二次創作小説(新・総合)

打ち上げ ① ( No.140 )
日時: 2020/04/06 22:06
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: hZy3zJjJ)

サクヤ「それではこれにて発表を終了したいと思います。参加者の皆様、どうぞごゆっくり打ち上げをお楽しみください!」



今回も無事MVPと作者陣の発表が終わり、各々打ち上げを楽しんでいます。
…流石にカオス軍団の襲撃はないようですが、カービィがいる為油断は出来ません。気を付けていきましょう。
一部既に睡眠をしに行っているメンバーが既にいますが、気にしないでおきましょう。

パーティを楽しんでいる参加者を嬉しそうに見守るサクヤの元に、慌てた表情のMZDが現れました。



サクヤ「およ、えむぜさん。随分と珍しい表情をしてどうしたのですか?」

MZD「いや、次回の参加者のことなんだけど…。まどかが仕事が次の逃走中の日と重なって、参加出来なくなったって聞いてさ。代役誰かいる?」

サクヤ「なるほど。それは困りましたね…。今から参加者を募るというのも調整スケジュール的に厳しいですし…。何かいい案はないものでしょうか」



あらら。どうやらポップン側の参加者でスケジュールの都合で参加出来なくなった人が出て来たみたいです。
あれ?次回参加者と辻褄が合わない?…それは視聴者の皆様と天の声だけが知っている情報です。しーっ、ですよ。しーっ。
しかし、既に次回の逃走中の計画は完成しています。今から代理を募っても時間が無い…。2人は困り果ててしまいました。
首を傾げる2人が心配だったのか、ヴィルヘルムが彼の背後に現れこう尋ねてきました。



ヴィル「どうした、神妙そうな顔をして。次回の参加者絡みか?」

MZD「そーなんだよー。実は、次参加出来なくなっちゃったヤツが出てきちゃってさ」

サクヤ「今から急いで募ろうとも時間もありませんし、何かいい案はないか考えていたところなのですよ」

ヴィル「…………。手頃なのがいるではないか」

MZD「手頃?」



悩む2人の内容を聞いて、いとも簡単にそう告げるヴィルヘルム。
困惑した表情のままMZDが聞き返すと、彼は指に魔法を込めて『ある1点』に放ちました。
すると……よく聞き覚えのある悲鳴と共に、近くに褐色の青年が現れました。



ジャック「上司!魔法を使って俺を移動させるなっていつも言ってるだろ!俺魔法の抵抗力はお前のせいで低いんだから!」

ヴィル「そのように調整しているのだから当たり前だ。…MZD、代理が必要だと言ったな。こいつを次回の逃走中に参加させてほしい」

ジャック「は?!」

MZD「確かにジャックは運動神経も良いし、暗殺者としての判断力にも優れてる。チームワーク力がちょっと欠如してるけど、参加者としては申し分ないパフォーマンスを持ってる。でも、いいの?」

ヴィル「ああ。こいつに『心』が生まれた後どう動くのか…『逃走中』を通して確かめてみたくなってな」

ジャック「さっきから聞いてりゃ相変わらず道具みたいに扱いやがって…。俺はお前の命令なんか聞きゃしねー。そんなテレビに顔が映るような催しになんか、絶対に参加しないからな!!!」

ミミ「えーっ?楽しいよ?参加しようよー」

ニャミ「ジャックが急に何かに引っ張られたと思って追いかけてきたけど、引っ張った正体はヴィルさんだったんだね」



なんとヴィルヘルム、ジャックを次回参加者の代理として推薦してきました。
いつも参加者の交渉やアポは全てMZDに任せっきりの為、たまには自分もと思ったのでしょうか。しかし、当の彼は上司の命令など聞きたくないと拒否しています。
そんな彼の元にミミニャミも現れました。急に消えた彼を追いかけて来たようです。



