二次創作小説(新・総合)

Re: Fate/Grand Order ~幻想風化大陸~ ( No.19 )
日時: 2019/10/18 01:52
名前: 餅兎ユーニアス ◆o0puN7ltGM (ID: DSoXLpvQ)

第一節 『命の大地』










 姉様。私は、確かにまだ子供です。

 だけど。私は仲間と旅をして、ようやく分かったのです。

 どうしてお母様がいないのかも。お父様が死んでしまった理由も。

 姉様が笑わなくなった理由も、全部。

 全部を知って、全部を受け入れて、私は帰ってきました。

 だから、私は…………………



 …………………姉様?大丈夫ですか?


 体調が良くないのならば、すぐに休んだほう………が……………


 …………え。…………どういう事ですか?


 冗談は、止めてください。姉様は何処ですか?


 貴女は姉様じゃないです。違う、貴女は違う。




 …………『貴女』は、誰なのですか?








 誰かの夢は、少女の声の問いを最後に、霧の様に消えていった。









 優しい風が草木の音を静かに鳴らし、立夏の頬を撫でて過ぎていく。心地よい優しさに微睡んでしまいそうになったが、立夏はハッとしたかのように目を覚ますと、倒れていた身体を起こした。

「……此処は……特異点?」

 立夏がいる場所は鮮やかな黄緑色の草原。一面に広がる草原の上を、数頭の馬達が駆け抜けていくのが見える。支障を来していない身体で立ち上がり、立夏は空を見上げる。空に光帯は無く、代わりに眩しい太陽が視界を光で覆った。慌てて目を腕で覆うと、ぼんやりとしていた記憶が一気に蘇った。

「……っ!そうだ、通信は!?」

 腕に取り付けている腕輪型の通信機器に応答を要求する。しかし聞こえるのは砂嵐の音だけで、他には何も聞こえない。暫くじっと見つめていたが、諦めたかの様に溜め息をついた。

「……マシュ、ダ・ヴィンチちゃん、皆……大丈夫かな」

 あの時、何者かによる乗っ取りを受けて、異質な方法でレイシフトさせられた事は覚えている。だからこそ、すぐ近くで助けようとしてくれたマシュ、指令室にいたダ・ヴィンチちゃんとスタッフの皆、そしてカルデアに召喚されたサーヴァント達が、心配なのだ。

「でもやっぱり、まずは移動しなきゃ……」

 通信も仲間も無いのならば、まずはあるいて特異点に住む者に話を聞かなければいけない。いつまでも突っ立っているのでは危険である。
 大きく深呼吸をして、しっかりと前を向く。立夏は心の中で決意を定めて、広大な大地を歩き始めた。