二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【ポケモン】海空の守り人
- 日時: 2016/10/23 22:10
- 名前: あさひ ◆VMdQS8tgwI (ID: ObLAiJYQ)
※タイトルは仮題です!
色々と酷かったので一度消し、再スタートさせて頂きます。お騒がせしてすみません!
挨拶
初めましてあさひと申すものです。前々からポケモン小説を一度書いてみたいなーとは思っていまして、このたびスレを立てさせて頂きました。
オリジナルの地方で、冒険活劇みたいな話をちまちま書いていけたらなーと思っていたり。オリキャラ募集は未定ですが、将来的には行いたいなーとかんがえています。
注意事項等—苦手な方はご注意下さい—
①登場人物は、主人公から敵キャラに至るまですべてオリキャラです。
②登場地方は架空のオリジナル地方。他地方の伝説のポケモンが出てきます。
③登場ポケモンはオメガルビーアルファサファイアまでの予定。ただしサンムーン発売後はアローラのポケモンが登場する可能性もあります。
④作者の更新速度低速です。一月に数回更新あればマシな部類に入ります。
⑤批評・感想歓迎しています。ただし、挨拶なし、自作の宣伝のみ、荒らしや誹謗中傷の類は容赦なくスルーします。
⑥世界観としてアニメとゲームが混合したような感じです。わざがアニメ的(がんせきふうじふうじみたいな)描写もあり、ゲームとは異なる描写も多々存在してます。
⑦世界観として思いっきりファンタジーな要素がたっぷり含まれています。超常現象やら超能力の類が普通に出てきますので、許せない方はご注意を。
⑧暗い描写等ございます。
それではよろしくお願いします。
クリサンタウン【出会いは小夜嵐がごとく】
>>12->>15
- Re: 【ポケモン】 ( No.12 )
- 日時: 2016/10/23 21:42
- 名前: あさひ ◆GU/3ByX.m. (ID: kKmRLwWa)
暗闇の中、少女は音を立てないようにゆっくりと階段を降りる。
いつも降りているはずの階段なのに、今日に限っては奈落の底へ続く階段のような。そんな気さえしてしまう。両親が起きてこないかと冷や冷やしているせいだ。少しでも物音がすれば立ち止まり、階上に視線をやり。何もないことを確認してまた進む。それを、もうどれくらい繰り返しただろうか。たった十数段の階段を降りるだけなのに、もう何時間も過ぎているような気さえした。緊張で鼓動は高鳴り、顔の輪郭を汗がつたう。もう少し、と言いながら足を進めチカはようやく一階に辿り着いた。すると一転、暗い廊下を早足で駆け抜け、玄関へと向う。買ったばかりの茶色のスニーカーを履き、手早く靴紐を結び。チカは外へと出た。
途端に生ぬるい夜風がチカの短い赤髪を揺らした。夜空に輝く満天の星、柔らかな光を放つ満月。それらが目に飛び込んで来た瞬間、少女はニヤリと笑った。
「これであたしは自由よ」
※
世界にリトス地方と呼ばれる場所があった。山に囲まれ、湖や森が多く残る自然豊かな地域として有名である。
そんなリトス地方南部の小さな町、クリサンタウンから話は始まる。
クリサンタウンの外れ。街灯だけがぼんやりと佇む寂しい道路を少女は歩いていた。少女の名はチカと言う。
背が小柄なせいで十歳程度に見られがちだが、昨日学校を卒業したばかりの13歳である。赤毛の髪は耳にかかる程度で、頭には黒いカチューシャ。鳶色の瞳はこの暗闇でも爛々と輝き、快活そうな顔立ちをしていた。服は白い半袖のシャツの上にベージュの長袖のパーカー。下は同じ色のキュロット。旅行にでも行くのか、登山に使うような立派な茶色のリュックを背負っており、腰には黒のウエストポーチもしていた。
「脱出成功ね、イーブイ!」
チカは左肩に掴まる同行者に声をかける。
茶色い体色の生き物だった。兎のような長い耳に、首を覆う白い襟巻のような毛皮。黒い円な瞳が可愛らしいその生き物——この世界でイーブイと呼ばれるは、微笑んで頷く。
