二次創作小説(新・総合)
- ABT③『氷の堕天使』 ( No.26 )
- 日時: 2020/03/08 22:07
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: eldbtQ7Y)
もうそろそろ春が近づいているというのに、寒かったり熱かったり。気温の変化が激しいですね。
おや?こんな時期に雪…?何やら新しい風が吹きそうな予感。
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~運営本部 入口前~
エイリーク「すみません、マルス王子。こんな時にまで兄上の捜索にお付き合いさせてしまって…」
マルス「気にしなくていいよ。ぼくもつい最近まで同じような状況だったんだしさ。君の兄上…エフラム王子が無事見つかるように、最後まで手伝いをさせてくれ」
エイリーク「ありがとうございます。…ですが、ロイ殿やアイク殿は何も知らないと仰っていましたし…。どちらにいるのでしょうか」
運営本部の入口前でマルスとエイリークが話をしています。
前回話題に出たとは思いますが、エイリークの兄が現在行方不明で見つかっておりません。彼女は運営本部の仕事を手伝う代わりに、本部に兄を探す依頼をしていました。しかし、中々有力な情報は得られておらず…。前回の打ち上げから少し時間が経っていますし、ここで何も情報がないというのは少し不安になってきますね。
マルス「エフラム王子達の行方が分からないことに『道化師』が関わっている可能性はないのかな…。ロイやアイクは無事に見つかったわけだし関係ないとは思うけど、こう長い間見つからないと疑ってしまうね」
エイリーク「兄上だけではなく、ベレス殿の生徒も一部行方不明のままですし…。兄上、無事でいればいいのですが」
マルス「魔物に襲われてどこかに囚われている、というのは考えたくないね。ぼくより腕っぷしが…アイクと力比べをするくらい強いんだから、彼は」
そんな話を続けながら本部の離れまで歩いてきた2人。
―――ふと、エイリークが足を止めます。何か見つけたのでしょうか?
エイリーク「………?何か、向こうで光っているような」
マルス「どうしたんだい?」
エイリーク「一瞬、向こうの茂みが緑色に光ったような…。本当に一瞬だったので、私の気のせいかもしれませんが…」
マルス「雨が降っていたわけでもないのに急に煌めくのは不思議だね。確認してくるよ。エイリーク王女はここで待っててくれるかな?」
エイリーク「ま、待ってください!私も行きます!」
エイリークが指差したのは、運営本部の近くの庭園の茂み。あそこには魔族共が育てた地上の花が植えられています。時折ベレスが勝手にお茶会を開いては親密度を上げてたりします。
彼女はその茂みが一瞬だけ光ったとマルスに話しました。彼女を危険にさらさない為、自分が見て来ると足早にその場を去ってしまいました。エイリークも彼を追います。
しばらく歩いた後、庭園へと着いた2人。そこで見つけた『人物』に慌てて駆け寄りました。
マルス「………っ!!!」
エイリーク「大丈夫ですか?!」
そこには―――。『宝石の様に髪の毛が煌めく白い肌の青年』が倒れていたのです。
エイリーク「ど、どうしましょう…!」
マルス「いったん落ち着こう、エイリーク王女。脈は―――弱いけどある。亡くなっているわけじゃなさそうだね。身体は冷たいけど…気絶しているだけみたいだ。すぐに本部に連れて行って休ませれば大丈夫だと思うよ。
…エイリーク王女は先に戻って、サクヤさんにこのことを話してくれないかい?」
エイリーク「は、はい!すぐに向かいます!」
倒れていた青年は弱弱しく呼吸をしていますが、大事には至っていなさそうだとマルスは判断しました。
エイリークに伝言を任せ、彼女が本部へ走って行ったのを見送った後…彼は、ゆっくりと青年をおぶりました。
マルス「…よっと。ちょっと揺れるけど我慢してくれ」
