二次創作小説(新・総合)

ABT④『純白の古代兵器、襲来』-1 ( No.36 )
日時: 2020/03/12 22:10
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: sE.KM5jw)

七海さんが妙な影を見かけてしばらく経った頃―――。本部にも不穏な影が。
本編ではバトル物を取り入れる予定はないですが、メインストーリーではバカスカやっちゃいます。

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~運営本部 住居区 庭園~



フレイヤ「(ここは…とっても暖かくて気持ちのいい場所。心がぽかぽかしてくるなあ)」



ライラによる雷事件の後、マスターハンドを含む5体の仲間達はスマブラ支部の無事なメンバーに本部まですぐに輸送され、コハクと罪木さんによる治療を受けていました。
そのうちの1体であるいざないポケモン『シャンデラ』は幸い雷の打ち所が良く(?)、軽傷で澄んだ為医務室で回復を待った後、コハクに許可を得て本部の住居区を散歩していました。

さて、ライラだとかフレイヤだとか名前で混乱する前に解説をしておきましょう。
このコネクトワールドでは、ポケモンに関しては『固有の個体』のみに『ニックネーム』が付けられています。最近発売したポケダンの『主人公』や『パートナー』のように個別に名前がついている状態になりますね。
スマブラ支部に所属しているポケモン達や、今回マスターハンドと共に運ばれてきたポケモン達も『固有の個体』であり、1体1体に個別の名前がついています。
ちなみに、ポケモンには喋れる個体と喋れない個体が存在します。フレイヤは霊力を使って自分の気持ちを人の言葉に変換して放っているタイプです。

散歩途中で綺麗な花を見かけ、思わず外へ飛び出していたフレイヤ。
そこに広がっていたのは、生き生きとした植物が溢れる庭園のような場所。花々や木々の香りに思わずフラフラと庭園の中に入ってしまっていました。
…あの、貴方確かほのおタイプでしたよね?花が燃えないか心配です。



フレイヤ「(ホムラみたいにアホじゃないから大丈夫だよ。それに…こんなに綺麗な草花を燃やすなんて…僕には出来ない)」



さいですか。そういえばスマブラ支部に所かまわず辺り一面燃やそうとする大学生ノリのリザードンさんがおりましたね…。
フレイヤは花壇に植えてある小さな花にそっとシャンデリアの先を触れさせます。優し気な桃色をしたその花弁は、フレイヤの触れた先に寄り添うかのようにゆらゆらと揺れています。そんな光景に彼も思わず穏やかな顔になっていました。



フレイヤ「(この花の名前はなんていうんだろう。サクラという品種に似ているけど、木じゃない)」

『その花の名は『シバザクラ』。この時期、地面一面に芝のように広がる多年草だ』

フレイヤ「?!」



背後から現れた声に驚き、思わず振り向くフレイヤ。
そこには、マゼンタ色の髪をなびかせたラフな格好のヴィルヘルムがいました。その手には禍々しい目の模様が描かれた如雨露をを持っています。いや、ガーデニングが趣味なことは以前から知っていましたが、この世界でもやってたんですね。どうやら植物に水をやりに来たようです。
彼は今オフの格好のよう。いつもの黒ずくめのスーツ+マントではなく、白いブラウスに黒いパンツスーツ、仮面のマークがワンポイント付けられたエプロンをしています。ちなみに、料理をする時も彼はこの格好です。



ヴィル「最初は魔界の植物も育てようかと思って密かに種を持ち込んでいたのだが、サクヤとMZDに止められてしまってな…。『運営本部が喰われたらどうする』と。戦闘の補助、拷問にも使える代物だから是非育てたかったのだが」

フレイヤ「(本部のニンゲンが巻き込まれたら大変だから止めてくれて良かったと思う…。それに、地上の花も凄く綺麗だからね)」

ヴィル「地上の花に関しては混ぜられる前の世界でMZDに匿われてから育て始めたのだが、魔界のものとは違って随分と儚くてな…。何度も枯らしてしまったことは記憶に新しい」

