二次創作小説(新・総合)
- Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.165 )
- 日時: 2020/06/17 22:38
- 名前: 琴葉姫 (ID: FyzG1Vo4)
もうお察しでしょう。twstの沼にどっぽんしてしまいました(爆)なお、スマホの容量の問題でアプリインスト出来ないんでインストできるまで仮契約と言うことになっています←ストーリーなどはようつべで観て参照にしています。
そしてtwstのとあるキャラと、FGOのエレシュキガルが新しく夢交界のカプになります。駄目な方は閲覧をご遠慮ください。
大丈夫!と言う方は、どうかよろしくお願いしますm(_ _)m
想いを伝える言葉 前編
ノウム・カルデア。
またの名を「彷徨海カルデアベース」。
地球侵略が行われ全土を「人理漂白」が襲った。しかし「彷徨海」は漂白を免れており、シオン・エルトナム・ソカリスがエントランス一帯を借り受ける形で、旧カルデアの生き残り達と合流後、契約サーヴァントであるキャプテンに依頼して改装させ、完成させた「白紙化地球解決プロジェクト」の本格的な前線基地である。
旧カルデアのようにサーヴァントを可能な限り召喚し待機しているサーヴァントが増えてきた。まぁ、「異世界からの助力」等も支援があるため「本来」のノウム・カルデアよりは多少融通が利くしお遊びにも参加したりするのだが。
それはさておき、そのノウム・カルデア・あるいは旧カルデアのマスター達の人理修復に協力し、再びこのノウム・カルデアに再召喚された、一基のサーヴァントが食堂で一人静かに考え事をしている。
エレシュキガル「……………」
それは、ランサークラスのサーヴァント、真名・エレシュキガルだ。
メソポタミア神話に登場する冥界の女神で、特異点・バビロニアの人理修復立役者、そこから縁が生まれカルデアに召喚された。
彼女は悪に属していながら、根は心優しい。そんな彼女が悩んでいるとなれば、周りが放っておくはずがなく…。
エピデンドラム「やっほーエレちゃん、隣いい?」
エレシュキガル「へっ!?あ、ま、マスター!?え、ええ、どうぞ」
カルナ「俺もいるぞ」
エレシュキガル「カルナも!?あ、私、邪魔だった?」
エピデンドラム「ああ違う違う。そのまま座ってて」
カルデアのマスター・ランサーのマスターであるエピデンドラムと、彼女のパートナーであるカルナがエレシュキガルの横に腰かける。
エレシュキガルは慌てて席を立とうとしたが、エピデンドラムの許可を得て再び腰を下ろした。
先程の静かさとは様変わりし、汗を垂らしてぎこちない仕草を見せる彼女に、エピデンドラムは苦笑いしつつも落ち着かせる。
エピデンドラム「ごめんねー。なんだかエレちゃん、考え事してるって言うか、悩んでるみたいだったから。エレちゃん、色々頑張ってるから何か力になってあげられないかなって」
エレシュキガル「え、い、いや、べ、別に悩んでなんてないのだわ!さっきのは、えっと…」
エピデンドラム「あ、ここでは言えないことだったり?場所変える?」
エレシュキガル「ち、違うの!え、ええと、ええと…」
カルナ「施せることなら、協力したいのだが」
エレシュキガル「う、ううううう…!」
顔を赤くして唸るエレシュキガルに、エピデンドラムとカルナはどうしたことかと不安になる。
あの、エレシュキガルがあんなに悩み、相談を持ち掛けることすらこんなに躊躇う事態とは…絶対に生半可なことではない。
…まぁ、彼女は結構…否かなり「ポンコツ」なところもあるし、杞憂であればいいのだが。
二人がそうこう考えている最中に、エレシュキガルは深く息を吐いて深呼吸をした。
数拍開けて口を開いた。どうやら意を決して話してくれるようだ。
開幕に「実は…」と置き、話し始める彼女の「相談」を、二人は訊き始めた…。
エレシュキガル「え、えっと、えーと…さ、最近、夢交界に新しい世界の人達が加わったでしょ?ほら、マーリンが一時転移してお世話になったって世界の…」
エピデンドラム「へ?…あー、ロッ君達と似たようで違う世界の人達だっけ?あんまよく覚えてないけど」
カルナ「マーリンが「まどマギやってるハリポタと見せかけたディズニー」と言っていた世界の者達か」
エピデンドラム「それ言うのやめてカルナ!!!」
