二次創作小説(新・総合)

Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.87 )
日時: 2020/04/25 19:56
名前: 琴葉姫 (ID: EnwL6lXi)

琴葉姫「言ってたpixivで投稿した小説載せます(爆)」

アーサー「ええ…(困惑)」

琴葉姫「正直済まないと思っている(震え声)」

アーサー「…ちなみに何を投稿するんだ?」

琴葉姫「pixivに投稿したタイトルは「女王は『鬼』に堕ちない」。花騎士のシュウメイギク様とシュウメイギクの本丸の蜻蛉切さんの話です」

アーサー「あれR-15タグ付いてんのに大丈夫か!?(驚愕)」

琴葉姫「アク禁に引っかからないと信じてる(震え声)」

※注意※
暴力描写&性的描写があるのと、シュウメイギク様や刀剣男士のキャラがブレている可能性大(特にシュウメイギクがかなりチョロいと思われます)。
それでも構わないという方は、どうぞ↓















「女王は『鬼』に堕ちない」

───とある世界の一国…渓谷や紅葉が色づく国に、一人の女王がいた。
女王には幼い頃から親しい幼馴染がおり、よく恋の話をしていた。
しかし…女王の幼馴染は憎悪に堕ちた。結果…『鬼』と化した。
女王は何も出来なかった。『鬼』が暴れ血が流れるのを、ただただ見ているしかなかった。
そして『鬼』は───撃退されたが、倒れることはなく、谷の奥へ姿を消した。
女王は恐れた。彼女が『鬼』に堕ちる理由となった『恋』に。

それから幾星霜の時が流れ、未熟だった女王は晴れて渓谷の国の女王となった。
女王であれば世継ぎのために子を授かるため婚約をせねばならなかったが、出来なかった。
知らない男と婚約するのもそうだが、あの時のように…『鬼』になるかもしれない可能性のある『恋』を、したくなかった。

そんな女王に、一つの転機が訪れた。

それはある日、数少ない心を許せる男性からの申し出だった。
「異世界の戦に、力を貸して欲しい」と。
当然、女王は怪訝そうに彼の頭を心配するような、かつ呆れた言葉を返したが、彼も、彼が連れてきた男達も食い下がった。
曰く、「その戦には『刀剣男士』と呼ばれる刀の付喪神を呼び覚ます必要があり、貴方(自分)にその素質がある」とのこと。
「貴方ほどの豊潤な霊力があり、女王として花騎士を統べる方ならきっと素晴らしい審神者になれる」と男達は興奮したように言ったが、女王はどうも気が乗らなかった。自分の国を放っておいて何故別の世界の戦に手を貸さねばならぬ、と。
しかし、親しい男性が「お前城に引きこもってるし、身体動かさねーとこっちの討伐も大変だろ」と煽るような言い分で説得した。
流石の女王もその言葉が気に障ったのか、意地で「なる」と二つ返事をしてしまった。…今思えば大人げないと思ったが、最終的にはこれでよかったと思っていた。

それからあれよあれよと異世界の『本丸』という家屋に連れてこられ、初期刀と呼ばれる刀剣男士の青年と、初めての鍛刀と呼ばれる儀式で小さな刀剣男士を呼び出した。
彼らはみな優しく、右も左も分からない女王に親切にし、「主」と呼んで慕う。
これなら大丈夫だ───と決心した女王は…出会ってしまった。

「ただ今馳せ参じました。蜻蛉切と申します」

───嗚呼、『鬼』になどなりたくないのに



何故、こんなにも───

*****************************************************************
きっかけは、自身の担当の御小言だった。
「今まで演練を避けているので、そろそろ行って欲しい」とのことだった。
審神者である異世界「スプリングガーデン」の一国、ベルガモットバレーの女王シュウメイギク…もとい審神者名「秋菊」は、演練嫌いである。
理由としては、演練はトラブルを生み出す要因であり、レア刀欲しさに突っかかって来たり、ブラック審神者だと言いがかりをつけてくる審神者が後を絶たないと、審神者交流・相談サイト「さにわちゃんねる」通称「さにちゃん」でごまんという程言われているからだ。
もちろんネットの情報を鵜呑みにするようなシュウメイギクではないが、知り合いの審神者も度々そういう被害に遭っており、極力演練場には行かないようにしていた。刀剣男士達の練度もそこそこで、過度な馴れ合いを嫌い、初心者審神者でもないシュウメイギクには必要のないものだからだ。
しかし、担当が言うには「日課や月課である演練での対戦をこなさないと、審神者としての成績が伸びない」とのことだった。
成績などどうでもいいのだが、自分はともかく自分の刀剣男士が軽侮される原因になるのは耐えられなかった。自分の自慢の刀剣男士達を、自分のわがままで貶めるわけにはいかないと思った。
そう考えたシュウメイギクははあ、とため息を吐いて担当に目線を合わせた。
シュウメイギクの後ろには、正座して控えている蜻蛉切もいた。

秋菊(シュウメイギク)「仕方あらぬな…あまり気が乗らぬが、これも審神者としての公務であれば、わらわが断る理由もない」

秋菊の担当「ありがとうございます…!しかし、秋菊様がそう仰るのも無理はないかと…演練での審神者様がたの揉め事は、我々政府としても頭を悩ませており…そういった審神者様はまだいらっしゃるというのが現状で…」

秋菊「そなたらもご苦労なことよな」

秋菊の担当「仕事ですから。では、演練の件、よろしくお願いいたします」

秋菊「わかった。午後から赴くつもりゆえ、今日の日課にも加算されようぞ」

秋菊の担当「了承しました。では、どうかよろしくお願いいたします…!」

玄関先で担当を見送ったところで、シュウメイギクは蜻蛉切と言葉を交わす。

秋菊「そういうことだ。午後からの演練のメンバーを決める。みなに伝えてたも」

蜻蛉切「はっ!」

勇ましく答えた蜻蛉切だったが、どこか煩慮した目で秋菊を見つめていた。
それは秋菊が目を合わせようとした瞬間消えうせ、いつものように熱誠とした表情に変えたが。
恐らく蜻蛉切は自分のことを案じているのだろう。シュウメイギクが筋金入りの演練嫌いだということは、よく近侍にしている蜻蛉切はよく知っていた。
そんな蜻蛉切を見つめると、シュウメイギク自分の胸がずきり、と痛んだのが分かった。