フレイヤ「(儚くても…一生懸命生きてるから、このいのちを見られて僕は嬉しいな)」

ヴィル「…そう、思ってくれるのか。君は私とよく似ているから、こういう儚い魂も吸い取ってしまうのかと思っていた。―――折角だ、他の花も見ていかないか?この時期ならばそろそろスミレやビオラが見ごろを迎えるからな」

フレイヤ「(みたい!)」



ヴィルヘルムがいたずらっ子のように『しー』というポーズをフレイヤに向けます。その表情は魔族とは思えないくらいの柔らかい微笑み。あの3人と同居して滅茶苦茶影響されまくって感情育ってるじゃないですか。フレイヤは他の花も見れると分かりくるくると嬉しそうに回っています。かわいい。
この庭園、結構土地が広く、彼が育てている草花だけではなくマモニスが主に畑をやっていたりします。以前彼が『魔界の野菜』とか言っていたのはこういうことだったのですね。というか、魔界産の野菜は許されてるんですね。


ヴィル「いや、本来は駄目なのだが…。マモニスが黙って持ってきているのだ。随分と嬉しそうに育てているから何も言えず、そのまま放置されているんだ…」

フレイヤ「(大変だ…)」



あー、これはばれた時におしおきが待っていますねー。
立ち話もなんだと、彼はフレイヤを花が咲いている花壇の場所まで案内する為足を前に差し出しました。



その時です。『それ』が起こったのは――――――。





















ヴィル「―――ッ……!! ぐ……っ!!」

フレイヤ「(どうしたんですか?!)」



ヴィルヘルム、急に左胸を抑え蹲ってしまいます。呼吸も荒く、苦し気に表情を歪ませています。
彼の突然の変化にフレイヤも慌てて駆け寄りますが、彼は開いている手で優しく彼を撫でるだけ。



ヴィル「大丈夫、だ…。しばらく、すれば、おさまる…」

フレイヤ「(全然大丈夫そうに見えないよ…!どうすればいいの?魂をあげればいい?)」

ヴィル「そういう問題では、ない…。(この痛み―――『あの子』の呪縛に傷が……?)」



『あの子』?『呪縛』?呪縛と言えば、ソティスに指摘をされていたあの呪縛のことでしょうか?
ということは、彼が言っている『あの子』の正体はMZDということになるのでしょうが―――。ん?MZDに何かあったのですかね…?
ヴィルヘルムは何回か深呼吸をした後、よろめく身体を自らの魔力で支え立ち上がります。心配そうに見つめるフレイヤに申し訳なさそうにこう返しました。



ヴィル「すまない。急用が出来た。…案内はまた今度にしてくれないか」

フレイヤ「(それは構わないけど…。どこにいくの?僕も行く!)」

ヴィル「私の友の身に何か危険が起こっているかもしれん…。もしかしたら戦闘沙汰になるかもしれないが、それでも構わないならついてくるといい」

フレイヤ「(バトルなら大丈夫だよ!僕、『とくこう』145もあるから!)」

ヴィル「(そういや特攻おばけとか言われていたな)」



先程まで苦しんでいたくせに何を呑気に特攻オバケと言っているんですか!確かに特攻オバケなのは否定しませんけれども!…最近サニゴーンとかいう特攻145オバケ増えましたよね。
フレイヤの覚悟を目にした彼は、『あの子』を助ける為に瞬間移動でその場から姿を消したのでした…。























~運営本部 入口前~





バンワド「だ、大丈夫ですかかみさま~?!」

MZD「だいじょーぶだいじょーぶ。左胸掠って服切れただけ。あーあ、お気に入りだったのになぁ…」

『随分と余裕があるな、音の神』

MZD「他人に向かって苦しい顔を見せるわけにもいかないだろ?…それにしても、随分と雰囲気変わっちゃったよなぁ。『ジルクファイド』」



所変わって運営本部の入口前。MZDとバンワドが誰かと対峙しているようです!
バンワドは自前の槍を持ち、MZDはサングラスを外し槍状の武器に戻して構えています。『服が切れた』と言っていることから多少のダメージは喰らってしまっている様子。ヴィルヘルムが先程一瞬苦しんだのもそれに関係しているのでしょう。

