二次創作小説(新・総合)

Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.288 )
日時: 2023/03/04 15:00
名前: 琴葉姫 (ID: TPmYcxrv)

 ※注意※
今回の話では、シリアス要素、人の死の示唆、刀剣破壊の示唆、現実とは間違っているであろう描写、ご都合展開が含まれます。
苦手・無理だという方はブラウザバック推奨です。

それでは、よろしくお願い致します。

↓ ↓ ↓



審神者ともだちであることとは

太一「………」

メカクレの美少年…広尾ひろお太一たいちは自室で、突然玄関前に落ちてきた一振りの刀を凝視していた。
幸い家族に見つかることなく刀を自室に持ち込めたが、この刀は一体何なのだろう、どこから持ち出されたものなのだろうか。不安に思いながら思考を巡らせる。
もしかしたら美術館からの盗難品?だったら警察に電話した方が…?と考えていると…。

太一「…ボク素手で触っちゃったんだけど大丈夫かな!?」

普段手袋など使用しない太一は、素手で刀に触れてしまったのだが指紋とか大丈夫なのかと焦るが、どうしようどうしようと考えつつも冷静になれと自らを自制する。
再び刀に向き直り、凝視を再開する。
そして恐る恐る、再び触れてみようとする…

その時だった。



ぶわっ!

太一「わ…!?」

突如、刀から桜吹雪が吹き荒れた。
それに驚いて目を瞑り両手でガードする。
しばらくすると桜吹雪が収まり、恐る恐る、目を開けてみると…



一人の、美形の変わった格好をした青年が立っていた。
そして

「───主」

と、太一のことをそう呼んだ。

太一「…………へ?」

唖然として放心している太一に、美形の青年は再び声をかける。

「主、この『へし切長谷部』は主に再び相まみえることを幸甚に思います。さぁ、主命を」

と言って、太一に傅いた。

その様子に、太一は…

太一「………え?…えええええええええっ!?!?!?」

と、太一の叫び声が部屋に木霊したのだった───。



~翌朝・日向なつめの地下研究所~

太一「お、おはようございますっ…!」
あんず「あ、広尾君!おはよー!」

おずおずとやって来た太一に元気に挨拶して出迎えたのはこの地下研究所の主である日向ひなたなつめの妹である日向ひなたあんずだ。
そのあんずの傍らに…

葵「はぁ…ねむ…」
静「ぼくの講習を受けていて居眠りとは言いご身分だなネコちゃん???」
龍成「代々木ーこれで合ってるかー?」
静「全然違う出直せ」
龍成「えっマジで!?どこがどう違うんだ!?」

座りながら机に伏せて寝ている黒髪の美形高校生が渋谷しぶやあおい。あんずとはクラスメイトだ。
その葵の頭をノートで何回も軽くはたき額に青筋を立てているピンク髪のクール系イケメンは代々木よよぎしずか。名門エリート校・開駒学園に通う高校生。
その静に駄目だしされている金髪の男前系イケメンは神田かんだ龍成りゅうせい。江戸っ子気質で義理堅い陽キャ…なのだが、少々おつむが弱いのが玉に瑕。

彩人「嗚呼…今日もオレは美しい…。この肌、この髪、この唇…流石四十六億年に一度のスーパースター…」
静「あのナルシストはどんな状況でも自分が大好きだな()」

少し離れて椅子に座り、手鏡を手にして自分の美貌を称賛する…その称賛に値する美貌を持つ青年、六本木ろっぽんぎ彩人あやと。彼は今を時めく人気俳優だ。
そんな彼と高校生4人、そして中学生。
一体どのような集まりなのか…?

なつめ「みんな揃っているわね」
あんず「なつめ姉!」

そこへ、地下研究所の主であり、あんずの姉であるなつめがやって来た。
なつめは初めは笑顔であんずたちの顔を見回したが、すぐ真剣な表情になる。

なつめ「みんな、いつもミュウミュウの活動ありがとう。改めてお礼させて」
葵「別に…改まって言われることじゃ」
なつめ「でも、みんなには本当に感謝しているの」

そう言ってから、タブレットを操作して大型モニターに映像を反映させる。
モニターには、敗退し廃れたビルや瓦礫…そうした光景が映し出されていた。

なつめ「エイリアンに寄生されて凶暴化した動物たちや植物たち、『キメラアニマ』によってもたらされる地球の滅亡…。キメラアニマはあなたたち、レッドデータアニマルの遺伝子を持つ『ミュウミュウ』でしか倒せない。あなたたちじゃないと地球を救えない」

…そう、この世界の地球は、宇宙から来たエイリアンの侵略によりエイリアンに使役されている『キメラアニマ』によって、侵略と衰退に陥ろうとしている。
キメラアニマに対抗できるのは、絶滅危惧種『レッドデータアニマル』の遺伝子を注入された『ミュウミュウ』…葵たち五人だけ。
地球の命運は、彼ら五人にかかっていると言っても過言ではないのだ。

葵「もちろん、頑張りますよ…。ヒーローなんで」
静「ぼくに為せないことはない」
龍成「エイリアンなんかに負けねー!」
彩人「オレの美しさに敵う者などいない」
葵「アンタはほんとブレねーな()」
太一「ぼ、ボクももちろん、頑張りますっ!」
あんず「私も、みんなをサポートするから!」

なつめ「ありがとう。頼りにしてるわ。もちろん、私に出来ることなら協力するわ」

そう言って、なつめは用事があると言って研究所から出て行った。
残された葵たちは再び勉強を再開する。
が、太一は彼らに『彼』のことを話すか悩んでいた。

太一「(あんずさんたちに、『長谷部さん』のこと、言うべきかな…)」

それは、昨夜のこと───。

*~*~*~*~*
太一「あ、ある、じ…?」

刀から突然人が出現…出現?し、それを持っている男。
そして、自分のことを『主』と呼んで傅いている怪しい男に、太一は目と頭がぐるぐるとして混乱している。
そんな様子を見て、『へし切長谷部』と名乗った刀から出現した男は心配そうに太一の顔を覗き込んでくる。

