二次創作小説(新・総合)

Re: Fate/Grand Order ~幻想風化大陸~(募集中) ( No.15 )
日時: 2019/10/06 23:17
名前: 餅兎ユーニアス (ID: Rxx2J2WJ)

 会話の後、レイシフト用の服に着替えた立夏は、管制室にあるコフィンへと乗り込む。今まではマシュも共にレイシフトを行っていたが、人理を修復した後は力を使えなくなった為、ダ・ヴィンチと共にサポートへと回っていた。

 マシュは元々、遺伝子操作により生み出された人造人間。その身体を英霊と融合させる半英霊デミ・サーヴァント実験の被験体だった。立夏がカルデアに来た頃に起こった爆発を期に、英霊『ギャラハッド』との未完成だった融合が成功し、デミ・サーヴァント『マシュ・キリエライト』として共に人理を救ってきたのだ。 本当は今生きている事さえ奇跡なのだが、人理を救う直前できっと、魔術では成し得ない奇跡が起こったのだろう。立夏はそう思っている。

 一人でのレイシフトに少し寂しさは覚えたが、立夏は表に出さなかった。



「先輩、頑張ってください!」

 コフィンが閉じる前、マシュが前に来て立夏を応援する。その瞳は希望の光に満ちており、とても頼もしいと思わせる姿だ。立夏はただ一言、「ありがとう、マシュ」と言う。その一言にマシュが笑顔になった後、コフィンは静かな音を立てて閉じた。





「これより向かうは、架空の歴史が記された天空の大陸!かなり大規模だから何が起こるかは分からないけど、私達は全力を以てサポートしよう!君の存在証明をパーフェクトにこなしてみせよう!
 気を付けて行きたまえ!では、レイシフトプログラム・スタート!」

 ダ・ヴィンチが大きな声で立夏に呼び掛ける。カルデアスの光が少し強まると、機械のアナウンスが始まった。

〔アンサモン・プログラム スタート。
霊子変換を開始 します。
レイシフトまであと3、2、1……〕

 コフィンに液体が満ち、レイシフトが実行される。
 何もかもが順調だ。大丈夫。













 だが。
 その全員の思いを裏切るかの様に、警報音が鳴り響いた。












〔エラー発生。魔術的干渉による介入を 検知。
レイシフトを 停止 します。
エラー発生。エラー■■■■■プロ■■■ 消滅リセット ■■■■工程■■■■■しま■■■〕

「!?」

 警報音に驚いたのもあるが、マシュが驚いたのはアナウンスだ。アナウンスがノイズによって掻き消され、聞きたくない嫌な単語が一瞬だけ聞こえた。マシュはダ・ヴィンチに声をかけられるよりも早く、管制室へと走っていった。ダ・ヴィンチが止めようとして、躊躇う。

「マシュ……!」
「報告します!何者かによる干渉が発生!こちらのデータ管理が全て遮断され、プログラムが書き換えられていきます!」
「何だって!?今すぐコフィンを開けて立夏君を!」
「駄目です、全て乗っ取られています!応答しません!」

 スタッフの言葉に、ダ・ヴィンチは唖然とする。
 自分がいたというのに、妨害を受けるなんて。その己への怒りもあったが、何よりも大きかったのは不安だ。
 平凡な一般人でありながら、人理を救うという大きな負担を背負わされ、挫けそうになりながらも世界を救った一人の人間の無事を、ただ何も出来ずに願うしかないという不安で思考が止まってしまったのだった。

「いや、何やっているんだ私!天才の名に傷が付くだろう!
 システムの奪還及び、再接続を!最大限を尽くし、出来る限りでだ!」
「了解!」

 すぐさま自分の心に鞭を打ち、ダ・ヴィンチは全員に呼び掛ける。彼女はコンピューターへと向き直る前に、管制室のコフィンを振り返って見つめた。その顔に、不安を浮かべて。

「立夏君……」





「先輩っ!」

 マシュの声とコフィンの扉を叩く音に、立夏は閉じていた目を開く。マシュが必死になってコフィンの扉を叩いているのが見えて、何かあったのだと理解した。
 内側からコフィンの扉を開けようにも、びくともしない。視界には何度も叫んでコフィンを開けようとするマシュと、大騒ぎになっている指令室の様子が見える。どうなってしまうのか。そう思った時、一つの電子音が響き渡った。
 警報音が、鳴り止む。

『人理を正す者達よ、人理を救いし者達よ、世界を護りし者達よ。
 告げよう。これは忠告では無い、宣戦布告だ。
 私の世界に、私の願いに踏み入るのならば、私は消し去る。その存在を、全てを。
 覚悟の問いは既に投げた。レイシフトの決定こそが、私への答えだ。
 そうだろう?藤丸 立夏。これが君の答えだろう?』

 一瞬の静寂を破ったのは、立夏が夢で出会った少女の声だった。躊躇いの無い、冷たい声。何故名前を知っているかなんて、疑問にすら思わなかった。ただ一つ思ったのは、夢ではなかったのだという確信。
 少女の問いに答えるより前に、少女の声は立夏を遮った。

『否。答えを聞く必要など無い。その行動こそが答えだ。
 その決意を聞き入れよう。私の世界へと誘おう。
 ……希望も、決意も、全部へし折ってやる。私の世界は、誰にも壊させない』


『──全工程 完了クリア
■■■■■オーダー 実証 開始 します。





 私の世界で踊るが良い、偽善者』




 少女の言葉を最後に、レイシフトは実行された。
 カルデア全体が閃光に包まれ、同時に少女の声も途絶える。





 これは、一人の人間の願いによる、存在しない人類史。
 青年は立ち向かうだろう。人理を正す為に。そして、

 その世界を、壊す為に。


【希少特異点 幻想風化大陸ハイラル
 レジェンドオーダー 開始スタート