そして、彼に対峙している青いヘルメット姿の青年の正体―――。彼の名は『ジルクファイド』。
元々はポップンミュージックの世界の人物で、『みんなで宇宙戦争』というイベントでミミやニャミ、パステルくんらと戦ったボスです。しかし、当時見かけた姿とは少し違いますね?目も『赤く』光っていますし、なんだか雰囲気、というか様子がおかしいです。
入口の扉からは彼らを心配そうに見つめる3人の影が。



ミミ「MZD、わたし達庇って絶対怪我したよね…?このままあの人と戦っちゃって大丈夫なのかな…?」

ニャミ「でも、あたし達戦えないし…。バンワドくんもいるし、だ、大丈夫じゃないかな…?ジルクファイドさんの様子前とは全然違うけど…」

エイリーク「私も前線に立てればいいのですが、神様に貴方達の護衛を命じられてしまいまして…。すみません、私が力不足なばかりに」

ミミ「エイリークさんは良くやってくれてるよ!ジルクファイドさんの攻撃の余波頑張って弾いてくれてるじゃん!」



どうやらジルクファイド襲来の時、運悪くミミニャミが本部に遊びに来ていたタイミングであり彼女達を真っ先に庇った末での怪我だったわけですね。で、理由は分かりませんがその痛みがヴィルヘルムにも共有されたと。そういうことなのでしょう。
ジルクファイドの様子がおかしいことにはミミやニャミも気付いており、雰囲気の変わってしまった彼に少し恐怖を覚えています。



MZD「―――覚えてないんだ。『宇宙戦争』のこと」

ジルク「そんなものは知らない。俺に命じられたのは、『運営本部の殲滅』ただそれだけだ」

MZD「(記憶のリセットかけられたか初期化したか知らないけど、この世界に飛ばされた先で『何かいじられた』のは確定だろうな…)」

バンワド「同じ槍使いとして負けるわけにはいきませーん!でも強いよ~!」

MZD「本部の中に入れないように戦うんだぜバンワド。そうでなきゃエイリークにあいつら託した意味が無くなっちゃう」

バンワド「そ、それは分かってますけど~!」

ジルク「戯言はそれだけか?……この俺と戦い滅ぼされることを光栄に思うがいい!!」

MZD「昔のどっかの誰かさんみたいなこと言うんじゃねーの!」



ガキン、と鳴り響く槍のぶつかり合う音。MZDが囮を引き受け、その間にバンワドが背後を狙うようです。
彼が守りの体制に入った瞬間、バンワドは素早くジルクファイドの後ろを取り自慢の技を繰り出します!





バンワド『くらえー!『月おとし』!!』





ですが―――。『彼』にその動きは既に読まれていました。



ジルク「見えているッ!!!」

バンワド「わにゃ~~~~~~~!!!」



ジルクファイドは器用に槍をMZDにぶつけたまま方向転換し、彼の攻撃しようとした槍を逆に掴み、空の彼方まで投げ飛ばしてしまいました!
可愛らしい叫び声を響かせながらバンワドは空中を舞います…。



MZD「バンワドッ!!」

ジルク「他人の心配をしている場合か?」

MZD「ぐっ……!!」



背後に運営本部の拠点を背負っている以上、神の力を必要以上に出してしまえば本部が壊れてしまう可能性がある…。彼はそう思って自分の力をセーブしながら戦っていました。その為、ジルクファイドとのつばぜり合いも徐々に劣勢に…。
一瞬でも敵に隙を見せれば突破されてしまうことは間違いないでしょう。



ジルク「…そういえば、だ。いいことを教えてやろう」

MZD「お前さんこそ、戦っている最中に雑談とは余裕だねえ。一瞬の気の緩みが勝敗を分けるって知らないの?」

ジルク「それはどうだかな?―――本部を『襲撃』したのが、俺だけだと思うか?」

MZD「えっ……?」



不敵ににやけるジルクファイドに、どこから来たのか分からない悪寒を感じるMZD。
その不安は、彼の思わぬところで的中してしまうことになるのです…!








