二次創作小説(新・総合)

Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.162 )
日時: 2020/05/20 15:30
名前: 琴葉姫 (ID: FyzG1Vo4)

マツバボタン「───はっ、はあっ…はぁっ…!」

…マツバボタンは走り続け、気がついたら会場の裏口に来ていた。
地べたに這い蹲って、鉄の味すらする喉を落ち着かせていた。
ある程度収まり、息を整えた。しかし、その次には…

マツバボタン「…っ、ふぇ、ぐずっ…!」

泣き出してしまった…。
自分の歌詞を馬鹿にされた。それもある、しかしそれ以上に…

マツバボタン「(キリュウさんに、あんな顔させて…っ!キリュウさんを、良くない気持ちにさせたっ…キリュウさんを、お父さんと重ねてしまったっ…!なんで…キリュウさんとお父さんは、全然違うのに…!!)」

あの時…夢で逢っていた時、抱きしめてくれた鬼龍は優しく、安心できた。父とは違う。なのに、あの表情の鬼龍は…
どうして、どうしてどうして!私は、キリュウさんが大好きなのに!あんなに優しい男の人なんていないのに!
身体が自然に震えてくる。どうしよう、彼らに何て謝ったらいいか…そう考えると、また息のし方を忘れてくる。
頭の中がぐるぐるとせわしない。なんだか吐き気も───

「だ、大丈夫ですか!?」

マツバボタン「っ…!?」

不意に声がかけられた。男性の声だったから、身体が強張ってしまう。
その正体は───Ra*bitsメンバーの4人だった。

マツバボタン「え、あ、あの…」

友也「なんだか苦しそうに見えたので…!あの、医務室行きますか!?」

光「ね~ちゃん大丈夫なんだぜ!?顔真っ白なんだぜ…!」

創「あ、あの、落ち着かれないようでしたらこの紅茶を…!」

マツバボタンの様子を見て慌てて介抱しようとする年少組だが、彼らも男で近づこうとすると、マツバボタンの身体がびくりと震える。
それに焦って止めに入ったのは仁兎なずなだ。

なずな「ま、待ておみゃえら!マツバボタンしゃんは男性恐怖症だきゃらちかづいちゃだみぇりゃ!」

友也「あ、そ、そうだったぁ!すみません!!」

光「ご、ごめんなさいなんだぜ~!!!」

創「ご、ごめんなさい…!」

真摯に謝ってくれる彼らに、マツバボタンはポカンとしてしまう。
あれ、そういえば私、今は息出来てるし震えも止まってる。ちゃんと頭が整理できる。
改めてRa*bitsメンバーに向き直って話す。

マツバボタン「あ、ありがとう、ございます…なんだか、落ち着きました…」

友也「本当ですか!?よかった~!」

マツバボタン「あ、あの…ここで、何をしていたんですか?」

光「ここの近く、クローバーたくさんあるから四葉のクローバー探してたんだぜ~!」

創「先程、一つ見つけたんです。…あの、よかったらこれ、マツバボタンさんにあげます」

マツバボタン「え…!?で、でも、そんな貴重なもの…」

なずな「いいって!また探せばいいし!これでマツバボタンさんに幸運が訪れるといいな!」

マツバボタン「幸運…」

男である彼らが手渡しするわけにもいかないので、地面に置いてそれをマツバボタンが拾う。
確かに葉が四つある。苦労して見つけたものを、自分が貰っていいのだろうか…。

光「ね~ちゃん本当に大丈夫なんだぜ…?お医者さんに診てもらった方が…」

マツバボタン「あ、あの、本当に、大丈夫ですから…!」

なずな「そうか…?でも、絶対無理しちゃだめだぞ!鬼龍ちんが心配するからな!」

マツバボタン「…キリュウさん、が…?」

創「鬼龍先輩とマツバボタンさん、仲がよろしいですから。マツバボタンさんに何かあったら、鬼龍先輩が大変なことになってしまいます」

マツバボタン「……………」

友也「…えと、本当に大丈夫ですか?」

マツバボタン「あ、はい…!大丈夫、です。ありがとう、皆さん…」

やっと笑顔を見せてくれた。それに安心し、Ra*bitsメンバーはその場を去っていった。
なずなが「紅月だけじゃなくてRa*bitsもよろしくにゃ~!…ふみ゛ゅ!」と噛んだのは様式美なので気にしなかった…。



