二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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仮面ライダー龍騎 Seoul Vent(ソウルベント)
日時: 2019/01/19 15:06
名前: ひろヒーロー (ID: 4JlqZbWs)

「Final vent (ファイナルベント)!」
その声とともに真紅の龍と戦士が宙を舞う。戦士は体を回転させた後、葬り去るべき対象に足を向け、狙いを定める。
戦士「ハァー!」
その覚悟を感じさせる叫びを言い放つと同時に、紅龍が口内の奥から強烈な炎を巻き上げ、戦士に向かって吹き付ける。
(ズドーン)
炎を纏った戦士はそのまま体制を変えず、空を切り裂くような爆発音をたて、異形の存在の身体を蹴り飛ばした。
戦士「ハァ、ハァ」
振り返ると燃え上がる炎の中で、敵として認知していた存在の外郭は消え去り、跡形も無くなっていた。
そして戦士は疲弊しつつあるその身を引きずるかのようにして歩き始めた。
彼は、仮面ライダー龍騎、日々戦いに身を投じている。己が信じるべきだと疑わなかった正義と信念のために。


ー龍騎がファイナルベントを使用する24時間前ー



「このままでは、決着がつくのに時間がかかる」
Odin (オーディン)と名乗るこのライダーバトルの管理者が繰り返される死闘の中で生き残った戦士、各々にそう言い放った。
Knight(ナイト)、Zoruda(ゾルダ)、Ohja(王蛇)、femme(ファム)、Taiga(タイガ) impeller(インペラー)、Verde(ベルデ)そしてRyuki(龍騎)。
それぞれ異なった正義と願いを抱き、狂気に満ちたこの戦いの世界で戦い、生き延びてきた。
ある者は愛する者のために、ある者は戦いが肯定される世界の創造のために、ある者は自身の幸せのために、そしてある者は人命を庇護し、戦いを終わらせるために戦っていた。
「城戸真司」(龍騎)彼は自分の正義がこの愚行なる戦いを泰安なる終電の地へと導くであろうということを信じて疑っていはいない。
真司「どういうことだよ!俺たちがこれからミラーワールドに閉じ込められるって!
なぁ!蓮!おい!」
蓮「...」
「秋山蓮」(ナイト)数奇な運命によって真司と引き合わされ、尊愛する恋人のためにその身を呈して戦っている。
真司「なぁ!聞いてんのかよ!蓮!なぁ!」
蓮「...」
蓮は冷静を装い、物怖じなどしてないかのような顔をしていた。
しかし、その表情はどこかこれから待っていると予知する惨劇に対する覚悟を決められずにいるようだった。
真司「なぁ、れ...」
真司の猛烈な問いかけを断つように蓮は、憩いの場の一つでもある喫茶店「花鶏」を後にしようとした。
真司「ちょっ!おい、どこ行くんだよ!蓮!」
花鶏を出て行き、愛車であるバイクに跨った蓮を真司が問い詰める。
蓮「何があろうと俺は、俺自身の願いのために戦う、その願い叶えるためにお前と戦うことになってもな...」
そう言い放ったあと、蓮は日の当たる小道を走り去って行った。
真司「蓮...」
真司がそう吐露した時、一人の女性が憂いた形相で真司の元へ向かって駆け寄ってきた。
「神崎優衣」花鶏を切り盛りしていた叔母が腰痛の治療による入院を余儀なくされたため、現在は彼女が店を任されている。彼女もまた、戦いの中で死闘を繰り広げてきた戦士達とは別に、この戦いの主催者の妹である故の立場と心情に苦悩し、また、苦心していた。
優衣「真司くん!何があったの!?」
優衣は普段的ではない二人の異常な空気を少し離れた場から見つけ、察知していた。
真司「蓮のやつが...」
真司は優衣にオーディンが自分たち生き残りの戦いを終結させるために強制的な戦闘イベントを開催しようとしていることを伝え、その内容を真司から聞き、優衣も阿鼻叫喚の念を抑え込むことはできなかった。オーディンが生存者達に告げた内容は、彼らにとってあまりにも唐突かつ衝撃的な宣言であった。
オーディン「10時間後、お前たちを強制的にミラーワールド内に取り込み、そこで最後の戦いを繰り広げてもらう。さらにお前たちが取り込まれるミラーワールドには、生命が存在し続けられる時間が通常より延ばされている。無論、この戦いを否む者、ミラーワールド内から脱そうとする者はゲームから排除する。それは即ち死を意味する。もしも、その身が消え去るまでに決着が付かなければ、お前たちの中から私と戦うことになる者はいなくなるであろう。さぁ、戦え!その願いを叶えるために。」
オーディンの実体が消え去った時には、時計の長針と短針は数字の10を指していた。
陽光きらめく白昼のなかで。


