二次創作小説(新・総合)

ABT⑧『異性の明星を見上げて』 ( No.133 )
日時: 2020/07/11 22:12
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: gK3tU2qa)

天空の塔に捕まってしまったミミニャミ一同。
彼女達を見張るようプログラムされていたジルクファイドでしたが、彼の心に『とある変化』が…。

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~天空の塔 牢屋~



ミミ「んも~!こっちの話全く聞かないで勝手に消えちゃうんだから!でも、まさかわたし達だけじゃなくてジョマンダさんまで捕まってるとは思わなかったよ」

ジョマンダ「リピカに買い物を頼まれて、その帰りに狙われたんだろうな…。牢屋に連れてこられたらお前達がいたのにもびっくりしたが、まさか親父とヴァリスも牢に入れられてるなんて思わなかったからな」

ジャック「…すまん。お前達の護衛を承ったそばからこんな事件に巻き込まれるようなことを…。俺が気付ければお前達だけでも逃がせたんだが」

ニャミ「捕まっちゃったもんはしょうがないよ!それに、ジャックでも対処しきれなかったってことは…『魔法関係の何か』であたし達気絶させられちゃったんでしょ?それならジャックが対処できなくても仕方ないよ」

ジャック「お前達のそのメンタルの強さはどこから来てるんだ…」

ミミ「ふふん。MZDに過去に散々冒険させられてきたからね!色んな事に慣れてるんだよ!」

ジョマンダ「慣れていいのかよ…」



こちらはミミニャミ達が捕まっている『天空の塔』。今回の逃走エリアである『レインボー・ドリーム』の中心に立っている天気を司る塔です。現在彼女達は、つい先程メフィストがメインサーバに映像を流したように、塔の中にある牢屋に入れられています。
ジョマンダはミミニャミが捕まった後に気絶させられてここに連れてこられたようで、既に牢屋の中に彼女達3人と自分の父親、そして弟が捕らえられていることに驚いていました。
…その『父親』であるリサと、『弟』であるヴァリスは随分と酷い目に遭ったようで、未だに目を覚ましません。



ジョマンダ「親父達は道化師達に協力していたんじゃないのか?」

ニャミ「2回目の時にあたし達を襲ってきた時はそうだったかもしれないけど…。ほら、やっぱりリサさん達にも何か事情があったんだよ!それで、ジョマンダさんの言葉を信じてもいいかも、って思うようになって…。彼の策略が道化師達にばれて、ここに連れてこられちゃったんじゃないかな」

ミミ「そっか…。リサさん達は別に操られていたわけじゃなかったんだね。それが分かっただけでも安心だよ」

ジョマンダ「そもそも、ヴァリスはともかく親父は魔法への抵抗力はかなり強いはずだ。そう簡単に魔法で気絶させられる様な相手じゃないんだぞ」

ジャック「なら逆を攻めればいい。…道化師の野郎共のことだ。リサが物理に弱いこととヴァリスが魔法に弱いこと、両方知っていたんだろ」

ジョマンダ「それにしても…。親父、なんで…」



そう呟きながらジョマンダは未だ目を覚まさない父親の方を見ます。外傷は特に無い為治癒はされたようですが、深く気絶させられているようで起きる気配がありません。
彼は父親に近付き軽く肩を揺らしてみます。しかし、反応は無し。しばらく同じ行動を繰り返していると…『うぅ』と、小さく呻く声が目の前で聞こえたのです。



ジョマンダ「親父。親父。大丈夫かよ」

リサ「こ、ここは…。そうか。私達は神々に地上に落とされて…」

ジャック「『地上に落とされた』?!どういうことだよ一体…。もしかしなくてもニャミの推測が当たっていたりするのか?」

ニャミ「リサさん、どうしてこんな牢に連れてこられていたんですか?」

リサ「…君達か。―――はは、一度は襲った君達に助けられ心配されるなんてな…。一部の神々と道化師が手を組んでいたことは君達も知ってのことだろう。そこで…私達が協力している神々の目的が『地上を滅ぼすこと』だと分かってね。息子の…ジョマンダの言う通りだった。私達は騙されていたのだ。
   そこで、ヴァリスと共に意義を申し立てようとしたら…神々によって地上に落とされた。そこを道化師に拾われでもしたのだろう」

