二次創作小説(新・総合)

AfterBreakTime③ 『異世界と道化師と』 ( No.28 )
日時: 2020/02/02 21:21
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: vKymDq2V)

サクヤの兄である『朱雀』アクラルが運営本部にやってきました。
そして、異世界を繋ぐゲートの行方…。ちゃんと直るんですかね?


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~運営本部 控室付近~



リピカ「ここが控室さ。参加者の待合室も兼ねているのさ」

サクヤ「兄貴、これです」

アクラル「あー…。これは酷い壊れ方してんな。お前ら本当に人間?『実は魔族』とか『実は神』だったりしない?」

チョロ松「しませんしません断じてありません!僕達は至って普通の人間です!!」

カラ松「そもそも神様ならこの本部にたんまりといるだろう!魔族も1人だけだがいるぞ!お前も神なんだから気配を感じれば『オレ達が人間だ』ってことが分かるだろう?!」

アクラル「ふぅん」



カラ松とチョロ松の言い訳を興味なさそうに聞き流し、彼はゲートを触ってみました。
ゲートは辛うじて形を保っていましたが、門の右側にぶつかった跡があり、ヒビが入ってしまっています。
見た目上は軽い損傷のようですが、アクラルは渋い顔。ぶつかり方が悪かったようで中身の損傷が酷いとのこと。



アクラル「直せるっちゃ直せると思うし、多分次の逃走中までには間に合うと思うぜ?でも、今まで通り『なんでも通せる』ようにはならないな」

サクヤ「そうですか…。参加者の通過は出来そうですか?」

アクラル「それなら大丈夫。ゲートを使うにも生命のエネルギーが必要だから、『3人』くらいまでが限度だろうけどな」

サクヤ「つまり、異世界からの見学や手伝いの要請は出来ないと見てよろしいですかね」

チョロ松「やっぱり僕達やばいことやっちゃったんだよ~…。あの時カラ松を残して帰らなきゃよかった!」

カラ松「仕方がないだろう!というかお前も最初は逃げる気満々だったじゃないかチョロ松」

チョロ松「あああーーーーー過去の自分を殴りたいーーーー燃やしたいーーーー!!!!」

アクラル「え?じゃ今燃やす?」(にっこり)

リピカ「雷で黒焦げもOKなのさ!」

サクヤ「兄貴が言うと洒落にならないのでやめてください。あとリピカさん、乗らないで」



ゲート、何とか直りそうで良かったですね。が、急ピッチで修復に取り掛かるらしいので次の逃走中から招待できるのは3名が限界になりそうです。
しばらくは少ない中での募集となりますので、どうかご容赦くださいね。
……それとは別にアクラルが双子をまじまじと見つめている様子。何か思うところがあったんでしょうか。



チョロ松「……あのー、そんなに真面目に見られると困るんですけど。僕達そんなに信用ありませんか?」

アクラル「だってゲート壊したもん。まだ信用してねえよ」

チョロ松「デスヨネー」

アクラル「それよりも。お前ら2人の着てる『カーディガン』から『神の加護』を感じるんだけど…。それ誰から貰ったの?」

サクヤ「…この際だから聞いておいた方がいいかもしれませんね。実は私も気になってました。私が彼らを雇った時には着ていなかったのですよ。
    人間の着るものではなかったのだとしたら、頂き物ですが申し訳ないのですが回収しなければなりませんし…」
    


アクラルが指摘したのは、カラ松とチョロ松が来ている『それぞれのイメージカラーのカーディガン』のことでした。
カーディガンから何か『神様の加護』を感じ、ずっと気になっていたというのです。それにはサクヤも同意しています。
しかし、彼らは何だか詳しいことを知らない顔をしています。どういうことでしょう?



チョロ松「申し訳ないんだけど、僕達も詳しくは知らないんだ。ここでの就職が決まった後、研修が始まる前日に急に家に荷物が届いてきて…」

カラ松「中を開けてみたら、メッセージカードと一緒にオレ達6人分のカーディガンが入ってたんだ。最初はサクヤ達が仕事着として贈ってくれたものだと思ったんだが、それだと6人分を用意する必要がないからな」

サクヤ「そもそもここでは『仕事着』は用意していませんよ。各々私服で仕事しています」

リピカ「一応本部の一員だって『腕章』は配られてるのさ。でも、それだけさ?」

アクラル「メッセージカードには何が書かれてたんだ?あと、宛名も知りたい」

チョロ松「待って!メッセージカードと控えなら荷物の中にあったと思う。すぐ取ってくるね!」



…サクヤに聞いた話だと、ここで就職が決まった松は『カラ松』『チョロ松』『十四松』の3人。俗にいう『保留組』と呼ばれている面々ですね。
しかし、贈られてきた宅配便に入っていたカーディガンの数は6つ。六つ子全員のカーディガンが用意されていたようなのです。
そういえば、本編中で何かおそ松が不満げな思いを抱いてましたね。それと何か関係があるのでしょうか…?
一同がそのまま待機していると、チョロ松は紙を2枚持ってきました。



チョロ松「持ってきたよー!」

サクヤ「それでは失礼して、拝見させていただきます」

チョロ松「かしこまらんでいい」

アクラル「そういうところも可愛いんだよな~♪」



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松野家の皆さんへ

就職おめでとうございます。これはこれから一緒に働く同志へのささやかなプレゼントです。
六つ子だと聞きましたので、折角なので6人分用意しました。これを着て一緒に働いてくれれば作った側としても嬉しいです。
一緒にこの世界を盛り上げていきましょう。

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リピカ「名前は…書いてないみたいなのさ」

アクラル「控えの方に書いてあるんじゃね?見てみようぜ」

カラ松「これだ」

サクヤ「…………ん?



