二次創作小説(新・総合)
- AfterBreakTime④『社長は疾風と共にやってくる』 ( No.37 )
- 日時: 2020/02/07 21:35
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: vzo8adFf)
灯焔氏の逃走中で『会社』というフレーズを聞くと、何となく怪しく聞こえてしまいますが。
新しい旋風がこのコネクトワールドに吹き荒れそうです。
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~赤塚区 松野家~
一松「(おそ松兄さんが捕まってから十四松にトド松、結構頑張ってるな…。ヒヒ、ゴミクズのおれには関係ないけど)」
居間にてテレビにぼーっと目を向けているのは松野家の四男、一松。
今回は規定で『3人まで』の推薦だった為推薦に漏れてしまい、かといって会場に応援しに行く元気も出ずこうして家で1人逃走中を見ています。
彼もしっかりとMZDから贈られたカーディガンを身に着けています。身に着けてからなんだか運が良くなった気がするんだとか。
一松「ヒヒッ、どうせ逃げ切っても他の松に取られるだけなのにね。どうしてあんなに頑張るんだか」
皮肉を言っても響くのは1人の部屋だけ。一松は何となく寂しさを覚えていました。
そんな折、ふと玄関から『プルルル』と聞き慣れた音色が。
すぐにガチャリという音が聞こえた為、おそらく松代が出たのでしょう。彼はテレビの方を向き直しました。
一松「電話…?いったい誰から?」
少し電話が気になるものの、まあ自分には関係ないだろうとテレビに目を向けたその時、松代が声をかけてきました。
松代「一松。アンタに電話よ」
一松「おれに…?誰から?」
松代「ハタ坊くんよ。ニート達と話したいから代わってくれって」
一松「(何の用だろう…?)」
電話の主はハタ坊だったようです。
不思議に思いながら電話を受け取り耳を近づけると、明るい声が電話口からこだましてきました。
ハタ坊「ジョー!一松くんだジョー!こんにちはだジョ」
一松「…何の用?おれ以外いないんだけど」
ハタ坊「じゃあ、みんな仕事かジョ?今日は一松くんも含めておそ松くん達にお話があったジョ。だから電話したジョ」
一松「クソ松達3人は仕事。おそ松兄さんとトド松は逃走中に出てるよ。…テレビ見てないの?」
ハタ坊「あー、そうだったジョー!ボクとしたことがすっかり忘れてたジョ。一松くん、今から運営本部に一緒に行ってほしいジョ」
一松「……え?」
ハタ坊「是非本部の人に『会いたい』って人がいるんだジョー。でもボク、カラ松くん達以外の人とお話したことが無いジョー。だから一松くんが一緒にいてくれた方が助かるんだジョ」
一松「いやいやいやいやおれのコミュ力分かって言ってる?ゴミクズですよ?いやゴミクズに失礼なほどコミュ力皆無ですよ?何言ってんの?」
ハタ坊「ジョー。でも今頼れるのは一松くんしかいないんだジョー。ボク達友達だジョ?」
一松「(直接行けばいいじゃん…)」
どうやらハタ坊が言うには、『本部で会いたい人』がいるから一緒に運営本部まで行ってほしいとのお願いでした。
しかし、彼には一切関係ないことで、更に六つ子の中でコミュ力が最も低い一松に頼むなどどこか不審です。そもそも今自由に動けるのが一松しかいない、という理由もありそうですが。
なにかと言い訳を付けてお願いを回避しようとする一松でしたが、そこはハタ坊の言いくるめが一枚上手。丸め込まれてしまいました。
一松「…ま、うちから差し入れ入れるって名目でついていくなら別にいいけど…。で、会わせたい人って誰なの」
ハタ坊「ボクとおんなじ『社長』だジョー!フラッグコーポレーションと同じくらいおっきな会社を経営してるジョ!しかも、1年で世界的に実力のある企業まで育てたスーパーエリートだジョ!」
一松「(ますますおれがついていく理由がないんですけどォ?!)」
ハタ坊「…沈黙は肯定とみなすジョ?ならお家までヘリを飛ばしてあげるから、一緒に行くジョ~♪」