優しく声をかけながら、彼はゆっくりと本部への道を急ぐのでした。
~運営本部 エントランス~
マルスが本部の入り口をくぐると、心配そうに顔をしかめたサクヤがそこにいました。
エイリークの伝言を受け、罪木さんとコハクをすぐに医務室に呼び出してくれたようです。
サクヤ「エイリークさんから事の顛末は大体伺いました。すぐに医務室に向かいましょう」
マルス「ありがとう。あと、手の空いている人に暖かいタオルを準備してもらえるように頼めないかな?」
バンワド「あっ、それならボクが準備します!ちょうど牢獄ルームのお茶菓子の準備をしていたので、そのついでに持っていきます!」
サクヤ「ありがとうございますバンワドくん。既に人員は手配しています。行きましょう」
バンワドはとてとてと可愛らしい足跡を弾ませながら給湯室まで走って行きました。
彼の姿が見えなくなった後、彼女達も医務室への道を急ぎました。
~運営本部 医務室~
罪木「だ、大丈夫なんですかぁ~?!」
マルス「脈は弱いけどあるよ。―――体温が低いかもしれないから、今バンワドに暖かいタオルを準備してもらっている。…急いで診てくれないかな?」
コハク「わーってる。呼吸が弱弱しィ、さっさと診ンぞ蜜柑」
罪木「は、はいぃ!!!」
医務室では罪木さんとコハクが既にスタンバイしており、青年を待っていました。
マルスは軽く状況の説明を2人にした後、青年を部屋にあるベッドに下ろしました。「う…」と、彼の呻き声が軽く聞こえます。…苦しいのでしょうかね?
ちなみに13班のコハク、見た目は怖いですがムラクモに配属されるまでは某有名大学の『医学部』に通っていたそうで、医者志望だったそうなのです。そりゃ手際が良いわけだ。
…よく見ると、青年は髪色は綺麗なままですが、白い肌のところどころに痣があり煤がついています。また、碌に服も着せて貰えていなかったのでしょう。ボロボロの布きれ一枚しか羽織っていなかったことにマルスはやっと気づきました。
サクヤ「随分と煤だらけですね…。火事にでも巻き込まれたんでしょうか」
マルス「こっちに連れてくるのに夢中で脈と体温しか確認してなかったけど、はっきり見てみると痣とかもあるよ。…誰かに酷いことをされていたんだろうか」
コハク「案外そーかもしンねェなァ。見てみろ、背中の羽が一部分抉れてヤベェことになってる。…これは人為的なモンだ。庭にぶっ倒れるまで酷ェ目に遭ってた可能性は高ェな」
サクヤ「羽…。人間ではない。天使か、その類の種族ですかね」
マルス「でも、黒い羽の天使なんて滅多に見ないよ?ブラックピットは…彼は、ピットのコピーみたいなものだし」
ノア『コハクー?お湯とタオル持ってきたから入る……うわぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!』
コハク「仮にもビョーニンがいる部屋で叫ばないでくれませンかねェ、三下サンよォ?怪我に響いたらどうすンだ!」
ノア「いや、ごめん!でも……。というか三下って呼ぶな!色々と勘違いさせるだろ?!」
罪木「お二人とも十二分に煩いですぅ」
ヘリオ「包帯とか必要なら持ってき、――――――!!!」
サクヤ「ヘリオさん…?」
コハクが傷を見せていると、お湯の入ったポットとタオル、桶を持ってノアとヘリオが部屋に入ってきました。三下呼ばわりとは。もう確実に一方○行さんと上○当麻さんではないですか。いやそれは置いておいて。
ベッドで蹲っている青年を見たヘリオの表情が崩れます。…彼に、覚えでもあるんでしょうか。
サクヤ「…酷なことを言うかもしれませんが聞いていただけますか?『彼』と、知り合いなのですか?」
ヘリオ「……『部下』、なんだ」
マルス「『部下』?」
ヘリオ「ここで話すと彼の傷に響くかもしれません…。部屋の外で話します」
サクヤ「承知しました。コハクさん、この場は任せてもいいですか?」
コハク「訳アリみてェだし?落ち着いたら戻って来な」
サクヤ「助かります」
