率ほぼ100%のウーア・ウイルスのワクチン製造にも成功した。
基本的に人とのつながりに興味はなく、もっぱら一人でいる方が好き。
零児の父であるが、零児よりも研究が大事と、家族の交流はほとんどない。
無実の罪で投獄され、ある人物の手によって脱獄に成功する。
柘植 邦彦(つげ くにひこ)48歳 性別:男
五十嵐の同僚であり、五十嵐と同じく細菌学の権威。
二人で研究を進め、ついにウーア・ウイルスのワクチン製造に成功する。
しかし成功するやいなや、五十嵐のことを告発し、警察に逮捕させてしまう。
- 女子大生編 11:00 ( No.2 )
- 日時: 2016/08/15 18:49
- 名前: バタフライ ◆T0qJfISYm6 (ID: Xi0rnEhO)
……走り続けていた。
スクランブル交差点方面へ向け、走り続けていた。
春先といえど、まだ顔を撫でる風は冷たく、走るには心地よい。
だが、彼女が走る理由は、それだけではなかった。
「はぁっはぁっ」
赤色のパーカーに、紺色のショートパンツ。
春風にそよぐ、深い茶色のポニーテール。
女子大生 一ノ瀬 茜(いちのせ あかね)
時は、10分前にさかのぼる。
・・・
道玄坂にある、服の一ノ瀬。
様々な衣服の仕立てを行う、歴史ある服屋である。
「買ってきたよ。母さん」
「ありがと。そこに置いといてね」
母である一ノ瀬 真希(いちのせ まき)に頼まれ、買い物を終えた茜。
「夏海は?」
「あぁ。あなたが買い物に行っている間に、学校に行っちゃったわよ」
「え?今日日曜日でしょ?」
そうは言ったが、予想はすぐにできた。
「あぁ。スクールアイドルで、集まりか何かあったんじゃない?」
「おそらくそうね。新歓のライブ、成功したんでしょ?」
妹の一ノ瀬 夏海(いちのせ なつみ)は緑川学園高校でスクールアイドルをしている。
グループ名は……悪いが、忘れた。
「で、茜。あなたはどうするの?」
「どうする?う〜ん。散歩でも行こうかな。今日は頼まれてることとか、何もないんでしょ?」
「いや、それがね。さっき千葉の方のテレビ局から、取材をさせてくれってオファーがあったの」
「千葉の?」
初耳だ。
「なんでも、渋谷の中でも老舗である私の店を取材して、{古き良き日本を知りたい}
だ、そうよ」
「ふうん」
正直、テレビのことなどどうでもよかった。
ただ、自分はテレビに映りたくはない。そうは思っていたが、
「?」
その時、茜のスマホのバイブレーションが。
「あれ?夏海からだ。……もしもし?」
「お、おおお、お姉ちゃあん……」
消え入りそうな声で、夏海の声が聞こえてくる。
「な、夏海……どしたの?」
「ごめぇん……今すぐ、緑川学園高校まで来て……」
「え?」
「話は……そこでするから……!」
プツ。
「え、もしもし?もしもし!?」
立て続けに、電話がかかってくる。今度は知らない番号だ。
「もしもし?」
「あ、もしもし?あなたが夏海ちゃんのお姉さんですか?」
「え?そうですけど」
三枝と名乗ったその人物は、あらましを教えてくれた。
「と、いうわけなんです」
「なるほど。それで夏海は私に手伝いを頼んできた。というわけね」
「はい。お忙しいなら大丈夫なんですけど……」
どうせ今日は家にいてもすることがない。
それに、取材が来るというのならできれば家にはいたくない。
「うん。いいよ」
茜はそう言った。
「ほ、本当ですか?ありがとうございます!」
「で、あたしは何をすればいいの?」
「そうですね……出来ることなら、こちらの学校へ向かって欲しいのですが……
何分、新しく入った理事長の娘さんが{スクールアイドルなんて認めません}とうるさくて」
学校の行事のことまで口出しできるとは、理事長の娘とは随分いい身分のようだ。
「ですから茜さんには夏海ちゃんと一緒に、ビラ配りのお手伝いをしてもらいたいんです」
「ビラ配り……?」
「はい。今から夏海ちゃんをスクランブル交差点まで行かせるので、そこでビラ配りを一緒にして欲しいんです」
なるほど。
それなら簡単そうでいい。
休日なのに、力仕事やそういった仕事は面倒だからだ。
「わかった。今から行くわね。できる限り急ぐけど、遅れたらごめんね」
・・・
スクランブル交差点にたどり着いた。
電話の後、部屋で着替えていたので遅くなってしまった。
周囲を見渡す。
いつもどおり、スクランブル交差点は多くの人でごった返している。
109を始めとしたビル群。人々の手足となっている渋谷駅。
そしてハチ公像。
確か夏海とは、ハチ公像の前で待ち合わせだったはずだ。
茜はハチ公像へ向けて足を向ける。
幸い、まだ夏海は到着してないらしい。
「なぁ、いいだろ?金貸せや」
「ちょ……困ります……」
と、そこで少年が、不良に追い詰められている光景を目にする。
「いいじゃねえかよ。減るもんじゃねぇし。おら、財布の中身出せや」
不良が強引に、少年から財布を強奪する。
「あっ……!」
「へっありがたく使わせてもらうぜ!」
こちらに向かって走ってくる男に対し、茜は……
ガッ!