トントン拍子(?)に話は進んでしまい、終いにはヘリを飛ばすと言われてしまった一松。
最早回避の余地がないと思った彼は、諦めて社長2人と運営本部へ向かうことにしました。
松代に本部へ向かうことを伝えると、彼女は差し入れとして赤塚まんじゅうを持たせてくれました。
松代「気を付けて行ってくるのよ、一松」
一松「…ヒヒ、死なないように頑張りますよ」
外に出ると、既に外見に見合わない黒いヘリコプターが既に降りてきていました。
そこから出てくるハタ坊と、金髪の20代後半っぽそうな男性。彼らは一松を見るなり笑顔で迎え入れます。
ハタ坊「ジョー。一松くん久しぶりだジョ!元気だったジョ?会えてうれしいジョー!」
一松「うん、久しぶり…。で、こっちの人が『会いたい』って言ってた人?」
ハタ坊「紹介するジョ!『ネクスト・コーポレーション』って会社の社長、『アシッド』さんだジョ!」
アシッド「こんにちはイチマツ。私は『アシッド』。彼の紹介通り『ネクスト・コーポレーション』という会社の代表取締役社長をしている者だ。よろしく頼む」
一松「よ、よろしくおねがいします…。(ネクスト…おれは知らないけど、凄い会社なんだろうなあ)」
アシッドと名乗った男と握手を交わした一松は、素早くヘリに乗り込みます。
ヘリコプターは彼が完全に乗り込んだタイミングで素早く宙を舞い、運営本部へと舵を切ったのでした。
~運営本部 入口付近~
石丸「さて、今日の見回りもおわ…うん?」
田中「どうした特異点石丸よ。何か気になる物体でも見つけたか」
石丸「何かが近づいてきている」
田中「何っ?!まさか…魔獣の類か?!フハハハハ、俺様の氷魔法が成果を見せる時がやって来たようだな!!!」
石丸「…田中くん。勢いづいているところ申し訳ないが近付いているのはただのヘリコプターだ」
田中「なんだ。そうであったなら早く言え」
運営本部の入口付近では、外を見回り中だった石丸くんと田中くんがヘリコプターを見つけていました。
田中くんは何か得体のしれないものだと大はしゃぎしていましたが、石丸くんに冷静にツッコまれ冷静さを取り戻しています。
2人がヘリコプターを見ていると、それは数刻も経たずに彼らの目の前へと降りてきました。
一松「…おしりいたい」
ハタ坊「クッションが硬かったジョ?次はもっと柔らかめの用意するジョー」
石丸「…ええと、逃走中運営本部に何か用かね?」
アシッド「ああ。代表とアポを取ってあるはずだ。入れてくれないか?」
田中「そういう話は聞いていないのだが…。まあいい、ついてくるがいい」
あれ?ちゃんと説明してないんですかサクヤ。
妙に納得していない2人ですが、代表と会いたいというアシッドをとりあえず本部まで案内することに。
本部の中に入ると、丁度エントランスを通りかかったサクヤ、アクラルと目が合いました。
彼女は金髪の男性を見ると、『あ』と思い出したように前に出ました。
サクヤ「あなたが『ネクスト・コーポレーション』のアシッド社長ですか?」
アシッド「如何にも。私がアシッドだ。そういう君はここの代表の?」
サクヤ「ええ。逃走中運営委員会本部代表、サクヤと申します。本日はご来場いただき光栄です」
アクラル「…………?」
アクラルは話についていけずぽかんとしています。
彼は、そこに通りかかったバンダナワドルディとマルクに話を振ってみました。
アクラル「なあ、サクヤと話してるあいつ誰?」
バンワド「誰のことですか?」
アクラル「全員…と言いたいところだが、あの金髪野郎。有名人だとしても分かんねえわ俺」
バンワド「あの金髪の…。ああ!『ネクスト・コーポレーション』の社長さん、アシッドさんのことですね!それでは不束ながらこのボクが説明しましょう!
設立して1年足らずで世界的進出を遂げた総合商社『ネクスト・コーポレーション』の代表取締役社長です。ジャンルにとらわれない自社製品を制作していて、確かな製品の質と庶民層にも手を出しやすいお値段とのバランスが良い商品が世界中で評判を得ているんです!
