二次創作小説(新・総合)

ABT⑨『救出作戦、始動』 ( No.98 )
日時: 2020/05/14 22:10
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: ACwaVmRz)

かつて、魔界の一角を支配していた道化師がおりました。
道化師は一度目の崩壊を迎えた後、『心』を知り、守るべき者の為動き出します。

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~エレベーター内~



ベレス「…ねぇ。さっきマルスが言っていた『真実』って何?もしかして…『JOKER』にまつわる話かな?」

ヴィル「そうだ。『JOKER』にまつわる真実を―――私は知っている」

マルス「ここじゃなくて、向こうについてからにしないかい?彼らを探しながらでも話は出来るさ」



ぽつぽつと小さな声が部屋の中に響く中、ただ3人は地下へ、地下へと降りていました。
ベレスが質問をするのも当然。そもそもヴィルヘルムは自ら話をしていないし、『JOKERの正体』についてはマルスが考察でしか知らない事実です。
…確かにマルスの言う通り、エレベーターの中で話すべきではないのかもしれませんね。
ヴィルヘルムは無言で本部に置いてきていた仮面を転送させ、自らの頭部に装着します。



ベレス「ここに来るまでに色々と大変な目に遭っているのは自分も同じ。だから、どんな『真実』でも―――自分は受け入れるよ」



ベレスのその言葉が、前に立っている男2人に届いたのかどうかは―――彼らにしか分かりません。
しばらく待っていると、その場に似つかわしくない『チーン』という音と共に、下へ下へとくだっていたエレベーターが止まりました。
扉が開かれ、そこにいた彼らに待ち受けていたのは……奥へ続く『灰色の景色』でした。



マルス「なっ…!まるでドルーアを思い出すようだよ…」

ヴィル「ここは、遥か昔に高位の魔族が使用していた『処刑場』。拷問やそれに連なる処刑は全て『自らの魔力』を介して行っていた。だから、余計な道具は置いていないのだ」

ベレス「ヴィルヘルムも、昔…ここを使ったことがあるの?」

ヴィル「…あぁ。強大な魔法を開発する為には、それなりの犠牲が必要だ。地上に蔓延っていた罪人や、村々を荒らし回っていた盗賊の魂や血液を媒体として利用する為、ここを使用していたことがある」

マルス「そうか。普段はあんなに穏やかな目をしているのに、貴方にもそういう過去があったんだね…」

ヴィル「今に分かったことではないだろう。…敵に見つかる前に身を隠すぞ」



前方に派手な衣装を身に纏った悪魔…『道化師』の下っ端の1人でしょうか。彼らが徘徊しているのを彼らは目にしました。幸いにもこちらに気付いていないようなので、ヴィルヘルムは素早く彼らの目線の外へ身を隠すことを提言しました。
彼に続き、マルスとベレスも処刑場の影になっているところに身を隠します。…移動したと同時に、マルスに誰かから通信が入ってきました。



マルス「ごめん。誰かから通信が来ているみたいだ」

ヴィル「構わない。出てくれ」

マルス「―――はい、こちらマルスです。…あれ、アイク?」

アイク『マルスか。地下への道を開いたと連絡があって、丁度今エレベーターに乗って処刑場まで向かっているところだ。あんた達は今何をしている?』



通信を繋げてきたのはアイクのようです。どうやら突撃軍、準備が整って現在エレベーターで地下に向かっているようですね。
アイクの質問に、マルスは周りを気にしながらもギリギリ聞こえそうな大きさの声で返答をしました。



マルス「ぼく達はもう既に処刑場に着いているよ。今は敵に見つからないように身を隠しているんだ」

アイク『そうか。…もうじき到着するだろうから、俺から合図が出るまで『そこを動かないでくれ』。搖動作戦は一気に始めた方が敵の狙いも俺達に集中しやすくなるからな』

マルス「…分かった。到着したらもう一度連絡をしてくれ」

アイク『ああ。…アカギが何か話してるから、通信を切るぞ。それじゃあな』



ぷつん。そんな音を響かせ、アイクからの通信が切れました。マルスが彼から聞いたことをそのまま2人に話し、彼らも指示に従うことにしました。
ヴィルヘルムはその間にMZDの『呪縛』の位置を察知しようと魔力を動かし始めます。