ちなみに、このイーブイはポケモンと呼ばれる生き物だ。ポケモン、正式名称ポケットモンスター。この世界に生きる生物の総称だ。
「これでやっと……」
「ブイ?」
嬉しくて仕方ないチカは、歩きながらガッツポーズをとる。が、肩に乗るイーブイは分かっているのかと問うかのように鳴く。浮かれるな、と注意しているようにも聞こえた。
心配性のイーブイに苦笑いを浮かべると、チカは足を止めて肩のイーブイをしっかりと見つめる。
「分かってるわイーブイ。こうして家を出たのは、やりたかった旅の始まりに過ぎないわね」
この世界では10歳を迎えると、一人で旅に出ることが許される。一人前の大人として認められ、自分の道を己で決めることが出来るようになる。
多くの人々は10歳になると、最寄りのポケモンセンター——ポケモンの病院、あるいはポケモン研究所で初心者用のポケモンを一匹貰い旅に出るのが慣例だ。最も、チカのように初めから自分のポケモンを持っている人間は、初心者用のポケモンは貰えないが。旅に出る前に厳重な審査があるので、その辺りは誤魔化せないらしい。
「家出したんだもの。泣き寝入りは出来ないわ」
振り返ると、大分小さくなった自宅が見えた。帰るなら今のうちだろうがチカは帰るつもりはない。家出をする、と決めたのだ。その決意は固く、変わらない。
迷いを振り払うように、チカは自宅に背を向け走り出した。
- Re: 【ポケモン】とある姫君への追憶 ( No.13 )
- 日時: 2016/10/21 18:09
- 名前: あさひ ◆GU/3ByX.m. (ID: ObLAiJYQ)
私の兄が死んだと聞かされたのは、半年前。大雨の日のことでした。
兄の名はシュウと言います。
トレーナーズスクール時代からとても優秀なポケモントレーナーで、将来を期待されていました。性格は穏やかで気さく、妹である私をよく可愛がってくれた優しい兄でした。
その兄は両親の期待通りポケモントレーナーとなる道を選び、三年ほど前に旅立ち——半年前、不幸に襲われます。このクリサンタウンから遥か東、ロサ渓谷で。兄は何者かに崖から滝壺へと突き落とされ、命を落としました。物取り目的だったのでしょうか。兄は、犯人に持っていたポケモンや荷物を全て奪われていました。未だに兄のポケモン、荷物の行方は分からないのです。
——そしてこの兄の一件以降、両親はポケモンと言う存在を大きく憎むようになりました。ポケモンのせいで兄は旅に出て、命を落とした。全てはポケモンのせい、ポケモンは不幸を呼ぶ存在だから、と私に強く迫りました。同時に、両親は私の相棒、イーブイに対する風当たりを強くします。いつも睨んだり、無視したりと酷い扱いをしました。ほんの少し前までブイちゃんと呼んで可愛がっていたのに。ひどい変わりようです。
両親がイーブイへの態度を冷たくするのに比例し、私は両親と顔を合わせないようになっていきました。冷たくされるイーブイを見ていられなかったんです。学校から帰るときすごく遅く帰ったり、イーブイを連れて部屋に引きこもりました。
両親にイーブイは悪くない、冷たくするのは可哀想だからやめてと何度もいいましたがまるで聞く耳を持ちません。ポケモンは不幸を呼ぶ、だからそのイーブイは我が家に必要ないと勝手に決めつけて譲りません。初めの頃は言い合いで済んでいましたが、一週間前とうとう両親は強硬手段に出ました。私が寝ているすきに、イーブイを隣町シードタウンに勝手に置き去りにしてきたのです。この時は運よく、トレーナーズスクールの友人がイーブイを見つけてくれたのですぐに見つかりました。が、親は懲りずに今度はイーブイをポケモンの里親募集の会に預けようとしました。親は本気で私とイーブイを引き離そうとしている。これ以上イーブイと共に家にいるのは無理だと私は悟りました。
ちょうど私はこの頃、トレーナーズスクールを卒業したばかりでした。親はその後普通の中学校に行かせようとしましたが、私はちょうどいいタイミングだと思い旅を決意しました。一応親に旅をしたいとは言いましたが、こう言われました。
「お母さんたちはね、あなたまでシュウのように死んでほしくないからイーブイを捨ててきたりしたの。あなたのためなのよ。早くイーブイを捨ててきなさい」
