二次創作小説(新・総合)
- 天空の花嫁 第三章 サンタロ-ズの洞窟 ( No.3 )
- 日時: 2019/11/12 16:35
- 名前: ティアラローズ・レンドレット (ID: LN5K1jog)
サンタローズの洞窟
洞窟はじめじめしていて、少し寒かった。ミーティアは思わずマントを引き寄せる。
(何か松明になるものはないかしら?)
ミーティアは辺りを見渡して、やや太めの木の枝を見つけた。鞄の中からいらない布を出して、それをちょうどいい大きさにちぎった。それを先端に巻きつける。
「火球呪文!」
ミーティアは木の枝に火を点けた。ミーティアは松明を掲げて辺りを見渡した。ガサガサッと音がして、ミーティアが振り返ると、ドラキーの群れがミーティアを取り囲んでいた。
「そうだわ!」
ミーティアはさっきもらった卵をドラキーに向かって投げつけた。べちゃりと音がして、一匹のドラキーに卵がぶつかって割れた。ドラキーは不思議に思って顔に着いた黄色い液体をペロリと舐めた。
「キー!キーキー!」
どうやら相当美味しかったようで、顔を舐め回している。仲間のドラキーもそのドラキーの顔を舐めまくる。
「相当お腹が空いてるんだわ。ほら、こっちへおいでなさい。」
ミーティアはドラキーたちにさっきもらった卵を分けようと思ったのだ。鞄に入っていた小さな器を二つ取り出して、その中に卵を入れ、細い木の枝でかき混ぜた。
「ほら、皆で仲良く食べるのよ。」と言って、ミーティアは器を洞窟の壁際に置いた。
ドラキーたちは我先にと器の中の卵へありつこうとしている。ミーティアはそっとその場を立ち去ろうとした。
「キーキー!」と、一匹のドラキーがミーティアを呼び止めた。
「何?」
「キーキー、キーキー!」
どうやらさっきのことでお礼を言っているようだ。
「うふふっ。いいのよ。さ、貴方も仲間たちの所へ戻りなさい。」
「キー!」と、ドラキーはその小さな翼をパタパタと振って仲間の所へと戻って行った。
ミーティアは奥にちらりと見えた階段に向かって歩き出した。その際に何度もモンスターを見かけたが、襲ってくる者はいなかった。どうやらここの洞窟に住んでいる魔物は、まだ魔王が復活する前からいた良心を持つ魔物たちなのだろう。階段を下りると、ミーティアは大きな穴を見つけた。
(もしかしたら、薬氏の人が帰って来ないから、おば様たちはここへ来たんじゃないかしら?だって、薬を取りに来たのなら、すぐにでも薬屋へ行ってダンカンさんに薬を届けるはずだもの。それで、お父様がその薬氏を探しに?でも、そうならもうとっくに帰って来ている頃じゃないかしら?それに、出会ったっておかしくないもの。)
ミーティアは穴の下を覗こうとした。しかし、柵が邪魔で覗けそうにない。ミーティアは諦めて、別の道を探した。すぐに下へ下りる階段を見つけ、ミーティアは階段を下りた。
その途端、ミーティアは何かの気配を感じ取った。微かに人間らしき息遣いが聞こえる。ミーティアは急いでその方向へ向かった。
「!」
ミーティアは驚いて立ち竦んでしまった。そこには、大きな石に下敷きになったドワーフが倒れていたのだ。
「大丈夫ですかっ?」
ドワーフはうっすらと目を開けた。
「あぁ、良かった。この石をどけてくれないか?」
「えぇ、すぐに。」と言うと、ミーティアは力いっぱい石を押した。
石はとてつもなく重かったが、ミーティアは一生懸命押して、やっとのことで石をどかした。
「やれやれ、助かった!お嬢さん、ありがとう!これでダンカンの女将さんに薬を渡せるってもんだ!おっと、こうしちゃいられない!戻って薬草を調合しなくっちゃな!」
「それなら、私に任せて!」
ミーティアは呪文を唱えた。
「脱出呪文!」
オレンジ色の光がミーティアたちを包み込んだ。光が収まると、ミーティアと薬氏は洞窟の外に出ていた。
「あぁ、助かった。そうだ!礼がしたい。うちに寄って行くといい。」
薬氏はミーティアを自分の店へ連れて行った。タンスの中から手織りのケープを取り出してミーティアに渡してくれた。
「どうかもらってくれ。」
「でも・・・。」
「いや、もらってくれ。」
ミーティアは少し戸惑ったが、手織りのケープを受け取ってお礼を言った。
「ありがとう。大切に使うわ。」
「いや、こちらこそ礼を言うぞ。あのまま見つけてくれなかったら、飢えて死んでたさ。」
ミーティアが店を出ると、もう日が傾いて、山の向こうへ沈むところだった。
「いけない!急いで帰らないと!」
ミーティアは急いで家へ帰った。
「こんな遅くまで一体何処に行っていたんだ?」
「ごめんなさい、お父様。ちょっと散歩に行っていたの。」
「今度から気を付けるんだぞ。あぁ、すぐに夕食が出来るから、手を洗ってきなさい。」
「はい、お父様。」
ミーティアは急いで手と顔を洗ってくると、席に着いた。
「あぁ、美味しそう。」
いつものように軽い夕食を済ませると、ミーティアは二階へ上がった。寝間着を取ってくると、地下室に下りる。今日は行水をするのだ。深めのたらいにお湯を張って、体を石鹸でしっかり洗うと、ミーティアは湯に浸かった。湯から出ると素早く寝間着に着替え、エルトリオを呼んだ。ミーティアが使った湯はエルトリオが外に捨てに行くのだ。