───シュウメイギク…秋菊は、蜻蛉切が好きだ。一目惚れというものだった。
シュウメイギクが審神者として本丸に就任してから日もあまり経たぬうちに顕現した蜻蛉切は、一目でシュウメイギクの心を奪った。
仮にシュウメイギクが共に居たいと告げれば、蜻蛉切は受け止めるであろう。…本人の意思なのか、主に逆らえぬからかは分からないが。
しかし、シュウメイギクは自分の想いに厳重に蓋をした。
かつて───『鬼』と化した彼女のようにならぬために。

「───主?」

その言葉でシュウメイギクはハッと我に返った。
声のした方を見上げると、心配そうに顔色をうかがう蜻蛉切の顔が写った。

蜻蛉切「やはり、気が乗りませんか?無理に行かずとも───」

秋菊「問題ない。惚けてすまなんだ」

蜻蛉切「しかし、」

秋菊「問題ない」

シュウメイギクは笑顔でそう言って押し通し、本丸内へ戻った。
そんな様子のシュウメイギクの背を見て蜻蛉切は、再び煩慮の表情を浮かべたが、やはりすぐ消した。
シュウメイギクはそんな蜻蛉切のことなど知らずに、演練の準備を進めていた。

*****************************************************************
今回の演練メンバーは隊長を今剣(極)とし、髭切、山姥切長義、豊前江、袮々切丸、白山吉光と言った比較的新人を多く連れてきた。目的はレベリングだからだ。護衛に近侍の蜻蛉切も連れてきている。
本当なら所謂「クレクレ審神者」に突っかかられないように、言ってしまっては悪いが普通のレアリティの刀剣男士を連れてきたかったのだが、その普通のレアリティの刀剣男士達は大体はカンストか、極になっているのだ。
カンスト済の極はいないのだが、優先は出来るだけ極未実装の刀剣男士達の練度を早くカンストさせたかったということで、気は乗らないがこのメンバーになった。
…逆に自分がキワメシックスと呼ばれる部隊にやられそうだな、とは思ったが所詮は演練。自分より強い部隊を率いている審神者はたくさんいる。ここで勝敗に拘ることはなかったので、そこは気にしない。
問題は彼ら欲しさのブラック審神者やクレクレ審神者が自分の対戦相手にならないことを祈るばかりだった。

一戦目と二戦目は何事もなく行われた。審神者も礼儀正しく、対戦が終わるといい勝負でした、と賛辞の言葉を貰った。
───なんだ。心配していたのが嘘のようにあっさり済んだな。次も何事もなく終わると良いのだが。
シュウメイギクは内心安堵していた。次が最後の演練相手だ。流石に5回以上勝利の日課は自信がなかったし、リスクを負う必要もないと思って眼中になかった。
最後の対戦相手の審神者と部隊メンバーである刀剣男士達が現れる。
最後の対戦相手の審神者は男だった。男にしては長い茶髪で、顎に少々の髭があるのが特徴的だった。男審神者の部隊長は極の歌仙兼定だ。恐らく初期刀なのだろうか、と考えたが蛇足だと頭の隅に押しやった。
シュウメイギクが男審神者に歩み寄り、挨拶を交わす。

秋菊「よろしく頼む。互いに良き試合にしようぞ」

男審神者「あっ、はいはい~」

男審神者は軽薄そうではあるが、シュウメイギクに頭を下げ手を出して来た。
握手を求めていると察した秋菊は緩やかな動きではあるが男の握手に応えた。
───が、男審神者は秋菊の手の感触を味わうかのようににぎにぎと手を動かしていた。
それにシュウメイギクは若干顔を歪めたが、男審神者はやめようとしなかった。次第に目線をシュウメイギクの胸元に向けもした。
流石にやめてほしいと口を開こうとしたシュウメイギクだったが、それを制したのは男審神者の歌仙だった。

歌仙「主、御婦人の手をいつまでも触るものじゃないよ。早く始めよう。まだやらなければいけない書類もあるだろう?」

男審神者「ンだよ止めんなよ。そんなの後でもいいだろ?」

歌仙「そういうわけにもいかないよ。…すまないね。主も悪い人じゃないんだ。ただ、あまり女性に縁がない人でね」

男審神者「余計なこと言うなよ!…チッ」

歌仙に注意され、しぶしぶといった様子でシュウメイギクの手を離した。
そのやりとりにシュウメイギクは不安に駆られた。
───…刀剣男士は普通のようだし、気のせいだと良いのだが…。
早く終わらせよう、とシュウメイギクは今剣達と作戦の打ち合わせを始めた。
が、今剣を含め刀剣男士達は穏やかではなかった。

今剣「なんですかあのおとこは!あるじさまのおてにさわって、しかもあるじさまのむなもとをなめまわすように…!」

長義「全くだね。あの歌仙兼定は悪い奴じゃないとは言っていたが、教育がいき届いていないんじゃないか?」

豊前「お前ら怒りすぎじゃねーか?…まぁ気持ちは分かるけどよ」

袮々切丸「怒るのはよくない。帰還したら温泉に入ろう」

髭切「うんうん。じゃあこの戦で汗をいっぱい流そうね。血も流れそうだけど、手入れはしないからいいよね」

白山「わたくしも新参の身ですが、戦果を挙げましょう」

秋菊「…一部の言葉は聞かななんだことにしよう。奮励努力せよ」

シュウメイギクがそう言うと、今剣が「はぁーい!」と元気良く返事し、他の刀剣男士達も掛け声を発して対戦相手の元へと向かって行った。
それを見送っていると、不意に蜻蛉切がシュウメイギクの隣に並んだ。
先程のせいか、再びシュウメイギクを心配するような目を向けている。
そんな彼に心配はいらないと言わんばかりに細めた目で見つめながら微笑んだ。

最後の演練が、開始された。



感想まだ

Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.88 )
日時: 2019/09/13 22:25
名前: 琴葉姫 (ID: M/mF9VzB)