「母さんの言うことが分からないなら、俺はお前を娘だとは思わない。とっとと家から出ていけ。一人で暮らすんだな」
こう脅せば、両親は私が言うことを聞くとでも思ったんでしょうね。しかし、私はイーブイとどうしても別れたくありませんでした。この世界では、十歳を過ぎれば大人です。自分の意思で将来を決められます。旅に出れば国からお金を借りることもできますし、私は幼い頃から旅に向けてコツコツとお金を貯めていました。困ることはありません。迷いはありませんでした。両親に家を出ると宣言したら、彼らは大いに嘆きました。そしてお前の顔なんて見たくないと言われました。
だから今日の夜、私は家を出ました。顔を見たくないと言う親の願いを聞き、顔を合わせない時間を選んで外に出ました。
- Re: 【ポケモン】海空の守り人 ( No.14 )
- 日時: 2016/10/23 14:33
- 名前: あさひ ◆GU/3ByX.m. (ID: ObLAiJYQ)
クリサンタウンを出たチカは、一番道路を歩いていた。
一番道路は、クリサンタウンと隣町クローロタウンを繋ぐ一本道。夜である今は、街灯が寂しく舗装された道を照らすだけ。この舗装された道は安全だが、舗装された道を外れると広い草っぱらが広がり野生ポケモンの領域となる。人が立ち入れば、野生のポケモンが容赦なく襲ってくる危険な世界へと顔を変えるのだ。現に草っぱらの方からは、時折ポケモンの鳴き声が聞こえる。彼らは間違いなくいるのだ。
「晴れてるわねぇ……」
チカは舗装された道を歩きながら、空を見上げる。黒い空には星が点々と輝き、チカの頭上では満月が冷たい光を放っていた。旅立ちには、絶好の日和だ。しかし晴れている空と違い、チカの表情はどこか曇りがちだ。
「ブイ?」
チカの左肩に乗るイーブイが、心配そうに声をかける。空を見ていた視線をイーブイへと移し、笑ってみせた。
「後悔はしてないわ」
大丈夫だと言うように、イーブイの頭を撫でるチカ。でも、とチカは歩きながら話を続ける。
「両親には笑顔で送り出して欲しかったなーって思うの。シュウ兄の時はそうだったし。それにシュウ兄旅の途中よく電話かけてきてくれたじゃない? 私もそうしたかったなぁ」
喧嘩別れのような形で家出をしたチカだが、できればこのような形はとりたくなかった。
かつての兄のように喜んで送り出してもらい、時々寂しくなったら電話をしてみたり。そんな普通の旅立ちが欲しかったと言う心残りはあった。空を見上げると、怒る両親の顔ばかり思い出してしまうのが悲しかった。チカは顔を曇らせ、俯き、立ち止まる。
「本当はね、両親の言い分も少しは分かるのよ。シュウ兄が旅に出てあんなことになったから。妹の私まで旅に出したら、命を落とすかもしれないって心配するのは当然よね」
けど、とチカは顔を上げる。そこに悲しみはなかった。代わりに自信に満ちた表情がそこにある。
「シュウ兄が亡くなったのをポケモンのせいにして、私からイーブイを取ろうとしたりポケモンと関わるなって言うのは間違ってる。私はイーブイが大好き。ポケモンが好きなの。この気持ちは絶対に譲れない」
力強く言い切るチカ。家出をしたことへの迷いは残るがウジウジしても仕方ないと吹っ切り、旅への決意をしたのだ。肩に乗るイーブイは何も言わず、静かに頷く。
自分を信じ、付いてきてくれるイーブイの存在が今のチカには有り難い。よいパートナーを持ったものだと感じながら、チカはイーブイの頭を撫でた。気持ち良さそうにイーブイは目を閉じていたが、突然はっと目を開く。長い耳をピンとたたせ、辺りの音を探るようにひくひくと動かす。
「ん、イーブイどうしたの?」
「ブイ……」
人間であるチカの耳には、何の音も聞こえない。と、ここでチカは異常に気づいた。不気味なほど静かなのだ。先程まで鳥ポケモンや虫ポケモンたちの声が聞こえていたが、彼らは皆沈黙していた。まるで何かに怯えているかのように。
肩に乗るイーブイは何かの気配を感じ取っているらしい。辺りを見渡しながら全身の毛を逆立て、低い唸り声を上げる。尻尾がまるでデッキブラシのように見えた。
