二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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コスモスプリキュア『オリキュア』
日時: 2017/10/15 17:09
名前: 時雨 ◆lX/3zqtk/U (ID: QNgl/KQk)

※一話修正の為、一度削除しています。

【挨拶】
初めまして、時雨(しぐれ)と申します。
題名の通り、プリキュア(オリキュア)のssを書いていきたいと思います。かなりノリと勢いで書いてますので、ぐちゃぐちゃになってしまったらすみません!
時雨の趣味全開、どこかドラクエ、ファイナルファンタジーっぽい?ファンタジー要素が強い作品になれたら、と思います。よろしくお願いします。
また、更新が非常に遅いです。月に一、二回くらいを目安とおもって頂けると幸いです。

※注意事項
・シリアス成分過多。
・章完結ごとにあるミニコーナーは台本書きです。寒いギャグ、メタ、本編関係ありません。
・コメント、批評適宜受け付けております。
・荒らし・暴言等に当たるものは、スルーすることがあります。ご容赦下さい。

【お話】


【ミニコーナー】

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Re: コスモスプリキュア『オリキュア』 ( No.13 )
日時: 2017/10/18 22:45
名前: 時雨 ◆lX/3zqtk/U (ID: 66mBmKu6)

 むかしむかし、あるところに一つの王国がありました。かしこいおうさまと、やさしいおきさきさまが国を治めみんなは幸せにくらしていました。
 ある日、王国をとつぜん『闇』が襲いました。『闇』は、王国をまっくらにつつみこみます。空は暗く、森は灰色になり、ひかりがなくなります。おうさまとおきさきさま、こくみんたちのほとんどは、みんなすいしょうの中にとじこめられてしまいました。『闇』は、王国を滅ぼしたと笑います。いきのったこくみんたちは、こわさでふるえるしかありませんでした。
 そのとき、勇気あるむすめが『闇』とたたかうため立ち上がりました。むすめは、みんなによびかけます。でも、みんな『闇』がこわくてたたかおうとしません。
 こまったむすめは、神様におねがいしました。
 ——かみさま、どうか『闇』と戦うなかまをください。ひとりではたたかえません。すると、そらのうえからひとりのむすめがふってきました。かのじょは、『にんげん』でした。みんなとちがってへんな耳があり、りっぱなきばやつめもない。よわそうな、みためをしていました。
 けれど、にんげんのむすめはとても勇気のあるひとでした。むすめからはなしをきいたにんげんのむすめは、誰も戦いたがらない『闇』と、戦うけついをしました。ふたりは、さっそく『闇』に戦いをいどみました。
 はげしいたたかいの末、ふたりは勝利して『闇』を追い払うことができました。
 こくおうさま、おきさきさま、こくみんたちも解放され、平和なおうこくが戻ってきました。みんなはふたりの偉業を称え、勇気ある戦士であるふたりを『プリキュア』と呼びました。
 めでたし、めでたし。

『フローナス童話』 プリキュアより

Re: コスモスプリキュア『オリキュア』 ( No.14 )
日時: 2017/10/22 16:23
名前: 時雨 ◆lX/3zqtk/U (ID: CqetyqUy)

『めでたし、めでたし』

 パタン、と絵本が閉じられる。振り向くと、母親が優しく微笑んでいた。——もう一年近く見ていない、母親の笑顔。ようやく見ることが出来た。幸せでたまらない。
 ——しかし、彼女は理解していなかった。母親が笑顔を向けているのは、『今』の彼女ではない。『昔』の彼女である。これは、夢なのだ。優しい過去の記憶、彼女を閉じ込める為の優しい檻である。
 風で揺れる白のカーテン、柔らかい陽光。ベッドに座る母娘。幼い彼女が母親の膝に乗せられ、絵本の読み聞かせをして貰っていた時の記憶だ。