ちなみに、この逃走中本部のいくつかの装置もネクストさんの会社から導入している物なんですよ!」
アクラル「へー。つまり、とにかくすげえ奴ってことか」
マルク「ちゃんと理解してるのサ?お前は妹と違っておバカっぽそうだからな」
アクラル「失敬な!!7割くらいは理解したぜ!神だからな!!」
マルク「あの音楽の神様よりよっぽど神らしくないけどな」
3人が話し合っていると、別の通路からカラ松とチョロ松がやってきました。
彼らは一松を見つけると双方驚いた顔をして近付いてきました。
チョロ松「一松?!お前が1人で外に出るなんて珍しいね」
一松「ハタ坊に連れ出されたんだよ…。あ、これ母さんからお土産。はい」
カラ松「赤塚まんじゅうじゃないか!母さんに悪いことしたな…。一松は元気でやってるか?」
一松「ヒヒッ…おれに『元気』とか聞いても無駄でしょ。でも元気でやってるよ」
ハタ坊「カラ松くん、チョロ松くん。こんにちはダジョー。就職決まったって連絡来た時はビックリしたジョ」
カラ松「それはオレ達も同感なんだ…。ま、でも就職したおかげで心機一転頑張ってるさ!」
ハタ坊「2人とも前よりも良い顔になってるジョー。これも就職したおかげだジョ?」
チョロ松「そうかなあ?確かに自覚は出てきたけどね」
サクヤ「…で、そちらの『道化師』の調査で何か分かったことはあったのですか?」
アシッド「いや、それについてはさっぱりだ。どこを蓑として隠れているかまるではっきりしない。神々についても同じだな。全く動きが読めぬ」
サクヤ「そうですか…。わざわざご足労いただいたのに、こちらも大した成果を話せなくて申し訳ありません」
アシッド「いいんだ。それはそれだからね。それに、私は今回は『逃走中』というものがどんな催しなのか見学に来ただけなのだから」
サクヤ「そういえばそうでしたね。ならば、観客席に案内します。誰か案内を頼めますか?」
マルク「あ、それならボク達が行くのサ!そこの紫色のカーディガンの松も一緒にどうサ?」
一松「えっ おれ?おれは……」
カラ松「打ち上げで猫と戯れられるかもだぞ」(ヒソヒソ)
一松「行きます」(キリッ)
チョロ松「ちょろすぎる!!!」
どうやらアシッド、今回は逃走中の見学に来ていただけのようですね。悪い人ではなさそうです。
ですが、サクヤと話していた『道化師』…。MZDとヴィルヘルムの過去にも絡んできそうですが、社長である彼とも深く関わりがある存在なんでしょうか。
マルクとバンワドの案内に合わせ、青緑紫の松とアシッドは観客席に消えていきました。
アクラル「なーんかアイツ人間らしくないんだよな…。気配というかなんというか」
サクヤ「彼も神ですよ…。しかも、えむぜさんより階級が上の神です」
アクラル「やっぱりやべえ奴じゃんあいつ…」
アシッドは神様なんですか…?この世界に神様どんだけいるんですか。
しかも、あのMZDよりも上の立場の神様だそうで。本人はあまりあけっぴろげにはしていなさそうですが。
サクヤ「気付いたとしても、言いふらさないでくださいね。隠してるっぽいんで」
アクラル「わ、分かった。…なあ、もう一ついいか?」
サクヤ「なんでしょうか?ハグしたいというお願いならお断りします」
アクラル「違う!音の神と魔族のコンビ、今どこにいんだ?さっきから気配感じねーんだけど」
サクヤ「えむぜさんとヴィルさんですか?えーと、確か『手掛かりが見つかったかもしれない』とかで、先程魔界に出掛けられました。しばらくは帰ってこないでしょうね」
アクラル「…手掛かり?アイツらも何か追ってんの?」
不思議そうに首をかしげるアクラルに、彼女は悲しそうな顔で返しました。
サクヤ「…ある意味彼らも『運命』に囚われた存在であります。この世界でくらいそれを忘れてもいいと思うんですが」
アクラル「神と魔族、双反する存在なのに『兄弟みたいに超仲良し』ってのも妙に気になるしな…。単なる『ラブ&ピース』ならいいけどさ」
サクヤ「…そうであればいいんですがね」
険しい顔でエントランスの入り口を除く彼女の顔には、複雑な表情が浮かんでいたそうな。
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『ネクスト・コーポレーション』社長アシッド、そして『道化師』の存在…。
青龍と朱雀の兄妹の不安は的中してしまうのでしょうか…。天の声も心配でございます。