二次創作小説(新・総合)
- ABT⑧『風の公女と滅びし暗殺者』-1 ( No.106 )
- 日時: 2020/03/30 22:10
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: zh8UTKy1)
帝竜の鱗粉を何とか無効化することに成功し、討伐は13班に任せることにした運営本部。
そんな彼らの元に1本の電話がかかってきます。これが―――また、出会いの始まりを告げるとは知らずに。
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~メインサーバ~
MZD「あーーー。つっかれたーーー。ミミニャミの冒険を裏から勝手にサポートしてる時より精神的にきつかったわー」
ヴィル「相当お疲れのようだなMZD。…だが、それだけの大役を無事果たしたということだ。誇るべきことだと思うぞ」
MZD「あんがと。なんつーか素直に褒められたの久々だからむず痒いんですけど~?」
アカギ「素直に受け止めといた方がいいと…思う」
帝竜の後始末を13班とキリノに任せ、MZDはテーブルに顔を埋めます。完全にお疲れモードの彼をヴィルヘルムが優しく激励していました。
そんな彼らを見守りながら、サクヤは安心したようにこう告げます。
サクヤ「…それにしても、今回は叢雲機関の協力が無ければ帝竜の封じ込めは完全に不可能でした。何故道化師共がお守りに邪な力を込められたのかが疑問ではありますが…。それは後々追跡していくことにしましょう。何にせよ、今は無事にミッションを全て終わらせられたことに感謝すべきですね」
ソティス「一時は流石に肝が冷えたぞ…。ゲームは残り5分弱、男の道化師の気配は消え、女も自信喪失して帝竜に勝手をさせておるようじゃし…。エリアのことはもう彼奴等に任せてしまってよいじゃろう」
サクヤ「そうですね。ぼちぼち表彰式の準備にも映らねばなりませんし…。私達もOP会場へ移動するとしましょう。石丸くん、申し訳ありませんが罪木さんにしばらく彼の様子を見ていてもらえるよう伝言を頼めますか?」
石丸「無論だ!引き受けよう」
ゲームも残り5分。コンフュカッターが全て起動出来た為、逃走者にとって一番厄介な鱗粉が無効化されています。更に13班の追い込みにより、帝竜は既にボロボロ。あの渋谷に平和が戻ってくるのは時間の問題でしょう。
MZDが既にナビの任から外れており一緒に表彰式の準備をしに行くと言い始めていることからもそれが読み取れます。…何とか退けられて、本当に良かった。これがウイルスの類だったらもっと大変なことになっていましたからね…。
運営本部の殆どがメインサーバを後にし、残っていたうちの1人であるマルスが部屋を出ようとしたその時、彼の腰辺りから振動が。電話のようですね。
マルス「あれ、こんな時に電話…?誰からだろう」
ベレス「出てみてはどうかな?もしかしたら次回の参加者からの連絡かもしれないよ」
マルス「そうするよ。―――もしもし、マルスです」
?????『―――えっと、この板を耳に当てればいいのかな?…うん、ありがとう。もしもし、エリウッドです。マルス王子で間違いないかな?』
マルス「エリウッド殿…?!一体どうしたんだい?」
なんと、かけてきたのはエリウッド!彼は次回逃走中の参加者の1人です。
電話の向こうから知らない声が聞こえてきている為、どうやらヘクトル、リンディス以外の誰かと一緒に行動しているようですね。
エリウッド『実は1つ、確認事項があってね。リン、そっちにまだ着いていないかい?』
マルス「そんな連絡は聞いてないけど…。何かあったの?」
エリウッド『いや、実は…。そっちに向かう途中まで3人で一緒に行動していたんだ。でも、途中でリンとはぐれてしまってね…。いくら探しても見つからないから先に進もうとヘクトルと決めて、その先で別の人達と合流して、この『電話』という物を借りて様子を聞こうと思ってね』
マルス「なるほど…。もし何者かに襲われていたら心配だね」