長谷部「主、如何なさいましたか?お身体の具合が優れないのでしょうか?」
太一「え、あ、あの…?」

自分がこんなことになっているのはお前のせいだ、とは気弱な太一は言えず、おずおずとへし切長谷部に質問する。

太一「え、ええと…へし切長谷部さん…でいいんですか?」
長谷部「よろしければ、長谷部とお呼びください」
太一「じゃあ、長谷部、さん…?」
長谷部「はい。何なりと主命をお申し付けください」

そう言って、胸に手を当てながら頭を下げる長谷部に、太一は先程よりはマシになったが、困惑しているままだ。

太一「ええと…長谷部さんは、何者なんですか?」
長谷部「…?俺は、主によって世に出された『刀剣男士』です」
太一「とーけんだんし…?」

聞きなれない言葉に、太一は再び目と頭がぐるぐるしてきた。
混乱に負けずに再度質問する。

太一「とーけんだんし、って、なんですか?」
長谷部「? 主である『審神者』によって顕現した、刀の付喪神です」
太一「付喪神…って、神様ってことですか!?」
長谷部「末席ではありますが、そうですね」
太一「刀の、神様…!?え、なんでそんなすごい人…人でいいのかな!?がここに…?」
長谷部「それはもちろん、主が俺を呼んでくれたからです」
太一「ボクが呼んだって…。ボクは、ただ落ちた刀を拾って…」
長谷部「主?大丈夫ですか?少し落ち着いてください」

混乱したままの太一を、長谷部は落ち着かせようとするが逆効果だ。
しばらくして就寝する際は人から刀の状態になったが、彼のことが気になり過ぎてあまり寝られなかった。
その後、刀のままにして学校に行くため家から出たが…ずっと、長谷部のことが気がかりだった。

太一「(何て言えばいいかな…。とーけんだんしとか付喪神のことって言って、信じてもらえるかな…)」

悶々と悩んでいると、それを見て龍成が心配そうに声をかけてきた。

龍成「大丈夫か広尾ー?なんか悩み事かー?」
太一「え!?あ、いえ、あの…」
葵「どうした?また誰かにいじめられてんのか?」
太一「い、いえ!そうじゃなくて、その…」
あんず「何かあったらなんでも言ってね?私たちで良ければ力になるから!」
太一「あ…」

真剣な表情で自分を見る『仲間達』に、太一は背中を押された気分だった。
意を決して、…少し協力してもらおうと思い口を開いた。

太一「あ、あの…みなさんは、『へし切長谷部』って刀を知っていますか?」
「「「は???」」」
太一「あ、す、すみませんすみません!」
あんず「あ、いやいや違うよ!ちょっと意外な話題だったからびっくりしただけ。ただ、私日本史とか刀のことは詳しくなくて…力になれなくてごめんね」

謝る太一にあんずは必死に弁解するが、太一の質問の答えはあまり分からないようだ。それは、葵と龍成も同様のようで…。

葵「オレも刀のこととか全然分かんねぇ…わりい」
龍成「オレも時代劇とか好きな方だけどわかんねー!代々木はどうだ?賢いだろ?」
静「誰に向かって口を聞いているんだ?」

不機嫌そうになりながらも、静は眼鏡のブリッジを指で上げた後自分の知っている知識を話し出した。

静「へし切長谷部は、織田信長が所有していたことで有名な日本刀だな。名の由来は、信長が膳棚の下に隠れた茶坊主をその棚ごと圧し切ったことからとされている」
龍成「へー!信長が使ってた刀なのか!」
あんず「面白い名前だなーって思ったけど、そういう由来があったんだ」
葵「こんなうんちくまで知ってるとか流石インテリピンク眼鏡」
静「ネコちゃんともどもぼくのことを何だと思っているんだ???」
彩人「博識は美しさに付加価値を与える。誇ると良い」
静「なんのフォローをしてるんだ???」
太一「あっありがとうございます…!そうですか、織田信長が…」
静「ぼくに分かるのはそれくらいだ。他に何か知りたいなら、ネットなり本なりを活用すると良い」
太一「はい!そうします!」
あんず「でも、どうして急に刀のことなんて?」
太一「あっ、その、学校の授業で出て来て…。テストに出るらしいから、覚えといた方がいいかなって」
静「…へえ。テストにね」
龍成「難しいこと習うし出るんだなー広尾の学校って」
太一「え、えへへへ…」

照れくさそうに笑う太一だったが、静は怪訝そうな表情を変えなかった。



感想まだ

Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.289 )
日時: 2023/03/04 15:09
名前: 琴葉姫 (ID: TPmYcxrv)

太一「帰りに、本屋に行って刀の本を買おうかな…」

太一は研究所の帰りに、本屋に行こうと歩みを進めていた。
そんな彼の背後から───

「おい」

不機嫌そうな声がして、太一は肩を跳ねさせた。
恐る恐る、後ろを向くと…太一と同じ制服を着た、男子生徒が数人いた。
ひゅっと息を飲む太一を無視し、リーダー格であろう体格のいい男子生徒が太一に一歩歩みよった。

リーダー格の男性生徒「お前…よくも俺のこと殺そうとしてくれたな」
太一「ッ…!」

その言葉を聞いて太一はびくりと身体を震わせたが、取り巻きの男子生徒達が煽り立てる。

取り巻きA「こんなヤベェ奴、俺達でやっちまおうぜ!」
取り巻きB「そうだな、これは必要な制裁だ」
太一「ッ、や、やめて…ボクは、」
リーダー格の男子生徒「何怯えた感じになってんだよ!俺らはお前の本性知ってるんだぞ!」
太一「ッ」