イーブイは左を見、右を見て。やがて上のある一点に視線を固定し、強い唸り声を上げる。つられるようにチカもイーブイの視線を追い、固まる。
「見たことのないポケモンだわ……」
街灯の上に一匹のポケモンが佇んでいた。イーブイと違い、二足歩行のポケモン。狼のような精悍な顔、鋭い目つき。手や足には鋭い突起らしきものがあった。体格的には人に近く、細身な印象を受ける。
そのポケモンは満月を背負いながら、静かにチカとイーブイを見下ろしていた。だが、その静かさの中には無言の敵意がある。ポケモンの瞳はつり上がり、既にチカとイーブイを敵と見なしているのは間違いない。
まずは敵を知ろうと、チカはウエストポーチから機械を取り出した。大きさは手のひらに収まる程、四角い形で赤い色をしていた。この機械はポケモン図鑑と言う。ポケモンに向けると、そのポケモンの名前などを詳しく知ることができる便利な道具だ。チカはポケモン図鑑を頭上のポケモンに向けると、画面に一体のポケモンの画像が現れ音声が流れる。
- Re: 【ポケモン】海空の守り人 ( No.15 )
- 日時: 2016/10/23 21:41
- 名前: あさひ ◆GU/3ByX.m. (ID: kKmRLwWa)
『ルカリオ はどうポケモン 相手の 発する 波動を キャッチすることで 考えや 動きを 読み取ることが できる』
とチカが図鑑に気を取られているすきに、ルカリオが街灯の上から飛び降りてきた。街灯の光で、ルカリオの首にあるペンダントがキラキラと光る。
地面に着地したルカリオは顔をしかめながら、右手を前に突き出した。すると人の頭程はあろう青い球が、チカとイーブイ目掛けて放たれる。イーブイはチカの肩から飛び降りることで回避し、チカは頭を伏せて何とか避けた。青い球はそのままチカの背後の地面にぶつりかり、派手な爆発音が響く。恐る恐るチカが後ろを向くと、地面には小さな穴があき、そこから茶色の煙が上がっていた。確実に何かの技、それも強い力を持った。
ポケモンには技と呼ばれる、不思議な力がある。例として炎や水、光線を吐いたり、自分の能力を上げるものがある。ポケモンたちは技をぶつけ合い、戦い——ポケモンバトルを行う。
「く、イーブイ。〈スピードスター〉」
負けていられないとチカはイーブイに指示を出す。イーブイは口から星型の光線を吐き出し、ルカリオを攻撃する。避けようとルカリオは一歩踏み出したところで顔を歪め、その場に膝をついた。そこへスピードスターが一斉にルカリオを襲う。が、ルカリオは何事もなかったかのように立ち上がる。スピードスターがきいていない。チカはポケモン図鑑のボタンを押し、ルカリオの詳細を見た。
(ルカリオのタイプははがねか、ノーマルの技じゃ大して効かないわね)
ポケモンたちには、タイプと呼ばれる属性がある。この属性には相性の良し悪しがあり、例えばイーブイのスピードスターはノーマルタイプの技。はがねタイプのルカリオとは相性が悪く、ダメージを与えにくい。
その証拠にイーブイは何度もスピードスターを放ち全てルカリオに命中しているが、ルカリオはぴんぴんしていた。逆に連続で技を放ったせいでイーブイの顔に疲労の色が強く出ていた。
そこへルカリオが例の青い球を叩き込もうとして——前から崩れた。ルカリオの身体はうつ伏せの体勢で地面に倒れてしまう。
「ルカリオ?」
警戒しながらも、チカはポケモン図鑑をウエストポーチにしまい、ルカリオの元へ駆け寄った。すると、ルカリオの左足がひどく腫れているのが目に飛び込んでくる。腫れた部分は、淡いオレンジ色を纏ったようになっていて炎を見ているようだった。——やけどだ。状態異常と言って、ポケモンに悪い効果をもたらすものの一つである。
攻撃してきたのは、痛みから暴れただけかもしれないと察したチカ。ならば放っておけないと行動する。
「やけどなおし、あった!」
