二次創作小説(新・総合)

ABT⑨『みんなで脱出戦争』 ( No.144 )
日時: 2020/07/16 22:08
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: .uCwXdh9)

『塔』が悲鳴をあげている―――。逃走者にもミミニャミ達にも悲劇が降りかかる…!
急げ!急いで塔から脱出してくださーい!時間も猶予もありませーん!!

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~天空の塔 牢前~



ミミ達5人と逃走者達が天空の塔を出ようと足を踏み出したと同時に、塔から何か大きな音が。
一部の面子は驚いて立ち往生してしまい、何が起こったのか分からず混乱していました。



むらびと「(慌てふためいている)」

ルカ「落ち着いてくださいむらびとさん!!……タイマーは5分のまま止まっています。この音の正体は運営本部でも把握できていない『異常事態』なのでしょうね、きっと!」

ミミ「嫌な予感しかしないんだけど?!何が起こってるの?!」

ジャック「このまま立ち往生してても意味がないだろ!音はかなり上の方から聞こえていているみたいだ。俺がちょっと見てるからお前らはその間に『逃げなサイ!!』 ……?!」

ニャミ「あなた…確か、3回目の時にMZDを連れ去った道化師の…!」



ジャック曰く音の方向は『上』。音の正体を突き止めれば対処法が分かるとでも思ったのでしょうか。彼は自分が塔の上を見て来ると口にしました。…しかし、それは『その場にいない別の人物』の声で遮られます。
その場にいないはずの声に混乱している一同の前に―――彼女は、『べリア』は現れたのです。



ジャック「お前…!!道化師の一味か!この期に及んで俺達に攻撃しようってのか!!」

ジョマンダ「待ってくれ!あいつ、こっちに攻撃する気はないみたいだぞ。…俺達に何の用だよ」

べリア「アンタ達、お喋りしている程余裕があるノネ。あ~あ、忠告して損シター」

クリス「どういうことだ?『忠告』?」

べリア「メフィストさまがこの『天空の塔』を崩したノヨ。たった今、ネ。逃走者がミッションをクリアしたから…あのお方はそう仰っていたワ。―――怪我したくなかったらさっさとこの塔から脱出することネ」

リサ「『塔の崩壊』だって…?!確かにあいつの言っていた『条件』には合っていたが、いくら何でも早すぎないか?!」

べリア「気が変わったんデショ?アタシ達『道化師』はコロコロ気分が変わる生き物ナノヨ。本部の面子を傷付けるだけじゃなく、『逃走者』も一緒に傷付ければ運営本部の責任はもっと重くなる。アイツらの『絶望』した顔が見れる…。そんな魂胆ヨ」

ミミ「え?でも、あなたは『逃げろ』って言ってるよね?もしわたし達を本気で傷つけるつもりなら、そんな忠告しないと思うんだけど…」

べリア「―――だから言ってんデショ?『道化師は気まぐれなのよ』」



一部の面子がべリアが襲い掛かってもいいように構えますが、どうやら彼女は彼らに『忠告』をしに来ただけの様子。彼女は『道化師の気まぐれ』とはぐらかしていますが、魔界で起きた出来事に心が揺さぶられているのでしょうか。
彼女は最後に真面目な顔で『死にたくなかったら全力で逃げなさい』とだけ言い残し、自分は瞬間移動で消えてしまいました。

―――それと同時に、天井から落下してくる『固いもの』…。それが、塔を形作っているものだと気付くのにそう時間はかかりませんでした。
彼女の言っていることは本当だ。『塔が、崩れる』―――。逃走者達とミミ達は考える暇もなく、階段をひたすら降りて行ったのでした。








しばらく無言で降りていた折、ルカがこんなことを口にします。



ルカ「あの。そういえば気になったんですけど…。ミッションでこの天空の塔に来た時、『宝石が黒く濁っていた』んです。それで、私達がアイテムを置いたら緑色に輝いた…。あの宝石、ドラマの中では『天気を司る』ものだと言っていましたよね」

ニャミ「―――あれっ?そういえば運営本部にメフィストが何か言ってる時…ソティスちゃんがそのことについて触れてたような…?」



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ソティス『な、なんじゃと?!その塔には実際にコネクトワールドの天気を司っておる宝石があるのじゃ!それに、最後のミッションで逃走者に集めて貰う『レプリカ』のオリジナルも祀られておる。そんな塔が爆発でもして消えてなくなってみよ。宝石にひびが入って消えたりでもしてみよ!現実世界の天気はドラマのように滅茶苦茶になってしまうぞ?!』


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ニャミ「確か、『実際にコネクトワールドの天気を司っている宝石がある』って言ってたよ。―――その宝石が壊れちゃったら…ドラマの最初であったみたいな異常気象が、コネクトワールドを実際に襲うって…」