リーダー格の男子生徒が太一の胸ぐらを掴み、拳を振り上げて太一に殴りかかろうとする…!
直後にやって来る痛みを我慢するために、太一はぎゅっと目を瞑った。

しばらくしても、痛みは来ない。
代わりに、自分を掴み上げている男子生徒から悲鳴が聞こえてきた。

リーダー格の男子生徒「ぎッいああああッ!!?」
太一「え…?」

尋常ではない悲鳴に太一が恐る恐る目を開けると、リーダー格の男子生徒の腕を捻り上げている男の姿が飛び込んできた。
その男は、見覚えのある人物で…。

太一「はっ、長谷部、さん…!?」

その男は、刀剣男士と名乗った刀の付喪神、へし切長谷部だった。
長谷部は男子生徒を腕を捻り上げたまま、太一の方に目を向けた。その目は、先程と全く異なる優しいものだった。

長谷部「主…ご無事でよかった」
リーダー格の男子生徒「い、痛いぃぃ!や、やめて…」
長谷部「ふんッ」

すぐに男子生徒に目線を移し、太一を見ていた時と打って変わって蔑むような目を向けた後、地面に放り投げた。
地面に叩きつけられた男子生徒は呻き声を上げながらなんとか逃げようとする。取り巻きたちが長谷部に吠えた。

取り巻きB「な、何だよお前!?」
取り巻きC「広尾お前、そんなに俺達を痛めつけたいのか!?」
長谷部「言うに事欠いて、その言い草…。お前達が主に害をなそうとしていたのに、全く愚かしい」
リーダー格の男子生徒「ひ、ひぃ…」

恐々とした顔色で長谷部を見る男子生徒達を一瞥して、長谷部は腰の鞘にある刀の鍔を上げ、少しだけ刃を見せた。ちゃきり、と金属音が響く。
それを見て、男子生徒達は震えあがって逃げ出そうにも足がすくんで動けない。声も出せないようだ。

リーダー格の男子生徒「あ、あ…!」
長谷部「安心しろ。殺しはしないさ。だが───」

死ななきゃ安い。

その言葉を聞いて、太一は慌てて長谷部を止めようとする。

太一「長谷部さん待って───!」



葵&龍成「安いわけあるかあああああああッッッ!!!」
長谷部「な!?」
太一「え!?し、渋谷さんに神田さ…!?」
彩人「オレたちもいるぞ」
あんず「広尾くん大丈夫!?君たち、早く行って!」
リーダー格の男子生徒「ッ…!」

男子生徒達は、慌てて走り去って行った。
彼らを見送ってから、長谷部は不機嫌そうに葵たちを睨んだ。

長谷部「貴様ら、何故邪魔をする!」
葵「当たり前だろお前あいつらに何しようとしてた!?」
長谷部「決まっているだろう!主に害を為そうとしたんだ、絶対に許せん!」
静「それで刀を使って制裁、か…。銃刀法違反だぞ」
龍成「なぁなぁそれ本物の刀か!?うわかっけー!ちょっと見せてくれよ!」
葵「お前はお前で呑気か!?」
彩人「ほう、オレには及ばないが、良い顔をしているな」
葵「こいつはこいつで安定だし…」
太一「あ、あの、あの…?」

先程とは打って変わり、カオスな空間になった。
あんずの案で、人気のない公園へ場所を移動する。

○●○●○
長谷部「…それで?」
葵「それでじゃねーよ」

移動すると、長谷部は文句を言いたげに再び葵たちを睨みつける。
まず口を開いたのは、静だ。

静「お前は…『へし切長谷部』で合っているか?」
太一「えっ…!」
長谷部「如何にも。俺はへし切長谷部だ」
龍成「へー!やっぱりそうなのか!」
太一「ど、どうして…」
静「お前はこいつのことを「長谷部さん」と呼んでいたし、…特定の刀のことなど、中学の授業ではまず教わらない。刀マニアか、一部の歴史好きくらいしか分からないし知ろうとしないことだ」
葵「いや、こいつの持ってる刀がへし切長谷部ってことじゃねーのか?」
あんず「だとしたら、美術品を盗んだってことなんじゃ…」
長谷部「違う。これは俺の本体だ」
龍成「本体???じゃあ人間のお前は?」
長谷部「俺は主によって顕現した刀剣男士だ」
葵&あんず&龍成「と、とーけんだんし???」
静「それに、主、ね…。それは広尾のことか?」
長谷部「…広尾?」
太一「あ、ボク広尾太一って言います…」
長谷部「あ、ああそうだ。この方が俺の主だ」
彩人「そう言いはするが、名前も知らないのか」
長谷部「そ、それは…つい最近顕現したばかりで…でも、主には久しぶりに会えて…?」
葵「ん?」
太一「は、長谷部さん…?」

押し問答から、太一の名前を知り困惑している様子の長谷部。
長谷部の様子など気にも留めない様子で、静が質問する。

静「刀剣男士とはなんだ」
長谷部「…刀剣男士は、審神者によって顕現した刀の付喪神だ」
あんず「つ、付喪神!?」
龍成「神様なのかよ!スゲェ!」
葵「急に話がオカルトじみてきたな…」
彩人「人ならざる存在だから美しいのか」
長谷部「そんなことはどうでも…!」
葵「ところでハニワってなんだよへし切」
長谷部「その呼び方はやめろ!!!あとはにわではなく『さにわ』だ!」
静「審神者…古代の神道の祭祀において神託を受け、神意を解釈して伝える者のことだな」
龍成「本当に詳しいな代々木!それで、広尾はさにわ…?なのか?」
太一「違います!ボク神社や神様のことなんて全然…!」
長谷部「審神者は霊力さえあれば一般人からでも徴収されることがありますので、主もなれますよ」
葵「霊力…?」