『おかあさま、闇はこわいですの』

 そう言って幼い彼女は涙目になり、母親の服の袖を引っ張る。母親はくすくすと笑い、幼い彼女の頭を優しく撫でてくれる。

『あらあら、相変わらずあなたは甘えん坊さんね』
『おかあさまやおとうさまが、すいしょうの中に閉じ込められたらカナリは嫌です』

 不安が残るのか、幼い彼女は泣きそうな顔になっていた。『頭』の耳がしゅんと下がった。すると、母親は幼い彼女の手をそっと握る。

『闇が来ても大丈夫よ、カナリ』
『どうしてですの?』
『プリキュアがいるからよ。お話に出てきた女の子たちを覚えてる?』
『はい』

 幼い彼女は頷いた。
 国を救うため立ち上がった娘と、空の上から来た娘。二人が闇と戦う場面は子供ながらに、わくわくしたのを覚えている。——子どもながらに、と彼女は一瞬思ったがすぐに忘れた。

『プリキュアは、世界が闇に包まれた時に現れる伝説の戦士。きっと、彼女たちが助けに来てくれるわ』
『プリキュアが……』

 絵本で勇敢に戦った彼女たちなら、来てくれそうだと幼い彼女は思った。安心させるようにゆるく抱きしめてくれる母親。——嗚呼、嬉しくてたまらない。幸せだ。もう、この幸せから離れたくない。

『もし闇に包まれるようなことがあったら、プリキュアを呼ぶのよ。大丈夫、彼女たちは来てくれるわ』
『プリキュア、かっこいいですわ』

 母親の腕の中で幼い彼女は、純粋にプリキュアへの憧れを大きくしていた。かっこよく、勇気あるプリキュア達はこの国では子ども達の憧れの的だ。彼女もそんな子どもの一人だった。——そして、こんな恥ずかしいことを思った子どもだった。

『カナリ、大きくなったらプリキュアのような女王様になりますわ。カナリが、おかあさまとおとうさまをお守りますの』

 突然の幼い彼女の思い付きに、母親は困ったように笑った。自分を片腕で抱き、反対の手で幼い自分の髪を梳きながら話しかけてくる。

『あらあら、あなたみたいな甘えん坊さんに出来るのかしら?』

『できますわ』

 むっとする幼い自分に、そりゃ笑われますわと突っ込む。あの頃の自分は怖がりで、いつも母親に甘えてばかりだった。守るなど夢のまた夢だろう。

『おいエルマ、カナリと何話してるんだ? 二人だけで盛り上がってずるいぞ』

 そこへ不機嫌そうな声がして、父親が部屋に姿を現す。父親は、彼女がいない所で話を盛り上げると機嫌を悪くするのは、昔から変わらない。

『おとうさま』
『あら、クロウリー。ねえ、聞いてちょうだい。カナリったらプリキュアのような女王様になりたいそうよ』

 父親の姿を認めると、母親は慈愛に満ちた笑いを浮かべて。幼い彼女の頭を撫でながら、母親は会話の流れを説明する。幼い彼女の宣言に呆れていたのか、困ったような声音だった。

『プリキュア? ああ、あのフローナス童話に出てくる戦士か』

 言いながら、父親は母親の隣に腰掛けた。

『その絵本をカナリに読み聞かせてたらね、この子ったら。プリキュアのような女王様になりたいって言ってたのよ』
『あはは、女の子なら誰もは一度でも憧れるよな。相変わらず、カナリは可愛らしいなぁ』

 よしよしと頭を撫でる父親を見て、母親は苦笑する。
 小さいが自分がからかわれていることに気がついた彼女は、怒ろうとして。ふと、思い出した。

(わたくし、何か……)

 何かすべきことがあったような。
 そんなことを思うが、両親と共にいる幸福感がその考えを奪う。余計なことを考えてはいけないと、彼女は母親に身体を預けた。


 暗闇の中で唯一の光源は、その水晶だった。人間を余裕で見下ろせる程の高さがあり、キラキラと輝きながら暗闇を照らす。

「ふふ、この狼さえ捕えてしまえば。もう邪魔者はいないわ」

 水晶の中には、一匹の狼がいた。銀に青を混ぜたような不思議な色合いの毛並みを持つ狼だった。狼は静かに目を閉じ、身体を丸めている。ぴくりとも動かない。眠っているのか、死んでいるのか。よく分からない。

「これで、プリキュアを誕生させる者はなくなった。後は早くこの王国を全て滅ぼせばいい」

 闇の中で赤黒いトラが笑った。

Re: コスモスプリキュア『オリキュア』 ( No.15 )
日時: 2017/11/15 20:49
名前: 時雨 ◆lX/3zqtk/U (ID: 66mBmKu6)