ベレス「そうか。神の力は奪われているけれど、君の『呪縛の力』は永遠に残っているんだったんだもんね」

ヴィル「こんな時に『呪縛の力』が役立つとは思わなかったがな…。察知が出来ているという事は、あの子は無事だ。ソティス殿もその近くにいるだろう」



しばらく察知を続けていると、ヴィルヘルムの指先が動くのに2人は気付きました。どうやらかなりはっきりと察知が出来るようで、指で位置を辿っているようです。
…そのまま待っていると、彼は魔法を放つのを止めて2人に向き直りました。



ヴィル「檻からは出ていないようだ。檻の位置がここからかなり奥まった場所があるが…。この位置ならば敵を退けて檻に向かうことは可能だな」

ベレス「動いていない…。動けないのかもしれないけど、何か拷問を受けているようじゃなくて良かったよ」

マルス「―――はい、マルスです。アイク?……うん。うん。分かった。それじゃぼく達も彼らの救出に向かうね」

ヴィル「アイク殿から指示があったのか?」

マルス「うん。搖動軍が到着して、道化師の下っ端との戦闘を始めたみたいだ。今のうちにぼく達も動こう!」



アイクから『戦闘を開始した』との連絡が来たようで、マルスは2人に『助けに行こう』と提言しました。
時間も惜しいと、ヴィルヘルムを先頭にして檻へのルートを急ぐ3人。…間に合うといいんですが。

彼らの様子は一旦置いておくとして、搖動軍の様子を見てみましょう。








~処刑場 下層~



リピカ「雷どかーーん!!!」

悪魔『ぐわぁぁぁぁっ!!!』



リピカの巨大な雷を皮切りに、次々に襲ってくる道化師を沈めていきます。
3人が見つからないように戦う為、一部のメンバーに至っては日頃の鬱憤を晴らすかのようにいつも以上に暴れているような。
それにしてもどんだけいるんですか。この処刑場には彼らが倒した道化師よりも数多くの魔界の住人が点在しています。どうやら彼らも『メフィストに同意した者』のようで…。彼らが『運営本部』、しいては危険分子だと判断し彼らの命を奪わんと襲い掛かってきています。



カラ松「せいっ!メフィストの部下がこんなにいるなんて聞いてないぞ!…どりゃあっ!」

チョロ松「魔界ではカリスマ的な存在なんでしょ?!べリアとか、何かデデデ大王を操っていた『ベリト』って呼ばれてた奴にも慕われてるみたいだし!……はっ!」

十四松「カリスマ?おそまつにーさんみたいな?―――どっせーい!!!」

クルーク「でも、ボク達の元に襲ってきてるの『下っ端』が殆どだね…。救出しないといけない3人、やっぱりまだ檻を守ってるのかな?」



クルークはそう呟きながら辺りを見回します。確かに彼らに積極的に襲ってきているのは同じような衣装を着た『下っ端』ばかり。彼らが探している『3人』の気配はありません。
そんなことを思いつつ戦っていたクルークはそのまま遠目で全体を見てみました。…すると、向こうから明らかに『下っ端ではない』影が3つ、近付いてくるのに気が付きました。



クルーク「3人共!向こうから何か来る!」

チョロ松「何か?何かって何!?」

クルーク「1人は槍を持ってて、1人は馬に乗ってて…1人はペガサスに乗ってる。もしかしなくても探してる3人かも!なんだかバラバラにボク達に近付いているみたい!」

十四松「バラバラー?!そのままぼくたちに突っ込むつもりかな!ツッコミはチョロ松にーさんだけでじゅーぶんだよね!」

チョロ松「そっちのツッコミじゃねえ十四松!!…構えた方がいいかもしれないね!」



一点に近付いてきていた3人は、ある地点を皮切りにバラバラに本部に襲ってきます。
クルークが確認した通り、『槍を持っている人物』はそのままアイク達が戦っている場所へ。『馬に乗っている人物』はクルーク達の元へ。そして、『天馬で空を駆けている人物』はリピカ達が戦っている場所へと飛んでいきました。