『部下』? ヘリオと『青年』に関係性が…?これは詳しく話を聞く必要がありそうですね。
医務室に4人を残し、サクヤとヘリオ、マルスは部屋の外へと出ます。
―――そして、改めて彼に話を伺いました。ヘリオは少しの沈黙の後、ゆっくりと口を開き『彼』について話し始めました。
ヘリオ「彼の名前は『ニフルヘイム』。神々の領域の軍の1つ『太陽軍』所属の天使だった」
サクヤ「やはり天使の類でしたか…。その口ぶりを見るに、軍での上司部下的な関係だったのでしょうか」
ヘリオ「御明察の通りだよ。元々は僕もニフルも神々の世界で秩序を守るために働いていたんだ。だけど…『腐敗した神々』の暴挙によって、彼は魔界へと堕とされてしまった。何故かはわからない。でも、『腐敗した神々』にとっては僕達が邪魔だったんだろう。これだけは分かるよ」
マルス「ということは、彼…ニフルヘイムは『堕天使』だということになるね。随分と服もボロボロだったし、魔界に落ちてからずっと彷徨っていたんだろうね…」
ヘリオ「彼が魔界に堕ちてから、僕は死に物狂いで彼を探したよ。『ゼウス様』にも頼んで、天界も地上もあらゆるところを。でも…見つからなかった。神に魔界を探すことは出来ない。もう彼は見つからないと諦めかけていたんだよ。困り果てて、ゼウス様に相談したんだ。そしたら、『アリアンロッド』を頼れと言われて。そして、地上に降りてきたんだよ」
サクヤ「なるほどです。『アリアンロッド』…アシッドさんの元には魔界に通じる邪神がいますからね。彼女達の力を借りれば魔界も捜索できる…そう考えての提案だったのでしょう」
マルス「ま、待って?話が飛躍しすぎてついていけないんだけど…」
サクヤ「んー…。かいつまんで話をするとなると、『ヘリオさんはニフルさんを探す為、地上に降りてネクストコーポレーションを頼った』ということになるのですよ」
マルス「そこまでは分かるよ。でも…アシッドさんが『アリアンロッド』?アリアンロッドって確か、『運命の神』って呼ばれる凄い神様だよね?まさか……」
サクヤ「流石マルスさんです。お察しの通り、アシッドさんの正体は『運命の神』アリアンロッド。…他人の運命を簡単に操ってしまう、とんでもない神ですよ」
あ、喋っちゃうんですかサクヤ。ならばこちらも解説しなければなりませんね。
前回急に逃走中本部へと現れた謎の社長『アシッド』。彼の正体は、運命の神『アリアンロッド』。現在は力を隠していますが、本来は四神はおろかMZDをも片手で諫める程の強い力を持つ神様なのです。…目的は分かりませんが、訳ありの神を雇って社員として働かせているのだけは確かなようです。
で、ヘリオもそのうちの1人。堕ちた部下を探してアシッドを頼ったことがこれで明らかになりましたね。
ヘリオ「…社長を頼って社員になったところまでは良かったんだけど…。ニアさんの力を借りてもニフルは見つからなかったんだ。その際に『緑の崩壊』が起きたって聞いて、一瞬見つかったんじゃないかって希望を持ったよ」
サクヤ「あ…。あれニフルさんのせいだったんですか…」
マルス「『緑の崩壊』って、日光がないと成立しないもんね。太陽神の部下だったニフルヘイムが魔界にいたのなら、その力が作用して崩壊が起きてもおかしくはないよね…」
ヘリオ「それで、もしかしたら見つかるかもしれないんじゃないかって社長に言われてさ。『逃走中を見学する』という名目で本部にお邪魔することにしたんだ。こんな形で見つかるとは思わなかったけどね…」
ソティス「何はともあれ、探し人が死なずに見つかったことは素直に喜ぶべきじゃ」
マルス「……うわっ?!2人ともどこから話聞いてたの…?」
MZD「『緑の崩壊』がどーたら辺りから?巻き込まれた当事者だからな、原因がはっきりして良かったぜ」
背後からぬっと現れたソティスと、その後ろからMZDが現れました。どうやら3人の話を途中から聞いていた様子。随分と珍しいコンビですね。
…ベレスとヴィルヘルムはどうしたんです?