チカはリュックを地面に降ろすと、中から緑色の容器に入ったスプレーを取り出す。やけどなおしと言って、ポケモンのやけど状態を回復させる薬である。やけどなおしを手にすると、ルカリオの元へ向かう。攻撃してくると思ったのか、ルカリオは視線だけをチカに向けて低い声で威嚇した。それに反応したイーブイがチカを庇うように前へ立ち、前傾姿勢をとる。
「イーブイ、止めてったら。ここで大人しくしてて」
このままだとルカリオを攻撃しそうなので、チカはイーブイの首根っこを掴んで持ち上げると強引に自分の左肩に置く。そして大人しくするよう、釘をさす。無理やり左肩に置かれたイーブイは不満たっぷりにチカを見たが、やがて観念したように視線を外す。
それを確認したチカは、ルカリオの敵意がこもった視線を正面から受け止めた。図鑑によると、ルカリオは波動とやらで人の気持ちを理解できるらしい。波動が何かは分からないが、ルカリオは人の気持ちを察する力がある。敵意がないことが伝わると信じ、チカはルカリオの赤い瞳をしっかり見つめた。
「攻撃しておいてこんなこと言うのおかしいと思うけど、私は何もしない」
一歩、また一歩とチカはルカリオに歩み寄っていく。イーブイが不安そうにチカを見る。
やけどはポケモンの体力を著しく低下させる。そのせいかチカに敵意がないのを察したのかルカリオは脂汗の滲む顔で、チカを見上げるだけだった。先程まで動けたのが嘘のようだ。
「この薬、やけどなおしって言うの。使えば足の痛み、少しは楽になるわ。しみると思うけれど、少しの間よ。手当させて」
チカはしゃがみこんで、ルカリオにやけどなおしを見せる。そして、ルカリオを怖がらせないよう穏やかな声音で手当てさせて欲しい、とチカは頼み込んだ。助けたいと言うチカの気持ちが伝わったのか、ようやくルカリオの瞳から敵意が消えた。少し頷くと、やけどがある左足を持ち上げる。手当てに協力してくれるらしい。
チカはルカリオの左足の付け根部分を押さえると、やけどなおしを患部に噴射する。大きい傷でかなりしみるのだろう、ルカリオは悲鳴を上げた。
「ごめん、すぐ終わらせるから」
手早くやるのがルカリオのためだと思い、チカはやけどなおしを患部に再度かける。しみるはずだが、ルカリオは目をきつく閉じ痛みを堪えていた。やがてやけどなおしのボトルがなくなる頃には、ルカリオの足の腫れはひいていた。
ルカリオはすっと立ち上がり、元気に走ってみせる。やけどなおしが効いたらしい。
「あー待ってルカリオ。後、きずぐすりかけさせて。身体の傷にきくのよ。バトルのお詫びね」
今度はきずぐすり——紫のボトルに入った薬、こちらは戦いの傷などを治すもの、を手にしてチカはルカリオに近づく。ルカリオは大人しくきずぐすりをかけられ、やがて恭しく一礼してみせた。
『助かった。おかけで命拾いをした』
「え、これテレパシー?」
脳裏に直接話しかけられたような奇妙な感覚に、チカは戸惑う。ポケモンの中にはテレパシーと言って、脳裏に話しかけるようにして人の言葉で話すポケモンがいると学校で習ってはいた。が、体験するのは初めてなので驚いてしまう。
『ああ。私はこうしてテレパシーにて人に意志を伝える訓練を受けている。その、先程はいきなり攻撃してすまなかった』
ルカリオは深々と頭を下げ、謝罪してくる。
「やけどの痛みで見境なくなってたんでしょ? こっちこそ応戦してごめんなさいね」
「イーブ……」
肩のイーブイもすまなそうに鳴く。耳をしゅんと垂らし、頭を下げた。攻撃したことを反省しているらしい。
そんなチカとイーブイの気持ちが伝わったのか、ルカリオは安心したように顔を上げた。
『それもあるが、一番は……。そう、キミに頼みがあるのだが、聞いてもらえるか?』
「どうしたの?」
ルカリオの顔は真剣で、どこか焦っているように見えたチカ。ただならぬルカリオの様子を察知し、真顔となる。
『姫、いや私のトレーナーを救う手伝いをして欲しい』
- Re: 【ポケモン】海空の守り人 ( No.16 )
- 日時: 2016/10/25 21:28
- 名前: よる (ID: kKmRLwWa)
面白そう
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