アイク「―――誰か近付いてくる!よけろ!」

エイリーク「は、はいっ!」



―――そして、避けきれなかった道化師関係なしに煙を撒き散らせながら3人は同時に地面に降り立ちました。
『彼』の顔を見たエイリークの表情が一気に青ざめるのにアイクが気付くのに、そう時間はかかりませんでした。



エフラム『…………』

エイリーク「あ、兄上…!」

アイク「ということは、向こうに飛んで行ったのはマリアンヌとフェルディナントということか。道化師め、戦えるものはみんな駒として使っているようだな!」

エイリーク「あんな生気の無い表情をしている兄上は初めて見ました…。本当に、洗脳されているのですね…」

アイク「エイリーク。下がっててくれ。こいつの相手は俺がする」



アイクとエイリークの前に現れたエフラムの顔に、いつもの『勇猛さ』はありませんでした。虚ろな赤い目、そして病的に白い肌。『洗脳されている』と、彼らは一瞬で理解しました。…理解したくなくとも、頭でそう考えるほか言葉が見つかりませんでした。
エフラムは彼らを『獲物』としか捉えていないようで、目の前にいる少女が自らの妹とすら考えていないようです。

アイクはエイリークを後ろに下げ、持ってきたラグネルを構えます。それと同時に、エフラムはアイクに自らの持っている槍で襲い掛かります!
その槍の重みに、かつての槍さばきを持つ彼の面影はありません。



アイク「ぐっ……!これでは魔物と変わらない…!はぁぁっ!!」

エフラム『…………!!』(槍でラグネルをはじき返す)

エイリーク「アイクさん!兄上、おやめください!!」

アイク「エイリーク、駄目だ!あんたの声も届いていない!…逃走者が壺を割るまで持ちこたえるしかない!」

エイリーク「そんな…!」



アイクはエイリークに危害が及ばぬようラグネルで槍を受け止めていますが、思ったより一撃が重い。彼の歴戦の勘では、これは『魔物と戦っているようだ』と感じていました。
エイリークが後ろから必死にエフラムに声をかけていますが、届くはずもなく…。やはり、逃走者が壺を割って洗脳を解くまで止まりません。

それはフェルディナントやマリアンヌも一緒のようで、各々が得意としている戦い方に翻弄され、本部のメンバーは苦戦を強いられていました。



アカギ「白虎の氷よ!」(氷を纏った蹴りを繰り出す)

フェル『…………!!』(氷の一撃を避ける)

アカギ「駄目だ…!馬の動きが素早い…!」

クルーク「寸のところで避けられてしまうね。まるでデュラハンと戦っているようだよ」

カラ松「持ちこたえろとは言うが、このままではオレ達の方が先に倒れてしまうぞ!」

チョロ松「3人だけじゃなくて背後から下っ端達も襲ってきてるからね!油断しないでよ!」




リピカ「『plan8』!!」

マリアンヌ『!!』

マルク「動きを読まれてるみたいサー!なんなんだよアイツーーー!!!」

ジョマンダ「あの娘っ子は魔法が得意なのか…。向こうは常に空を飛んでるし、あのペガサスさえ何とかしてしまえばしばらくは動きを止められそうなんだがな…」

リピカ「動きを止めようとしてるさ!でもペガサスってこんなに素早いんだっけ?!」

マルク「乗り手だけじゃない…。ペガサスもまるで『生気を失ってる』みたいサ…。かわいそうだよ…」

ジョマンダ「くそっ、道化師の奴め…!」




まるで人形のように無表情に戦う3人。最終的には壺を割らねばなりませんが、どうにかして彼らに『意志』を取り戻させることは出来ないかと一部のメンバーは考えていました。
そして、MZDとソティスの元へ急ぐ3人―――。その途中で、ヴィルヘルムは『真実』を語る決意をしたのです。