ミミ「ヤバいじゃんそれ?!もしかしてメフィストはそれも計算してこの塔にわたし達を捕まえてたのかな?」

ジルク「…………」

クリス「だが宝石を取り戻している時間は無いぞ?!既に塔が崩れ始めている。今最上階に行ったとして無事に戻ってこれない可能性の方が高い!」

ジャック「くそ、装備一式全部本部に置いてきちまったからな。浮かべたら様子を見に行ったんだが…」

ジルク「…………」

ジョマンダ「飛べなくもない距離だが、俺の羽で瓦礫を避けられるかわから『お前は行くな!!』 親父…」

ルカ「私も飛びたいのは山々なんですが、ルールで飛行は禁止されてまして…。すみません」

むらびと「(焦りながら走る)」



そう。実は逃走者達が生命力を入れたあの宝石。実際にコネクトワールドの天気を司っているものなのです。なんでそんな大事なものを置いてある場所を逃走エリアにしたんだか非難が飛んできそうですが今は置いておきましょう。
メフィストが塔を崩してしまった以上、宝石が無事である確証はありません。今降りている場所はまだ瓦礫が落ちてきていない為、様子を見に行くことは不可能ではなさそうですが…恐らく崩れているのは『最上階』から。宝石は最上階に祀られていますので、降りてきた道を戻らなければなりません。
故に怪我をしてしまう確率もぐっと上がります。しかし、宝石を放置しておくと崩壊の衝撃で壊れてしまうでしょう。
―――自分達の命を取るか、怪我を承知でコネクトワールドの天気を守るか。降りている一同にまたもや重い選択がのしかかります。
…どうすべきか悩んでいる一同に、ふとジルクはこんなことを口にしたのです。



ジルク『―――俺が様子を見てくる』

ミミ「えっ?ジルクさん、何言ってるの?!クリスさんの話聞いてなかったの?!」

ジルク「聞いた上での判断だ。お前達みたいに俺は『生身じゃない』。仮に様子を見に行く途中で瓦礫に当たってもお前達よりは耐えられるはずだ」

ニャミ「でも!それじゃジルクさんが怪我しちゃ『…動けるのが俺しかいない以上、行くしかないだろ。それが…俺の意志なんだ』ジルクさん…」



彼は言いました。『自分が宝石の様子を見に行く』と。アンドロイドだから生身の逃走者達が様子を見に行くよりもずっと最適だと。そう口にしたのです。
しかし、アンドロイドとはいえ自分達の仲間。ミミニャミは彼のことをそう思っていました。行かせたくないと否定しますが、ジルクファイドは『それが自分に出来ること。自分の意志で決めたことだ』と優しく彼女達を諭します。その決意を秘めた目に―――彼女達は何も言えなくなってしまいました。



ジルク「俺は、神も。幽玄紳士も。暗殺者も。お前らも。…傷つけすぎた。この罪は消えやしない。だから…お前達を守る為、『世界を守る為』、今できることをやる。だから…ここは俺に任せてほしい」

ミミ「駄目…駄目だよ、ジルクさん」

ジルク「―――助けてくれてありがとう。俺に、『意志』を教えてくれてありがとう。沢山の愛を…『心』をくれて、ありがとう。


    モードチェンジ。モード『フライ』。





    ――――――『ありがとう。さよなら』」



それでも尚彼の手を掴んで阻止しようとするミミの腕をすり抜けて、ジルクファイドは飛行モードに切り替わりそのまま上空へと猛スピードで飛んで行ってしまいました。
―――見えなくなった彼の方向を見ながら叫ぶ、ミミが彼を呼ぶ名前を残して…。









~メインサーバ~



ヴィル「―――戻ったぞ。何とか障壁を傷つけず消滅する魔法を開発した。成程な。発想の転換を利用…『相殺』するアイデアを思いつくとはクルークも成長したものだ」

MZD「おっかえりー。あれ、エイリークとクルークは?」

ヴィル「開発した魔法を封じた装置を所定の位置に置くよう頼んだ。だから戻ってくるのはもう少し後になるだろう」

サクヤ「お帰りなさいませ。…天空の塔が崩壊を始めました。メフィスト…逃走者、そして天気を司る宝石も巻き込むつもりだったのですね」

アクラル「俺達がミッション④を発動すること、それから逃走者達がそれをクリアしてくれることまで読まれてたっぽいからなー。今回は流石に相手に一本取られたわ…」

ニア「あら。ですが…相手方もそれほどまでに追い詰められている、ということでしょう…?ここで逃走者達が踏ん張ってくだされば…『探索者』としても優秀だと思います、わ」

サクヤ「こんな時に探索者を見定めないでください。障壁の問題が解決できれば、後の問題は塔だけになりますが…。これは逃走者とミミさん達を信じるしかなさそうですね」

MZD「障壁さえ何とかなれば神パワーをエリア内に放てる。それまで誰も怪我してくれんなよ…!」



一方のメインサーバ。障壁を『破壊』ではなく『相殺』する魔法を開発したとヴィルヘルムが戻ってきました。彼の言葉によると、エイリークとクルークが現在その魔法を展開する装置を設置しに行っている様子。
彼が『発想の転換』と言っていたように、アイデアの提案者がクルークだったようです。彼も成長しているんですねぇ。それに『相殺』はぷよ勝負においてとても大事なアイデンティティですからね!
メインサーバから見守ることしか出来ない今、逃走者とミミ達の無事を祈ることしか出来ません。どうか誰も怪我せずに戻ってこれますように…!