ー龍騎がファイナルベントを使用する14時間7分前ー



日陽の恩恵が皆無となり、街を暗闇が覆った頃、真司と優衣は花鶏の客用テーブルに座り、蓮の帰宅を待ち望んでいた。しかし、蓮が一向に帰って来る気配がないことを二人共々感じ始めていた。そして真司はふと、蓮が別れ際に放った言葉を思い出し、彼にもいつかは、こうなるであろうという覚悟があったのではないのかという考えに耽った。
真司(俺があいつと戦う...)
そしてそういった思いに危機感を感じると共に自分がこの状況を打破し、改善するしかないのだという心情に再び熱を帯びさせた。
真司「優衣ちゃん、俺行くよ。」
真司は決断した。
優衣は少し動揺を隠しきれずにいたが、心のどこかで真司が戦地に出向くということを決断するのであろうと感じていた。
優衣「わかった」
優衣は立ち上がり、少し顔を下げつつ真司に向かって願い頼んだ。
優衣「真司くん、お兄ちゃんを止めて。そしてこの戦いを...終わらせて!もう、これ以上こんな戦い続けちゃダメだよ!」
彼女の目の辺りから小さな雫の結晶がいくつかこぼれ落ちた。
真司も立ち上がり、快諾した。
真司「ああ、任せて優衣ちゃん!」
その時、オーディンを操る真の主催者であるとともに優衣の兄である神崎士郎の声が店内に響いた。
神崎士郎「さぁ、戦いの時が来た、いますぐ変身し、己の野望のためたたかえ!」
そう言い終えると神崎士郎はすぐに消え去った。そして覚悟を決めた真司は自分のすぐ隣に立ててある鏡と対面するように立ち寄った。そして上着のポケットから金の紋章の入ったカードデッキを取り出し、紋章が映るように鏡の前に突き出した。真司の腰にベルトが出現し、彼はそのまま自分の右手を左斜め上横に突き出した。時を同じくしてその他の戦士達も鏡の前でそれぞれのポーズをとっていた。そして8人全員は戦場に赴くための言葉を発する。

「変身!!」

優衣(真司くん、蓮、死なないで)
優衣は心の中でそう呟いた。
昼間にオーディンが現れた時に数字の10の上で重なり合っていた時計の長針と短針は、数字の8の上で重なり合おうとしていた。