今剣「ほーらあるじさま!ぼくならできるでしょ!」

秋菊「うむ。大義であったぞ。今剣」

今剣「えっへん!」

豊前「えー、俺は?」

秋菊「無論、みなよう奮闘した。わらわも誇らしい」

演練の結果は、秋菊側の勝利だ。
誉だった今剣はシュウメイギクの下に駆け寄り、彼女はそんな今剣の頭を撫でた。今剣も「もっと褒めて」と言わんばかりに胸を張った。
そんなやりとりに豊前は不満そうだが、シュウメイギクは部隊メンバー全員に賛辞の言葉を送った。
袮々切丸と白山は顔に出さないが頬が朱に染まっており、長義は所謂「ドヤ顔」の、豊前は嬉しそうではあるが照れたように、髭切はいつも通りのニコニコとした笑顔でシュウメイギクの言葉を受け取った。
もう用はないから本丸に帰還しようとした───が

男審神者「あ、ちょっと待ってください!」

対戦相手の男審神者が焦ったようにシュウメイギク達…彼にとってはシュウメイギクだけだっただろうが…を引き留めた。
まだ何か用があっただろうか、とシュウメイギクは顔だけ振り返った後身体も向き直って男審神者と対峙する。

秋菊「まだ何かあったかえ?」

男審神者「あ、いや…ここで会ったのも何かの縁ですし、ちょっと話しません?良かったらメルアド交換でも───」

歌仙「主!そんな暇はないだろう?早く帰って…」

男審神者「うるせぇな!?いいだろちょっとくらい!」

個人的な話をシュウメイギクに持ち掛け歌仙に再び注意されるが、男審神者はやはり食い下がる。
呆れたような表情の歌仙が一歩後ろに下がる。やはり主である審神者にあまり強く言えないのだろう。
それをいいことに男審神者はシュウメイギクに詰め寄った。

男審神者「あの、お名前…審神者名なんて言うんですか?も、もしかして彼氏とかいたり…」

秋菊「…このような年増の女を口説いて何になる。お主は童故、もっとうら若き女が…」

男審神者「えっそんな!年増だなんて!とてもお美しいじゃないですか!失礼ながら、一体いくつなんです?」

秋菊「…あまり女に問うことではないぞ。わらわ相手だからよかったものの…」

男審神者「自分だからよかったって、それって俺の事が気になってるってことですかね…!?」

…なんだ、こやつは。わらわの言葉の意味を理解しているのだろうか。
まるで宇宙人と話しているような感覚だった。いや、知り合いにも宇宙人がいるが、この男審神者ほど支離滅裂な返しはされていない。ならば、こやつは宇宙人以下か。
心労が積もって行く。流石に相手にしていられない。

秋菊「すまぬが、わらわはまだ残っている仕事が───」

男審神者「いや、ほんと名前とメルアドだけ…!」

秋菊「っ…!くどい!わらわはそなたの相手をしている暇は───!」

今剣「ちょっとあなた!あるじさまにしつれいじゃないですか!はやくかえりたいんです───」

歌仙「主、彼女達もそう言っているだろう。流石に僕も見逃せ───」



男審神者「うるせぇッ!!!」



突然の男審神者の怒声に、シュウメイギクも歌仙も、シュウメイギクと男審神者の刀剣男士達もびくっと身体を震わせ、言葉を失い固まってしまった。
先程の軽薄な表情とは真逆な、恐ろしく目をぎょろっと血走ったようにこちらを見つめてくる男審神者にシュウメイギクは背筋が凍るような感覚を覚えた。

男審神者「いいじゃんかよそれくらいよぉ!あんたも俺と話すのが恥ずかしいからってそんなこと言うことねえんじゃねえの!?」

秋菊「な、なにを…」

男審神者「いいからこっち来いって!!!」

男審神者がシュウメイギクに手を伸ばす。シュウメイギクは逃れようと後ずさるが、男の手はすぐそこまで迫っていた───が、

護衛の蜻蛉切の手が、男審神者の手を掴み阻んだ。
蜻蛉切はシュウメイギクを護るように、左手で彼女を自身の胸に抱きよせ右手は男審神者の手首を掴んだまだ。

秋菊「っ…蜻蛉切…?」

男審神者「あ゛っ!?邪魔してんじゃねえよぶっ殺すぞ!」

蜻蛉切「…申し訳ないが、我が主に手を出すなら容赦は致しませぬ」

男審神者「手なんて出してねえだろうがよォ!いいからはな、い゛っ、いぎいいぃっ!?」

なお暴言を吐き食い下がる男審神者の手を、蜻蛉切は少しひねった。男審神者は過剰に痛がって顔を歪め奇声を発した。

蜻蛉切「…どうかお帰り下され」

長義「それ以上主に纏わりつくなら、俺が政府にお前のことを報告するが?」

蜻蛉切と長義に警告され、男審神者は蜻蛉切を睨みながら掴まれた手を振りほどいて走って演練場を去っていった。
しかし、男審神者の歌仙は慌ててシュウメイギクのもとへやって来て、勢い良く頭を下げた。

歌仙「すまないっ!うちの主がとんだ無礼を…!十分言って聞かせておく!本当にすまないっ!!」

歌仙に当てられたのか、男審神者の刀剣男士達もシュウメイギクに頭を下げて謝って来る。
そう言われてしまってはシュウメイギクも申し訳ないとでも思ったのだろうか。男審神者の演練部隊メンバーには短刀もいたから、心苦しい気持ちになった。

秋菊「頭をあげてたも。お主たちは何もしておらぬではないか」

歌仙「いやっ…主の暴走を止められなかったのは刀剣男士である僕達の責任だ。僕達にも非がある」

秋菊「…ならば、今後あの童の行動に気を付けて欲しい。今後他の女にもわらわのように迫ってくるやもしれぬからな」

歌仙「ああ、それはもちろん!」



男審神者「てめえら何してやがんだよ!早く来い!帰れねえだろうがぁっ!」



背後から男審神者の怒声が響いて来た。
歌仙達は再び「本当にすまなかった」と言って頭を下げ、慌てて男審神者のところへ帰った。
───彼らがあの審神者に何かされぬと良いのだが…
シュウメイギクは出会ったばかりの、別の本丸の刀剣男士達の身を案じた。歌仙は男審神者のことを「悪い人ではない」と評していたから、杞憂であってほしいのだが…
そんなことを考えていたシュウメイギクの足元に、今剣が息巻きながらやって来て男審神者のことを愚痴る。