そう。夢交界とつながった新しい世界…正しくは今現在時点では「仮契約」なのだが、その世界からまた新しい「嫁」達がやってきた。その嫁達も正式なものではないのだが、創造主である琴葉姫は正式に嫁にする気満々でいる。ただ「諸事情」で現時点では正式にできないだけだ。そう、こちらにもちょっとした事情があるのだ。
まぁそんなわけで新しく嫁に加わった者達が住む世界…ツイステットワンダーランドの魔法士育成学校「ナイトレイブンカレッジ」の生徒達が数名、琴葉姫の推薦で夢交界に行き来している。仮契約なのと彼らも学園生活に重きを置くため、玉響館での滞在は出来ないのだが…。
そして先程の会話にもあった「マーリンが一時転移して世話になっていた」というのは…とても簡易的にまとめれば
マーリンは気が付くとツイステットワンダーランドのナイトレイブンカレッジにいて
魔術師なのに魔法適性がないと言われその証拠にスキルも宝具も使えなくなっており(ある日を境に制限付きとはいえ使用できるようになるが)
紆余曲折あってグリムというモンスターと一緒にナイトレイブンカレッジの監督生になってしばらく生活していた。
…という三文小説のようなことがあったのを、カルデアの者達が知った時は全員が天地がひっくり返るほどびっくりした。どのような現象があってそんな…いや、カルデアのマスター自体全員異世界から連れてこられたんだけども。
そして、あの、マーリンに。「友達」が出来た。
「グランドろくでなし」という別名で呼ばれるほどのマーリンに、友達になってくれるという存在がいる世界なのだから、カルデアのマスター、職員、サーヴァントですら全員が恐れ慄いた。
実際会ってみると、確かに悪戯好きだったり横暴だったり容量が悪かったり色々マイナス面はあるが、基本的にみんないい子で尚更驚く。何故あのマーリンと…?と恐る恐る訊いた者に対し…
「あいつはオレ様の子分なんだゾ!」
「色々世話になったしな。ちょっとっていうかすげー変なところもあるけど」
「そんなに恐れるほどか?確かにずばずば物事を言うけど、確かに的確なことだ」
と言うものだから言葉を失った。絶句だ。円卓の騎士達に至っては「どう猫を被ったらお前の評価がああなるんだ」とマーリン本人に詰め寄ったレベルなのだから阿鼻叫喚だった。
…ただ、マーリンのことを子分と称していたグリムという猫のようなモンスターとフォウが仲良くなりフォウのパンチをグリムが真似するようになってマーリンが異界のアーサー王に愚痴を吐いていたのは無様だったというのは、キャスターのマスター談だ。
…まぁ色々と説明してきたが、これがエレシュキガルが話した相談の詳細の一部だ。
エレシュキガルの悩みは、それに関することのようだ。
何かマーリンがしたのか…?とエピデンドラムと、カルナにまで思われるのだからこの世界のマーリンの悪名高さは有名なのだろう。まぁ実際本当にろくでなしなのだが。例え世界を救った立役者の一人であっても。
エピデンドラム「それがどうしたの?まさかマーリンとなにかあった?魔理沙に言っておくよ?」
エレシュキガル「い、いえ!彼は関係ないのだわ!えーと…その、新しく「嫁」に加わった一人に、イデア君って人がいるでしょ?長くてふわふわの、青い炎のような髪の子」
エピデンドラム「え?そんな人いた?カルナ覚えてる?」
カルナ「確か…マシュがディズニー映画・ヘラクレスに登場する悪役であるハデスをモチーフとしていると言っていた気がする」
エピデンドラム「よく覚えてるね!?」
カルナ「役に立ったのならいい」
再び長くなってしまって恐縮なのだが、説明を再開する。
ツイステットワンダーランドきっての名門校・ナイトレイブンカレッジには「グレート・セブン」と呼ばれている英雄をリスペクトし、それぞれの英雄に基づいた七つの寮が存在する。
ハートの女王の厳格な精神に基づく「ハーツラビュル寮」
百獣の王の不屈の精神に基づく「サバナクロー寮」
海の魔女の慈悲の精神に基づく「オクタヴィネル寮」
砂漠の魔術師の熟慮の精神に基づく「スカラビア寮」
美しき女王の奮励の精神に基づく「ポムフィオーレ寮」
死者の国の王の勤勉の精神に基づく「イグニハイド寮」
そして、茨の魔女の高尚な精神に基づく「ディアソムニア寮」
あとマーリンとグリムしかいない「オンボロ寮」も新しくできたのだが、それは蛇足だろう。
ナイトレイブンカレッジの全生徒は前述した七つの寮に所属し学園生活を送ることになる。