そんな会話をしている時だった。

「おやおや、珍しい"物"がいますね」

その声を聞いて、みんな一斉にそちらを向く。
そこには、少し長い黒髪糸目の男がいた。その人物に、葵たちは見覚えがあった。

葵「チャイ…!」

…彼は、地球を侵略しようと目論むエイリアン集団『彼方の三賢者』の一人、チャイだった。
幾度も葵たちを窮地に立たせてきた強者…葵たちは身構える。

チャイ「怖いですねぇ」
葵「…お前ら、変身するぞ」
太一「で、でも、長谷部さんがいるけど…」
龍成「広尾が口止めすれば何とかなるだろ!」
あんず「アバウト!」
長谷部「しゅ、主命とあれば、なんなりと!」
太一「わ、分かりました!長谷部さん、今から起きること、絶対誰にも言わないでください!」
長谷部「主命とあらば!」
静「言質は取った!」
葵「行くぞ!」

『ミュウミュウ・メタモルフォーゼ!』

葵、静、龍成、彩人、太一が一斉のそう言うと、五人から光が発され、光が収まると誤認の姿が変わっていた。
露出が多く、ケモ耳などが生えている姿に長谷部は目を見開いたが、気にせず五人は口上を述べる。

太一「らしてがれてあせらせて。お礼にちょっぴり、ご奉仕させて!」
彩人「昂ぶりのけ反り有頂天!オレの地球に、ご奉仕するぜ」
龍成「ガッチリぶっとく燃えてきた!お礼にゴホーシ、大盛りでりゃあ!」
静「弾けて蕩けて悦んで。さぁ…お礼がほしけりゃ、ご奉仕しようか?」

葵「熱く、大きく、たぎってきたぜ。オレたち東京ミュウミュウが、地球の未来にご奉仕するにゃん!」

長谷部「(ポカーン)」
あんず「デスヨネー」
静「どうやらネコちゃんの口上はへし切には早かったようだな」
葵「テメーも大概だからな代々木ィ!!!」

顔を真っ赤にしながら叫ぶ葵を無視し、チャイはミュウミュウたちを一瞥した後、あんずの隣にいる長谷部に目を向けた。

チャイ「いやはや、本当に面白い"物"を携えて…これが『刀剣男士』と呼ばれる物ですか」
長谷部「ッ!?」

刀剣男士を知っているようであるチャイに、長谷部は警戒して抜刀準備に入った。
それを見てもなお、チャイは面白そうにくすくすと笑っているだけだ。

長谷部「…貴様、何故刀剣男士のことを」
チャイ「大したことではありませんよ。我々のパトロンに、あなたたちと関係の深い組織がいましてね」
長谷部「関係の深い…? …まさか、歴史───」
チャイ「そうだ、せっかくだからあなたも仲間に入れてあげましょう」

そう言って、チャイは瞬間移動で長谷部の目の前に現れた。
あんずが焦って長谷部に手を伸ばす。が───

あんず「長谷部さ───!」

一歩遅かった。
ミュウミュウ、あんず、長谷部の足元に、黒い穴が出現した。

長谷部「なッ!?」
太一「ま、また!?」
葵「日向!」

彼ら彼女らは、穴の中に落ちて行った───。

○●○●○
あんず「ん…ここ、は…?」
葵「無事か日向?」
あんず「渋谷くん…?」
龍成「みんな無事かー?」
太一「だ、大丈夫です!」
彩人「この服…中々いいものを使っているな」
静「お前の家に行った時を思い出して憂鬱だ…」

みんな…長谷部を除く…が目を覚ますと、何故か身に纏っている衣装が和服になっていた。
六人がいるのは、武家屋敷のような場所だ。

龍成「すげー!時代劇にこんな屋敷あるよな!?」
太一「ここは、どこなのでしょうか…」
静「チャイの仕業だろう。嫌な予感しかしないんだが…」

状況を把握しようとしていると、すぐそばに誰かが通りかかった。
黒い髪を細く結わえていて、黒と赤の装束を纏う、口元にほくろを持つ美形の少年だ。
その少年は葵たちを無視して屋敷の廊下を進んでいく。

あんず「見えてない、のかな…?」
静「そのようだな」
葵「…これって、広尾の記憶を見た時みたいだ」
太一「! もしかして…」
彩人「あの美形の刀の記憶、かもな」

以前、あんずたちもチャイに太一の苦しかった過去の記憶を見せられたことがある。
もしかしたら、今度は長谷部の記憶を見ているのかと思考する。

太一「ど、どうしよう…」
葵「…あいつがどうしてああなったか、知れるのは良いんじゃねーか?」
太一「で、でも…」
静「ネコちゃんは乙女なのにデリカシーがないな」
葵「うるせぇ!!!」

六人の喧嘩(?)を余所に、少年はとある部屋の襖を開けて中にいる人物に告げた。

少年「主ー。新しい刀が来たって」
「分かった。今行くよ清光」

『清光』と呼ばれた少年の後から、『主』と呼ばれた20代くらいの優しそうな顔の中肉中背の青年が付いてくる。
二人の後を、葵たちは追った。

しばらくして、とある部屋に入り、葵たちも同様に中にお邪魔した。
そこには、小さな妖精のような小人数人と、一振りの刀を小人たちが囲うように置かれていた。
その刀を主と呼ばれた男は手に取り、何かを唱えていると光が迸った。
そして、桜の花びらがぶわりと舞い、一人の男が現れた。

長谷部「へし切長谷部と、と言います。主命とあらば、何でもこなしますよ」

太一「長谷部さん!」

太一が呼んでも、長谷部は反応しなかった。目の前の『主』を、真っすぐに見つめている。

「君がへし切長谷部だね。よろしく。俺はこの本丸の審神者である『白羽根しろばね』だよ。これからよろしく」
加州「俺は近侍で始まりの一振りの加州清光。よろしくー」
長谷部「あなたが、俺の新しい主なのですね。よろしくお願いします」
白羽根「うん!じゃあ、本丸を案内してから他のみんなに会わせるから、付いてきてね」
長谷部「かしこまりました」