今剣「まったくみさげたやつですね!あるじさまにあいてにしてもらえないからとこどものように!あ、それはひとのこにしつれいですね」

秋菊「…そなたも随分と口が汚いな」

今剣「くちぎたなくもなりますよ!つぎにかれがあるじさまにせまってきたらぼくがこらしめます!」

髭切「次がないのが一番なんだけれどね~。でも怒るのはよくないよね」



───『鬼』になっちゃうから



髭切の言葉に、シュウメイギクはヒュッと息を呑んだ。
『鬼』
その言葉が、シュウメイギクにあのことを思い出させた。
『鬼』と化してしまった、親友の事を…。
…あの男審神者は、自惚れでなければ自分に惚れこんでいたようだった。
それが、あの男審神者を狂わせてしまった───?
…まさか、あの男審神者は───

蜻蛉切「…主?ご無事ですか?」

再び蜻蛉切の言葉で我に返った。
しかし、今回ばかりは笑って「大丈夫」とは言えなかった。
物憂い表情で、「…問題ない」と言葉にするのが精一杯だった。

白山「…早急に帰還しましょう。目的は達成しましたから」

豊前「だな。もうすぐ夕餉だろ?何かな」

刀剣男士達はそんな彼女を心配してか、早く帰って夕飯にしようと笑って言ってくれた。
彼らは自分を気遣ってくれている…自分は震えて気の利いた言葉も言えないのに。
───ベルガモットバレーの女王ともあろうわらわが…なんとも情けない。
自分の不甲斐なさに心の中で憤るが、そんなことをしてしまっては更に気が滅入るし、励ましてくれる彼らにも失礼だ。
無理にでも笑顔を作って、「光忠や歌仙の料理はどのようなものでも美味だからな」と夕飯の話題に加わった。
その際、今剣が手を繋いできたから、拒むことなく受け入れた。
しかし

蜻蛉切「………」

蜻蛉切だけは、気の重い表情で、シュウメイギクの後ろを歩いて彼女の背中を見つめていた。
その瞳には、靉靆たる闇を孕んでいた。

*****************************************************************
あの事件───と呼ぶほどではないが、思い出したくない出来事から数日が経った。
あれから次の日から、シュウメイギクは毎日演練に赴くようになった。幸い、あの男審神者以外に絡まれることなく、順調に演練をこなしていた。
その甲斐あってか髭切も練度が上限に達し、彼曰く「特にすることもなくて退屈だなぁ」と言いつつも戦に明け暮れていた日々とは打って変わって縁側でのんびり弟の膝丸と茶を飲んでいる姿を目撃されることが多くなった。
それはさておき、今日の午前の演練は終了し、現在シュウメイギクは書類を整理していた。
するとそこへ、今剣がうきうきとした気分でシュウメイギクのいる執務室にやって来た。

今剣「あるじさまっ、しつれいしますねっ」

秋菊「今剣、どうした?もう少しでこの書類を纏められるから、待っててはくれぬか?」

今剣「あ、はいっ。あるじさま、よかったらきょう、いっしょによろずやにいきませんか?」

秋菊「万屋に?」

今剣「はい!光忠と歌仙がきょうのゆうげをかいたいからとぼくにおねがいしにきたんですが、いつもいっしょにいってくれる岩融がえんせいにいってて…ぼくひとりじゃにもつをもちきれないとおもって」

そう言えば、今日は岩融を遠征の部隊長にしていたな。…それでも、短刀の今剣に頼むのもどうかと思うが、まぁ他に手の空いてる物がいないのなら仕方ないだろう。
今日の演練では今剣が誉泥棒だったし、褒美として付き合うのもいいだろう。それに、短刀一人を万屋に歩かせるのも危ない。この書類の整理が終わったら、今剣を引率する方がいいだろう。

秋菊「あいわかった。わらわでよければ付き合おう。少し待っていてたも。書類を片づけたら準備をする。先にゲートで待っていて欲しい」

今剣「わぁーい!あるじさまとおでかけです!はやくきてくださいねーっ!」

そう言って、今剣はぱたぱたと廊下を走って行った。
…本当は自分と二人っきりになりたかったのか?と思ったが、他に連れてってもらえるものがいないのだから自惚れだろう、と考え直して手早く書類を纏め今剣と万屋に行く準備をする。



*********************************
万屋は、やはり大勢の審神者と刀剣男士、万屋店員の政府役員達で賑わっていた。
沢山の店が並んでいる大通りを、シュウメイギクは今剣と手を繋ぎながら歩いていた。反対の手には、食材が入った袋をぶら下げている。

秋菊「これで全てか?」

今剣「はいっ!これできょうのゆうげはもんだいありませんね!」

秋菊「そうさなぁ…今剣、わらわと一緒に団子を食べんか?」

今剣「えっ!?いいんですか!?」

秋菊「ああ。だがわらわ達だけで食べたら他の者達が不貞腐れるだろう。みなにも土産に買って行こう」

今剣「わーいっ!岩融もよろこびます!」

秋菊「ふふ、そうさなぁ」

そんな会話を今剣とし、団子屋はどこにあるか…と、今剣から目を離した、その時だった。

今剣「わぁっ!?」

ふと、隣の今剣が驚いた声を上げはっと今剣の方を向くと…

先程まで手を繋いでいた今剣が、忽然と姿を消した。

秋菊「今剣?」

慌てて今剣の名前を呼ぶが、今剣の声は聞こえない。
と思った、矢先だった。細い路地裏から、今剣のくぐもった声が漏れてた。
何故あのような路地裏に…?と、嫌な予感がして慌ててその路地裏へ入った。

そこには、怪しい呪札を貼られ身動きが取れない上に言葉を発せられないでいる今剣と、そんな彼を抱えている怪しい黒服の男がいた。

秋菊「今剣っ…!」

黒服の男「動くな」

慌てて今剣の元へ駆け寄ろうとしたが、黒服の男が牽制して動きを止めた。
今剣の身を案じ言葉に従ったシュウメイギクだが、出来る限りの力で男を睨み付ける。

秋菊「…なんだそなたは。今剣に何か用か?」

出来るだけ平穏を装っているが、シュウメイギクの内心は不安で不安で仕方なかった。
相手の要求が何かは知らないが、今剣に危害を加えられないように相手の行動を見極めるしか出来ない。
すると、男がシュウメイギクに『要求』を告げる。

黒服の男「この刀剣男士には興味はない。…俺の目的はお前だ。審神者名「秋菊」」

男の言葉に、シュウメイギクは大きく目を見開いた。
奴の目的は、自分?
何故?何のために?今剣は関係ないのか?
自分なりに頭を回転させまくるが、やはり冷静でいられないのだろう。全くいい答えが出てこない。
そんなシュウメイギクに構わず、男は言葉を続けた。