私はとても優しい夢を見ていた。
 穏やかな陽射しが差し込む昼下がり。カーテンが白い風に揺らされ、踊っていた。そんな部屋の中で。小さな女の子がお母さんに読み聞かせをしてもらっていた。お母さんの膝に乗り、お互いに微笑み合う姿は見ているこちらの胸が暖かくなる。私もこんな時があったなーなんて、少し自分のことも回想したりする。
 ただ、この女の子とお母さんは変った見た目をしていた。お揃いの銀に青を混ぜたような不思議な髪とアイスブルーの透き通った瞳。——そしてお揃いの、獣の耳と尻尾。姿は人間なのに、この親子には獣の耳と尻尾があった。頭には髪と同じ色の三角の耳、腰にはやはり髪と同じ色をした尾。初めは、犬かと思ったけれど。あんな立派な尻尾を持つのは、狼だ。狼の耳と尻尾だと。私は思う。なんで、こんな獣の耳と尻尾を持った親子の夢を見ているのか。改めて不思議に感じた。

「あなた、だあれ?」

 視線を感じて顔を上げると、女の子がじっと私を見つめていた。お母さんは相変わらず絵本を読み聞かせていた。プリキュアとか言う、伝説の戦士の話らしい。

「私? 私はあさひだよ」
「あさひ様は、人間なのですか? 獣の耳と尻尾を持たない種族だって、教わりました」

 変なことを聞く女の子だなあ、と思いながらも私は答える。

「そうだよ、人間だよ」
「に、ん、げ、ん……」

 女の子が一言一言噛みしめるように呟いた、瞬間。世界は黒に染まる。

Re: コスモスプリキュア『オリキュア』 ( No.16 )
日時: 2017/11/24 21:27
名前: 時雨 ◆lX/3zqtk/U (ID: 66mBmKu6)

ガラガラ、と積み木が崩れていくような音を立て。世界は崩れていく。色が崩れ去っていき、全てを黒に塗りつぶしていった。——一体、何が起こっているんだろう。不安から私が辺りを見渡していると、

「思い出しましたわ。お母様は連れ去られ、お父様は目を覚まさず。そして国は滅んでしまったのですわ」

 足音が聞こえ、狼の耳と尻尾を持つあの女の子が私の前に姿を表した。え、と思い私は女の子をじっと見てしまった。あの女の子は、何故か急成長していた。年の頃は十代後半から二十代前半くらいか。私より少し年上くらいかな。お母さん譲りの青みがかかった銀色の髪は、一本一本が銀糸でできているようで。まっすぐ背中まで伸ばされていた。可愛らしい顔立ちの面影はあったけれど、大きくなったことで凛々しくなっていた。強い意志の宿った綺麗なアイスブルーの双眸が、じっとこちらを見やる。背筋が凍るほど、綺麗な娘さんだった。

「わたくしは、人間を、あなたを探していたのです」
「あなた、は……」
「わたくしの名前は、カナリと申しますわ。あさひ様」

 そう言ってカナリさんは、洋服の裾を掴み頭を下げた。洗練された動きについ私は見惚れてしまった。美しい容姿といい、作法といい、どこかのお姫様のように思えた。

「えっと、カナリさん。でしたっけ?」
「時間がありませんわ。あさひ様、一方的になってしまいますがお話を聞いて下さい」

 カナリさんは必死な顔で私を見てくる。すごい迫力に気圧されてしまい、私は頷くことしかできなかった。

「あさひ様、どうかホーライ王国をお救い下さい」
「す、救う!? そんな冗談を」

 よくあるファンタジーのゲームみたいだ。お金と武器あげるから、魔王倒してこいみたいな。——まあ、夢だから何でもありなんだろうけど。
 私は冗談としか受け止めていなかった。けれど。カナリさんは、祈るように両手を握り真顔で私を見据えた。そこに、冗談の雰囲気は一切感じられない。

「冗談ではありません。ホーライ王国は既に滅び、わたくし自身も囚われの身。……聞いて下さい。あなたは、この世界の最後の希望。あなたが敵に倒されてしまえば、全てが終わってしまいますわ」
「私で何とかなるの? 私、別に魔法も剣もできないけど」