ー龍騎がファイナルベントを使用する14時間前ー



真司「シャッ!」
真司はミラーワールドに入る前にそのようにして気合を入れた。ミラーワールドに入る前はだいたいいつもこうやって、真司は自分に喝を入れている。ミラーワールドの中に入ってみるとそこは都心より少し離れ、周囲にいくつかのビルが立ち並ぶ郊外の広間付近だった。そこには、まるで生き物の存在自体を否定するかのような無情さと静けさが漂っていた。
真司「全員集まったのか?」
あまりの静けさに真司は疑問の念を表さずにはいられなかった。そして自身の勘を頼りに正面の広間奥の道に向かって歩き始めた。広間を抜け、その奥の道に足を踏み入れた際に真司は、普段の戦闘の際以上に周囲を警戒していた。今までと同じ戦いではないという思いが彼の脳内を駆け巡っていたからである。しかし、この異常なまでの静かさこそが最も彼の警戒心を煽っていた。道を進んでいくと月を覆っている暗闇の中から何かがぶつかり合っているような響きを真司の耳が拾った。
真司(はっきりと聞こえないけど...確かに何がぶつかり合うような音が...)
真司はかすかに聞こえる音の方に体の正面を向け、一歩歩み出そうとした、その時。
「ドゥーーン、ドゥバーン」
真司の目の前の工場地帯から煙を伴った大きな炎が立ち上がった。
真司「う、なんだあの爆発は!」
一瞬狼狽えた真司だったが、すぐに気を持ち直しすぐに爆発のあった工場地帯へと向かった。
真司(クソッ!前が見えない!)
そう思いつつすぐさまたどり着いた工場にはすでに煙が充満していたが、真司はその煙をかき分けるように慎重に奥へと進んでいった。そして、工場の中を進んでいくと徐々に煙が薄れていった。もう少しで火元に辿り着けそうだと思った時、真司は足元に何かの破片のようなものが触れたのを感じた。下を向くと、そこにあったのはバラバラに潰され、破壊された淡く、薄い緑色のカードデッキだった。そして薄い煙の中を見渡すとすぐ近くにも少し暗めの焦げ茶色のカードデッキがヒビが入りかけている状態で落ちてあった。ベルデとエンペラーのものだった。