誰がどの寮に所属するかは学園の保有する魔法の鏡「闇の鏡」によって相応しい寮を決められるようだ。なお、この闇の鏡に認めてもらえないと学園に入学できないし、世界中の事を把握しているらしく、その上でマーリンが異世界から来たと発覚したということは余談だ。
そして、先程エレシュキガルの口から出た「イデア君」というのは、イグニハイド寮の寮長であり、ギリシャ神話を基にした有名映画の悪役モチーフの人物で、新しく琴葉姫の嫁に加わった人物だ。
エレシュキガルは、琴葉姫の口からイグニハイド寮のことを耳にするなり目をキラキラさせた。
死者の国の王、それは冥界の女主人であるエレシュキガルからしたら、同職の仲間のようなものを感じたのだろう。
その勤勉な精神に基づいた寮の寮長がこの世界に来ると聞いて、エレシュキガルは胸の高鳴りが抑えられなかった。
どんな人なんだろう。仲良くしたい。でも私なんかがいいのかしら。
それからそんなことばかりが思考を占め、心臓がバクバクとせわしないのを抑えられないまま、彼…イグニハイド寮の寮長・イデア・シュラウドを一目見た。
モチーフとなった死者の国の王のように、蒼く燃え盛る炎のような長い髪。
死人を連想させる青い口紅が塗られた唇。青白い肌。
口を開くと垣間見える鮫のような尖ったギザギザの歯。
濃い隈が目立つものの自分の髪より綺麗な、宝石そのものと錯覚させる三白眼の金の瞳。
容姿は見惚れるほどに美しい。しかし…彼の内面は、とても変わり者だった。
声が小さすぎて聞き取れないと思ったら、突然タブレットを差し出してそこから音声ソフトで会話し始める。
そのタブレットから発せられるのはよく分からない単語を羅列。
そしてお決まりのように見せる、怯えた表情と震える体躯。
何故そんなに卑屈になってしまうのだろう、何故そんなに怯えているのだろう。ここにいる者達は貴方に害をなそうなんて考えてすらいないのに。
遠目でイデアをつぶさに観察するエレシュキガルの脳裏には疑問こそあれど、失望や軽蔑の念は一切なかった。
…もしかして、彼も私と同じ…?
エレシュキガルは生まれて間もなく冥界へ落とされ、悲しみも喜びも、友人も得ることもなく、課せられた仕事をこなしてきた。
そんな中カルデアのマスター達、多くのサーヴァントと出会って、彼ら彼女らとの旅は彼女の宝物となった。
私も、マスター達のように彼に何かしたい。
でも…私なんかにそんなこと出来るのかしら。私は、マスター達や、他のサーヴァントのように素晴らしい存在ではない。
イシュタルみたいに…何も持っていない。
そうこう考えている間に、歓迎パーティーの時間は進む。
エレシュキガルはエピデンドラムやマスターの一人である千桜、その相棒であるマシュと離れ、イデアを探していた。
せめて、一言でも話がしたい。
健気で奥ゆかしい願いは聞き届けられ、イデアを見つけた。エレシュキガルの表情が花が開くように可憐なものとなる。
しかし、どうやらイデアはパーティー会場から抜け出すようだ。
首をかしげ疑問に思いつつ、エレシュギガルは彼の後を追う。
しばらくイデアが歩みを進めると、誰もいない、月だけが灯を照らす噴水の囲いに座りとても大きなため息を吐いた。
イデア「なんで僕があんな陽キャイベントに参加しなきゃいけないんだ…今頃ならソシャゲの周回頑張ってたのに…てか嫁って奴ら全員イケメン美少女で無理…なんでオルト連れてこられなかったの死ぬ…」
そして、サーヴァントであるエレシュキガルですら聞き取れないレベルの小さな声で独り言を吐いていた。
どうしたんだろう。疲れてるのかしら?声を掛けるべき?で、でも心の準備が…
イデアに話しかけるのをためらっていたエレシュキガルだったが、隠れていた薔薇のアーチに腕が当たり、葉がこすり合って音が生じる。
それを、イデアは聞き逃さなかった。
イデア「ヒッ…!だ、誰!?」
立ち上がって周りを挙動不審気に見渡すイデアを見て申し訳ない気持ちがどんどんこみ上げてくる。慌ててイデアの前に姿を現した。
エレシュキガル「ごごごごごごめんなさい!!お、驚かすつもりはなかったのだわ!」
あわあわとした手ぶりで謝罪するエレシュキガル。イデアが彼女を瞳に捉え…ているはずなのだが、硬直したように動かない。
しかしそれ以上に双眸が、瞬きすら許されないと言わんばかりにエレシュキガルを見据えていた。
え、な、何何?私そんなに変な格好してる???