ジャック「そもそも、代理ならこいつらを使えばいいじゃねーか。テレビに引っ張りだこなんだろ」

ニャミ「そうしたいのは山々なんだけど、あたし達1回目の時に参加してるからあと向こう3回くらいは参加出来ないんだよねー。出来るだけ色々な人に参加してほしいってサクヤさんの意向でさ」

サクヤ「一部の方々が繰り返し参加しても、新鮮味が味わえませんからね。それに、様々な方々が参加出来る『貴方も参加できるかもしれない身近な逃走中』というのを私は最終目的にしておりますから。…すみませんが、ミミニャミさんは彼女の言った通り参加出来ません」

ミミ「でもジャック、ここに君を狙う人はいないし…。それに、楽しいよ逃走中!ハンターに追いかけられるスリルとか…ミッションの謎を解いていく快感とか…。それに、逃げ切ったらドーパミンぶっぱだよぶっぱ!」

MZD「あの感動をそんな言葉で表現するなミミ。…お前が承諾してくれないと、次の逃走中のスケジュールが崩れてヤバいことになるんだよね。オレとしても、参加してくれたら嬉しいんだけど…。
   ま、嫌って言っても上司が無理やり参加させるとは思うよ?でも、オレはあくまでもお前の意志を最優先で決めようと思う。…もし力づくで参加させようってんなら本気出して止めるから安心して?」

ニャミ「笑顔で神の力上げないでよ!」



出ようよ!楽しいよ!と逃走中に誘ってくるミミニャミ。
ちなみに、ジャックは上司とMZDに関しては大の苦手ですが、ミミニャミやハテナとは普通に仲良しです。更に、ミミのことが…これはまだ秘密にしておきましょう。
そんな彼女達に薦められ、『絶対に出ない』という気持ちが揺らいでいるジャック。MZDの優しい言葉も後押しします。



ヴィル「…お前がどう思おうが私には関係ないが、これだけは言っておく。自分の意志を得た以上、『心を学べ』。今は分からないことでも、他人との触れ合いを通じ理解出来ることも増えて来よう。…それを踏まえて、私はお前に次の回に参加しろと言っているのだ」

ジャック「お前らしくないな。どういう心の変わりようだよ」

ヴィル「私もかつては『心が無い』存在だったからな。だが…MZDと再会し、ミミやニャミと出会って、匿われ、同居し…私は変わった。彼らが変えてくれたのだ。そして、今の『心を得た』私がいる。私と同じようになれとは言わぬが、お前もミミやニャミとの出会いを通じて変わりつつある…。だからこそ、学んでほしいのだ」

ニャミ「そうだよ!ジャックはもう心の無い暗殺人形じゃないんだから!あたし達が保証するよー!」

ミミ「わたし、見てみたいな!ジャックがハンターから逃げるところ。絶対かっこいいよ!わたし惚れちゃうかも~」

ニャミ「お~?ミミちゃん言いますな~。もしかしてプロポーズですか~?」

ミミ「な、なななななな何を言っているのかなニャミちゃん?!」(赤面)

MZD「オイオイ、惚気話ですか~?」



かつての上司からは考え付かないほどの言葉がポンポンと口から出ている状況にジャックはただ驚くばかり。
確かに彼は同居こそしていませんでしたが、ポップンワールドでのミミニャミの家にはよく遊びに行っていました。5人でハイキング、ピクニックとばかりに遠出をしたこともあります。…しかし、そのどの記憶を辿ってみても、今の上司の柔らかい表情は見たことがありませんでした。
本当にこの3人が彼を変えたのだろうか。いつしか彼の考えはそう変わります。そして―――彼は、1つの決断をしました。