ー龍騎がファイナルベントを使用する13時間59分前ー


「浅倉威」(王蛇)彼は名実ともに世間に知られている凶悪脱獄犯である。自分の精神的快楽のためなら殺人をも平気で犯す人格であるとともに戦いそのものが肯定され、何人にも阻まれずに、戦い続けられる世界が創られることを望んでいる。また、すでにこのライダーバトルで浅倉自身との戦いによって命を散らしたGuy(ガイ)とLia(ライ)それぞれの当時のミラーモンスターと契約しており、彼の最初の契約モンスターと合わせて、現在3体のミラーモンスターとの契約を交わしている。
浅倉「ははぁ...ずっとイライラしてたが...やっと戦えるぜ...」
浅倉の目の前には、高見沢が向かい合うように立っていた。
「高見沢逸郎」(ベルデ)大企業高見沢グループの総帥。その絶大な権力を保持する地位についてもなおライダーバトルによってさらなる強大な権力とその永遠の持続を願い求めている。
高見沢「フン、感情の赴くままに流されて、戦ってるってわけか。まあ、いいだろう。そんなことでは我々に勝てないだろうな。」
浅倉「アァ...?」
浅倉が高見沢の「我々」というワードに疑問を抱いたのと同時に、ベルデの後ろの暗闇の方からもう一人の人影が近づいてくるのがわかる。そしてその人影はベルデの隣まで進んできた。その正体はインペラーであった。
「佐野満」(インペラー) ライダーバトルそのものを楽観視し、戦いに参加したが、彼の考えている以上に残酷な世界だということを知り、ライダー同士の戦いの中で生き延びようと心に誓っている。また、お金持ちになって幸せになりたいという庶民一般的な夢を叶えたいと考えている。
佐野「俺ってやっぱり、強いしお買い得ですよね社長。」
佐野は2対1という自身の有利な状況ゆえに自信に満ちていた。また、ライダー同士の戦いの中で高見沢と組むことによって自分が孤立せずに戦闘に参加できるという事実から他のライダーへの優越感を感じずにはいられなかった。
高見沢「社長と呼ぶのはやめろ、我々は雇用主と雇用者の関係ではない。ライダー同士の関係なのだ。お互いの利潤から成り立っている関係だということを忘れるんじゃない。」
高見沢は冷静な口調で答えた。彼は確かに冷静であったが佐野ほどの戦場での王蛇に対する優越感は、感じていなかった。王蛇が過去に二人ものライダーを死地に追いやり、葬り去った事実を認知していたゆえである。
高見沢「しかし、こんな状況になると、ライダーと人間も似たようなもので、なんら変わりないということをつくづく感じるな。」
人間社会の真相を熟知し、その残酷さや愚かさを実感してきた高見沢からは人間社会の世界もライダーバトルの世界も同じように感じられた。
佐野「さすが社...高見沢さん!おっしゃることがいつも勉強になります。」
もう少しで佐野は過ちを繰り返すところだった。
浅倉「おい...いつまで喋ってる...これ以上俺をイライラさせるな!」
浅倉はそう叫び終えると、牙召杖を取り出しカードを挿入した。
「Sword Vent(ソードベント)!」
機械音が鳴り響く。浅倉は手元に現れたベノサーベルの刃先を地面に向けながら佐野と高見沢の元へ走り寄っていった。
高見沢も舌召糸にカードを読み込ませる。
「Hold vent(ホールドベント )!」
高見沢は召喚されたバイドワインダーを手に持った。
そして佐野も右膝を曲げ羚召膝甲にカードを挿入する。
「Spin vent(スピンベント)!」
佐野はガゼルスタッブを手にし、浅倉の方へその先端を向けた。そして高見沢と佐野は両者とも武器を浅倉に向けるようにして左右同時に攻撃を仕掛けた。
浅倉は攻撃が当たるのをギリギリまで待ち、右側にずれ、二人の攻撃を避けた。
「ブンッ」
佐野と高見沢の武器が空を切る。
佐野 高見沢(避けられた!)
佐野と高見沢がそう思った瞬間、浅倉は振り返ろうとする二人の背後に立ち、素早く剣を横に振った。
「パシーン!」
二人は体から火花を散りだし、一瞬怯んだ。浅倉はその一瞬を逃さず、さらに追撃を加える。
「パスゥーン、パシーン」
振りかざされる剣から繰り出される斬撃をくらうと同時に両者の体からさらに火花が舞う。そして浅倉の攻撃は続く。
「パスン、パシーン」
ふと浅倉は立ち止まり、攻撃を停止した。
浅倉「おい...こんなもんか?もっと俺を楽しませろ!」
佐野と高見沢は体制を整えつつ、浅倉の方を見た。二人の戦う前の余裕を醸し出していた表情は一変し、その顔からは焦りと驚きが見え始めていた。
高見沢「フン、所詮は初手に翻弄されたまでだ。ここから一気に終焉に導いてやろう、これ以上戦うのは面倒だからな。」