住居区の方で、閃光が。
MZDはその閃光の正体を知っていました。







MZD「あれは―――『神の力』―――?!」



バンワド「かみさま大変ですー!! 今光った場所でジョマンダさんが襲われていますー!!」

MZD「ジョマンダ…!?アイツを狙いそうなヤツ……まさか!!」





バンワドはそれを言い届けた後草むらにぽてっと落ちてしまいました。
ジョマンダと関係ある人物と言えば、あいつらかー?!しかも『神の力』って何?!
まさかの二方向からの襲撃!本部を守り切ることは出来るのか…?!

ABT④『純白の古代兵器、襲来』-2 ( No.37 )
日時: 2020/03/13 22:06
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: eldbtQ7Y)

~運営本部 住居区~



ジョマンダ「どういうことだよ…!なんでお前が…!」

『久しぶりだな、『我が息子』ジョマンダ。何、迎えに来ただけさ』

リピカ「とーちゃんだかなんだか知らないけど、急に息子に襲い掛かるのはどうかと思うのさ!」

マルク「そーだそーだ!不意討ちはひきょーだぞー!」



先程閃光が光った運営本部の住居区。
そこでは、武器を取り出したジョマンダとリピカ、羽を出したマルクと誰か2人が対峙していました。敵方が出す閃光をリピカとジョマンダの2人で弾いている為住居区自体に被害はないようですが…こちらも形成はかなり厳しいようです。
それもそのはず、3人が対峙している相手は―――。





ジョマンダ「『ヴァリス』!『親父』!俺を迎えに来たって…。何回も言ってるだろ、俺はそっちに行くつもりはないって!」

リピカ「ヴァリスだけならともかく、リサさんまで来るなんて何かがおかしいのさ…!普段は息子だけしか送り込まないくせに!」

リサ「酷い言い様だな。単に私はこの腐った地上から息子を引き剥がしたいだけさ。…異星人にとっては、この世界は余りにも『醜すぎる』だけだからね」



3人の目の前には『真っ白な天使』と『目に黒い布を巻いた男性』がいました。
白い天使の名を『ヴァリス=ネリア』、そして黒い布の男性の名を『リサ=リシア』と言います。2人ともジョマンダの関係者で、それぞれ彼の双子の弟と、彼らの父親的な存在です。
それにしても彼らは元の世界から飛ばされて、今まで神の世界にいたんですね。それに、リサの方は何だかジョマンダ以外の2人に嫌悪感を抱いている様子。…何か、良くない噂でも吹き込まれたんでしょうか。

ヴァリスには口元に包帯が巻いてあります。これはリサがやったもので、彼の力のリミッター的な役割を果たしています。…口元が洗われてしまった時のヴァリスは…想像するだに恐ろしいです。
現在、彼はリサの命で自分の意志を伝える為の板を斧に変えて襲い掛かってきています。兄のはずのジョマンダの声も届きません。



ジョマンダ「おいヴァリス!今は俺達を襲ってる場合じゃないだろ!親父も考え直してくれって!多分話を聞いた奴、親父に何か吹き込んだだけだぞ!」

リサ「騙されやすさと純粋さが限界を突破しているお前が言っても説得力が無いのだよ、ジョマンダ。それに…私は見てしまったんだ。『混ざった世界がどれだけ醜いのか』を」

リピカ「どういうこと…?」

リサ「お前達に教える義理はない。倒せ、ヴァリス」

マルク「人の話を聞かない野郎だな…!うわっ!」



リピカとマルクの話を聞く気は更々無いようで、まるで下等生物を見るかのような目でヴァリスに排除を命じてきます。それと同時に振り下ろされる斧。
正面からまともに受けては歯が立ちません。避けるのが精一杯です。



マルク「リサって奴は攻撃してくる気配がないから、ヴァリスって天使の身動きを取れなくしちゃえばこっちに分がありそうなもんだけど…あー!一撃が強すぎて動きを止められないのサー!」