白羽根と加州に付いていく長谷部。それを見て、葵たちは話し合う。

葵「あいつの主、ちゃんといるんじゃん。なんであいつは広尾を主だなんて言ったんだ?」
太一「優しそうな主さんが、ちゃんといるのに…」
静「加州清光は、沖田総司が使っていたとされる刀だな。そんな刀までいるのか」
龍成「え!?沖田の刀って菊一文字じゃねーの!?」
彩人「それは創作だと聞いたことがある」
静「沖田は貧乏なのにそんな上等な刀実際に持っているわけないだろう」
龍成「マジかよ!?でも、加州ってヤツも美人さんだよなー!」
あんず「(確かに、長谷部さんも渋谷くんに負けず劣らずのイケメンだったし…刀剣男士ってイケメンしかいない???)」

呑気に会話をしている時だった。
突然、空気が一気に変わった。
辺りを見渡すと、屋敷は荒れ果てそこら中が壊れていて、辺りからは炎と黒煙が上がっている。

あんず「えっ、えっ!?きゅ、急に何!?」
彩人「…どうやら、クライマックスに向かっているようだ」

焦った声を上げるあんずとは対照的にあくまで冷静を務める彩人。
すると加州が白羽根の手を引いて廊下を走っていた。白羽根の後ろには、長谷部がお供している。
加州は白羽根と長谷部をとある一室の奥に押し込むと、切羽詰まった声色と表情で白羽根に言い聞かせた。

加州「主はここにいて!俺たちか政府の役人が来るまで絶対ここから出ないで!長谷部、主を頼んだよ!」
長谷部「ッ、わかった」
白羽根「清光は!?」
加州「俺は皆の加勢に行って来る」
白羽根「そんな…!」
加州「…大丈夫、すぐ戻ってくるから」

そう告げる加州の表情は儚げで、白羽根を泣きそうな顔で口噤んだ。
そうして、加州がその場から去っていく。残されたのは、白羽根と長谷部だけ。
震える手で拳を作って俯く白羽根を、長谷部はなんとか元気づけようとする。

長谷部「大丈夫です。主は必ずお守りします」
白羽根「…長谷部」

すると突如、白羽根が長谷部に向き直った。

白羽根「…もう、この本丸はおしまいだ」
長谷部「主!そのようなことを───」
白羽根「だから」

白羽根が、長谷部の顕現を解いた。
本体である刀が一振りぼと、と音を立てて畳の上に落ちる。
それを、愛おしそうに目を細めて、大事に大事に抱きかかえる。

白羽根「長谷部、君だけは、どうか生き残って。俺のことは忘れて、新しい審神者さんと、俺たちの代わりに戦って、愛されて…幸せになって」

そう言い残して、白羽根はへし切長谷部を棚の奥に隠した。
その直後、何かをけ破る音がして───。
ここで、世界が暗転した。



長谷部…
感想まだ

Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.290 )
日時: 2023/03/04 15:15
名前: 琴葉姫 (ID: TPmYcxrv)

暗転した世界で、葵たちは茫然として立ち尽くしていた。あんずが口元を押さえて涙ぐむ。

あんず「白羽根さんっ、まさか…!」
静「…そうとしか、考えられないな」
龍成「そんな、嘘だろ!?じゃあ、へし切はどうなったんだよ!?」

行き場のない気持ちを言葉として吐き出す。
すると暗転した世界から、一気に明るくなる。どうやら研究施設のような場所に移り変わったようだ。
かっちりした衣装を身に纏う大人たちが囲んでいるのは、一振りの刀。それに葵たちは心当たりがあった。
刀から、一人の男が現れた。…へし切長谷部だ。

長谷部「ここ、は…?」
「へし切長谷部。この度は、あなただけでも無事でよかった」
長谷部「俺だけ…?…ッ!そうだ、主、主は!?うちの本丸が時間遡行軍の襲撃に!!」
「落ち着いてください。それは我々政府も把握済みです。審神者名『白羽根』の本丸に向かいましたが、時すでに遅く…」
長谷部「…主は?主は無事なのか?」
「…へし切長谷部、落ち着いて良く聞いてください」

代表して眼鏡の男が、説明する。

「我々が向かった時にはもう、本丸は端の端まで蹂躙された後でした。あなたを除く顕現した刀剣男士たちは全て折れ、審神者である白羽根様の遺体は見つかりませんでしたが、霊力を辿ったところ本丸の外に漏れていました。すぐ霊力を追いましたが途中で切れており、捜索は困難を極めております。もうしばらく捜索は続けますが、打ち切られるのは時間の問題でしょう。
…あなたは、一室の棚の中に押し込まれていました。恐らく、白羽根様があなただけでもと匿ったのでしょう。棚には、結界が張られていましたから」
長谷部「…なにを、言っているんだお前たちは」

呆然として大人たちを見上げる長谷部。
その様子に、彼ら彼女らは口を噤む。かける言葉が無いのだろう。
それでも、長谷部は主の…白羽根の無事を願った。

長谷部「主はご無事だ」
「へし切長谷部…」
長谷部「ご無事だ!!」

叫ぶ長谷部に眼鏡の男が手を伸ばす。

「へし切長谷部。どうか分かってください」
長谷部「分からない。どうして、どうして俺だけ。そんなの可笑しい!そばには確かに主がいらっしゃったのに…!」

声と肩を震わせながら必死に訴える。だが、大人たちは無情にも長谷部に選択を突き付けた。

「へし切長谷部。あなたには選んでもらわなければいけません。一つは、別の審神者の本丸に配属すること。二つは、あなた自身の刀解。三つは、政府所属になるか。…あなたには、酷な選択かもしれませんが───」
長谷部「俺は主の帰りを待つだけだ!」

それだけ言って、長谷部は人の姿から刀に変身する。
大人たちは眉間に皺を寄せつつ、やるせない表情をしながら話し合った。
しばらくすると、刀の長谷部をある装置に乗せる。

「…このへし切長谷部の記憶を、少し改竄する。白羽根様の記憶を消し、新しい審神者様をさも最初に顕現した主だと思い込むように」

そうして機械を操作していく。しかし、刀の身でありながら長谷部はそれを理解した。

───主の記憶を消す、だと?
───嫌だ。俺の主は、あの方なのに!