 そう要求されても、私は普通の女の子だ。武術や剣道はやってないし、運動は平均。そんな力、どこにもない。
 ——その時、不意に闇が動いた。

「……敵が異変に気がついたようです。さあ、行って」

 カナリさんが私を突き飛ばすると、突然足元の感覚がなくなった。そのままカナリさんがどんどん遠ざかっていく。いくら手を伸ばしても、届くことはない。

「大丈夫、あさひ様なら。わたくしは信じていますから」
「カナリさん!」

 両手をぎゅっと握り、祈るカナリさんの姿。たくさん手を伸ばして、たくさん名前を呼んだけれど。とうとう、意識が途絶えた。

Re: コスモスプリキュア『オリキュア』 ( No.17 )
日時: 2017/11/30 22:35
名前: 時雨 ◆VMdQS8tgwI (ID: 66mBmKu6)

「カナリさん!」

 突き飛ばされたあさひは、頭から暗闇の中に落下していった。夢のせいか落ちる感覚や風を切る音はない。
 あさひは声を張り上げて、カナリの名前を呼んだ。彼女も連れて行こうと懸命に手を伸ばすが、虚空を掴むだけ。カナリの姿がどんどん遠ざかっていく。
 まだ答えを伝えていない。声が枯れると思うほどに、あさひは何度も何度もカナリの名を呼んだ。

「カナリさん、カナリさんっ……」
「あなたのことを信じていますわ」

 意識が消える直前、カナリは柔らかい笑みを浮かべていた。あさひはそんか気がした。

 ゆっくりと身体を起こすと、家ではない場所にいた。どうやら森の中のようだが奇妙な場所だった。背の高い針葉樹は全て灰色に染り、まるで剥製のよう。その根本からは透明な棘が何本も生えていた。空は陰鬱な色で覆われ、太陽も月も、星も見当たらなかった。時間を把握できそうにない。

「ここは……」

 あさひは、キョロキョロと辺りを伺った。ところで彼女の本名は幸明(こうめい) あさひと言う。桜色の髪は肩にかかる程度。赤いリボンでハーフアップにしていた。赤みがかかった琥珀色の瞳で、顔は小顔で可愛らしい。何故か制服姿だった。黄色のサマーセーター、青のリボンタイ。赤と黒のチェック柄のスカート、黒の学生靴。

「お父さん、お母さん! どこ?」

 近くに両親がいるのかと思い声を張り上げるが、答える者は何もない。  ゾットする程の静けさが辺りを支配している。——時が止まったかのように、音が失われていた。

(誰もいない? 曇ってて暗いし森は灰色だし。どうなってるの?)

 家の近所にこんな場所はあったか、とあさひは記憶を辿るが見つからなかった。
 あさひの自宅は、閑静な住宅街の中にある。このような立派な森は、近所にはない。大分遠くに来てしまったことだけは確かだった。

(お父さんとお母さんに連絡しよ)

 ひとまず家族に連絡を取ろうと、あさひは制服のポケットを探るが。スマホはなく、ハンカチくらいしか持っていなかった。

(なんだろ、この透明な棘)

 途方に暮れていたあさひは、何気なく透明な棘に近づき——固まった。
 透明な棘の中には、猫のぬいぐるみが身体を丸めて動きを止めていた。見ているだけなら、透明な棘の中でも眠りについているよう。そっと棘の表面に触れると、氷に触ったような感触があった。ひんやりとして気持ちがいい。

「猫、のぬいぐるみかな? 氷漬けにしてる……のかな。趣味が悪い」

 周りの透明な棘には、猫以外にも犬や鳥のぬいぐるみも氷漬けにされていた。皆、一様に動かない。

「うふふ、見つけたわよ。神獣スフィンクス」
(良かった人がいるのね!)