エリウッド『リンの強さは僕達も十分知っているし、あまり過度な心配はしていないと思うけど…。もうすぐ本部に着く予定だ。ロイはまだ逃走中のゲームで残っているのかい?』
マルス「あ、うん。まだ逃走者として生き残ってるよ」
エリウッド『そうか、頑張っているんだね…。僕も彼の雄姿を見たいから、早くそっちに向かうとするよ。それじゃあ、後でね』
ぷつり。通話が切れる音と共に振動を鳴らしていた携帯電話の動きが止まりました。
どうやらリンディスがこちらに向かっている途中で他の2人とはぐれてしまい、先に到着していないか連絡を寄越したようです。
しかし、本部では彼女が来たという連絡は受け取っていません。
気にはなりますが本部の仕事をさぼってはならないと、その不安を心にしまい込み彼はベレスと一緒にメインサーバを後にしました。
…彼女に一体何があったというのでしょうか。何事も無ければいいんですがね…。
~運営本部付近 荒地~
リン「エリウッドとヘクトルとはぐれてから道を迷ってしまったみたい…。1回でも後ろを振り向いておけばよかったんだわ。あーもう!」
そう嘆きながら荒地を歩くスリット服を着ている緑髪の少女が1人。彼女がエリウッドの言っていた『リンディス』、通称『リン』。次回逃走中の参加者の1人です。
勝気で男性にも引けを取らない程活発な性格の彼女。どうやら2人を置いて先に進んでしまった結果、1人知らない場所ではぐれてしまったようなのです。しかし、今更後悔しても遅い。進んでいれば必ず目的地は見える!と決断し見知らぬ土地を歩いていましたが……見えるのは原っぱと荒野だけ。運営本部らしき近未来的な建物は全く見えてきません。
リン「エリウッドと連絡を取ろうにもこんなところで鳩を飛ばすわけにもいかないし…。やっぱり、黙って『運営本部』って場所が見えそうな場所まで歩くしかないわよね」
ファイアーエムブレムの世界では『電話』なんてハイテクな道具はありません。ましてやリンディスは魔法が使えない兵種である為、誰かと連絡を取ろうにも取れない状況が続いていました。
立ち止まっていたって仕方がない、そう決めた彼女は本部を目指してまた歩こうと足を前へ動かし始めました。
……しかし。そんな彼女を狙うかのように、『影』が襲い掛かってきました。
リン「……何奴っ!!」
彼女が素早く刀を構え、襲ってきた影に切りかかります!
スピードのある一撃は『影』を一瞬にして斬り裂き、彼女は『ダメージを与えた』と確信を持ちました。
襲い掛かった相手―――いや、見えてきた『魔物』の姿を見て彼女は改めて刀を握り直します。
リン「こんな時に魔物、ね…。いいわ、かかってきなさい!私の剣の錆にしてあげるわ!」
『はぁぁぁぁぁ!』と、魔物に素早く剣を振るリンディス。魔物はその動きについて行けず、次々と流れるように剣のダメージを負って行きます。
余りにも手ごたえが無い。彼女は少し違和感を感じていましたが、倒すべき敵としてとどめの一撃を入れようと刀に力を込めました。
リン『はぁーーー……っ、――――――斬っ!!!』
声にもならない魔物の悲鳴を浴びながら、リンディスは勢いよくとどめを刺しました。
彼女が鞘に刀を仕舞ったと同時に、魔物は地面へと屈し、動かなくなりました。
リン「ふぅ…。とんだ災難だったわね。さて、急がないと!」
違和感を感じる程に弱かったが、魔物に構っている時間はない。リンはそう思い本部への道を急ぎます。
しかし―――『魔物』はまだ、死んではいませんでした。まるで『死後の身体を操られているかのように』再び復活し、背後から彼女に襲い掛からんと爪を伸ばします!
リン「―――嘘……仕留めたはずなのに……!!」
リンディス、仕留めたはずの魔物が復活したことに驚きを隠せていませんでした。
素早く刀を出そうとしましたが一瞬遅れ、爪は彼女の喉元に―――
リン「(駄目―――間に合わない―――!)」
―――喉元に、刺さりませんでした。
魔物の背後に見えたもう一つの『人影』。それは―――ガスマスクをしていました。
『邪魔だ。失せろ』
ガスマスクから漏れた小さな声と共に、魔物は彼女の視界の遠くへ吹っ飛んでいきました。