一切の動きを見せないイデアに不安を覚え、「ね、ねえ」と短く声を掛ける。
それが解除の合図かのように、イデアは身体をとても大きく跳ね上げ背中を向けその場から急いで逃げようとした───
エレシュキガル「まっ待って!!!!!」
イデア「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
が、それをエレシュキガルは許さなかった。
イデアが驚くほどの速さで腕を掴み、待ったをかける。
どうしよう、手が汗ばんでる。ごめんなさいイデア君!
心の中で誠心誠意謝罪し元々小さい瞳をこれでもかと見開くイデアに、更に申し訳なくなる。
しかし、自分も…ここで引くわけにはいかないのだ。
エレシュキガル「あ、あのっ…!私、貴方とお話したいの!」
イデア「ぇ……………」
エレシュキガル「い、いきなりこんなこと言われてびっくりするかもしれないけど…お、お願い…」
こうしてみると、イデアは身長が結構高い。腰を曲げ、彼の顔を見上げているエレシュキガルは小さくそう思った。
…そして、イデアにとってそれは、"上目遣い"だ。
青白かった肌がみるみる朱に染まり、イデアはもう片方の腕で顔を隠すように覆った。
その真意が分からなかったエレシュキガルは更に狼狽する。
え、なんで顔が赤いの!?急に熱が出た…なんてことじゃないわよね!?どう考えても私が何かしたとしか思えないのだわ!?
頭の中がパニック状態のエレシュキガル。イデアが何故急に顔が赤くなったか。本気でわかっていない。…そういうところが、「ポンコツ」と呼ばれる所以なことを、今の彼女にとってはどうでもいいことだった。
ふとイデアがポケットから何かを取り出す。それは最初の時に見たタブレットだ。宙にふわふわと浮き、エレシュキガルの目の前に陣取る。
そして、あの時のように音声が発せられる。
『す、すみません。僕あまりうまく話せなくて…失礼だと思いますけど、これを通してでも、いいですか?』
上手く喋れない?喉に何か障害があるのだろうか。
まず疑問に思ったことはこれだったが、音声の内容を脳で丁寧に反芻し、理解するとエレシュキガルが明るい笑顔を見せた。
エレシュキガル「いいのっ!?」
イデア「っ…」
それを間近で見たイデアは顔を逸らした。エレシュキガルはそれにショックを受けたが、タブレットから謝罪の嵐が流れてきて、本当に申し訳なくなった。
イデアのタブレットから『あの…お名前は』と聞かれ、エレシュキガルは待っていましたと言わんばかりのドヤ顔で名乗った。
エレシュキガル「サーヴァント・ランサー。冥界の女主人、エレシュキガルよ!」
イデア「えっ」
そう名乗るエレシュキガルに固まったイデアだが、すぐ優しい笑顔に変えたエレシュキガルに、イデアは再び目を見開く。
エレシュキガル「貴方は死者の国の王をリスペクトしているのでしょう?なら、私とも仲良くしてくれると嬉しいのだわ!」
イデアとエレシュキガルの逢瀬(?)