 不意に人の声が聞こえ、あさひは顔を綻ばせて声の方角へゆっくりと向かう。すると、一本の木を背に白いライオンと二足歩行の赤黒いトラが向かい合っているのが見えた。 ライオンのぬいぐるみは大きさは、人の顔ほどか。美しい細工のついたベルがある首輪をし、緑のベストのようなものを羽織っていた。何故か背中には鳥のような白い羽があり、動かして宙に浮いていた。
 一方の赤黒いトラは、二足歩行。高さは人間の大人ほどあり、こちらにも赤黒い羽根があった。ただしこちらはコウモリのような羽根だったが。

「あの狼のお姫様の犠牲も無駄だったようね。笑っちゃう」

 どうやら赤黒いトラが、白いライオンを追い詰めているらしい。木に身体を押し付けた白いライオンは切羽詰まった表情で、赤黒いトラは愉快そうに顔を歪めていた。

「狼のお姫様はこちら側にいるわ。これでもう怖い物はない。後はあんたさえ捕らえれば、あたしたちを邪魔するものはない」
「そんな……」
(や、やだ。恐喝の現場に来ちゃった。しかも何、白いライオンは空飛んでるし、赤黒いトラは立ってるし、みんな喋ってるし……)

 赤黒いトラの言葉で白いライオンの顔から、血の気が引いていく。突きつけられた現実に絶望したのか。衝撃を受け、ゆっくりと地に落ちた。
 一方、そんな彼らを見守るあさひも混乱していた。ライオンが飛び、トラが二足歩行で。しかも話している。

「やりなさい、ワザワイド」
「ワイーっ!」

 トラが声をかけると、地面に振動が伝わった。続けて、遥か上空から声が降ってくる。不思議に思い、見上げると木の化物がいた。近くの木に目のような空洞が生まれ、動くようになった。そんな表現が合う化物だった。そして、木の影にいたあさひをじっと見つめていた。あさひと化物の視線がばっちりと絡み合う。

(え、こっち見てる?)

 そんなことを思った時は遅い。隠れていた木が突然視界から消えたかと思うと、例の赤黒いトラが背後に化物を従えて目の前に出現していた。遠くで何かが落ちた音がし、土煙が上がった。

「あーら驚いた。この国の住人はみんな水晶の中に封印したはずなのに。まだ生き残りがいたのね」

 赤黒いトラは、いつの間にか白いライオンを両手でがっちりと捕まえていた。気を失っているのか、白いライオンは腕の中でぐったりしている。
 品定めをするように赤黒いトラはあさひを眺め、ニイと口の端を持ち上げた。

「逆らおうなんて、思わない方がいいわよ。変な耳、尾もないし。何の種族か知らないけれど、弱そうね」
「よ、弱くありません!」

 武術や体術をやっていないので弱いのは事実だが。何だか、腹立たしいのであさひは言い返す。相手が赤黒いトラのせいか、声は震えていた。それを感じ取ったのか、赤黒いトラは鼻で笑った。
 
「爪も牙もないのによく言うわ」
「爪や牙がなくても、やれることはあります!」

 根拠のない自信だった。だが、ここで諦め絶望してはいけない気が。あさひは何故かしたのだ。その声に鼓舞されたように、赤黒いトラの腕の中で白いライオンがゆっくりと顔を上げる。その円な瞳に、力強く立ち上がるあさひが映った。

「さっきから聞いていれば、弱い癖に大口叩くんじゃないわよ。あたしは、あんたみたいに諦めない奴がキライなのよ。さっきの狼のお姫様と言い、 むかつく。あ、そーだわ。このまま普通に封印してもつまらないから、痛めつけてから封印しま」

 赤黒いトラの言葉が突然途切れた。腕の中の白いライオンが、暴れだしたからだ。しばらく揉み合った後、白いライオンはすきをついて赤黒いトラの腕から逃れあさひの元へ一直線に飛ぶ。

「えええ!?」
「やっと見つけた! えいっ!」

 こちらに向かってくる白いライオンにあさひが驚き固まっていると。白いライオンはあさひの指先に自身の首輪の透明なベルを押し付けた。瞬間、高い音色と共に光の洪水が起こった。

「な、何なのこのすごく気持ちが悪い光……」
「ワザっ……」

 光が嫌いなのか、赤黒いトラと木のお化けは顔を覆って光をさけた。
 一方、光の洪水はあさひを飲み込み。そして。

「プリキュア・ライジングサン! 始まりを告げる光! キュアリートス!」


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