鬼龍「マツバの嬢ちゃんッ!」

マツバボタン「ッ!?」

反射的に振り向いてしまった。
鬼龍が息を切らして、大量の汗を流しながら、マツバボタンを見つめていた。
条件反射でマツバボタンはその場から逃げようとする。

鬼龍「っ、待っ、…ッ!!」

マツバボタン「ッ…!き、キリュウさん…!」

追いかけようとした鬼龍だったが、体力の限界が来たのかその場に倒れ込んだ。倒れると言っても、両膝を突いて片手と片肘を地面に付けている、という構図だが。
慌てて鬼龍に駆け寄るマツバボタン。男性恐怖症とかあの時父親と重ねたからだとか、そんなものは取っ払ってただただ鬼龍を心配している。

マツバボタン「だ、大丈夫ですか…!?お、お医者様…!」

鬼龍「すまねぇッ!!」

マツバボタン「へ…!?」

急に鬼龍が謝りだした。両手を地に着け、土下座に近い形で。
何故謝られているのか分からないマツバボタン。謝るのは私の方なんじゃ…と思っていたのに。

鬼龍「無理矢理頼み込んで一晩で書き上げてくれた歌詞なのに、不快な思いさせちまって…!すまねぇ、すまねぇ…!!」

マツバボタン「ち、ちが、なんで…!キリュウさんは、悪くな、な、なんで…!」

鬼龍「嬢ちゃん…?」

恐る恐る鬼龍が顔を上げると…
マツバボタンの瞳から、大粒の涙が零れていた。

マツバボタン「わ、私…綺麗な言葉しか使えなくて、私の詩なんて、やっぱり…!」

鬼龍「そんなこと…!、…!まさか、嬢ちゃんが詩を書いてたのって…」

マツバボタン「…私の今まで書いた詩は───」



○●○●○

レウイシア「…マツバボタンは、父親と色々あってね」

神崎「御父上と?」

レウイシア「…うん。あの子は自分がどれだけ酷い目に遭っていたか上手く言えない…わかってないみたいなんだ。言葉を奪われてる、っていうのかな…」

あんず「言葉を奪われてる、ですか?」

レウイシア「…そう。あの子が詩を書いてるのは、使える言葉と、父親の好きな言葉の確認。…あの子は、まだ父親のことを引きずってるみたいだね」

蓮巳「………」

レウイシア「あの子の詩が綺麗なものなのは当たり前。綺麗な言葉しか使ってはいけないように教育されたから。…でも、今回の貴方達の曲の歌詞は、綺麗なだけの言葉じゃない。あの子の心の叫びもあった。………あの子の書いた詩は、他でもない。マツバボタン自身。あの男の人に馬鹿にされて、逃げ出したのも無理はないよ」

ハナショウブ「………………」

○●○●○

マツバボタン「…ごめんなさい、ごめんなさいっ…!キリュウさん達の歌なのに、私の気持ちを入れて…良くない気持ちに…なりましたよね…」

鬼龍「……………」

鬼龍は言葉が出なかった。
まさかあの詩にそんな意味が込められていたとは夢にも思わなかった。
やはりまだ、彼女は父親の呪縛から完全に抜け出せていなかったのか。
しかし彼女は"あの時"未来への希望を見出した。
なら自分は…その手助けをしたい。