~天空の塔 最上階付近~



ジルク「ここか。緑色に光る石…あれか!」



一人宝石の様子を見に行ったジルクファイド。飛んでいる途中で瓦礫を回避できなかったのか、所々が痛々しい傷で覆われています。それでもなんとか最上階までたどり着き、彼女達が話していた『緑色の宝石』が無いか探し始めます。
すると―――目線の先に神々しく光る緑が。間違いありません。そこで光っているのが『天気を司る宝石』です!すぐに近づきひび割れていないか確認する彼。手に取ってみるとほんのりと暖かく、まるで『心臓の鼓動』のようにトクン、トクン、と機械の身体に伝わってきます。



ジルク「これを地上に持っていけば天気が崩れることはないはずだよな。早いところミミ達と合流しないと―――」



宝石は幸いどこも傷付いておらず、ジルクファイドの手の中で光っています。急いで地上へ降りようと再度飛ぼうとした彼に―――『絶望』は、迫ってきていました。





ガラガラと、背後で音がしました。思わず振り向くアンドロイドの目線の先には―――『瓦礫の山』がありました。
逃げる場所も、飛ぶ場所も、もうありません。瓦礫の中に閉じ込められたのです。それに気付いたと同時に瓦礫が崩れる音が強くなっています。
―――『あぁ。もう間に合わないのか』。脳内に刻まれるその言葉。傷付いている身体では槍を振るうことも出来ません。



ジルク「―――あの言葉、冗談にするつもりだったんだけどな」



ぽつり。弱弱しい言葉が彼の口から洩れます。…それは最早『アンドロイド』の仕草ではない、人間らしい…『ジルクファイド自身』の言葉でした。
だが、まだ思考回路が動いている以上やれることはある。彼は宝石だけは傷つけさせまいと自らの手の中で大事に握ります。
それと同時に、天井が遂に崩れました。目の前に落ちてくる瓦礫。自らを覆い尽くすのも時間の問題だろう。アンドロイドはそう考えていました。



ならばせめて。『世界を救う』と決めたのならばせめて。その思いだけは果たす。


瓦礫の雨が身体に降って来ても、彼がその思いを手放すことはありませんでした。


彼の思考が全てシャットダウンされたと同時に。天は。全て崩れ去った。









~天空の塔 入口前~



クリス「急げ!!瓦礫が落ちてくるスピードが速くなっている!完全に崩壊するのも時間の問題だ!!」

ルカ「もう少しで外に出られますよ!それまでの辛抱です、頑張ってください皆さん!!」

むらびと「(先頭をひたすら走っている)」



入口付近にも天井から崩れる瓦礫が迫っていました。幸いしんがりをクリスが引き受けてくれていた為、全員大した怪我もせず降りてくることが出来ました。
先頭を走るむらびととルカが自分達が入ってきた入口を指差します。もうすぐです!



ジョマンダ「親父!疲れてないで走れ!死にたくないだろ!!」

リサ「いやしかし…人生の中でこれまで走ることなど経験したことが無かったからね…。これは身体に堪えるよ…」

ヴァリス「(父さんは運動音痴だからね)」

ジョマンダ「んなこと言ってる場合か!!運動音痴でも死んだら何も意味がないんだよ!!全力で走れ!!」

ジャック「もう少しで外みたいだぞミミ、ニャミ!俺から離れるなよ」

ニャミ「分かってる!でも…。ミミちゃん、大丈夫?」

ミミ「ジルクさんは…?大丈夫だよね?」

ジャック「今あいつのこと考えてる場合じゃない。このまま足を進めなきゃ俺達が死ぬんだぞ!」

ミミ「わたし達が助かっても…ジルクさんも助からなきゃ意味がないよ!助けるって…わたし達が助けるって言ったのに…!」

ニャミ「ミミちゃん…。大丈夫、ジルクさん強いじゃん!操られてたとはいえあのMZDを一回圧倒してるんだよ?そんな簡単にやられるワケないから大丈夫!」

ミミ「でも…上からどんどん瓦礫が崩れてきてるし…。最上階辺りなんてもう形も残ってないんじゃないのかな…?ジルクさんが怪我しないで済むはずない!」

クリス「…マルス様がここにいらっしゃったら、きっと同じことを仰ったはずだ。だが…今は彼の心配をしている場合ではない。厳しいことを言うようだが、他人の命を心配するのは『自分の命があってこそ』だ。命の危険が迫っている今、思考に囚われていては助かる命も助からなくなる」

ミミ「…………」

ルカ「皆さん!入口が見えてきました!飛び込めば間に合うはずです!!!」

むらびと「(急いでー!と焦っている)」



背後に瓦礫が迫る中、入口は目と鼻の先!飛び込めばまだ間に合います!
ルカが力いっぱい声を張り上げます。走るスピードを上げる一同。
そして――――――





クリス「飛び込めーーーーー!!!」





クリスが入口に飛び込み、外に逃げたその瞬間―――。












塔が。『天気を司る塔』が。完全に崩れ落ちた。