かたかたと、装置の上の長谷部が動き出す。
次の瞬間には勢いよく空中移動し、室内を暴れるように移行している。

「ッ!落ち着いてくださいへし切長谷部!!」

そうしてやがて、長谷部はとある装置の上に立つ。そして、その装置が動き出した。それを確認して、大人たちはぎょっとする。

「まずい!転移装置が発動している!」
「誰かロックしろ!」
「間に合いません!」

言い合っている間に、長谷部は研究室から姿を消した───。



───俺は、誰だ?
───俺は…そうだ、主を待っていたんだ。
───主、どこですか。主。

意識が覚醒していく。
目の前に、前髪で片目を隠した少年が映った。

───嗚呼、『主』だ。

『主』である『少年』に、再び名乗った。

長谷部「主、この『へし切長谷部』は主に再び相まみえることを幸甚に思います。さぁ、主命を」

○●○●○
あんず「………………………」

長谷部の記憶を見たあんずは、言葉を失って俯いている。
太一の目元には、涙が溜まっていて。
葵たちも、沈んだ気持ちのままだ。

太一「長谷部さんっ…!」

乱暴に袖で涙を拭う太一。まさか彼にこんな過去があったとは、思いもよらなかった。自分もつらい過去を持っているため、他人事じゃなかったのだろう。

龍成「…白羽根は、死んだのか?」
静「そう考えるのが妥当だろうな」
葵「嘘だろ…そんなこと…」

彩人「過去は過去だ。今の彼には、現在いまと未来がある」

彩人の言葉にあんずたちははっとする。
太一は拳を握り締めた。

太一「ボクっ…長谷部さんと友達になりたいです!主には、なれないかもしれないけど…でも!長谷部さんを支えたいです!」
葵「広尾…」
静「…前も言ったはずだ。過去は変えられない。だから、さっさと現在いまに戻って、現在いまのへし切と向き合って、現在いま出来ることを全力でやる」
あんず「そうすれば…!」
彩人「彼の"未来"は、何かしてやれるかもしれない」
太一「っ…ボク、長谷部さんとちゃんと話し合います!審神者がどうとかは、よく分からないけど…。でも!長谷部さんを、助けてあげたいです!ボクは、"ヒーロー"だから!」

真剣な表情で宣言する太一。
それを見て、葵たちも頷いた。

葵「地球の未来のついでに、へし切も救ってやる…!」
あんず「っ…うん!」

誓った直後に、空間が泥のように崩れていく。すると、元の世界に戻っていた。衣装も、先程と同じだ。

チャイ「おや、戻ってきましたか」
あんず「チャイ…!」
チャイ「ちょっと易し過ぎましたかね…。でもまぁ」

───彼があの絶望を再確認するには、十分でしょう。

そう言いながらチャイが長谷部に目線を向けると…
長谷部は絶望に染まった表情で、浅く息をしながら涙を流していた。

長谷部「あ、主…?主は、そんな、なんで…」
太一「長谷部さん!!」
静「…へし切にも見せたのか。あの過去を。…本当に、救いようのないクソ野郎だ」
チャイ「お褒め頂き光栄です」

軽く流して、チャイは蹲っている長谷部の肩を叩いた。

チャイ「へし切長谷部。あなた、悔しくないですか?復讐したいとは思いませんか?」
長谷部「ふく、しゅう…?」
チャイ「ええ。我々と一緒に、あなたを蔑ろにした人間たちと、主を殺した者たちを滅茶苦茶にしようと、思いませんか?」
太一「なっ!?」
チャイ「あなたほどの力があれば、きっと為せます。どうしますか?」
長谷部「おれ、は…」

虚ろな目をした長谷部を見て、チャイはにやりと口角を上げた。



葵「ンな馬鹿げたこと、そいつに決めさせるな!!」

烈葵レツキ!葵が爪でチャイを攻撃するが、チャイは軽々と飛躍して躱す。
しかし、長谷部からチャイを話すことに成功した。

葵「しっかりしろへし切!」
長谷部「………………………」
葵「お前、主に言われたんだろ!『愛されろ』って!『幸せになれ』って!」
長谷部「…!」
葵「謀反にするな!生きろ!主のために、人間に愛されて幸せになれ!」
静「ネコちゃん、『謀反』なんて言葉良く知ってるな」
葵「このタイミングでやめろピンク野郎!!!」
長谷部「…俺は」

チャイ「…やれやれ、せっかくいいところだったのに。興冷めです」

その瞬間、チャイは太一の近くにまで来ていた。
咄嗟のことで、判断が遅れる。

太一「ッ…!」

もう少しで攻撃される。そんな瞬間だった。

ガキィンッ!
突如、金属音が響いた。
チャイの攻撃を、長谷部が刀で防いでいた。
想像もしなかった出来事に、葵たちは驚愕した。

太一「長谷部さっ…!」
葵「ちょ、ここからあの距離まで…!?」
チャイ「…何の真似ですか」
長谷部「…俺たち刀の付喪神刀剣男士は、人間を愛し愛されることで生まれた。…主は、もう帰ってこないのかもしれない」