「ぎゃっ!」
反射的に足払いをかけた。
「てめ!何しやがんだこのアマ!」
殴りかかってくる。
「人の財布を盗んどいて、何言ってんのよ!」
「黙れ!」
力任せに殴りかかる男に対し、茜は小さな動きで攻撃をかわし……
「せいっ!」
ドゴッ!
男に正拳突きを放った。
「がおっ……」
変な声を上げながら、男は倒れた。
「て……てめぇ……」
「今のは急所を外したわ。次は……どうなると思う?」
「……ひ、ひぃ……!」
男は財布を投げ捨てると、脱兎のごとく逃げ出した。
「あ、あの……」
「……はい」
茜は少年の財布を拾い上げ、汚れを払ってから返す。
「ありがとうございました!」
「礼なんていいわよ。当たり前のことをしただけ」
背中を向けながら、少年に言う。
「たまにあんなのがいるけど、渋谷のことは嫌いにならないでね」
少年は茜が歩き出しても、礼を言い続ける。
その少年に、茜は小さく手を振って応える。
こう見えても空手で鍛えた体術では、男にも負けない自信がある。
茜が体術を習い始めたのは、10歳の頃だった。
その頃渋谷を賑わせていた伝説のチーム、KOKの初代ヘッド、遠藤 亜智(えんどう あち)
に、子供の頃、不良たちから絡まれているのを助けられた。
あの時の光景は忘れもしない。
いきなり前にいたから邪魔という不良に対して亜智が現れ、男たちをのしていった。
あの正拳突きは、とてもかっこよかった。
別れ際に言われた言葉を、今でも一言一句たがわず覚えている。
「たまにあんなのもいるけど、渋谷のこと、嫌いにならないでくれよな」
要はその人物をリスペクトしているだけなのだが、それでも亜智に対する憧れは大きかった。
「あたしも、いつかあの人みたいになれるかな……」
そんな淡い思いを浮かべつつ、ハチ公像へ向き直った。
「……ん?」
そこで茜は……
- 刑事編 11:10 ( No.3 )
- 日時: 2016/08/15 22:56
- 名前: バタフライ ◆T0qJfISYm6 (ID: Xi0rnEhO)
「……あと、5分か……」
取引の時間は今日の朝11時15分。
この任務、失敗するわけにはいかない。
なぜなら……
もし失敗すれば、渋谷の街は間違いなく壊滅するからだ。
刑事 二宮 渉(にのみや わたる)
「……」
慎重に時計の針に目を落とす。
「おい、な〜にやってんだよ二宮」
バシッ
「あだ!」
先輩の北川 幸秀(きたがわ ゆきひで)にいきなり背中を叩かれる。
「き、北川さん!なにするんですか!」
「はっ。ただ単に緊張をほぐそうとしただけ。悪いか?」
「悪いです!犯人に見つかったらどうすんですか!」
『声が大きいぞ二人共』
無線から声が聞こえてくる。
『もし犯人に勘付かれたらまずいことになる。もう少し静かにしてくれ』
「すいません、高木さん」
警視庁管理官の、高木 進次郎の声だ。
・・・
事件は、昨日起きた。
突然、渋谷署に対するサイバー攻撃が発生。
渋谷署のパソコンに、一斉にとある画像が映し出された。
「!?」
それは、誰もが目を疑う光景だった。
大量の人々が、体中の毛穴という毛穴から血を噴き出して倒れている映像である。
そしてそこには、こんな文章も書いてあった。
ウーアの悪夢が再び始まります
明日の午前11時15分 ハチ公前からです
止められるものなら 止めてください
ウーア・ウイルス……
原型は2000年に南アフリカ共和国のドラケンスベルク山脈で発見されたレトロウイルス。
某国が除染された森からウイルスを回収、これを軍事利用するために研究を開始した。
その致死量は、ほぼ100%。極めて高い致死率のため現在も存在を極秘にされている。
10年前、大越製薬が抗ウイルス剤の開発を開始するも、副作用が非常に強く、
一定以上の量で生命の危機に陥る致命的な可能性がある。
その後、副作用が発生しづらいワクチンを作り出すも、多額の費用により普及せず、
つい最近になってようやく、五十嵐製薬という会社の共同開発により、コストダウンに成功した。
だが、そのウーア・ウイルスをなぜ、犯人は知っていたのか。
そして、犯人はウーア・ウイルスを使い、何をするのか?