ジャック「分かったよ。ミミやニャミの誘いなら断るわけには行かないからな…。次の逃走中、俺が代理で出る」

MZD「マジ?本当?……助かる、ありがとう!これで余計なスケジュール調整とかしなくて済むわ!」

サクヤ「…承知しました。では、次回の逃走中の参加者一覧に追加しておきますね。ご協力、感謝します」

ジャック「別に神々の言うことに乗ったわけじゃない。『俺の意志』で決めたことだ」

サクヤ「それでいいのですよ。…逃走中を通じて、何か掴めることがあるといいですね。ジャックさん」



なんと、まどかの代わりにジャックが逃走中に参戦!これは面白いことになりそうです。
…何はともあれ、4人と再会できてどこか嬉しそうな表情のジャック。これは見守る保護者2人も口角が上がります。





―――そんな穏やかなムードで進んでいた打ち上げ会場に、1つの不穏な『声』が。
その声が、運営本部をまた混乱に陥れる入口だとは、まだ誰も思っていませんでした。



罪木「あのぉ…すみません、今いいでしょうかぁ…?」

サクヤ「およ、罪木さん。一体どうしたというので…もしかして、紅髪の彼が?」

罪木「はい…。打ち上げ中申し訳ございませぇん…。実は、その彼が目覚めまして…。一回お知り合いの方とお話してほしいなって思ってこちらまで足を運んだんですぅ…」

クレア「グレンさんが起きたんですか?!」

チタ「マジ?!起きた?!会いたい!会わせて!!」

サクヤ「落ち着いてくださいお二方。とりあえず、打ち上げはアカギに任せて私達も様子を見に行きましょう。クレアさんとチタさん以外に一緒に行きたい方はいますか?」

アクラル「俺行っていい?あいつの火の力、なーんか見たことあるんだよなぁ…」

MZD「もしかしたら『脳に異常が起きた』ってのが人為的なものの可能性もあるし、一応オレもついてっていい?」

サクヤ「分かりました。罪木さん、行きましょう」

罪木「は、はいぃ!」



会場に現れたのは罪木さん。どうやら重症だったあの紅い男性が目を覚ましたようです。
一部のメンバーを引き連れ、いざ男性の元へ。無事であればいいんですが。





~医務室~



サクヤ「失礼します、サクヤです。入ってもよろしいでしょうか」

コハク「おーう。構わねェぜ」



コンコンと3回丁寧なノックをし、中からコハクの声を確認した後5人を先に入れ、最後に彼女も部屋に入り後ろ手に戸を閉めました。
そして、チタとクレアは不思議そうに目線を合わせている男性に駆け寄ります。



クレア「グレンさん!!大丈夫ですか?!私が分かりますか?!」

チタ「チャングレ!!そんな不思議そうな顔すんなって!オレだよ、チタ!分からないの?」



2人の叫びにも彼は不思議そうな顔をして首を傾げるだけ。
後ろで見守っていた3人は、『とある考え』に至ります。



MZD「なぁサクヤ、これって…」

サクヤ「…………」

アクラル「『そっち』かー…」



心配そうに見つめる3人と、必死に声をかける2人に、『彼』は言い放ちました。



























『君達は、一体誰なんだ?』



打ち上げ ② ( No.141 )
日時: 2020/04/06 22:08
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: hZy3zJjJ)

「君達は、一体誰だ」その言葉は、自分達の名前を呼んでくれると信じていた2人の心に深く突き刺さりました。
対して言い放った張本人は唖然とする2人を見てまだきょとんとしています。…そんな彼らを見てられなかったのか、コハクがその場を遮りました。



コハク「なるほどなァ。こりゃ『記憶喪失』だ」

罪木「脳に異常があるって、記憶が無くなっていたんですかぁ…?!」

サクヤ「直接渦に巻き込まれた影響…と、考えたいところですが。実はそうもいかなくなって参りました」

罪木「どういうことですか?」

サクヤ「もし渦に巻き込まれた『だけ』であれば、クレアさんやチタさんのように軽傷で澄むはずです。しかし、彼は発見されていた時に危篤状態になりかねない程の重傷を負っていた…。つまり、渦に巻き込まれた際に『人為的に何かをされた』可能性の方が高いのです」