長谷部「だから、俺は主や仲間を奪った奴らを許さない!奴らを根絶やしにするために戦う!そして人間を…人間の歴史を守る!」
太一「長谷部さん…!」

チャイ「…やれやれ、所詮"物"。浅ましいですね」

ゴオッ!
チャイの手から衝撃波が放たれる。それに耐え切れず長谷部は宙を舞い、背中から地面に叩きつけられた。

太一「長谷部さんッ!!よくも!!」
チャイ「おや、あなたも闇を見せてくれるのですか?」
葵「…テメーは、今ここでぶっ潰す」

チャイを睨みつけるミュウミュウたち。チャイは面倒くさそうに戦闘態勢に入った。
───が、

チャイ「…どうやらここまでのようですね」

急にやる気をなくし、ミュウミュウたちに告げた。

チャイ「面倒くさい人物たちがやってくるので、私はここで失礼しますね」
龍成「はぁ!?また逃げんのかよ!!」
静「…面倒くさい人物たち?」

ではまた。それだけ言い残して、チャイは姿を消した。



感想まだ

Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.291 )
日時: 2023/03/04 15:23
名前: 琴葉姫 (ID: TPmYcxrv)

葵は忌々しそうにチャイのいた場所を睨んだが、今はそれどころではない。

太一「ッ、長谷部さん!長谷部さん、大丈夫ですか!?」
長谷部「ぐうッ…」
あんず「酷い怪我…!救急車呼ばなきゃ!」
龍成「いや、刀の付喪神って人間と同じ方法で治るのか!?」
彩人「付喪神をどうやって癒すか知っているか代々木」
静「そんなことは知らん」
葵「神社とか言ったらいいのか!?ここから近い神社は…」

「それには及ばないわ」

突如、聴きなれた声が聞こえた。
そちらに目を向けると、思いもしない人物がそこにいた。

あんず「な、なつめ姉!?どうして…!」
「…説明は、後ほど致します」

あんずの姉であるなつめだった。あんずが驚愕していると、なつめの背後から一人の女性が現れた。
黒髪眼鏡の女性は長谷部の傍に膝をついてから、太一に話しかける。

「あなたが、広尾太一様ですね」
太一「は、はいっ…」
「時間が惜しいので手短にご説明させて頂きます。太一様。あなたはへし切長谷部様を顕現させたということは、審神者の素質があります。故に、へし切長谷部の手入れをお願い致します。手入れをすれば、へし切長谷部様の傷は癒えることでしょう」
太一「長谷部さんの傷を治せるってことですか!?で、でも手入れってどうすれば…」
「今回は緊急ですので、専用の道具を用意することが出来ず申し訳ございません。なので太一様には、へし切長谷部様の本体に直接霊力を注いで手入れをして頂きたく思います」
太一「れ、霊力を注ぐって、どうすれば…!?」
「やり方はシンプルです。へし切長谷部様の本体である刀に触れて、「早く治りますように」と念じてください」
葵「ほ、本当にそれで大丈夫なのかよ!?」
「効果自体は問題ありません。しかし、太一様には少し負荷がかかるかもしれませんが…」
太一「分かりました!やります!!」

太一は言われた通りに長谷部の持つ本体の刀を抱いて、念じる。

太一「(長谷部さん早く元気になって!傷治って!お願い、早く、早く…!)」

太一と刀の周りに、淡い光が漂う。暖かく綺麗な光に、葵たちは見惚れていた。
しばらくしていくと、へし切長谷部の身体にも光が漂い、みるみるうちに傷が癒えていく。

龍成「見ろよ!へし切の傷が治ってく!」
あんず「もうちょっとだよ広尾くん!」
太一「(長谷部さん、早く、早く…!)」

しらばく念じていると、長谷部の傷が完治し長谷部はむくりと起き上がった。

長谷部「…っ、傷が…」
あんず「良かった!治ったんですね!」
太一「長谷部さん…!良かった…傷がなお、って…」
葵「広尾!」

ふらっと倒れそうになる太一を葵が支える。長谷部は心配して声を上げた。

長谷部「だ、大丈夫ですか!?」
「…霊力を注ぎすぎて、眩暈が生じてしまったようですね。ご無事ですか?」
太一「ちょっと…ふらっとしましたけど、しばらくしたら大丈夫です…」
なつめ「…まさか、広尾君が刀剣男士と出会うなんて思いもしなかったわ」
あんず「えっ!?あんず姉、なんで刀剣男士のこと知ってるの!?」
「それに関しては、私の方からご説明致します。皆様、そこに車を用意しているのでお乗りください」
龍成「広尾、立てるか?」
太一「はい…すみません、肩をお借りします…」

ふらふらしている太一を龍成と葵が支え、長谷部含めて全員用意した車に乗り込んだ。

○●○●○
やって来たのは、なつめの研究所だ。
そこで改めて、黒髪眼鏡の女性から説明がなされる。

「皆様、この度はこちらの事情に巻き込んでしまい、申し訳ございませんでした。申し遅れましたが、私は琴葉姫と申します」

琴葉姫と名乗った女性は、事情を説明し始まる。

琴葉姫「もう皆様ご存じかも知れませんが、そちらのへし切長谷部様は政府が保護していた個体になります。彼の審神者である白羽根様の本丸…拠点地のようなものですね。が敵組織の襲撃に遭い、彼は唯一の生き残りでした。白羽根様は行方不明扱いとなり、めぼしい情報が無ければ創作は打ち切られることになります」
葵「で、こいつの意志関係なく記憶を改ざんして自分達の良いように扱おうとしていた、か?」
琴葉姫「…耳が痛い限りでございます。しかし、刀剣男士は歴史修正主義者もとい時間遡行軍と戦うために呼び出されました。戦ってもらわねば、人の姿を得ることは出来ません」
葵「だからって───!」

言い続けようとする葵を止めたのは長谷部だった。
何とも言えない表情をしていたが、自身の扱いを察しているのか多くは語らなかった。

長谷部「俺は自分の我儘で本霊から言い渡された使命から背こうとした。それは事実だ」
葵「けど、こいつの主は…!」
琴葉姫「…そこなのですが。広尾太一様」
太一「は、はいっ…!」
琴葉姫「あなたさまに、このへし切長谷部様の新しい主となって頂きたいのです」

