二次創作小説(映像)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

【FINAL FANTASYⅣ】赤き竜騎士
日時: 2017/03/11 20:39
名前: 澪標 (ID: if8u.lWd)

もしもバロンの竜騎士団長カイン・ハイウィンドに優秀な妹が居たら。

Page:1



Previous Day ( No.1 )
日時: 2017/03/11 21:51
名前: 澪標 (ID: if8u.lWd)

 ———————————————バロン王国の飛空艇団、赤き翼のご帰還である。
 ミシディアの魔導士を駆逐してきたと、バロン城やその城下町では瞬く間に活躍が騒がれている。
 そんな赤き翼の初代団長、セシル・ハーヴィの帰還を待ち受けていたのは、バロン王国の竜騎士団に入団したばかりの、クレア・ハイウィンドだった。
「セシル」
赤の鎧を纏ったクレアの姿を見て、セシルは溜息を吐いた。クレアの呼んだセシルの名が、虚空に消えていく。
「……バロン王へ謁見しなければならないんだ」
酷く疲れ切った顔をして、セシルはクレアの隣を去っていく。クレアはセシルの背中を見送って、自身の所属する、竜騎士団に与えられた建屋へと向かって走った。

          ♂♀

 クレアの行く先はただ一つ。竜騎士団長であるクレアの実兄、カイン・ハイウインドのもとである。
「カイン、大変」
槍の手入れをしているカインに向かって、クレアが話しかけると、
「セシルか」
カインは語尾を上げて、クレアに質問を返した。
「様子がおかしいの。あんなに怖い顔したセシル初めて見たわ」
もしかしたら私たちと同じことを考えているのかもね、とクレアは続ける。カインは何かを察したように、槍の手入れを止めて、
「王の間に行ってくる。お前は来るな」
クレアへの制止も忘れずして、王の間へと向かって行った。クレアの文句が廊下に響いていることも気にせず、カインは急ぎ足で、王の間へと歩を進めた。
 カインが王の間に続く階段に着く頃、話題のセシルはバロン王に向かって反逆の言葉をつらつらと述べていた。
「今日を持って飛空艇部隊長の任を解く!代わりに幻獣討伐の任に就け」
バロン王の荒々しい声を聞き、カインは意を決したように、王の前に姿を現した。
「お待ちください、バロン王」
カインの登場に、バロン王もセシルも、驚いた顔をしている。カインは続けて、
「セシルは謀反を考えているのではありません」
とも述べた。しかしその言葉がバロン王に届くことはなく、
「ええい、お前もセシルと同じ背徳者なら、ともにミストへ行くがよい!この指輪を持ってとっとと去れ」
ついには、二人とも王の間を追い出されてしまった。

     ♂♀

 ————————————夜、セシルの自室の扉がノックされた。
 犯人は、セシルとカインの次の任務を知った、クレアだった。
「どうして言っちゃったのよ!そりゃ、私だって思うところはあったけど……」
悲しそうに眉を下げるクレアに、セシルはありがとう、と言うのだった。
「クレアも来るんじゃないかって、ちょっと心配したんだ。カインが入って来たから」
クレアを巻き込まずに済んでよかった、と述べるセシルに、クレアはますます、怒りをあらわにするのだった。
「何よ、自分だけ粋がるつもりなのね」
クレアは傷ついた、とでも言いたげに涙を流して、セシルの自室を出て行った。セシルはその後姿を見送って、眠りにつくのだった。

Departure ( No.2 )
日時: 2017/03/12 11:21
名前: 澪標 (ID: 5CfDMEwX)

 季節の割に冷える朝方、バロン城の門前に、セシルとカインは居た。
「行くか、セシル」
「当てにしてるぜ、カイン」
昨日、バロン王直々に下された幻獣討伐の任を全うすべく、彼らはバロン王国の外へと出ようとしていたのである。そんな彼らを足止めするかのように、
「待って」
バロン城の門に、声がこだました。赤い鎧、赤い槍。まさしくそれは、カインの実妹、クレア・ハイウインドである。
「……つけてやがったな、クレア」
カインの咎めの言葉を、クレアは聞こうとしなかった。
「私も連れて行って」
クレアの言葉に、セシルもカインも、言葉を失ってしまった。クレアの好奇心は生来の性分によるものだが、今回ばかりは命がかかっている任務だったからだ。
「ただでさえ竜騎士は数が少ない。お前まで外に出れば……」
カインはそこまで声に出したところで、言葉を切った。クレアはすかさず、
「身の安全のためなら、竜騎士の誇りは捨てて良いって言うのね」
と、カインに畳み掛けた。普段の兄妹喧嘩の様な会話に、セシルはからからと乾いた笑い声を上げて、頷いた。
「わかった、君も連れて行こう。当てにしてるよ、クレア」
セシルの微笑みに、カインは溜息を一つ吐いて、どうなってもしらん、と呟くのだった。

     ♂♀

 バロン王の城下町に降り立った三人は、町中の人という人すべてにバロン王について聞いて回った。
「最近のバロン王って、なんだか野蛮よね」
「軍の費用に税を取られて、店が立ち行かなくなったよ」
そんな後ろ向きな言葉が多く聞かれる中、三人への心配の声も上がっていた。
「クレアちゃんまで危険な任務に行くんだね」
「必ず生きて帰るんだよ」
優しい言葉に、名残惜しさを抱えつつも、三人はバロン王に対する不信を強めて、城下町を去った。
 今回三人がボムの指輪を届けるように仰せつかったミストの村は、バロンより遠く北に向かった場所にある。召喚士の住む辺境の地として認識してる者が多い地であり、事実召喚士の村である。
「ミスト、ね。行ったことないなあ」
クレアののんきな独り言に、セシルもカインも、毒気を抜かれてしまった。きっとセシルとカインだけで出発していたら、バロン王の悪評と自身の行動に押しつぶされて、重苦しい旅になっていたかもしれない、と二人して考えるのだった。
「上空を通過したことはあるけれど……」
セシルの一言に、クレアは嬉しそうに食いついて、
「どんな村だった?幻獣ってどんな姿なのかな」
と、セシルを質問攻めにするのだった。カインは悩ましげに頭を押さえ、自分の目で確かめるまで黙っていろ、とクレアを制した。道中、クレアとカインの兄妹喧嘩に、セシルの心が一瞬だけ安らいでいた、ということは、セシルの胸中に秘められた真実である。


Page:1