リピカ「動きを…止める…。あっ、いいこと思いついたのさ!マルク、君の妨害魔法で協力してほしいのさ!」

マルク「ん? (ごにょごにょ) なるほどー、あいつの動きは単調だから…。多分いける!よーし、やってやる!」



実力行使に移ることにしたようです。何やら2人で作戦を練っている様子。
ひそひそ話が終わった後の2人は悪どくニヤリと笑みを浮かべました。…忘れそうですが彼女達ボスなんですよね。

…さて、一旦場面を戻しましょう。























~運営本部 入口前~





MZD「動きが鈍くなってきたんじゃない?!」

ジルク「こいつッ…!」



こちらは運営本部の入口前、MZDとジルクファイドが戦っている場所です。
ジョマンダ達の様子を見ている間にいつの間にか形勢逆転。現在はジルクファイドが押されている状態です。…MZD、貴方『神の力』少しだけ解放しましたね?



バンワド「本部に影響がないギリギリのラインでやってるそうです~!」



…何でバンワドが知っているんですか?それは置いといて。
急に目の前の敵の力が上がったことに対し『自分に対して手加減をしていた』と捉え憤慨しているのでしょう、襲ってきた当初よりも槍さばきが雑になっているように見えます。
MZDはその隙を突き、確実に光魔法や槍の一撃を放ち相手の動きを狭めていきます。



MZD「(やっぱり古代兵器相手だからか光魔法は効きにくいか…。でも、動きを止めるだけなら十分だよな)」

バンワド「これなら…追い返せるかも…!」

ジルク「俺を舐めるな…!俺の力はこんなもんじゃない!!」

MZD「バンワド、構えて!来るぞ!!」



本気を見せてやろうとでもいうのでしょうか。ジルクファイドはヘッドホンのスイッチを切り替え、力の出力を強めます!





ジルク『貫け。偶像を破壊する槍よ!!!』





ジルクファイドの持っている槍が大きくなり、対峙する2人を貫かんと動き出しました。
防御態勢を取る2人。…ですが、その必要はないとすぐに思い知ります。

















『フレイヤ、『おにび』』





隣で良く聞いている落ち着いたテノール声の指示。それと同時に怪しい炎がジルクファイドを包み、襲い掛かります。
自分が逆に攻撃を喰らうなど微塵も思っていなかったジルクファイド。フレイヤの放った『おにび』をまともに喰らい、火傷状態になり思わず膝をつきます。
大きくなっていた槍もジルクファイドの力が失われた結果、ただの武器に戻り『ゴトン』と鈍い音を鳴り響かせ地面へと転がりました。



フレイヤ「(やった!あたったー!)」

ヴィル「敵を貫く方法としては悪くない戦法だが、いかんせん隙が大きすぎる。このように妨害を受けてしまえばひとたまりも無くなるからな。…2人とも、大丈夫か」

バンワド「あ、ありがとうございますー!」

MZD「ヴィル…!助かったぜ。でも、なんでここが…?」

ヴィル「はぁ…。左胸の呪縛に少し切り傷がついているぞ。その痛みが私にも響いて、お前に何かあったことに気付いたのだ」

MZD「…あ。ごめん、本部守ることに夢中で傷がついてることに気付かなかった」

ジルク「ぐっ……!」

MZD「ま、オレの傷のことは後。まずはコイツを拘束しないとな。ヴィル、手伝って?」

ヴィル「魔族遣いの荒い神だ。だが…その申し出、受けよう」



苦しみながらも立ち上がろうとするジルクファイドの目の前で、ポップン界のM&Wが片手を伸ばします。
そして、それぞれ違う詠唱を終えた後…拘束魔法を発動しました!





MZD/ヴィル『『呪縛の檻』!』

ジルク「地面から茨……っ、このっ!!」





白い茨と黒い茨、双方がジルクファイドの手足を拘束し地面へと縛り付けます。
そうこうしているうちに彼は茨に囲まれ、身動きが取れなくなってしまいました。



MZD「さーて、これでしばらく動けないだろ。コイツに闇の魔法は効果抜群のはずだから、早々出てこれないと思うぜー?」

ヴィル「先程拘束魔法を出した辺りに住居区の方で雷のようなものが鳴り響いたが…あちらでも戦っているようだな」

MZD「うまく犠牲出さずに済んでればいいけど」



入口で隠れているミミニャミと、彼女達を守っているエイリークに声をかけつつ、2人はそんなことを話し合うのでした。
天の声もジョマンダ達の様子を見に行きましょう!

