高見沢は高圧的な態度をとると、舌召糸にカードを読み込ませた。
「Clear vent(クリアーベント)!」
その声が工場に響くとともに、ベルデ自身の体が透明化した。
佐野「そんじゃあ...おれも。」
佐野も高見沢に続いてカードを羚召膝甲に挿入した。
「Advent(アドベント)!」
そして、佐野の後方から彼の契約モンスターであるギガゼールを始めとするゼール系統のモンスターが現れ、浅倉の方へ飛び跳ねながら近づき始めた。
浅倉「ハッハー...!こうでなくちゃなー、戦いは!」
浅倉は、慣れた手つきで瞬時に3枚のカードを順番に牙召杖に挿入した。
「Advent(アドベント)!」
3枚のカードとも同じ音を鳴らした。
「ドン」「バン」「ゴン」
工場の壁や床をすり抜けていくようにベノスネーカー、メタルゲラス 、エビルダイバーの3体が3方向から現れた。そして、佐野が召喚したギガゼール達に襲いかかった。
「グウァァァ」「ズジャー」
あちらこちらで戦いによるモンスター達の咆哮や叫び声が聞こえる。しかし、状況は浅倉が召喚したモンスター達がギガゼールを蹴散らし、その牙を佐野へ向けようとしていた。
佐野「う、嘘だろ!」
明らかに佐野は怖気付き、体を後ろに方向転換させ逃げようとする体制をとった。
高見沢「フン、そうやって逃げ続け、そのままおとりにでもなっておけ」
高見沢は佐野向かって言い放った。彼は透明の身となり、あとはこのまま浅倉に致命傷となりうる見えない攻撃を与えれば自分の勝利は確固たるものになるということを考えていた。そして浅倉の背後から10メートルほど離れた場所まで忍び寄っていた。
高見沢(フフ...凶悪犯の最期がこうもあっけないとはなぁ)
高見沢はカードを取り出す。
「Fainal Vent (ファイナルベント)!」
舌召糸が読み込んだそのカードは、高見沢本人の戦いの中で敵に戦いの終わりを示してきたものだった。そして、高見沢は宙返りをするかのように自身の足を天井へと突き立てた。その瞬間に透明化し、工場の天井に張り付いていた高見沢の契約モンスター、バイオグリーザーが舌を高見沢にめがけて伸ばしその足に絡めた。そして宙づり状態になった高見沢はそのまま浅倉の方へ体を赴かせた。
高見沢(これで終わりだ)
そう心の中で勝利を確信した高見沢は勢いをつけて宙づりのまま浅倉を捕まえようとした。しかしその時、何かが高見沢の脇腹に向かって衝突してきた。
「ドン」
メタルゲラスの突進によるものだった。
高見沢「うあっ!」
予知しない攻撃に高見沢は驚くとともにその衝突の衝撃により右方へと飛ばされた。地面に叩きつけられた彼の体はもう透明ではなかった。
浅倉「おいおい、どうした ...そんなもんか?...戦うなら正面からかかってこいよ...」
浅倉は普段と変わらず、この状況を楽しんでいるようだった。
高見沢「なぜ...なぜだ!俺は透明化していたはずだ!なぜ俺の行動を予測できた!」
高見沢は困惑していた、自らの勝利を確信していただけに。
浅倉「あぁ...?俺は何もしていない...ただこいつが勝手にやっただけだ。」
浅倉は自分の隣に寄ってきたメタルゲラス の方を向いた。高見沢が宙づりの状態で浅倉を取り捕まえようとした時、時を同じくして自身の契約者の身を案じたメタルゲラスは偶然その状況に居合わせた。確かに、メタルゲラスから高見沢の姿は見えてはいなかった。しかし、高見沢が使用したコピーベントは使用者である高見沢のみを透明化させるのであって、その契約モンスターであるバイオグリーザーは効果の恩恵を受けず、その姿は長く伸びた舌を実体として確認できるほどはっきりしていた。その状況でメタルゲラスは、バイオグリーザーの舌先に何かが絡まっていると感じ、さらにその舌先に絡まっている何かが浅倉に攻撃を仕掛けようとする様子を感知し、その攻撃の阻止に努めた。これによって高見沢の思惑は断たれた。
高見沢「そんなバカな!あの戦略が失敗するだと!」
高見沢は、彼自身が最も自信のある戦法が思わぬ形で阻まれた現実を受け止めきれずにはいられなかった。
浅倉「戦い方を間違えたお前が悪い...」
そう言うと浅倉はカードを2枚取り出し別々に牙召杖に挿入した。
「Strike Vent(ストライクベント)!」
1枚目の召喚音声が鳴ると同時に浅倉の手にメタルホーンが現れる。
「Final Vent (ファイナルベント)!」
2枚目の召喚音声は、高見沢に死の宣告を告げているようにも聞こえた。
高見沢「クソ...!」