感想まだ
- Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.166 )
- 日時: 2020/06/17 22:02
- 名前: 琴葉姫 (ID: FyzG1Vo4)
そうして、イデアとエレシュキガルは雑談を始めた。
イデアからそちらの世界の冥界はどういう所なのかを聞かれ、「私の支配する冥界では、そこにいる限り私の法と律には神であろうと逆らえないのよ!」と再びドヤ顔でそう言うと、イデアは目を子供のように輝かせた。…イデアがととてつもなく小声かつとてつもなく早口で何かを呟いたことをエレシュキガルは知らないのだが。
逆に、エレシュキガルが「ナイトレイブンカレッジってどういう学校なの?どういう授業をするのかしら。魔法を習う学校なんて楽しそう!」とこちらも目をキラキラさせてイデアに訊いたが、表情を曇らせ『…そんなテーマパークみたいなところじゃないですよ』と言った。もしかして地雷を踏んでしまったのかと慌てて話題を変えた。
それが功を奏し、イデアには弟がいると聞いてエレシュキガルは大層驚いた。弟の名前はオルトと言い、自分と違って明るく賢く出来た弟なんだとか。弟のことを話すイデアの表情が比較的明るく饒舌なもので、本当に弟想いの良いお兄さんなんだとエレシュキガルは感心した。自分とイシュタルとは大違いだと、少し寂しくも感じたが。
「私もオルト君と会ってみたいわ!きっとイデア君に似て綺麗な子なんでしょうね!」と言うと、何故かイデアは無言になり浮かない表情をしてしまって「だ、ダメかしら?」と涙目になってしまい慌ててイデアが『駄目だなんて!近いうちに絶対会わせます!オルトにも、エレシュキガル様のことお話しますね!!』とタブレットから力強い言葉が発せられたので、気を遣わせてしまって情けない…と、思っていたがふと気が付く。
彼は、自分のことを何て言った?
エレシュキガル様…、……………エレシュキガル、様ぁ!?
エレシュキガル「ささささ様付けだなんて!そんなに気を使わないで!め、冥界の女主人という肩書はあるのだけれど!冥界では私の法と律には誰であろうと逆らえないけれど!!そ、そちらの死者の国の王は別にいるのでしょう?そちらとは無関係の私に、そんな仰々しくしなくても…!」
イデア『い、いえ!イグニハイド寮の寮長の僕にとって、死者の国の王はまさしく神そのもの!その同格である存在のエレシュキガル様は尊い存在!死者の国の王同様僕にとって神そのものです!ですからエレシュキガル様を敬うのは当然のこと!!!ちゃん付けとかたん付けは論外、さん付けですら万死に値します!可能ならば様付け以上の敬称を付けたいくらいです!知りませんけど!』
エレシュキガル「え、ええ………」
やっぱり、彼は変わり者だなぁ…エピデンドラム含む一部のマスターや職員や琴葉姫を含めたこの世界の人達なんて、『エレちゃん』とか呼んでるのに…
しかも、イデアはエレシュキガルを神とでも思っているかのように慕っている。否、それはもはや畏敬や崇拝の類だ。
エレシュキガル「(…私、彼にそんな風に思ってもらえるような器じゃ…)」
黙ってしまったエレシュキガルを深読みしてしまったのか、イデアの身体が震え始めた。
イデア『も、もしかして様付けはお気に触ってしまいましたか…?ご、ごめんなさい、僕人付き合いがクソなコミュ障陰キャで、ごめんなさいごめんなさい』
エレシュキガル「ち、違うの!大丈夫よ。イデア君が呼びやすい呼び方で呼ぶと良いわ。他の呼び方は、もっと仲良くなってからにしましょう」
イデア『…もっと、仲良く?』
エレシュキガル「ええ!あ、マスターやみんなは私のこと、「エレちゃん」って呼んだりするの。イデア君も、その内そう呼んでもいいわ。…って上から目線みたいねごめんなさって汗の舁き方が尋常じゃないのだわ!?!?!?どうしたの!?冷えて熱が出ちゃった!?い、医務室…!」
それからしばらくして、歓迎パーティーが幕を閉じイデアは元の世界へ帰って行った。
あれから約3週間後。それ以降イデアとは会話どころか、対面すらしていない。仮契約で自分達みたいに好き勝手に夢交界に行くことも出来ないのだ。当然といえば当然なのだが。
エレシュキガル「私、もっとイデア君と仲良くしたいの。冥界の女主人としてではなく、ランサーのサーヴァント・エレシュキガルとして、イデア・シュラウドという一人の人物と」
エピデンドラム&カルナ「……………」
エレシュキガルが語った内容について、エピデンドラムとカルナは驚いて互いの顔を見合わせた。
あのエレシュキガルが、冷酷かつ厳格な冥府の番人であるエレシュキガルが、なんとも甘酸っぱいことを真剣に、かつ愛おしげに思い出すように前述した思い出を自分達に語ったのだから言葉が出なかった。
働きたくないがモットーのエピデンドラムが今までになく脳を働かせる。どういう言葉を掛けるのが的確なんだ、教えて偉い人!