クレア「『人為的に何かをされた』…?誰かに攻撃を受けた、とかですかね…?」

MZD「単に攻撃を受けただけ、ならまだいいんだけど…。そうじゃないんだろ?コハク」

コハク「あァ。脳ン中見せて貰ったけど、相当ヤベェコトになってた。まるで『コイツにまつわる記憶の回路だけがすっぽり抜けちまった』みてェに記憶の回路がねじれてやがる」

アクラル「…ってことは…。『誰かにこいつに関する記憶を抜き取られた』ってことかよ?!」

サクヤ「兄貴にしては鋭い考察ですね。彼が自分の名前を呼ばれてもきょとんとしているあたり…そう考えて間違いないでしょう」

チタ「そんな…チャングレと過ごした記憶も、出会ったコトも、ゼンブ忘れちゃってるなんて…」

クレア「2回目、ですね…」

サクヤ「2回目?彼は以前にも記憶喪失の経験があるのですか?」

チタ「実は…」



『2回目』という言葉に疑問を持ち質問を投げかけるサクヤ。そんな彼女に、うつむきながらチタは彼が記憶喪失になった原因を話しました。
彼の名前は『グレン』。紅土の国・ルブラムのかつての皇子でした。しかし、彼のいた国で内乱が発生し―――彼は瀕死の重傷を負い、1回目の記憶喪失となって飛行島に流れ着いたという訳です。
そして、彼は1度自分の記憶を朧気ながら取り戻していました。だから、今回2人が『2回目』といったんですね。

チタから大体の話を聞いた彼女は小さく頷き、優しくグレンに話しかけました。



サクヤ「グレンさん、ごきげんよう。私はサクヤ、ここの施設の責任者です」

グレン「私は…『グレン』というのか?」

サクヤ「どうやらそうらしいですね。私は貴方とは初対面ですし、お友達が『グレン』と言っているのならば恐らくそれが貴方の名前ではないかと思いまして。もし違いましたら仰ってください」

グレン「いや…彼らが言っているのであれば間違いないのだろう。何故だろう…彼らのことは、不思議と信用できるんだ。私の中で…」

クレア「グレンさん…」

サクヤ「そうですか。本能で彼らを『仲間』だと認識しているのかもしれませんね」

アクラル「そんじゃそのよしみで俺らもこれから『仲間』ってことで!なーエムゼ!」

MZD「記憶喪失のヤツにそんな簡単に話が進むわけないだろ。…でも、記憶が無いままお前の拠点も分からずに投げ出すわけにもいかないしなぁ…。クレアとチタ共々しばらく預かる方向性になるのかな?」

サクヤ「元々そのつもりです。…ですが、この状態だと彼を『逃走中』に参加させることは無理でしょうねぇ」

クレア「えぇーっ?!グレンさんは参加出来ないんですかー?!」

グレン「…………?」

チタ「えっと、チャングレ。『逃走中』ってのは―――」



チタがグレンに逃走中について説明している傍ら、残り1人をどうしようかと話し合う3人。
…グレンが自分のことについての記憶を奪われてしまった以上、そんな状態で逃走中に参加させるわけにはいきませんものね。クレアもチタも残念そうに眉を顰めましたが、理屈は分かっているのかそれ以上は何も言いませんでした。
軽く彼から説明を聞いたグレンは、少し考える仕草をした後サクヤにこう言いました。



グレン「もしよかったら…参加者側としてではなく、運営側として手伝わせては貰えないだろうか」

サクヤ「えっ?それは凄く助かりますが…体調は大丈夫なのですか?ご無理をなさらなくても…」

グレン「いや…。私が耐えられないんだ。このまま客人としてここに世話になっていても迷惑だろう?ならば、私が出来ることはやりたい。そう考えたんだ」

アクラル「…なーんかどっかで聞いたセリフだなー」

MZD「責任感の強いヤツなんだな、お前。…でもいいんじゃないの?もしかしたら働いてるうちに何か思い出すきっかけとかあるかもしれないしさ!」

サクヤ「それも一理ありますか…。ならば、許可しましょう。次回から私達の仲間として働いてもらうということで…それで、大丈夫ですか?」

グレン「私に出来ることならば、何なりと言ってくれ」



どうやらグレン、記憶が無いなりに自分で出来ることをやりたいと申し出てきました。
自分のことが分からないのに他人の心配とは…彼、実はマルスのように聖人だったりするんですかね?