~運営本部 住居区~





リピカ「ふっふっふ、この雷は攻撃用じゃなくて目くらましさ!うまくマルクの茨に引っかかってくれて良かった!」

ジョマンダ「ヴァリスはこれでしばらく無力化出来たか…。ありがとうリピカ」

リピカ「お礼なら作戦遂行の要のマルクに言うのさ!」

マルク「へっへーん、ボクのイタズラ好きを舐めないでよねー!」



こちらもどうやら方がついたようで、マルクの張った茨の罠に見事にヴァリスが引っかかってしまっています。痛そう…。
見た目に似合わず、リサは攻撃が出来ません。そのことは息子であるジョマンダが良く知っています。だから攻撃の指示をヴァリスにばかり出していたんですね。



ジョマンダ「親父。なんで本部を襲ったか聞かせてもらうぞ」

リサ「当初から言っているではないか。私は『お前を迎えに来た』だけだと。目的を達成するならば本部とやらがどうなっても構わない」

ジョマンダ「本当にそれだけなのかよ…。だけど、俺はそっちに行く気はないって何回も言ってるだろ。無理やり連れていこうとするなら…親父でも容赦はしない」



どうやらリサ、ジョマンダを自分の現在の住まいである神の世界に連れて帰ろうと思っている様子。彼はルシェやニフルのように元々天使だったわけではなく、リサに『堕天使』として創られた人物である為、神の世界への行き来は可能です。
無理矢理にでも連れていこうとしているのに納得できないのか、ジョマンダは自前の黒い剣を召喚しリサに斬りかかんと脅しをかけてみました。
―――その姿を見たリサはため息を1つ。その瞳をしばらく布の向こうから見つめ、ヴァリスの傍に駆け寄りました。

そして、白黒の茨によって地面に屈服させられていたジルクファイドにも変化が…。突如苦しんでいた彼の表情が人形のように抜け落ち、彼からまるで拡声器で拡散したような声を辺りに響かせました。…明らかにジルクファイドの声ではない。一同は最初の言葉を聞いた瞬間から、確信していました。





ジルク?『あっはは、流石は強者の集いと言われる『運営本部』だよ。少し遊んでやるつもりだったけど、そう簡単に上手くはいかないよなぁ』

ミミ「えっ えっ ジルクファイドさんどうしちゃったの?無表情で口元も動いてないのに声が出てる!」

MZD「いや、今声を出してるのはジルクじゃないよ。…多分、『ジルクを道具として操っている主』だ」

ジルク?『わぁお。流石は『禁忌を犯した』音の神、こいつを拡声器代わりに使っていることに早速気付くなんて流石だねぇ。…ま、今回はこのくらいにしておいてやるか。渋谷を襲う『準備』も出来たし…リサ、ヴァリス、撤収だ』

バンワド「『渋谷を襲う』って…逃走中のゲームを妨害するつもりですか?!そんなことはさせません!」

マルク「撤収なんてさせると思う?ヴァリスは今ボクの茨の中……って、あーーー!!!茨がボロボロになってるのサーーー!!!」

フレイヤ「(茨が灰のようにボロボロに崩れていく…?)」

ヴィル「(この魔術は…魔族のものか…。彼奴を操っているのはやはり…!)」



ジルクを操っている主が発した『撤収だ』という言葉と同時に、ヴァリスとジルクファイドにかけられた茨がボロボロと灰のように崩れてなくなってしまいました。ヴィルヘルムは茨を崩した魔法を見て、相手の種族までは見抜いているようです。
そのまま、ヴァリスはよろめく身体をリサに支えられ、ジョマンダに『また来るよ』とだけ言い残し消えてしまいました。
ジルクファイドもまた『よいしょ』とわざとらしい声を出し立ち上がり、まるで道化のように口元を歪ませて一同に告げます。



