二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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スマイルプリキュア 一年後のお話
日時: 2017/06/03 12:49
名前: みんみん (ID: TwnK.bTA)

「みんなー、お待たせー!」

 手を振りながら走って来るのは、濃いピンク色の髪に、同じくピンクの瞳を持った少女、星空みゆき。息が切れているみゆきを、4人は笑って迎えた。

「みゆきちゃん、新学期1発目から遅刻にならなくて良かったね」
「頑張って走ったんだよー」
「今日、クラス替えの発表だもんね」
「話は後でや。みんな、行くで」

 日野あかねの言葉で、5人は仲良く門を潜って学校へ入っていった。

「うわぁ、混んでる!」
「名簿が全然見えないよぉ」

 生徒玄関に入ったものの、生徒でごった返して中々身動きが取れない。
 それを見て、なおはここで待っているように言うと、人の間をすり抜けて名簿を見に行った。
 すぐに帰って来たなおは、クラス替えの結果を伝える。

「みゆきちゃんとあかねが1組。やよいちゃんが2組。私とれいかが3組だったよ」
「わー、みんな離れちゃった!」
「心配すること無いやろ。うちら、離れていても仲良しや!」
「そうだよね! 予定が合う時は、みんなで帰ろうよ!」

 みゆき、あかねに続いて、やよいも言う。

「お弁当も、今まで通り一緒に食べれるはずです」

 れいかも言うと、5人は顔を見合わせた。

「じゃあ、またね!」
「うん!」
「また後でな!」

 5人は別れ、それぞれの教室へ入って行った。

 *

「みゆき、今年もよろしくな」
「うん。こちらこそよろしくね」

 互いに挨拶を交わした後、出席番号で決められた席に座る。あかねは『ひ』、みゆきは『ほ』から始まるため、出席番号は近く、今年も席は前後になっていた。
 ホームルームが始まり、自己紹介や学級目標の設定などが滞りなく行われる。授業の終了を知らせるチャイムがなり、終礼も終わる。みゆきとあかねが教室の外に出た瞬間、

「!」
「っ、なんやこれ」

 2人は何かの予感を感じて立ち止まった。

「あかねちゃん」
「バッドエンド空間……はちゃうな。それだったらもっと違う、何と言うか……ちょっと引っかかった感じがする」
「うん。今のは寒気がすると言うか、鳥肌が立つような……」
「行ってみるか」
「でも、あかねちゃん、部活は?」
「あるけど、そんなこと言ってられへんやろ」
「ううん、あかねちゃんは部活に行って。私は暇だし、ちょっと探ってから帰るよ」
「1人じゃ危ないんちゃう?」
「大丈夫! これもあるし」

 そう言って、ポケットをポンと叩く。そこには、一度石化したものの、メルヘンランドとの繋がりを取り戻したお陰で再び元に戻ったスマイルパクトが入っている。
 それを知っているものの、あかねはまだ不安そうだ。

「何が起こるかわからないから、学校にも人が居た方がいいと思うし。ね?」
「そういうことなら……」

 渋々納得したあかねと共に教室に引き返し、みゆきはカバンを持つと、急いで生徒玄関まで降りて靴を取って来た。そのまま図書室に向かい、靴を司書の先生から隠しながら本を動かす。

「これでよし。ふしぎ図書館へ!」

 みゆきは本棚の中に吸い込まれるように消えた。

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Re: スマイルプリキュア 一年後のお話 ( No.1 )
日時: 2017/06/03 13:11
名前: みんみん (ID: TwnK.bTA)

 2組と3組の終礼が終わらない。
 あかねは、やよいとなお、そしてれいかに2人で感じた寒気のこと、そしてみゆきがふしぎ図書館に行ったことを伝えたかったのだが、どちらもまだ終礼中で、話が出来る状況ではない。そこでイライラしながらも、2組と3組の目の前をウロウロしているのだ。
 終礼が終わったのは、2クラス同時だった。
 あかねはズカズカと2組に侵入すると、「やよい」と呼んだ。やよいもわかっていたらしく、既に纏めてあったカバンを持って教室を出る。
 ちょうどそこには、不安そうな顔をしたなおとれいかが居た。