ミミ「…あっ。MZDが言ってたね。『神様にも悪い奴らがいて、今道化師達と手を組んでるのがいる』って」

ニャミ「リサさんとヴァリスさんは悪い神様達に裏切られちゃったんだね…」

リサ「つまりそういうことだ。そもそも我々のことを『異星人』として扱っていたことから気付くべきだったのかもしれないがな…」

ジョマンダ「『異星人』って。確かに言葉の通りだけど、そこまでだったのかよ」



目を覚ましたリサは、牢に捕らえられている一同に自分達がここにいる事の顛末を話しました。2人が地上に落ちた後、彼らを回収したのは道化師で確定しましたね。
ジャックは上司から自分が本部に来る前に本部が彼らに襲撃されたことを聞いている為警戒を緩めていませんでしたが、対照的にミミニャミは今の彼らに敵意は一切ないことを感じ取っていました。
そして…確かめるように、こう口にしたのです。



ミミ「あの、リサさん。もう本部を襲うことはないってことですよね?」

リサ「あぁ。神々共の言っていることが間違っている可能性が高い以上、彼らに協力する義理もないからな。君達と敵対する理由もないだろう」

ニャミ「それならさ!あたし達に…ジョマンダに協力してあげてくれませんか?分かってるとは思うんですけど、ここ最近の道化師達の攻撃が激しくなってきてる。それで、悪い神様ももしかしたら本部のみんなをターゲットにするかもしれない…。だとしたら、何とかするべき側に一時でもいたリサさん達が協力してくれたらこんなに心強いことはないと思うんです!」

ジャック「何言ってんだよお前?!こいつの言うことを素直に信じて今度こそ怪我なんてしたらどうするんだ?!」

ミミ「確かにジャックの言うことも分かるよ。でもさ、他人を『信じてみないと』始まらないこともあると思うんだよね!…ポップンワールドが混ぜられる前、ヴィルさんをMZDが『匿う』って言った時もさ。わたし、正直怖かった。ヴィルさんが14回目のポップンパーティの時に何をしようとしたのかってのは痛いほど分かってるつもりだから。
   …でもだよ。MZDは彼を信じた。『親友』だとか、過去のしがらみだとか、そういうものはあるかもしれない。でも、双反する種族であるヴィルさんを助ける選択肢を真っ先に取った。それってさ、ヴィルさんを信じてなきゃ出来ないことだと思うんだよね。
   
   …だからわたし達も信じたいんだよ。リサさんを。ヴァリスさんを。ジョマンダさんもそう思うよね?」

ジョマンダ「親父達が騙されていただけと知った今、俺も警戒心を持ち続ける理由はないからな。それに…『家族』だし。信じない理由なんて俺にはない」

ジャック「そう…いう、もんなのか?」

ニャミ「ジャックにも分かる日が絶対来るって!前も言ったでしょ!『ジャックはもうただの人形じゃない』ってさ。だから…これから学んでいけばいいんだよ。せっかくジャック自身の『いのち』を得たんだからさ」

リサ「待ってくれ。ジャックと言ったな。彼は人工生命体なのか?」

ミミ「そうだけど…それがどうしたんですか?」

リサ「いや…。今私達を監視している彼…『ジルクファイド』だったか。彼もアンドロイドなのだろう?―――彼の挙動がおかしいような気がしているんだ」

ニャミ「おかしい?どういうことですか?」

ジョマンダ「あいつ、確かメフィストに操作されてるんだよな?それにしては…『俺達を監視する気が薄い』というか…。何かに葛藤しているような気さえ感じられるんだよ」

ジャック「それって…。あいつも『自我』を得ようとしているってことか?」



ジャックが人工生命体だという話を聞いて、ふと彼はジルクファイドのことについて触れます。彼がこの世界に混ぜられたことで『影響』を受け自我を得ることが出来たのならば、同じような存在であるジルクファイドも『自我』を得ている可能性があるということを。
もし彼が『自分の意志』で支配を打ち破ることが出来れば…。しかし、その望みに賭けるのも野暮というもの。ただ、どうにかしてジルクファイドを正気に戻さねば、自分達はここから出られないことも分かっていました。