事件にはまだ、不透明なところが多かった。
・・・
午前11時15分。
取引が行われる……はずの時間になった。
「……」
しかし、ハチ公像前はごく普通の光景が流れる。
「……何も……起きないですね」
「……あぁ」
ウーア・ウイルスはこれまで存在を秘匿にされてきた。
しかし、10年前の今日、4月28日。
アルファルドという人物が起こしたバイオテロ未遂事件により、その名はそれほど多くの人びとにではないが、知られるようになった。
まさか、今回も単なるいたずら……なのか?
確かにその事件を何らかの形で知っていた人物が起こしたいたずらなのかも知れない。
「……」
なんということだ。俺は歯ぎしりをした。
今日は折角の休みだったのに。
溜まりに溜まっていた、深夜アニメを見ようと思っていたのに。
だが、その時だ。
「ん?」
突然、ハチ公前に、フラフラになりながら歩いてくる少年がいた。
その少年は、手に黒いカバンを持っている。
「なんだ?」
『待て、二宮君。今は様子を見るんだ』
「了解」
その少年が、カバンをハチ公像の足元に置く。
「……?」
そこへ、一人の女の子が歩いてきた。
何やらその少年と話し合っているようだ。
そして、少年からカバンを奪い取ろうとする。
「北川さん、あれ……」
「……あぁ」
あの女の子、正直に言うと……結構タイプだ。
いや、何を言っているんだ俺は。今はそんな恋愛ゲームのようなことを言っている場合ではない。
そして女の子がカバンを奪い取ると……
「!?」
少年は、その場に倒れてしまった。
その弾みでカバンから、何かが落ちる。
あれは……注射器だ。
注射器と無数の資料のようなものが、地面にばらまかれる。
俺は思った。
あの注射器……まさか。そう思っていた時には、既に体は動いていた。
「そこの君!」
「え?」
近付いて声をかけると女の子がこちらを向く。
「これはどういうことだい?」
「ど、どういうことって……知らないわよ。あたしが知りたい」
「とぼけるのはよしてくれ。君は……バイオテロを起こそうとしているんだろう?」
「はぁ?」
「いいから、早くこっちに来るんだ!あのメールを送ったのも、君だろう!?」
俺は女の子の腕を強く引っ張った。
「ちょっやめてよ!」
女の子は激しく抵抗する。……離すものか!
「お、おまわりさん!おまわりさん!ゆ、誘拐です!誘拐犯が、は、ハチ公前にいます!」
ツインテールの女の子が電話していた。
「夏海?」
腕を引っ張られている女の子が言う。
「な、誰が誘拐犯だ!この子はバイオテロの容疑者なんだぞ!?それに、
このハチ公像の周りにも俺の仲間が……!」
……いない。
北川さんも、高木さんも、高木さんが乗る捜査車両も、ほかの刑事もいない。
あれ……なんで?
「い、いや、違う!だ、だって、あの男の子も……」
……いない。
既に警察が保護したんだろうか。それとも……
突き刺さる冷たい視線。俺は……俺は……
カチャ。
俺は、誘拐未遂の罪で駆けつけた警官に現行犯逮捕された。
……連行されるパトカーの中、俺は考えていた。
あの時、あの女の子は何故、少年に近付いたのだろうか……?
BAD END
NO.1 誘拐未遂
- 女子大生編 11:15 ( No.4 )
- 日時: 2016/08/19 21:51
- 名前: バタフライ ◆T0qJfISYm6 (ID: Xi0rnEhO)
「……?」
フラフラと、少年がハチ公像の前に歩いてくる。
「何……?」
重そうにカバンをさげている。
足が千鳥足のように、まるでおぼつかない。
「大丈夫……じゃ、ないわよね……?」
茜は少年に話しかけようと、一歩踏み出した。
<<
「……?」
フラフラと、少年がハチ公像の前に歩いてくる。
「何……?」
重そうにカバンをさげている。
足が千鳥足のように、まるでおぼつかない。
「……」
……とりあえずそのまま様子を見よう。
ドラマかなにかの撮影なのかもしれないし。
「……あれ?」
何やら茜は違和感を抱いた。
あの男の子……どこかで見た……?
それに、なんだろうこの感覚。
何か……同じような光景を、かつて見た気がする……?
とりあえずそのままじっと見ていると……
「……」
少年がカバンを、ハチ公像の足元に置いた。
「……」
それにあわせて、外国人の男がカバンに近づいてくる。
「え?」
その手には、拳銃が握られていた。
「……」
男は少年に、何か話をすると……
カチャ。
拳銃を懐から取り出した。
ドタドタドタ!