後日熱が出るのではと思う程考えに考え抜き、発した言葉が…これだ。
エピデンドラム「エレちゃん、なんだかそのイデアっていう人に恋してるみたいだね」
エレシュキガル「えっ」
あれっなんか様子がおかしい。あれ?言葉間違えた?コミュニケーションは難しいねぇ!!!
自分の言葉に固まってしまったエレシュキガルの表情を見て、エピデンドラムの脳は死んでしまった。彼女にはハードルが高すぎたのだ。カルデアマスターの中では常識人の部類に当たるエピデンドラムも現実逃避するくらいだ。
泣きそうになっているエピデンドラムをカルナが無表情で見つめている。見てるだけなら助けてよぉ!エピデンドラムは泣き叫びたくなった。
しかし、そんな彼女を余所にエレシュキガルは…顔がどんどん赤く染まっていく。顔だけでなく耳、首すら血の涙石レベルの濃さで赤くなる。
それにエピデンドラムは現実逃避から帰ってぎょっとした。そんなに赤くなるなんて流石に不味くないか?と。堪らず上擦って声を掛けた。
エピデンドラム「エレちゃぁん!?どどどどどどうしたのやばいくらい顔が赤いよ!?それは流石に体調が悪いとしか思えないよ!?アスクレピオスに見てもらお!?」
カルナ「マスターの言っていたことが当たって恥ずかしいということか」
エピデンドラム「カルナァ!!!カルナそういうとこォ!!!あっまってエレちゃん駄目だよそれ以上赤くしたらパーンッってなるから!!!パーンッってなっちゃうから!」
カルナ「座に還るだけだと思うが」
エピデンドラム「だ ま っ て て !!!」
カルナ「承知した」
なんとかエレシュキガルを落ち着かせ、再び話を聞きだす。
顔色は多少良くなったもののまだほのかに赤が残っており、涙目でふーっふーっと荒い息を吐くエレシュキガルが開幕告げたことは…
エレシュキガル「いでっイデア君に恋してるとかじゃなくて!!!イデア君と友達になりたいだけなのだわ!!!同職の意思を受け継いだ人物にそう思うのは当然でしょ!?」
エピデンドラム「…アーウンソウダネー。ゴメンネエレチャンー」
どう考えても"そういう好き"なんだよなぁ…とエピデンドラムは内心で思うが決して口には出さない。先ほどの二の舞は御免だ。
エピデンドラム「で?イデアって人と仲良くなりたいんだよね?直接会いに行けないの?」
エレシュキガル「私もそれを琴葉姫にお願いしたわ。そしたら仮契約のあの世界に行くには許可が必要なんだって。色々と手順が面倒くさいみたいだし、学園側も部外者を容易に招き入れるわけにはいかない、とも言っていたわ」
エピデンドラム「え、でもマーリンは普通に行き来してるよね?」
エレシュキガル「マーリンは学園の監督生という立場上、仮契約でも顔パスならぬ存在パスとも言っていたわ」
エピデンドラム「うーん…こっち側に来てもらう、っていうのは?」
エレシュキガル「学園側と同じよ。仮契約の世界の者をカルデアに簡単に招き入れるのは駄目ってシオンとダ・ヴィンチと新所長が。琴葉姫が正式契約予定とはいえ旧カルデアと同じ末路になってしまっては絶対駄目だから、って」
エピデンドラム「うわ~…仮契約って言う枷が面倒くさいなぁ~…う~ん……………」
式部「あ、あの………」
頭を悩ませていたところに不意に声を掛けたのは、キャスター・紫式部だった。
おずおずと控えめにかけられた言葉の主に、身体を捻って目線を向けると式部は「ぴえっ」と小さい悲鳴を上げた。
式部「す、すみません…悩んでいるようでしたので、もしお力になれればと思いまして…」
エピデンドラム「え、香子ちゃん何かいい案知ってるの!?」
式部「いい案、と言いますか…その………」
エレシュキガル「よ、良ければ教えていただけないかしら…?」
切なげな表情で頼み込むエレシュキガルに、式部は変わらず控えめに案を提示した。
式部「そ、その…手紙を書く、というのは如何でしょうか…?」
エレシュキガル「て、がみ?」
短く、たどたどしく復唱したエレシュキガルに、式部は「ええ」と肯定する。
式部「手紙とは、詞を文にし、想いを綴るもの。手紙であれば口には出せない言葉も書けることもありますし、手紙でしか気づけないこともあるでしょう。そして、その想いは形として残る。…と思ったのですが私などが卓説のように意見するなど烏滸がましいですよね!?申し訳ございません…!」