…しばらくしていると、ふとこちらに近付いてくる青い影が。ジルクファイドでした。―――その目は赤く光り、牢の一同を冷たく見下ろしています。



ジルク『…………』

ミミ「ジルクさん…。宇宙戦争の時に戦った時はもっと戦いを楽しんでいるように感じたのに…」

ニャミ「…でも、なんだか苦しそう。ジョマンダさんの言った通り『自我』が生まれてるのかな?だとしたら、話しかけたら反応してくれるかな?」

ジャック「そんなこと1ミリもあり得ない…と言いたいところだが、お前達が言っているとどうも説得力があるような気がする。―――その方法も悪くないんじゃないか、とな」

リサ「1度だけじゃない。2度3度と声をかけたら…もしかしたら、1度彼と心を通わせた君達ならば…状況をひっくり返すきっかけになるかもしれない」

ジョマンダ「サニパの時だよな。俺も参加したからお前達とジルクファイドが仲良かったことは知ってる。―――もしかしたら、もしかするかもな」

ニャミ「やってみようよミミちゃん!攻撃してこなさそうだしさ!話しかければ答えてくれるかも!」

ミミ「うん!わたし達おしゃべり大好きだしねー!ジルクさんの心だって引っ張り出しちゃうんだから!」



いくら彼らが話を続けようとも、目の前の青いアンドロイドは何の反応も見せません。しかし、彼女達を攻撃することもありません。…『このまま何もしないのであれば』、もしかしたら話しかけ続ければ彼の心が反応してくれるかもしれない。ミミとニャミはそう判断し、牢を見下ろしているジルクファイドに優しく、自分達の楽しい話を語り始めたのです。

―――そんな一見無駄にも見える行為。…ちゃんと『彼』の心には届いていました。









ザザ ザ ザ ザ。ノイズが蔓延っている。
思考も塗りつぶされている。『自分の意志』について知ることなど許されない。



『そんなことないよ』



どこからか聞こえてくる優しい声。どこかで聞いたような、暖かな優しい声。



『あなたは優しい人だよ』



違う。自分は神を傷付けた。世界を傷付けた。この身体で。
『意志』で止めることが出来なかった。ならば…この『意志』も必要ないのではないか。



『違う。それは違う』



何が違う?傷付け迷惑をかけたのは事実。
ならば、いっそのこと『意志』など壊して何もない『人形』に―――。



『あなたは苦しんでる。支配と戦ってる』



―――くる、しい?
そう思った瞬間、胸の奥がツン、と悲鳴を上げた。



いたい。胸にプログラムされた位置が、いたい。これは、なに?
これが、『くるしい』?



『苦しんでいるということが、あなたがあなたでいれる証拠だよ』



くるしい。くるしい。いたい。むねが、いたい。『こころ』が、いたい。
せっかく得ることが出来た『意志』を、手放したくなんかない…。













ジルク『おれは、……おれは、『いきたい』。しはいされるんじゃ、ない。自分で…自分の『意志』で、『生きたい』!!!』

ミミ「!!」

ニャミ「ジルクさん―――!」




視界が一気にクリアになり、優しい声の持ち主であろううさぎと猫の少女が目の前に見えた。
―――アンドロイドの目は、『青く』なっていた。そして…。










べリア「アンドロイドが、『自我を得た』…。こんなことってあり得るノ?でも…アタシは…何をすればいいの?何を、すれば…」




『道化師』かもわからない少女にも、『心の変化』が訪れていた。