黒服の男「俺と一緒に来てもらおう。逆らえば、この今剣の本体を折る」

男の言葉にヒュッ、と息を呑む。
今剣を見ると…涙をぽろぽろと溢し唇を噛み締めながら、ゆるゆると首を振ってシュウメイギクを見つめていた。
…彼は、とても優しい。そして、彼は元の主である源義経のことがあり主を喪うのを恐れている。もし、自分のせいでシュウメイギクまで喪ってしまったら…と。相手についていって、無事に帰ってこられる保証なんてどこにもない。
それでも、シュウメイギクという女王であり審神者も、"優しかった"。

シュウメイギク「…あいわかった。そなたについていけば、今剣は解放してくれるのだな?」

黒服の男「ああ。今剣は解放してやる」

その言葉に、今剣は身体を乗り出そうとするが呪札と男がそれを許さなかった。それでも、暴れてなんとかしようとする今剣に、心が痛んだ。
大丈夫だと、今剣に微笑んで男のもとに歩み寄る。
実は、シュウメイギクは常に魔力を込めた灯篭を所持している。今は小型化して、懐に入れてあるのだ。
相手は呪札を持ったただの一般人に等しい。シュウメイギクの魔法攻撃を受けたら、すぐさま恐れをなして逃げ出すはずだ。
そういう算段だった。

が───

後ろから何かが近づいてくる音するのを、シュウメイギクは聞き取った。
ハッとして後ろを向くと

遅かった。後ろから手が伸びてきて、口元に何かの液が染み込んでいるハンカチか何かを押し付けられた。
その匂いを嗅いだことにより、意識が遠のいていく───。

───嗚呼、こんなことにわらわが気付けぬとは…

意識が途絶える前に最後に見た光景は、自分の名を泣き叫びながら呼ぶ今剣の姿だった───



感想まだ

Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.89 )
日時: 2019/09/13 22:26
名前: 琴葉姫 (ID: M/mF9VzB)

秋菊「んっ…」

朦朧とする意識の中、シュウメイギクが目を覚ますと…薄暗い、木で出来た天井が映った。
自分の本丸の天井と似ているが、辺りを見渡してみると、どう考えても自分の本丸ではない。
意識が覚醒していく。そして体を起こそうとすると…

秋菊「…ッ!?」

両手首が出中に固定されて縛られていた。両手首だけでない。両足もだ。
それを確認した、直後だった。

「目ぇ、覚めましたぁ?」

ねっとりとした耳心地の悪い声が耳に入った。どこかで、聞いたような気がするが…
声のした方に目線を向けると…目を充血させて鼻の下と顎に髭を蓄え、ぼさぼさの長い茶髪の不潔そうな男が襖を開け、ふらふらとした足取りでシュウメイギクに近づく。
男の姿を見たシュウメイギクはぎょっとして、思わず小刻みに後ずさった。

秋菊「そ、そなたは…?」

震えた声で男に問いかける。
すると男は屈んで彼女の顔に自身の顔を近づけて、荒い息遣いで息を吐く。息がとても臭くて、シュウメイギクは顔を歪めた。

「ハァ~?忘れるなんてひどいなぁ…あんなにアピールしたのにィ…」

そういう男に、どこかで会ったのか…!?と驚愕するシュウメイギクだったが、まさか…と言葉を溢し、思ったことを確かめるように口にする。

秋菊「…まさか、あの時の演練での審神者…!?」

「アハっ、覚えててくれたんだァ!や~っぱり、俺に気が合ったんじゃん!?」

まさか、あの時の男審神者が、この男…!?
あまりにも風貌が変わり果ててしまった男審神者を見て、シュウメイギクは再び男審神者から離れようと後ずさろうとする。
が、それは叶わなかった。男審神者が、シュウメイギクの肩を強く押して敷いてあるくしゃくしゃの布団に押し倒したのだ。

男審神者「あの時からあんたのことが忘れられなくてェ…政府高官の親父に頼んだら、あんたのこと調べて協力してくれてさァ…アンタを呼んでここで一つになろうって…思ってさァ…ハハハ、ハハハハ」

まさか、あれから彼が自分にそこまで執着してくるとは‥‥しかも、彼の父親が政府の高官…ブラック政府と呼ばれる要因と言える存在だったとは…。
しかし、そんな彼に気圧されながらも平常心を装うようにささやかな反論を試みる。

秋菊「悪辣な…そんなことをして、そなたを慕ってくれていた刀剣男士に顔向けできると思っているのか!?」

男審神者「ア~?刀剣男士ぃ…?」













男審神者「そんなん全員もういないよ。刀解だってしたし、残りの奴は全員折ったし」













…その言葉に、シュウメイギクは言葉を失った。頭の中が真っ白になった。
そんなシュウメイギクのことなど構わず、男審神者は気持ち悪い笑みで続けた。

男審神者「あいつらぁ、全員俺に説教してきてさァ…主に反抗する刀剣男士なんていらねーもん。だから、全員刀解しようと思ったんだけどさー…歌仙とかの昔っからいる奴らが力ずくで拒んできてよォ…だから、親父の元についてる呪術師の呪具で無理矢理本体折ってやったよ。…その時の歌仙の表情!クッソ笑えたんだよなァ!!!自分が主に逆らったくせの自業自得なのによォ!!!ヒャハハハハッ!ヒヒヒッ!!!」

シュウメイギクは、彼の事を悪魔のように思えた。
今まで大切に育ててきて、修行にまで送った刀剣男士を、こんなことで簡単に殺してしまう…刀解や刀剣破壊を死と呼ぶかは分からないが…ことに、シュウメイギクは全く理解が出来なかった。
そして、一つの仮説に辿り着く。

───彼はまさか、『鬼』になってしまったんじゃ…!?

『鬼』と化してしまった親友。その原因は、『恋』だった。
今は自惚れ何て言っていられないが、自分に恋をしてしまったせいで、彼を『鬼』にして狂わせてしまった…!?
あの歌仙は、目の前の変わり果てた男を「悪い人ではない」と言っていた。それは本当だったはずだ。
そんな彼を、自分に『恋』させてしまったせいでこのようなことに…!?

───やはり、恋なんてものは夢幻なのではないか!