「うわっ!」
その瞬間、茜の後方から、大量の男が走ってきた。
メガネをかけた男。背広を着た男。
また、他にもスーツを着た男が走っていく。
「な、な、何何何?」
思わず尻餅をついてしまったが、慌てて立ち上がる。
「……」
少年は、ハチ公像を背に座り込んでいた。
あたりは先ほど一斉に走り出した男たちの衝撃で、ざわざわと騒いでいる。
茜もキョロキョロと、周りを見渡す。
そういえば、夏海はどこだろう。
と、その時だ。
「!?」
見るからに浮いている、赤い鬼の仮面をつけた男がハチ公像の……
少年の元へ歩いてくる。
「……!?」
少年はその男に気付いたようで……
カチャ。
男も拳銃を構えた。
「!?」
その男の行動に、反射的に体が動いた。
「こんの!」
素早く男に駆け寄り、足払いをかける。
「……!?」
男は驚いた様子で、その場に両手をついた。
少年は朦朧とした意識の中、呆然とこちらを見つめている。
「くっ……」
少年に近づくが……
カチャ
体勢を立て直した男が、銃を向けてくる。
タン!
「うわっ!?」
何とかしてよけるが、男は再び銃を向けてくる。
「くっ……」
どうする?
このまま逃げれば、あたしは助かるが、少年が殺される。
それに、この場所に来ているはずの夏海の安否も気になる。
茜は決心した。
「ごめん!キミ、走れる!?」
「えっ……?」
茜は少年の腕を引っ張り、ハチ公像から離れた。
「えっおね……」
夏海の声が聞こえた気がしたが、今はそういう場合ではなかった。
でも、どうする?
この状況で少年を連れて逃げていれば、「捕まえてください」と言っているようなものだ。
「痛い!痛いです!」
「あ、ご、ごめん!」
幸いにもあの男はついてきていない。
気が付くとセンター街の方向に走ってきていた。
「……な、何……するんですか」
「何するんですかって……キミ、あの男に殺されかけてたんだよ!?」
「いえ、僕が死ぬのは{今日の夜のはず}です!それに……あの人は……」
……何を言っている?
現にあの男はこちらに向かって発砲してきたじゃないか。
「……もしかして、今の人は知り合いだったの?」
「いえ、知り合いではないです。むしろ、僕の敵です」
「……?」
話の意味がわからない。
「あっ」
茜は思わず声を上げた。
先ほどの仮面の男が、こちらを探している。
「……」
「あの男はどうしてキミを追っているの?」
「それは……僕にもよくわかりません。だけど、僕が死ぬのは……」
「……」
事情はわからないが、この少年には危機が迫っている。そんな気がした。
「キミ、聞いて。あたしは一ノ瀬 茜。困ってる人と、弱い人の味方なの。
だから今はとにかく逃げよう。あの男は……なんだか危険な匂いしかしないの」
「どうして……ですか?」
「どうしてって……」
そう言っているうちにも、男が近づいてくる。
しかも、銃を持ったまま。
「まずい……とにかく逃げるよ!」
「え……あ、あの……」
茜は少年の腕を再びとり、逃げだした。
光が届かないような路地の奥に、茜と少年は逃げ込んだ。
「……さ、流石にここなら……大丈夫かな」
「……」
少年は未だに腑に落ちないような顔をしている。
「どうしたの?やっぱりさっきのあの男が気になる?」
「あの人……どうして……」
「え?」
「あ、いえ、気にしないでください。ただの独り言です」
そう言いながら、路地を出ようとする少年。
「ちょっ危ないって。ちょっとぐらい休んだらどうなの?」
その少年の腕を引っ張る。
「大丈夫です。僕は、行かないといけないところが……」
そう言った瞬間、少年はふらっと壁に手を付いた。
「ほらね?」
置いてあるビールの空き箱を裏返し、上に近くに置いてあったチラシを乗せる。
「……?」
〜SEASONS LIVE!〜
時刻;今日午後6時20分
場所:緑川学園高校 講堂
みんな 見に来てね!
手作り感満載のチラシだ。
もしかして、夏海が落としたのだろうか?
チラシには、メンバーの絵も載っている。
「……この人……」
一番左の、紺色の髪の少女を見て、少年がつぶやいた。
「知り合い?」
「……はい。正確に言えば、この人たち全員が、ですが……」
この少年は一体何者なのだろう。
「……ねぇ。キミ、名前は?」
その少年の一言に、茜は目を丸くした。
「僕の名前は五十嵐 零児(いがらし れいじ)。……タイムトラベラー。と言ったら、信じてくれますか?」
「……タイム、トラベラー……?」
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