「あかね。さっきのは……」
「ようわからん。今、みゆきが調べに行ってる」
「みゆきちゃんが? 1人で?」
「大丈夫なのですか?」

 「うちも思ったんやけど」と前置きし、あかねは小声で先程のみゆきとのやり取りを話した。
 それを聞いて、なおが腕を組む。

「やっぱり、バッドエンド空間じゃないんだね」
「でも、そうなると、あれは何だったのでしょう」

 れいかの疑問になおが口を開きかけると、

「あ、緑川先輩! 部活始まりますよ!」

 サッカー部の後輩らしき生徒が後ろからなおに声を掛けた。

「あ、そのことなんだけど、今日は———」
「なおちゃんは部活に行って来なよ」

 珍しく、やよいが先陣を切って言った。

「でも、」
「大丈夫。私がみゆきちゃんを追い掛けるよ。あかねちゃんも部活あるし、れいかちゃんは生徒会でしょ? 何かあったら知らせるから、3人はいつも通りにしてて」
「やよいさん」
「私だって、いつまでも泣き虫なやよいじゃないんだから」

 やよいも、去年の一年間で大きく成長した。スマイルプリキュアの中ではそこまで強くないかもしれないが、敵幹部と一対一で戦える程の実力の持ち主だ。

「……じゃあ、みゆきのことはやよいに任せる」

 少し考えた後、あかねがやよいの肩に手を置いた。

「何かあったら、合図送るから」
「ごめん、やよいちゃん。お願いね」
「生徒会が終わったら、すぐに駆けつけますから」

 やよいは頷くと、みゆきと同じく靴を持って図書室へ向かい、手順を踏んでふしぎ図書館へと向かった。

Re: スマイルプリキュア 一年後のお話 ( No.2 )
日時: 2017/06/03 14:29
名前: みんみん (ID: TwnK.bTA)

 ふしぎ図書館についたみゆきだが、そこは何の異変もなく、いつも通りみゆきを迎え入れた。

「ふしぎ図書館さん、どこで何が起こっているの? 教えて」

 試しにみゆきが呼び掛けてみると、一冊の本が光った。

「ん? これ?」

 気になって手に取ろうとすると、なぜか本は抜けない。

「んーーー、抜けろーーー!!」

 みゆきが手に力を込めると、本は抜けるどころか、右にスライドした。

「え? どういうこと?」

 一段下の棚の本が光り、みゆきが手を当てると左にスライドする。みゆきはハッと思い至り、最初の段に戻って、本を左右にずらした。
 再び本棚が光を発し、みゆきは吸い込まれていった。

 *

「……公園?」

 到着したのは、近所の公園だった。
 後ろから視線を感じ、振り返るが誰も居ない。ゾワリと鳥肌が立つのを感じながら、みゆきはあちこちに目をやった。
 誰も居ない。
 普段なら、この時間には小さな子供とその保護者で賑わっているはずの公園に、みゆき以外の人は居ない。みゆきが飛び出して来た本棚がある本屋にも、その隣の店にも、誰の気配もない。

「そなた、なぜここに居る」

 問い掛けられて、ハッと上を見ると、豪華な赤と黒のドレスを纏った女の人が宙に浮かんで居た。

「公園に居た人達は? みんな、どこにいったの?」
「私の世界には美しいものしかいらない。下らないことに時間を費やすような愚か者どもは、纏めて閉じ込めた」

 女の人は、手にして居る黒いガラスのボールのようなものを投げ捨てた。みゆきは慌てて飛び出し、ボールが地面に激突する直前にキャッチをする。

「あなたは誰? この人達を解放して!」
「私は女王。美しくないものは、いらないのよ」
「そんなことない! この世にいらない人なんて、居ないんだから!!」

 みゆきは叫ぶと、スマイルパクトを取り出した。

 プリキュア! スマイルチャージ!

「キラキラ輝く未来の光! キュアハッピー!」

 変身したハッピーは、女王を見据えた。

「この人達は、解放してもらう!」
「そなた、プリキュアか……。いいわ、相手してあげましょう」

 女王はどこからともなく赤いボールを取り出した。

「それは!」
「知っているようね。出でよ! アカンベェ!」

 女王が声高に言うと、滑り台のアカンベェが誕生する。

「アカーンベェー!」
「普通のアカンベェなら、私1人でも浄化出来る!」

 ハッピーは地面を蹴ると、飛び上がってアカンベェにパンチを食らわせた。が、アカンベェに触れた瞬間、手が滑る。

「うわぁっ!」
「ふふ、どうかしら。美しくないから好きじゃないけど、結構使えるようね」

 女王は高みの見物をするらしく、上空から戦いを眺めているだけだ。

「こうなったら! プリキュア! ハッピーシャワー!」

 両手でハートを描き、溜めた聖なる光のエネルギーをアカンベェに向けて発射する。と見かけて、女王に向かって放った。
 慌てて避けた女王は、ハッピーに向かって文句を言う。