    送り主『松田 翡翠』?
    (まさか、あのお節介な音の神の仕業ですか…?)」





~運営本部 住居区 オープンキッチン~



ソティス「……『あっぷるぱい』というのはこんなに美味な食べ物であったのか!実体がなかった頃は食事を取ることも出来ず、ただベレスの食べるところを見るだけじゃったからのう…。
     食べることという動作がこんなに新鮮なことだとは思わなかったわ!」
     
ベレス「ソティスは今まで実体がなかったからね」
     
マルス「これならいくらでも食べられちゃいそうだよ…。バンワドくんにも教えてあげれば良かったな」

MZD「ヴィルの料理は天下一品なんだぜ!グルメなミミやニャミの舌も唸らせる味だ!」

ヴィル「流石にそれは言い過ぎだMZD。…だが、そう言ってもらえると作った甲斐があるというものだな」



こちらは本部の東側にある『住居区』内の大きなキッチン。本部には仕事場である西側と、運営本部が寝泊まりしている東側の住居区が存在します。
そこでどうやらヴィルヘルムの手作りアップルパイを食べていたようです。ソティスは初めて感じる『食』という文化に興味を示しています。



ベレス「神様って食べなくても生きていけるんだったっけ」

ソティス「違うわ!先程も言ったであろう、わしはこの世界に来るまで『実体が無かった』のじゃ!だから歩き回ることも食べることも出来なかったのじゃ!
     …それに、目覚める前の記憶はあろうとも『食事』をした記憶が無くてのう。こういう経験が新鮮で仕方がないのじゃ」
     
マルス「みんなで食べるってのも、こういう場所じゃないと経験できないからね」

MZD「王族貴族は大変だねぇ」

ソティス「…ところで、じゃ。おぬしらに聞きとうことがあった」



アップルパイが余程おいしかったのか、ぺろりと平らげてしまったソティス。
彼女はフォークをMZDに向け言葉を発しました。



ソティス「あの六つ子に『神の加護』を与えたのはおぬしじゃな、音の神よ」

MZD「あっれれ、結構隠してるつもりだったんだけどばれてたかー」

ソティス「双子がこちらに住むようになり、あの着物を纏うようになってから彼奴等の気配がまるで変ったのじゃ。
     着物を纏っている時だけまるで『神』の力を授かっているような感覚…。あれはまさしく『加護』じゃ。
     そして、そんなお人好しな真似が出来るのはおぬし以外におらんじゃろう」
     
ベレス「ソティスも相当お人好しな神様だと思うけど」

ソティス「ええいうるさい!おぬしは黙っておれ!…まあ、これに関しては単にわしが気になっておっただけだから聞いただけじゃ。
     問題はもう1つじゃ。おぬし…『魔の力』を宿しているな?…それも、そこにいる魔族の強い力じゃ」
     
     

ソティスはMZDにフォークを向けながら言い続けます。
流石にその質問は堪えたのか、彼の表情が崩れます。後ろで作業をしていたヴィルヘルムの手も止まりました。
…しばらくの沈黙の後、諦めたように彼は呟きました。



MZD「…多分知ってると思うけど、オレは生まれた時から神じゃない。元々は人間だったのさ。
  そして、その時にかけられた呪縛によってオレは身体に『魔の力』を宿した。そのまま神様になったから、その魔力がずーっと残ってるだけなんだぜ」
  
マルス「神様になった経緯は前に聞いたから分かるけど、どうしてその魔力がヴィルヘルムさんのものになるんだい?」

ヴィル「私は…。気の遠くなるような昔に『罪』を犯したのだ。それも、永遠に消えることのない罪を、な。
    彼にかけてしまった呪縛は罪の『代償』だ。世界の転生ごときで消える様な代物ではない」
    
マルス「えっ…?」
    
ソティス「まだ何かを隠している様子じゃが…。ま、これ以上問うと『道化師』に反応されてしまうかもしれぬからのう。今はここまでにしておいてやるぞ。
     …わしも似たようなものじゃからな。気持ちが分からぬわけではない」
     
MZD「ソティス…」



―――この世界のMZDとヴィルヘルムは、自分達が住んでいた世界が混ぜられる前の世界…『ポップンワールドになる前の世界』からの付き合いです。
元々ボス曲を担当していることや、担当しているアーティストが酷似していることから仲が良いのは分かりますが、どうやらそれだけではないようですね。
しかし、今は語りたくない様子。ソティスもそれを察したのか、これ以上彼らの事情を掘るのを止めました。
このままの空気は駄目だとベレスが場を持ち直し、アップルパイの試食会は無事終わったそうな。
あ、このアップルパイもしかしたらまた牢獄ルームへの差し入れに入るかもしれませんね。私も食べられますかね?え、無理?





MZD「マールス。後で一緒に風呂入らね?」

マルス「珍しいね、いつもは1人で入ろうとするのに」

MZD「そこで教えてやるよ。オレの『呪縛』について。それから…あいつとオレのことについて、ちょっとしたおとぎ話を」

マルス「…………。…どうしてぼくだけに?」



MZD「んー。『カミサマの気まぐれ』ってヤツー?あ、他の奴らには内緒にしておいてね?」


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ゲートは何とか直りそうで良かったですね!それにしても、MZDは本当お節介でフレンドリーな神らしからぬ神ですね。
だからこそ、ミミやニャミと家族のように仲良しになり、魔族の上司や人造人間の部下の心をも動かしたんですが。
しかし―――彼らの過去と『道化師』ですか。いずれ、この世界に波乱が起きなければいいんですがね。