そんなことを考えていたが、今はそんな場合ではない。
男審神者『だったもの』は、シュウメイギクの衣装の襟に手をかけた。

男「ほ~ら、一緒に楽しもうぜェ~…?気持ちいいの好きだろォ…?誰も来ないから、これから毎日、一緒だしなァ…ヒヒッ」

秋菊「…一つ聞きたい。今剣は…わらわの今剣は無事か?」

シュウメイギクの問いに、男は一気に不機嫌になって舌打ちを溢した。

男「ア゛ァ!?知るかよンなこたァ!お前さえ連れて来れば後はどうでもいいっつったんだからよ!」

その言葉を聞いたシュウメイギクは、そう考えると無事でいるかも知れないが、閉じ込められて辛い目に合ってるかもしれない…という推測をしていた。
それが気に入らなかった男は一気に襟を剥いだ。豊満なシュウメイギクの胸が、露になる。かろうじて、下着をしているから尖りは隠れているが。

男「うっひょ~…!こりゃあ揉み心地良さそ~…!」

そう言って、手をわきわきさせながらシュウメイギクの胸を掴もうとする。

刹那───



スパンッ
突如、部屋の襖が勢いよく開かれた。
その襖を開けた主は───

蜻蛉切「───」

真顔でその光景を見つめている蜻蛉切だ。
そして彼は…

秋菊「ッ…!?と、んぼ、きり…?」

男「なッ…!?」

シュウメイギクの本丸の、蜻蛉切だった…!
何故ここに?どうしてここが?と、シュウメイギクは問いかけようとした時だった。
蜻蛉切が真顔のまま、ずんずんとこちらに…正確には、男のもとへ来て、男の胸ぐらをつかんで地面に押し倒す。

男「がっ…!?て、テッメェなに」

蜻蛉切「喋るな下郎」

男「ア゛ァ…、っ!?がぁっ!?」

秋菊「!!!?」

すると、蜻蛉切が真顔のまま男に馬乗りになって、男の顔を強く殴りつけた。
それは一回では済まなかった。何度も、何度も、場所を変えながら力の限り殴り続けた。

男「がっ…!?や、やめ、ぐあっ…!?…へぐうっ!?」

男が懇願する隙も与えない勢いで、何度も殴る。男の歯は欠けて、瞼は晴れて蒼くなり、鼻からは血がとめどなく流れてきている。
男の顔面が変形してるんじゃないかと思えるくらいに歪んでも、蜻蛉切は殴るのをやめない。ひたすら、男を殴り続けている。
その蜻蛉切の姿に、シュウメイギクは思い出した。

───あれは、『鬼』と化した親友そのものだ

そう。親友が『鬼』となり、彼女の許嫁とその許嫁の妻を殺した、あの『鬼』の姿と瓜二つだった。

───蜻蛉切が、鬼に?彼女と同じように?何故?何故、何故!?何故!!!

シュウメイギクは、その光景を恐れながら身を縮めて見ているしかなかった。
そんな彼を止めたのは…

蜂須賀「蜻蛉切、その辺でいいだろう。主が怖がっているだろう?」

蜻蛉切「っ…!?」

不意に蜂須賀がやって来て、蜻蛉切の肩に手を置いて彼を止めた。
それにより男が蜂須賀に手を伸ばし、か細い声で助けを求めた。

男「ひ、ひぃぃ…!た、たすけ…!」

蜂須賀「…言っておくけど、未遂に終わったとはいえ主を犯そうとしたお前を許す気はない。蜻蛉切が殴ってなかったら、俺が殴っていたところだ。本体で斬ってもいいけど、お前の血がこびりつくのは嫌だからね」

秋菊「はち、すか…?どうしてここに?」

蜂須賀「主、無事…とは言い難いけど、貞操は無事のようだね?」

秋菊「あ、ああ…というか、質問に…」

蜂須賀「ああ、ごめんね。実は…」

蜂須賀の説明によると、今剣が服を汚し泣きじゃくりながら本丸に帰還し彼を落ち着かせて話を聞くと、自分達の主が何者かに攫われたと告げ本丸にいる刀剣男士は全員驚愕した。
すぐさま今剣の話を基に、審神者名「影井」ことゼクシオンと、創造主の琴葉姫の力を総動員してシュウメイギクの創作に当たると、以前演練で出会った男審神者の情報が浮上してその本丸に緊急突入。真っ先に飛んで行った蜻蛉切がここでシュウメイギクを見つけ、今に至る、とのことだった。

よかった、今剣は無事だったのか、と内心安堵する。
蜂須賀に拘束されていた縄を斬ってもらった直後

今剣「あるじさまっ!!!」

秋菊「ッ、今剣…?」

涙をとめどなく流し、目元が赤い今剣がシュウメイギクの胸に飛び込んできた。
ひっくひっくと、しゃくりあげながら泣いてシュウメイギクに縋りつく今剣は、なんとも痛々しかった。

今剣「ご、ごめん、なさっ!ぼ、ぼく、の、せいでっ…!あ、あるじ、さまっ…!ごめんなさい…っ!」

秋菊「…そなたが無事でよかった。そなたがみなに知らせてくれたのであろう?大義であった。今剣」

今剣「ち、ちがっ…!ぼ、ぼくが、まもれなくてっ、あるじさまのまもりがたななのにっ…!ごめんなさい、ごめんなさいっ…!」

秋菊「あまり自分を責めるな。わらわは、もう無事じゃ」

今剣「あるじさまっ、あるじさまぁっ…!」

泣いて自分を責める今剣の頭を、シュウメイギクは優しく撫でた。
その光景を、蜂須賀は呆れつつも仕方ない、といった満更でもない表情で見つめていた。
しかし───

蜻蛉切「………」

蜻蛉切だけは、険しい顔のままだった───。

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シュウメイギクが本丸に帰ってきた後も、大変だった。
彼女が帰ってくるや否や、加州や長谷部、亀甲と言った審神者が好きな面々は涙の海が出来るんじゃないかと涙を流し続けていたし、担当職員に至っては「自分が余計なことを言ったせいで申し訳ありません!」ととても綺麗な形の土下座で地面がへこむくらいの勢いで頭をこすりつけていた。
そんな彼らを宥めつつ、男の事情を担当に訊ねた。