鬼龍「…なぁ、マツバの嬢ちゃん」

マツバボタン「っ…は、はい…」

なんとか震える声を抑えようとしたが、表情で怯えているのは丸わかりだ。
しかし、鬼龍がそんな器の小さい人間なわけがなく…

鬼龍「…俺さ、マツバの嬢ちゃんが書いたあの歌詞を見て、嬉しかったんだよ」

マツバボタン「え…?」

呆気にとられるマツバボタンを余所に、鬼龍は続ける。

鬼龍「マツバの嬢ちゃんも綺麗な言葉の中に、自分の気持ちを表せる言葉を入れられた。それはすげぇ進歩なんじゃねぇかって」

マツバボタン「で、でも…キリュウさん達らしさもなくて…」

鬼龍「そうかぁ?バラードな恋の歌も趣があって良いと思うし、元々の曲調にも合ってるだろ」

マツバボタン「で、でも…」

鬼龍「でもじゃねえ。マツバの嬢ちゃんが作った曲を貶すのは、いくらマツバの嬢ちゃんでも許さねぇ。当然永谷さんもだ」

マツバボタン「………………」

鬼龍「…俺がそんなこと言える立場じゃねえのは分かってる。でも…俺の大好きな「紅月」の、嬢ちゃんが作った歌詞の曲を、悪く言わねぇでくれや」

マツバボタン「…キリュウ、さん」

鬼龍「おう」

マツバボタン「…ありがとう、ございます…!」

やっと見せたマツバボタンの笑顔。それに鬼龍は安心した笑みを浮かべた。
…やっぱり、四葉のクローバーは幸せを呼ぶんだな、と、仔兎達に感謝した。



…その後レウイシア達の元へ帰った二人だったが、あんずには泣きながら土下座されそうになり、神崎に至っては再び切腹騒動を起こしてマツバボタンとレウイシアが慌てたのは言うまでもない。


○●○●○

永谷「クソがッ!!!」

一方その頃、永谷は誰もいないホールのゴミ箱を怒りのままに蹴飛ばした。
やはり先程の屈辱に耐えられずストレスを抱えていたのだ。

永谷「あいつら俺より女子に人気だからって付け上がってんじゃねーぞ!!!せっかくあいつらの作詞家買収したってのによォ!!」

…そう。元々紅月の新曲の作詞を手掛けていた作詞家は、永谷に買収されていたのだ。
永谷は関与していない事務所と社長の名前を出して、「この歌詞を自分の物に出来なければ今後そちらとの仕事はないものとなる」と脅しをかけ、作詞家は苦渋の決断で紅月に提供しようとしていた歌詞を永谷に渡してしまったのだ。

「へぇ?その話、詳しく聞かせてくれる?」

永谷「なッ…!?」

突如現れた人物に、永谷は声を失った。
それもそのはず。現れた人物というのが…

永谷「て、天祥院英智!?」

英智「知ってるんだね、光栄だよ」

アイドルユニット「fine」のリーダーであり、ESを統括する天祥院英知てんしょういんえいちだったのだから…!

永谷「な、なんでこんなところにっ…」

英智「そりゃあ、RhythmLinkはES配下の事務所だからね。代表の僕が視察に来るのは当然でしょう?」

永谷「っ…!」

英智「それで?さっきの話、詳しく聞かせてくれないかな?」

永谷「そ、それは…!」

英智「言えないんだ?じゃあ君の事務所の社長にでも聞こうかな?社長とは僕の企業の下請けの仲だし」

永谷「っやめろ!やめてくれ!!それだけは…!」

英智「…やめてくれ?」



英智「うちのアイドルを不利な状況に立たせておいて、随分無責任なことを言うんだね」

永谷「ひっ…!」

笑顔でそう脅しをかける英智に、永谷は言葉を失った…。



…それから間もなく、永谷はLOSの出場を辞退した。理由は「体調不良のため」と公表されたが…。
その後、メディアにも永谷が出てくることがなくなった。SNSで色んな憶測が飛び交うが、真実を知る者は───?



LOS開催まで、もうまもなく…。



アーサー「いや、ざまぁなんだけども…(呆)」

琴葉姫「憎たらしい人物描写書けなくて死んでます(白目)」

後半LOSの本番になります!いや熱が冷めかけててどうしようってなってますが!!!(爆)絶対投稿しますので見捨てないでくださると幸いです(震え声)(クズ)
ここまでの閲覧ありがとうございました!感想Okです