ジルク?『この際だから教えてやるよ。俺達は各々の目的を持って集まった魔族や悪魔達の集団…。お前達が探してるって言う『道化師』って言えばいいのかなぁ?そして、その最終目的は2つ。『我らに仇なす神々の排除』そして―――『新たなるJOKERの創世』だ』

エイリーク「神々の、排除…」

ニャミ「テントさんが言ってたこと、本当だったんだ…!」

ジルク?『あれれ?お前らもう知ってたのぉ?あーあ、折角驚いた顔見たかったのに一気に湿気た。あと、折角だからもう1つ教えてやる。お前らの敵は『俺達だけじゃない。天も、地も、両方だぞぉ?』覚えとけよな』



驚愕の表情は見れなかったが、唖然としている一同を見て満足したのか、口角を上げたままジルクファイドも消えてしまいました。
…何はともあれ、本部自体が崩壊されなくて良かったですね。敵の気配が完全に消え、ミミとニャミが地面へとへたり込みます。
それと同時に、向こうでリサとヴァリス、2人と戦っていた3人が入口まで飛んできました。



ミミ「わたし達が戦ったわけじゃないのに、なんだか緊張が解けたら足が…。へとへとだ~」

リピカ「そりゃ急襲があれば誰であっても驚くし緊張するさ…。ジョマンダの親父さん、誰かに唆されてたっぽくて話全然聞いてくれなかったのさ」

ジョマンダ「親父は変なところ頑固だし、ヴァリスは親父にだけは従順だし…。『また来るよ』って去り際に言ってたし、近いうちに巻き込むかもしれないなぁ。先に謝っておくよ、迷惑かける」

ニャミ「遊びに来ただけなのにとんだ不幸だよー!……MZD、しかめっ面してどうしたの?」



父親であるリサが敵対していることに呆れを通り越して落胆している中、ニャミが表情が硬いままのMZDに語りかけます。
どうやら彼、先程のジルクファイドを操っていた主が言っていたことに関して考察をしているようです。



MZD「グルなのは『邪神』だけだと思ってたけど…。『神々』自体が魔族…『道化師』と繋がっているんだとしたら…。アイツらは神の力を利用して『JOKER』を人工的に創り出そうとしている…?いや、でも『JOKER』は現代には今生まれないはず…。アイツら、どこまで知ってる…?」

ニャミ「おーい、MZDってばー。眉間にしわ寄せてると老けるぞー」(おでこにぐいぐい)

MZD「オレは『永遠の少年』なんだからいいんですー。はぁーあ、色々ありすぎて疲れた…。ま、考察は後でじっくりするか。今は『逃走中のゲームが邪魔される』可能性があることを早くサクヤに伝えないとな」

マルク「襲われたことだけは既にサクヤさんに連絡済みなのサ。細かいことはメインサーバで話してくれって」

エイリーク「それでは、私はミミさんとニャミさんを観客席まで送り届けてきますね」

ミミ「何から何までごめんね…」



リサが唆されていた相手が『神々』だとしたら、襲ってきた奴らは天と地、双方と関係があることが確定でしょうね。
いつまでもここにいても意味がないと、一同はメインサーバ、そして観客席へと各々歩み始めました。
―――そんな中で、ぽつりと2つの声が。





MZD「…ヴィル。相手方が『JOKER』が生きてることを割り出しちまえば…アイツら、多分『JOKER』消す為に動き始めるよ」

ヴィル「その時はその時だ。だが…『JOKER』は創り出してはならない。力の加減を間違えれば…幾つもの星が、魂が消えるだろう」

MZD「そーだな。いつまで隠し通せるか分からないけど、出来るだけ何とか踏ん張ってみるから。…だから、こっから出ていくとか考えないでよ?『道化師さん』」

ヴィル「……善処しよう。それよりも、だ。MZD、メインサーバに行くよりも先に治療だろう?サクヤには私から連絡するから医務室に行くぞ」(頬をつねり)

MZD「ひゃい…」





逃走中のゲームに何か起こるかもしれません。逃走者の皆さん、心してかかってくださいね!