結果として、あの男は審神者の権利を永久はく奪され、精神病院に入院するようだ。
男の父親である政府高官も問題を問われ辞職、逮捕されたそうだ。それは彼の手の者達も同じで、今回の件で芋づる式で検挙された。
そして蜻蛉切も、自分の審神者が攫われたとはいえ男審神者にあそこまで暴力を加えたことにより、過剰防衛として謹慎、しばらくの出陣と遠征を慎むようにとお達しされたという。
それに関しては本丸の刀剣男士達から抗議があったが、政府の制約であるのと蜻蛉切が何も言わず受け入れたため、渋々ではあるが認めることにした。
あれから政府の役員と話を付け、「しばらく療養なさってください」と告げられしばしの間審神者業を休むことになった。ただ、当然ながら本丸と刀剣男士の哨戒はしなければならないようだが。





秋菊「…今日は、色々あったなぁ…」

時刻は午前0時。刀剣男士達は全員寝静まり返っている。
そんな中、シュウメイギクは縁側で月を眺め耽っていた。
自分の世界の国でも月は綺麗だったが、本丸から見える満月も負けず劣らず美しい。
すると突然、縁側の板がきしむ音がする。誰かがこちらに歩み寄っているようだ。

秋菊「…誰だ」

月明りでその人物が映し出された。
その人物とは…

秋菊「っ…蜻蛉切…?」

蜻蛉切「…申し訳ございません主。厠に起きたらこちらに主がいたもので…そのような姿でここにいるとお体に障ります」

秋菊「…問題ない。今は夜でも然程寒くはない」

蜻蛉切「そういう問題では…」

秋菊「…まぁ、座ったらどうだ?」

蜻蛉切「…よろしいのですか?」

秋菊「そなたさえよければ、だが。…丁度、わらわも話がしたいと思っていたところだ」

シュウメイギクがそう言うと、蜻蛉切は「…失礼します」と言って控えめにシュウメイギクの隣に座った。
しばし沈黙の後、蜻蛉切が「話とは?」と切り出した。
シュウメイギクは顔を上げて、蜻蛉切の目を見つめて語りだす。

秋菊「…そなた、あの男に対して随分と無茶をしたな」

蜻蛉切「…申し訳ございません。主があの男に組み敷かれて服を剥がされていたのを見て、目の前が真っ赤になってしまい」

秋菊「…蜻蛉切は、わらわのことを好いておるのか?」

蜻蛉切「はっ!!!?」

シュウメイギクの問いに、蜻蛉切は顔を赤らめて両手をせわしなく動かす。

蜻蛉切「い、いえっ!あ、主にそのような想いを向けては…!」

秋菊「…蜻蛉切。今から、わらわは独り言を言う」

蜻蛉切「…主?」

秋菊「故に、それを聞いても、わらわをどう思うかはそなたに任せる」

蜻蛉切「………」

蜻蛉切は、静かにシュウメイギクの独り言に耳を傾けた。

秋菊「…昔、とある世界の一国に、二人のおなごがいた。二人は親友ともいえる間柄で、よく恋の話をしていた。そのおなごの一人には許嫁がおって、やがて輿入れをした。彼女の幸せそうな顔を見ているだけで、もう一人のおなごは幸せだった。
…だが、輿入れをしたおなごは子を授かれぬ体で、世継ぎを欲したその夫と彼の両親は、おなごを捨ておった」

蜻蛉切は静かに語るシュウメイギクの言葉を、黙って聞き続ける。

秋菊「後妻は無事に子を産んだ。だが、一人になってしまったおなごは…『鬼』と化した。そして、自分を見捨てた家族に、牙をむいた」

シュウメイギクは蜻蛉切から目を逸らして、俯いた。

秋菊「耐えられなかったのだ」

震えた声だった。
それでも、話を続けようと口を開く。

秋菊「嫉妬と憎しみ。幼い頃に交わした幸せな約束の残像。それらが愛憎入り混じった狂気を呼び…彼女を『鬼』へと変えてしもうた。
親友は…何も出来なかった。ただらさ『鬼』が暴れ、血が流れるのを見ているしかなかった。
そして…『鬼』は辛うじて撃退された。だが倒すことは叶わず…いずこかの谷へと消えた」

蜻蛉切は、ただただシュウメイギクの言葉を聞いた。
だが、次のシュウメイギクの言葉で、取り乱すことになる。

秋菊「彼女は、聡明で心優しきおなごだった。それが…恋で、狂ったのだ。…あの男や、男を殴った時の蜻蛉切のように」

蜻蛉切「…え?」

シュウメイギクの言葉に、蜻蛉切は情けない声を上げて愕然とした。
そんな蜻蛉切に、シュウメイギクは苦笑いを浮かべて言葉を続けた。

秋菊「故に…わらわも、狂うわけにはいかぬのです。『鬼』と化して、蜻蛉切…そなたを傷つけるわけにはいかないのです」

蜻蛉切「ッ…!?主、それはまさか…!?」

秋菊「‥ここで誤魔化すのも違うだろ。そう。わらわは、貴方様…蜻蛉切に、恋をしています」

その言葉に、蜻蛉切はこれほどまでかと言う程に、目を見開く。
蜻蛉切もそんな顔をするんだな、と、どこか他人事に思いつつ、儚い微笑みで続ける。

秋菊「そなたを思えば胸が高鳴り、顔を合わせるたびには顔が赤くならぬように気を付け、他の女性と話す姿を見れば、嫉妬に心を焦がす。
…随分と昔、少女の頃には、親友と二人で恋に憧れ、五日の出会いを夢見たもの…。
…だが、恋とは幸せなものっではなかった。心を狂わせ、人を鬼に変える、恐ろしいものでした…」

憂う表情で、蜻蛉切を見つめる。
しかし、その表情はどこか、何かに縋りたい、という気持ちが含まれているのではないかと、蜻蛉切は思った。

秋菊「ゆえに、わらわは恋などしたくはなかった。そなたに焦がれる、そなたに恋する女にはならず、気高い女王、そしてみなから頼られる審神者のままでいたかったのです…でも」

再び目を伏せる。

秋菊「駄目でした。恋する心は止められぬ。そなたを想わぬようにと意識をすれば、余計に考えてしまう………。
ならばせめて、わらわは違うと。わらわは鬼にはならぬ…と、その確信が欲しかったのです」