「ちょっと! 危ないじゃないの!」
「あなたの闇の心を浄化した方が早いんじゃないかと思って」

 昔、バッドエンド王国の幹部だったウルルン、オニニン、マジョリンの例もあるため、そう思ったのだが、

「馬鹿ね! 私はアカンベェとは違うのよ!」

 どうやら無理なようだ。

「そんなぁ。はっぷっぷー」

 言いながらももう一度手でハートを描き、

「プリキュア! ハッピーシャワー!」

 アカンベェに向けて発射した。

「アカンベェ〜」

 アカンベェは浄化され、消えた。

「あれ? デコルは?」
「馬鹿ね。これはバッドエナジーを凝縮して作られてるのよ。浄化したら消えるに決まってるでしょ」
「そうなの?」
「そうよ」
「おや〜? プリキュアに負けてしまったようですねぇ、女王さぁん?」
「ジョーカー!」

 不気味なピエロを見て、ハッピーは叫んだ。

「どうしてここに!」
「あれで私が死んだとお思いだったんですかぁ? まぁ、それはまた後ほど。記念すべき復讐劇の第一回は負けに終わったようですねぇ?」
「負けた? 馬鹿ね、今日は様子見に決まってるでしょ」
「そうなんですかぁ?」
「ジョーカー、女王! この人達はどうやったら解放出来るの?」

 ハッピーが問い掛けると、

「ああ。そいつらね」

 女王は興味なさげに言った。

「そのままでいいじゃない。どうせいらないんだし」
「そんなことない! 解放して!」
「何? 力尽くで解放させてみる?」

 女王は指先に黒いエネルギーを溜めると、ハッピーに向かって発射した。

「プリキュア! サニーファイヤー!」
「プリキュア! マーチシュート!」

 炎と風のエネルギーが黒いビームを相殺し、

「プリキュア! ピースサンダー!」

 電撃が女王を襲い、

「プリキュア! ビューティブリザード!」

 どさくさに紛れて帰ろうとしたジョーカーを氷のエネルギーが牽制した。

「みんな!」
「ハッピー、大丈夫やった?」
「私は大丈夫! でも、ここに居た人達がこれに閉じ込められて……」

 ハッピーが黒いボールを差し出して説明した。

「女王、って言ったっけ? この人達を元に戻して!」

 ピースが叫ぶ。

「そやそや! 負けた癖に戻さないなんておかしいやろ!」
「筋が通ってないよ!」
「早く戻して下さい!」

 女王は面倒くさそうに言った。

「いいわ。私に勝てたら戻してあげる」

Re: スマイルプリキュア 一年後のお話 ( No.3 )
日時: 2017/06/03 14:57
名前: みんみん (ID: TwnK.bTA)

「サニー!」

 ハッピーの言葉に頷くと、2人は同時に飛び出した。
 ハッピーが蹴りや突きを繰り出している間に、軽く炎のエネルギーを溜めたサニーが女王に向かってパンチを繰り出す。

「邪魔よ!」

 女王が発したエネルギーに吹き飛ばされる2人だが、背後からピースの電撃による援護射撃が女王に襲い掛かって2人への追撃を阻止し、マーチが軽く風を起こして2人を着地させる。

「ビューティ!」
「はい!」

 ビューティは氷の剣を作り出すと、女王に斬りかかった。
 何かを思い付いたピースが、ハッピー達3人に指示を出した。

「キメ技、ぶつけ合って! 本気出さなくていいから!」

 意図が掴めないものの、迷うことなくピースが早口で言うようにポジションを取る3人。女王とビューティを間に挟みながら、

「プリキュア! ハッピーシャワー!」
「プリキュア! マーチシュート!」

 技をぶつけ合った。
 マーチシュートの起こす風がハッピーシャワーを辺りに散らせる。
 その行動でピースの意図が掴めたらしいビューティは、素早く上に跳んで避難する。