MZD「PERFECT TEA TIMEしてる。何かハートがホワンホワン鳴ってる」
サクヤ「好感度上がりまくってますね」
マルス「ぼくも参加したかったなぁお茶会…。講義…。風花雪月…参加したかったなぁ…」
MZD「FEHでやって?」
ソティス「1日で支援Cは軽く超えそうな勢いじゃったな。いやそれはどうでもいいのじゃ!…入口から妙な気配を感じてのう。気になったから音の神を引き連れて身に来たのじゃ」
MZD「その妙な気配ってのが、お前さんの部下である『ニフルヘイム』ってヤツなんだろ?今治療中みたいだし面会はご遠慮したほうがいい感じ?」
サクヤ「どうでしょうね。危篤状態という訳ではなさそうでしたし、そろそろ大丈夫な時間帯だとは思うのですが…」
罪木「あのぉ…。お話中よろしいでしょうか?意識を取り戻しましたのでぇ、お部屋に入っても大丈夫ですよぉ」
サクヤ「タイミングが読めてしまいました。ありがとうございます、罪木さん。…ヘリオさん、折角の再会なのです。会ってあげてください」
ヘリオ「うん…」
サクヤにそっと背中を押され、ヘリオは医務室の中へと再び足を踏み入れました。
そこには眠そうにあくびをするコハクとそれを呆れて見ているノア、そして―――。
ニフル「……ヘリオス、さま」
ヘリオ「久しぶりだね、ニフル」
現れたオレンジ色に、ただ驚いている『宝石の様な青年』が、そこにはいました。
ヘリオは懐かしい顔を見て、安堵の表情を崩せずにはいられませんでした。
サクヤ「さて、感動の再会の中申し訳ないのですが…。ニフルさんをこちらでしばらく預かりたいと思っています。どうでしょう?」
ヘリオ「えっ?…いや、僕としては有り難い申し出だけど、そんなに世話になる訳にも…」
サクヤ「随分とちょうどいいタイミングで貴方のところの社長から通信が来たと兄貴から連絡がありまして。彼をしばらく預かってほしいとの要請がありました」
ニフル「いいんですか…?」
サクヤ「良いも何も、あの社長に逆らえば後が怖いですからね…。それに、私としても何故貴方が堕天使にされなければならなかったのか気になります。―――もしかしたら、『道化師』と繋がっている可能性がありますし」
MZD「ニアも『邪神』が絡んでるとか言ってたからなー。道化師と繋がってても何ら不思議は無いと思う」
サクヤ「久々の再会なのでしょう?しばらく―――上司と部下でゆっくりくつろぐ選択も、私は有りだと思いますよ?」
なんてタイミングでなんて要請をしてくるんでしょうかあの社長は。
何はともあれ、ニフルはこれからしばらく運営本部で預かることにしたようです。人手が増えて良かったですねサクヤ。
…そんな微笑ましい光景を、空から見つめる『影』が3つ。
『…本部の位置を割り出したよ『メフィスト』。これからは私達の仕事と行こうじゃないか』
『なぁるほどぉ?なら、こちらもそろそろ『古代兵器―――Zirkfied』の投入といこう。少し、遊んであげるといいよ』
『―――やっと見つけたよ?『ジョマンダ』』
―――ひええええ?!古代兵器『Zirkfied』?!えっ あいつ?あいつなんですかー?!
しかもジョマンダを知っている…?!ま、まさか、見つめる影の正体って……!