しかし、自分は『鬼』にはならずとも、その焦がれる相手…蜻蛉切が、一時的とはいえ『鬼』と化してしまった。
それがシュウメイギクの恋の否定を強める、懸念材料となってしまった。
自分はこんなにも、蜻蛉切が好きで、ずっと話していたくて、触れたくて、口添えをしたくて、その先も…

秋菊「…だから、わらわはそなたを」

蜻蛉切「主」

すると、蜻蛉切がシュウメイギクの言葉を遮り、正座してシュウメイギクに向き直った。

蜻蛉切「…貴方は、私が『鬼』になってしまって、また私が『鬼』になるかもしれない。それを危惧しているのですよね?」

秋菊「え?あ、ああ…」

蜻蛉切「でしたら」





蜻蛉切「もう二度と、私を『鬼』にはさせないと誓ってください。もちろん、主が『鬼』になる前には、私が止めます」





秋菊「…何を」

蜻蛉切「…すでに『鬼』になってしまった私が言うのも説得力に欠けますが、今後、私が『鬼』と化す前に、主が止めてください。私も、主が『鬼』になる前兆があったら、すぐに止めます。例え、主が望まない行為をしてでも」

秋菊「………」

蜻蛉切「ですから…私が主を、『愛』しても構いませんか…?」

そう告げる蜻蛉切の表情は、凛としていた。



秋菊「…そんなもの、言われるまでもない…!わらわは…そなたが、蜻蛉切が好きです…!」

涙を浮かべて、頬を朱に染め、蜻蛉切の胸に縋りついた。

秋菊「…ああ、ああっ…!蜻蛉切…!シュウメイギクを、抱いてください…そして、その手を離さないで…」

蜻蛉切「はい」

縋るように蜻蛉切員抱き着くシュウメイギク。
その姿は美しく、何故か心が強くすら思えた。

秋菊「今、わらわは恐ろしくて、震えています…そんなわらわは、審神者としては不甲斐無いと思いますか?」

蜻蛉切「いいえ。主は、とてもお強いです。魔法も、心も。恐れを知らない者が、武術に長けている者が強いのではありません。恐れを知って、それでも立ち向かう者が強いのです。立ち向かう決意を固めたのなら、そこからは戦です。ならば、私と主が負けるわけがありませぬ」

そう告げる蜻蛉切の胸から、顔を話す。
慈しむように、蜻蛉切に微笑みかけて、頬に手を添える。

秋菊「…ありがとう、蜻蛉切。そなたはわらわを弱くして、けれど、より強くもしてくれます。…わらわは、戦います。だから、力をください。今だけでも、せめて………」

───口づけを、してくださいますか?

そう言って、蜻蛉切の唇を求めた。
蜻蛉切も、拒まずに彼女に応え、唇を重ねた。


その光景は、まるで一枚の絵画のように美しいものであった───。

Re: 嫁でクロスカプ&クロスコンビSS集 ( No.90 )
日時: 2019/09/13 22:29
名前: 琴葉姫 (ID: M/mF9VzB)

秋菊「おはよう。みなのもの」

今剣「あーっ!あるじさまーっ!おはようございまーすっ!」

秋菊「ふふ、今日は元気だな、今剣」

今剣「とうぜんです!きょうからあるじさまのまもりがたなであることをさいどじかくして、きのうのようなことはもうにどとおこさせませんから!」

秋菊「それは頼りになるな。期待しているぞ」

今剣「はいっ!」

朝が来て、朝食の時間。
シュウメイギクは挨拶をしてきた今剣と会話していた。
するとそこへ、蜻蛉切がやってくる。二人が顔を合わせると、シュウメイギクは微笑みかけ、蜻蛉切は顔を赤くして目線を逸らした。それを見て、シュウメイギクは更に笑みがこぼれる。
そして朝食に目を向けると…いつもの朝食と違って些か豪勢であることが分かった。

秋菊「む、今日は豪勢だな」

今剣「えへへ、きょうはとくべつなんです!」

秋菊「…ほう?それは何故?」

今剣「ないしょです!」

秋菊「…?」

今日の朝食…というか、三食が豪勢であるのは、シュウメイギクと蜻蛉切を除く刀剣男士達は知っていた。が、二人に教えることはなかった。

*****************************************************************
煙「…ふーーーん。あのシュウメイギクが、なぁ…」

スプリングガーデン、ベルガモットバレーの騎士団本部にて、国家直属の騎士団長である「由布院煙」が自身の執務室で一つの封筒から取り出した手紙を読んでいた。
その手紙の内容は…ベルガモットバレーの女王、シュウメイギクからのもので要約すると「自分の刀剣男士と恋をして添い遂げることと相成った」と書いてあった。

煙「…こりゃあ、コリウスとガジュマルが発狂すんな。…まぁ、俺的にはあいつが恋することを決めたっていうのは嬉しいけどな。…こりゃあ色々根回しとかしなきゃだなぁ…。…その前にコリウスとガジュマルに報告…はぁ」

その後、シュウメイギクに恋の相手が出来たと煙が告げると、当然の如く従者二人は武器を構えて蜻蛉切の元に殴り込みに向かおうとした。
それを、煙は必至で止めたが、二人の殺気が消えることにはならなかった。

その後彼ら彼女らが蜻蛉切と会ってどうなったか、それはまだ先の話。



 ~あとがき~

妄想はしてたけどいざ書き起こすと滅茶苦茶難したかった!!!特に地の文!!!1年分の地の文章書けてると思ってる!!!褒めて!!!(クズ)
まぁそれはさておき(おい)…いかがでしたでしょうか?個人的には上手く出来たと自信があるんですけど、これで満足している私はやはり底辺の民なのである(白目)
てか、シュウメイギク様チョロい…?蜻蛉切さんもこれで大丈夫…?ってなったけどこれはシュウメイギク様の本丸なんで…ご了承ください(土下座)(クズ)
今後も夢交譚更新していけると良いなあ…まぁ評価を貰えるかといったらもらえないんでしょうけどね!(やはりクズである)

というわけで(?)、ここまでの閲覧ありがとうございました!また今後があればよろしくお願いします!



…と、ここまでがpixivとぷらいべったーで投稿したものでした。
これ大丈夫か…!?とは思いましたが投稿出来たんで大丈夫でしょう(おい)

感想OK

アーサー「桜さんとのコラボもここに投稿すんのか?」

琴葉姫「後編投稿したらここでも投稿しようかなとは思ってマス()」←