逃げるしか生き延びる手段がないと悟った高見沢は体を起こし懸命に逃げようとした。だが、メタルゲラスによる突進によって彼の動きは極端に鈍くなっていた。
浅倉「逃げるのか!」
浅倉はそう叫ぶとジャンプをし、メタルゲラスの肩に体が水平になるように足の裏をつけ、手に持っていたメタルホーンを顔の前に持っていき前へと突きつけた。
「タッタッタッタタタッタ」
メタルゲラスはそのまま歩数を増やしスピードを上げ、さらに勢いづく。浅倉はメタルホーンの先端で逃げようとする高見沢の背中を捉えた。そしてそのままメタルホーンの先端が高見沢の背中に触れた。
「ズシューン」
スピードを落とすことなく鋭い先端部分が高見沢を貫いた。凶人に貫かれた高見沢の位置が瞬時に爆発を起こした。
「ブゥォー、ブゥォー」
メタルゲラスの肩から降りた浅倉が振り返るとそこに燃え盛る炎を確認できた。
そしてその炎の群の隣にバキバキに割れた高見沢のカードデッキが落ちていた。
浅倉「フッ...この程度か...もっと俺を楽しませろぉぉ!」
浅倉はそう吠えると、さらなる精神的快感を求めて佐野の元へ向かった。
佐野「はぁ、はぁ、うっ!あぁ!」
その頃佐野はベノスネーカーとエビルダイバーから身を隠しつつ、2体から受けた攻撃による傷に苦しんでいた。
佐野(なんなんだよ...全く...さっき、爆発音はしたし...契約モンスターとも離れ離れだし...こんなことになるはずじゃ...)
佐野の契約モンスターたちの多くはもう戦える状態ではなかった。さらにその居場所もほとんどが異なっていた。
佐野(仕方ない、この工場から抜け出してまずは他のライダーがいない場所に向かおう。)
そう考え、佐野は重い体をお起こし工場を抜けるために通路に差し掛かった。
浅倉「お前も逃げるのか...?」
佐野はゾッとすると同時に心臓の鼓動が早くなり、自分の死が迫っているのを感じた。それは姿を確認せずとも明らかに浅倉の声だとわかった。
佐野「はぁ...!はぁ...!やめてくれ...!死にたくない!」
佐野は生きようとする自らの心に従うことで必死だった。
浅倉「おい、命乞いするのか!戦え!」
近く浅倉に強烈な恐怖を感じ、佐野は力のかぎり走りだした。工場からの出口はすでに浅倉の契約モンスターによって阻まれていたため、佐野は出口など気にも留めず、生き延びることに専念するために周辺の道を己の勘のみで選び走っていた。走り続けるうちに佐野は浅倉と最初に会った工場棟の中にいた。意識が朦朧としだす中、床に高見沢のカードデッキを見つけた。その瞬間とてつもない絶望感が佐野を襲ったともに自分は、孤立化してしまったのだという現実を突きつけられた。
佐野「なんなんだよ...ほんと...」
彼は打ちひしがれた、その場に座り込んだ。もう残る体力もわずかだった。
「Final Vent (ファイナルベント)!」
急に響いたその音声は、佐野の逃亡の終わりを意味した。
浅倉「鬼ごっこはもう終わりだ...」
佐野を追ってきた浅倉は、少しイライラした様子だった。そしてベノスネーカーが地面から現れ、浅倉両腕を開き低い姿勢で佐野に向かって走り始めた。
浅倉「はっ!」
そう叫ぶと浅倉は高く真上に飛び、空中で一度宙返りをした。そして後方のベノスネーカーから吐かれる光を帯びた両足を上下に動かしながら佐野を捉えた。
佐野(こんなところで死ぬのか...俺...)
佐野にはもう抗うための力は残っていなかった。
佐野(俺は...ただ...幸せになり...たかった...だけなのに...)
浅倉によって消え去られる前に佐野は朦朧とする意識の中でそう呟いた。
「ドッーン!」
その爆発とともに佐野は葬られた。浅倉はまだ満足しておらず、彼自身の欲望の赴くまま次の戦いの場を探しに向かった。浅倉が去った後も炎は燃え続け、偶然そこに設置されいたガスボンベに引火した。それによって大爆発を起こした。
「ドゥーーン」「ドゥバーーン」
その爆発音は工場地帯から離れていた真司にも聞こえた。
真司「う、なんだあの爆発は!」
ミラーワールドに取り込まれてから10分以上が経っていた。



第1章「完」





著者より
私は生まれて初めてネットに小説を投稿しました。(小説捉えて良いかはわかりませんが)
設定や文脈などがおかしい箇所があると思うのですが、機会があればまた続きを投稿したいと思います。
最後まで読んでくれた方!ありがとうございます!!!

























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