「お父様、お先にありがとう。」
「あぁ、ゆっくり休むんだぞ。おやすみ。」
「おやすみなさい、お父様。」
ミーティアは二階に上がって自分のベッドに潜り込んだ。
翌朝、ミーティアはいつもより早く目が覚めたので、ゆっくりと身支度をした。テーブルに軽い朝食が置いてあったのでそれを食べると、いつものように顔を洗って髪を梳くと、三つ編みにした。白いローブを着て、紅色のマント羽織ると、ミーティアは下へ下りた。
「おはようございます、お父様。」
「あぁ、おはようミーティア。起きたか。薬が手に入ったので、女将さんとリュカ君は今日帰ってしまうらしい。しかし、ダンカンの様子も気になるので、二人を送っていこうと思うのだが、一緒に来るか?」
「えぇ、お父様。」
「よし、そうと決まったら、早速出かけるとしよう!」
エルトリオはミーティアとマダグレーナ、リュカを連れて家を出た。
「旦那様、どうかお気を付けて行ってらっしゃいませ!」と、サンチョが言った。
「あぁ、できるだけ早く帰る。」
サンタローズの村を出てアルカパの街へと歩き出すとリュカが言った。
「ミーティアのことは僕が守ってあげるからね。」
ミーティアは何も言わなかったが、嬉しかった。
「あっ、お父様!」
ミーティアは魔物の気配を感じ取った。エルトリオが頷く。ミーティアたちの前に立ちはだかったのはグリーンワームの群れだった。
「あ、危ないわ、リュカ。下がってなさい!」
マダグレーナは言ったがリュカは引き下がらない。
「止めなくて良いんですよ、奥さん。いい経験です。」と、エルトリオが静かに言った。
「火球呪文!」
リュカが勇気を振り絞って唱えたメラはグリーンワームに当たり、グリーンワームの一匹が消えていった。ミーティアも負けじと氷呪文を放つ。また一角ウサギが群れを成して襲いかかってきた。
「お父様、ここらの魔物ってしつこいわね。」
「あぁ。ミーティア、後はお前に任せた。一人で十分だよな?」
「えぇ、お父様!」
ミーティアは微笑して、自分よりも数の多い敵と向かい合う。
「エルトリオさん!それは酷すぎだよ!ミーティアちゃんがやられちゃいますよ。」
「うちの娘を嘗められては困りますよぅ。ちゃんとやれますから。」
マダグレーナは心配そうにしていたが、何もしないことにしたようだ。一角ウサギが背後からミーティアに襲いかかってきた。ミーティアは風のようにさっとよけ、持っていた剣で突き刺し、
襲いかかってきた一角ウサギに向かってミーティアはすかさず呪文を放った。
「凄い!まるで風のように速いよ!」
「やるわね!リュカもこんなに強くなっていたのね。」と、マダグレーナは感心して言った。
「ミーティアのおかげだよ。」
しばらく歩いていると、太陽がもう頭の上に来ていた。
「さぁ、そろそろお昼にしようか。あそこの木陰に行こう。」
ミーティアはバスケットからお昼のサンドイッチを取り出した。
「まぁ!美味しそうなサンドイッチですこと。」
ミーティアたちがゆっくりサンドイッチを食べていると、エルトリオが野兎を狩りで野兎を捕まえてきた。エルトリオは野兎の皮を綺麗に剥いでミーティアが薪に火球呪文で火を点けた。こんがりと色が付くとエルトリオは火を消して綺麗に切り分けた。マダグレーナはこの頃流れている噂話を始めた。
「このところラインハット城の人たちが次の国王をヘンリー王子にするか義理の母親の子供のデール王子にするか国内で対立があっているらしいよ。」
「ラインハット城でそんなことが・・・。」
エルトリオは顔を顰めた。ミーティアは何のことだろうと首を傾げる。
「どうかしたの?お父様はラインハット城には行ったことがあるの?」
「まぁ、何れ知ることになるだろう。」
ミーティアは首を傾げたがそれ以上聞かなかった。
「それにしてもこれは誰が作ったんだい?」
「サンチョだよ。」
「へぇ、サンチョさんがかい?器用なもんだね。」
マダグレーナは美味しそうにサンドイッチを頬張った。
昼食を食べ終わると、ミーティアたちは川の冷たく綺麗な水を飲んだ。
「さぁて、行くとしようか。」
しばらく道なりに進んでいると、今度はドラキーの群れが現れた。
「ミーティア!今度はリュカと協力して戦ってみなさい。」
ミーティアはリュカと顔を見合わせてから言った。
「はい、お父様!」
「はい、おじさん!」
ドラキーの群れがダンカンの奥さんに向かって襲いかかった。
「危ない!」
ミーティアは叫んだ。リュカがとっさにマダグレーナをその場からどかせた。
「氷呪文!」
ミーティアは先頭にいたドラキーを倒した。すると、他のドラキーたちがミーティアに襲いかかってきた。
「さぁ、よけていなさい!さもないと黒焦げになるわよ!」
ミーティアは火炎呪文を唱えて残りのドラキーたちを倒した。しばらく歩くと森に囲まれた街が見えてきた。
「あ、見えてきた!あそこだよ!」
リュカが街を指差した。
「指差しちゃいけませんよ、リュカ。お行儀が悪いでしょう?」
「はぁい。」
リュカはペロリと舌を出して笑った。