クレア「私はそうだと信じてますけど、昔のグレンさんを知りませんからねぇ」

チタ「戦わせなけりゃダイジョブダイジョブ」



た、戦わせなけりゃいいって…。もしかして戦闘狂とか?うーん、あんな優し気な表情からは見えてきませんが。
そんなこんなで1枠またもや空いてしまった逃走者の枠を埋める為3人が話を進めようとしたその時、医務室の扉が勢いよく開かれました。



サクヤ「アカギ、どうしました。それに医務室の扉はそう勢いよく開けるものではないですよ」

アカギ「…サクヤ、お前に通信が入ってる。『バンズ島』ってところから。…心当たり…ある?」

サクヤ「バンズ島…?」



聞いたことのない名前に首を傾げるサクヤ。
しかし、2人は知っているようで騒がしくサクヤに告げます。



クレア「バンズ島って!!最先端の技術が集結されているあの情報の島ですよね?!そんなところから通信が来てるんですか?!」

チタ「チョーハイテクでマブいアイテムがジャラジャラあるってユーメーな島なの!もしかしたら俺らのダチいるかもしれねーし、レッツらメインサーバ!」

サクヤ「お、押さないで下さい~!」



若干興奮気味な2人。サクヤは慌てながらも2人に引っ張られていってしまいました。
残された男3人衆は、賑やかさが遠ざかっていくところを見守りながらこう呟いたそうな。



MZD「つい最近飛ばされてきたとは思えないほどにフットワーク軽いよなあの2人」

アカギ「まあ…それくらいメンタルが強いってことで…いいんじゃない…かな。エムゼ達も来てくれる?」

MZD「おう。グレン、お前はもうちょっとここで休んでいけよ。手伝うのは次の逃走中からでいいからさ」

アクラル「今は客人扱いだしな!ゆっくりしてけよー!」

グレン「あ、ああ。恩に着る。では…もう少し、眠ろうか」

罪木「うふふ、ゆっくり休んでくださいねぇ」



グレンの寝息が聞こえたのを見守り、3人もメインサーバへと急いだのでした。









~運営本部 メインサーバ~



サクヤがメインサーバに到着すると、既に残っていたメンバーが通信を繋げてくれていました。
彼女は軽くお礼を言い、目の前のモニタに向かって声を発しました。



サクヤ「遅れて申し訳ございません。こちら運営本部、責任者のサクヤと申します。貴方が通信を繋げて来た方ですか?」

ルーファス『ご丁寧にどうもありがとうございます。僕の名前はルーファス。現在こちらの島にて事業をやっておりまして…。この島の代表代理で今回本部と連絡を取らせていただきました』



優し気な表情をしたセミロングヘアーの男性の名前は『ルーファス』。どうやら元社長のようです。
見知った顔なのか、彼の顔を見た瞬間クレアとチタは安堵の表情を浮かべました。…どうやら、彼も『白猫プロジェクト』の世界の住人だったようですね。…ならば、バンズ島にいる一部の仲間も無事そうです。良かったですね。



クレア「ルーファスさん!元気そうで良かったです~…。『世界ごと』飛ばされてきたのは本当だったんですね!」

チタ「『飛ばされた』っつーか、『混ぜられた』のがセーカイだけどね…」

ルーファス『飛ばされた?混ぜられた?どういうことなんですか?』

サクヤ「実は…」



サクヤがコネクトワールドの成り立ちを説明すると、ルーファスはしかめっ面をします。そりゃそうだ、『自分の住んでいる世界が混ぜられた』なんて普通なら絶対にあり得ないことなんですから。
しかし、隣にいる知り合いは妙に納得した顔をしています。そんな表情を見ていると、ルーファスも『もしかしたら冗談を言っているのではないのかもしれない』と考え直すようになりました。