太一「えっ…!?」

琴葉姫の言葉に、太一は当然驚愕する。それは葵たちも同様だ。
琴葉姫が続ける。

琴葉姫「広尾太一様はへし切長谷部様の顕現を実現し、更に手入れの能力まで備わっています。それは、審神者となる資格があるということ。そして、へし切長谷部様は一時的でもあなたさまを『主』と呼んでいた。これ以上の適任は存在しないかと」
葵「ちょっと待てよ!それって、広尾もこいつの前の主みたいな目に遭うかもしれないってことじゃないのか!?」
琴葉姫「………………可能性は、ゼロではありません」
葵「そんな危険なこと、こいつにさせられ───!」
太一「ま、待ってください!」

葵の言葉にストップをかけ、太一は長谷部に向き直った。
互いに目を合わせて語り掛ける。

太一「長谷部さん。あなたは言っていましたよね。人間と、人間の歴史を守るって」
長谷部「…確かに」
太一「その願い、ボクと一緒に叶えませんか…?」
葵「おい、広尾!」
静「ネコちゃん、黙って」

葵を黙らせて、太一は長谷部の返事を待つ。
長谷部は太一から目を逸らさず、自分の意見を述べた。

長谷部「…俺の主は、あの方ただひとりだ」
太一「はい」
長谷部「だが、あなたのことも、審神者として慕いたい気持ちがまだ残っている」
太一「…はい」
長谷部「あなたは、あの方じゃない。主とは呼べない。…だが、」

───主君しゅくん、と呼んでも構いませんか?
───あなたと、人間と歴史を守りたいです。

拙くも真剣にそう告げる長谷部の手を、太一が取った。

太一「はい、はいっ…!これでまだ一緒に居られますね!よろしくお願いします!」
長谷部「はい。こちらこそ、よろしくお願い致します。主君」
あんず「広尾君…」
葵「…後悔、しないんだな」
太一「はい…。ボクは"ヒーロー"だから…」
葵「…そっか。お前が決めたことなら、オレは口出ししねぇよ」
静「決めたのは広尾だ。それを尊重する」
龍成「でも、何かあったら遠慮なくオレたちに言えよ!」
彩人「それもまた、お前の物語だ」
あんず「広尾君…大変かもしれないけど、私たちもついてるからね!」
太一「はい!」

琴葉姫「それで、審神者となりへし切長谷部様を引き継ぐ、で話を纏めて構いませんか?」
太一「はい!…あの、それで審神者って、何をするんでしょうか?」
あんず「まずそこから!?でもそういえばどういうことをするのかよく分かってなかったかも…!」
琴葉姫「審神者は、刀剣男士を顕現させ部隊を組み、指揮を出して時間遡行軍と言う敵と戦わせることを主にやってもらいます。しかし、ここで詳しく話そうとするよりも、後日以降養成所での講習や先輩の審神者の本丸で研修を受けて頂いた方が分かりやすいかと思われます。手続きなどはこちらが全てやっておきますので、広尾太一様におかれましてはご安心を。それと、それまでの間へし切長谷部様は再び政府預かりになりますがよろしいでしょうか?」
太一「は、はい…」
長谷部「承知した」
琴葉姫「寛大なご快諾、痛み入ります。…また、この件とは別件なのですが…」
太一「は、はい…?」
琴葉姫「東京ミュウミュウの五名と、日向あんず様を私が統治する世界、夢交界へご招待させて頂きたく思います」
「「「は???」」」

琴葉姫の言葉に、葵たちは心底「何言ってんだこいつ?」といった目で見て情けない声を一斉に発した。

葵「は?むこ、なに???」
琴葉姫「夢交界、です。創造主たる私が生み出し管理する世界です」
葵「待て待て待てオカルトから急にファンタジーチックになったぞ???は?異世界ってこと?」
琴葉姫「そう捉えて頂いて結構です」
静「馬鹿げた話だな」
龍成「でも、エイリアンやキメラアニマがいるくらいだし異世界もなくはないんじゃね?」
葵「それと比較していいのか!?ってか、オレたちがミュウミュウだってこと知って…!?」
琴葉姫「もちろん。こちらの世界の主要人物であるあなたたちのことはある程度既知しています」
彩人「オレが主要人物…。やはりオレは美しい」
葵「ちょっと黙ってろ!!は…?ど、どういうことだってばよ…???」
琴葉姫「ちなみに拒否権は無いに等しいです」
葵「強制かよ!!!」
あんず「お、落ち着いて渋谷くん!!!」

琴葉姫「そういうわけですので、後日改めて招待状を送りますので、よろしくお願い致します」
葵「もう、疲れた…めっちゃ疲れた…」
太一「あはは…」
長谷部「…主君」

苦笑いしている太一に、長谷部が傅いた。

長谷部「…あなたこそは、絶対に守り抜いて見せます。へし切長谷部の名に誓って」
太一「…そんなに気を張らなくていいですよ?でも…」

───ありがとうございます。よろしくお願いしますね。

太一は改めて長谷部にそう言うと、長谷部はふ、と安心したように笑った。



静「……………」

一方、静はあの時チャイが言った言葉を思い返していた。

静「(あの時チャイは『面倒くさい人物たちがやってくる』と言って姿を晦ました。そしてやって来たのは、なつめ女史とあの、琴葉姫という女…。…あの女、案外食わせ物かもしれないな)」

そう考えつつ、ふーと息をついた。

静「(…まぁ、あの創造主を名乗る胡散臭い女が何者であれ、ぼくがやることは変わらない)」

そうして静は結論付けた。

後日、ミュウミュウ五人とあんずに、夢交界から招待状が贈られたのだった───。



はい、新ジャンルは東京ミュウミュウオーレ!でした!!!
なお、次回の新ジャンル加入パーティーでも新ジャンルのキャラ達が出てくる予定なのでお楽しみに!(は???(圧))

とっても久しぶりの更新、ここまでお付き合い頂きありがとうございました!
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