「そういうことか! プリキュア! サニーファイヤー!」
「私も行くよ! プリキュア! ピースサンダー!」

 ハッピーシャワーが目眩しになっている隙に、炎と電撃が女王を襲う。

「私も行きます。プリキュア! ビューティブリザード!」

 ビューティブリザードで氷が女王を覆い、動けなくした。

「みんな、体力は大丈夫?」
「大丈夫。ピース、さっきの作戦、すごかったよ!」
「見直したで、ピース」
「ありがとう」
「で、女王、私達が勝ったから、約束通り解放してよね」

 マーチが言う。

「仕方ないわね」

 女王が悔しそうに指をパチンと鳴らすと、ボールから黒い煙が立ち上り始めた。

「何やこれ!」
「そのうち戻るわよ。ジョーカー、帰るわよ」
「仰せの通りにぃ」

 悪役2人が消えた瞬間、公園に人が溢れ出した。

「よかった。みんな戻って———え?」

 人々は皆、胸を抑えて苦しそうにしている。

「どういうこと!」
「おそらく、閉じ込められている間に何かがあったか、バッドエナジーで苦しんでいるのかもしれません」
「きゅ、救急車を呼ぼう!」

 マーチが言った瞬間、ハッピーは飛び出して行って公衆電話の前に着地し、それに続いたピースがテレフォンカードを差し出す。
 その日、原因不明の症状を抱えた人々が七色ヶ丘総合病院に溢れかえったという。

Re: スマイルプリキュア 一年後のお話 ( No.4 )
日時: 2017/06/03 15:28
名前: みんみん (ID: TwnK.bTA)

 翌日、初回の授業であるもののうわの空で放課後まで過ごした5人は、それぞれ顔を合わせることなく一直線に帰宅した。

「お母さん、ただいまっ!」
「みゆき、おかえりなさい」
「着替えたら出掛けてくるね」

 みゆきは制服から私服に着替えると、スマイルパクトがあるかどうかを確認し、休む間もなく家を飛び出した。
 七色ヶ丘総合病院に向かって走っていると、後ろから声が掛けられる。

「おーい、みゆき!」
「みゆきちゃーん!」
「あかねちゃん、やよいちゃん!」
「総合病院に行くには、本棚から行った方が早いと思うよ」
「すぐそこの本屋さんの本棚をお借りしましょう」
「なおちゃん、れいかちゃん!」

 反対側から駆け付けたなおとれいかを先頭に、本屋へ向かう。
 ふしぎ図書館を経由し、着いた先は、病院の目の前だった。

「ニュースで見たよ、原因不明の症状の患者さんが運ばれて、今も苦しんでるって」

 やよいの言葉にあかねが頷く。

「帰った時にげんきが言ってたんやけど、学校でも噂になってたみたいやな」
「でも、バッドエナジーを病院で治せるのでしょうか」
「どんな薬を使えば……」

 考え込む4人を前に、みゆきは言った。

「私達の力って、バッドエナジーを浄化出来るんだよね? 試してみない?」

 いち早く反応したのはやよいだ。

「なるほどね。それなら、いけるかも!」
「やってみる価値はありそうだね」
「とりあえず、変身や」

 5人は目立たないように、それぞれ物陰や人気のない路地で静かに変身する。

「みなさん、行きますよ」

 ビューティが先陣を切った。

「プリキュア! ビューティブリザード!」
「次はウチや。プリキュア! サニーファイヤー!」

 ビューティブリザードとサニーファイヤーが上空でぶつかり合い、氷が溶ける。

「プリキュア! マーチシュート!」

 マーチシュートで起こした風で水が広がり、雨として降り始めた。

「ピース、行こう!」
「うん!」

 ハッピーとピースはこっそりと病院に侵入する。
 すぐにブレーカーを発見し、ピースが電気を浄化すると、病院中を巡る浄化された電気の影響で、空気中に漂うバッドエナジーの力が弱まった。

「最後はハッピーだよ」

 再び外に出て、ハッピーは両手でハートを描く。

「プリキュア! ハッピーシャワー!」

 空に向かって放たれたハッピーシャワーは、無数のきらめく光となって雨に混ざり、七色ヶ丘市に降り注いだ。

「……私達に出来るのは、ここまででしょうね」
「やれることはやった。後は、大丈夫だよ」

 ピースが自分に言い聞かせるように言う。

「ふしぎ図書館に戻ろう」

 5人は本棚からふしぎ図書館に戻った。


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