ルーファス『…今はにわかに信じがたいですが、クレアさんやチタくんが素直に納得しているのならば嘘ではないのでしょうね。…後で僕もバンズ島の外を見回りして確認したいと思います』

サクヤ「ご理解いただき感謝します。それで、ですね―――」



彼女が話を続けようとした瞬間、明るい声が話を遮りました。



????『あれっ?しゃちょーさん何やってるの?』

ルーファス 『シェリル!今は大事な話をしてるところなんだよ。部屋に戻っててくれるかな?』

シェリル『『だいじなおはなし』?ってことはこれ繋がってるの?うわー、クレアちゃんやチタくんがいるー?知らない人もいっぱいいるー?!』

サクヤ「そちらのお嬢さんは?」

ルーファス『えっと…彼女は『シェリル』。訳あって今は僕が面倒を見ています』

サクヤ「なるほど。見るからに賑やかな子なんですね…」

ルーファス『あはは…。それで、先程の話の続きを聞かせてください。僕に…このバンズ島で出来ることであればお手伝いしますよ』

サクヤ「ありがとうございます。…実は、この世界で私共は『逃走中』という大きな催しを開催しておりまして。次が3回目になるのですが、こちらのチタさんのお友達が諸事情で参加出来なくなってしまって…。そちらで無事な方から参加してくださる方を1名選んでいただきたいのです」

ルーファス『『逃走中』…。あぁ、あの黒ずくめのスーツの男達から逃げるテレビ番組でしたね。僕も社長時代に1回出たことがありまして…すぐ捕まりましたけど。ああ、あの時はなんで『自分は逃げられる!』と意気込んでしまったんだろう。僕があの時ミッションに動かなければすぐに捕まらなかったのに…。過去のトラウマがフラッシュバックしてくる…!』

アクラル「…おい、大丈夫か?」

シェリル『しゃちょーさんね、よく過去を振り返っては『じこけんお』ってのに陥ってるらしいから気にしないでいいよ!』

アカギ「それでいいの…か…?」



自分のトラウマをえぐってしまったようで頭を抱えながら蹲ってブツブツ何かを言っているルーファス。困り果てているサクヤ達にシェリルは変わらない表情でそう返しました。
そして、彼女が興味深そうにもう一言。



シェリル『『逃走中』、興味あるなぁ…。わたし出てもいいよ?』

サクヤ「え?いいのですか?」

シェリル『だって、今凄く困ってるんでしょ?社長道その148!『困っている者がいれば見知らぬ者でも手を差し伸べよ!』わたし、運動能力には自信あるからやってみたい!』

ルーファス『確かに…今のシェリルの運動性能を確認するいい機会でもありますし…彼女にもこうして『社会経験』を積ませるいい機会かもしれませんからね。僕からもお願いします』

サクヤ「なるほど。では…シェリルさんを次回逃走中の参加者としてエントリーしておきますね。次回の開催予定日等は追って連絡いたします。ご協力、感謝いたします」

シェリル『そんなあらたまらなくてもいいよー!これでわたしはまたひとつかしこになれる!』

ルーファス『バンズ島でも本部に協力できることがあればやりますので、是非困ったことがあれば仰ってください。…それでは、仲間の顔も見れたので僕は一旦失礼します』

サクヤ「わざわざご連絡ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたしますね」



ぷつり。通信が切れました。どうやらこれから白猫プロジェクトの世界の仲間達も共に力を貸してくれるようです。これは賑やかになりそうだ。
……彼らとの通信が切れた数刻後、また誰かから通信が繋がっています。今日はやたらと連絡の多い日ですねぇ。