エピデンドラム「香子ちゃんナイス!それだよ!」
式部「えっ」
エレシュキガル「えっ」
式部の提案に、エピデンドラムは心から賞賛した。それに対し式部と、何故かエレシュキガルまでも目を丸くし呆気にとられた。
エピデンドラム「文通なら手紙のやりとりするだけだし仮契約でも違反にならないし良いと思う!流石香子ちゃん!」
式部「か、過分なお言葉恐縮です…」
エレシュキガル「え、ちょ、ちょっと待って!?文通って、どうやってあそこの世界に届けるの!?」
エピデンドラム「マーリンに頼めばいいじゃん」
エレシュキガル「えっ」
式部「そうですね。マーリン様はカルデアで唯一かの世界へ自由に行き来出来ますし、適任でしょう」
エピデンドラム「あたしがマーリンに頼んだげる!魔理沙の令呪使ってもらってでもやってもらわなきゃね!」
エレシュキガル「いくらマーリン相手とは言え貴重な令呪をこんなことに使ってはいけないのだわ!?」
式部「マーリン様なら快くお引き受けくださりますわ。先程のエレシュキガル様のお話も、お聞きになられていましたし」
エレシュキガル「えっ」
エピデンドラム「えっ」
式部「えっ?」
式部の言葉に、エレシュキガルが再び固まりエピデンドラムも同調する。
式部がきょとんとした表情で、意味を説明し始めた。
式部「先程から、私だけでなく何名かのサーヴァントと職員の方々も、遠耳でエレシュキガル様のお話をお聞きしていたのです。食堂ですから、人の通りも多いですので。その中にマーリン様もおりました。話が終わると同時にそそくさと何処かへ行ってしまわれましたが…」
エピデンドラム「え゛っ………」
エレシュキガル「…………………………」
エピデンドラムの口角が引き攣る。ゆっくりとエレシュキガルの方に目を持って行って様子を窺うと…わなわなと身体を震わせはくはくと金魚のように口が開閉している。
あっこれなんかデジャブ…エピデンドラムは恐る恐る、エレシュキガルの肩に手を置いた。
エピデンドラム「お、お~い、エレちゃ~ん…?」
その言葉を聴認するや否や、エレシュキガルの顔が再び赤に染まった。
先程よりは濃くないが、それでも心配するには十分な色だ。そして、先程と違い…
エレシュキガル「あ、ああ、ああああああああああ!!!!!座に還る!座に還るのだわああああああああああああ!!!!!!!!」
エピデンドラム「まっっっっっっっっっってエレちゃん!!!今座に還ったらイデアって人に手紙書けないよ!!!」
式部「あ、あわ、あわわわわわ…!申し訳ありません私が出しゃばってしまったばっかりに!!」
エピデンドラム「香子ちゃんは悪くないから!」
エレシュキガル「ああああああああああああ!!!!!!!」
エピデンドラム「SAN値チェック失敗ばりの発狂具合なんだけど!?カルナなんとかしてー!」
カルナ「……………」
エピデンドラム「いや何とかしてってカルナ!」
カルナ「……………」
エピデンドラム「せめて何とか言ってカルナ!!!」
カルナ「……………」
エピデンドラム「…あ゛っ!もう喋って良いから!!!」
カルナ「承知した」
エピデンドラム「ホントカルナそういうところだからね!?あっ待ってエレちゃん自分の槍心臓につきつけようとしないでええええええええ!!!」
…この後、騒ぎを聞きつけた他マスターやサーヴァントや職員達によって、エレシュキガルは鎮められた。が、当然エレシュキガルと、管理不行きとしてエピデンドラムとカルナはエミヤとゴルドルフ新所長と中原中也にきつーく、絞られたのだった(式部は話を聞いたうえで難を免れた)。
後に、今回の事件は「ノウム・カルデア エレシュキガル食堂暴走事件」として語り継がれイシュタルとギルガメッシュ(キャスター)に死ぬほど揶揄われるネタとなったのだった。
───そして
エレシュキガルの書いた手紙をイデアが読むまで、もう間もなく。
アーサー「ええ…(困惑)」
琴葉姫「…( ˘ω˘ )(もはや弁論すらない)」
イデエレの恋(?)の行く末はどうなる───!?
感想OK